世界の食糧問題を、日本の技術が解決する ~第21回NEDOピッチレポート~

長く人生を歩むために欠かせないもの。それは、栄養豊かな食事です。第21回NEDOピッチでは、農業の生産性を飛躍的に高めるドローンや、従来の10倍以上の栄養価のある野菜生産などを手がける「アグリ・フード」分野の事業者が登壇。彼らのビジネスは、食にまつわる世界の課題を解決しようとしています。
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「機械」「システム」「バイオ」――3つの最新技術が農業を革新する

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人類の発展は、常に農業技術の進化とともにあります。作物の品種改良や、農地の有効活用、あるいは農業用機械の新開発――。これらの技術革新は、これまで私たちに多くの恩恵を与えてくれました。しかし、現代になり、新たに生まれた課題もあります。

世界には、人口の増加や地球温暖化にともなう食糧危機などの課題があり、人口が減少する日本においても、農家不足や食料自給率の低下が問題となっています。そうした課題の解決に向け、期待が集まっているのが、最先端の技術をもつ農業分野のベンチャーです。

これらのベンチャーによる技術的アプローチは、3つの方法に分けることができます。農作業用ロボットなどの「機械系」、データを活用し農業を効率化する「システム系」、そして、遺伝子技術により作物の品質を向上させる「バイオ系」です。

これら3つの分野において、国内外で、ベンチャーと大手企業が事業提携をする事例が続々と生まれています。たとえば、土を使わずに独自の「フィルム」を用いた農法を開発したメビオール株式会社は、ロシアのトマト生産最大手であるエコカルチャー社との事業提携に成功しました。

また、株式会社冨貴堂ユーザックとNECソリューションイノベータ株式会社の事業提携は、農家の作業日誌をデータ化することで、農業生産工程をクラウド上で管理するというサービスを生み出しています。

2017年11月に開催された第21回NEDOピッチのテーマは、「アグリ・フード」。機械系、システム系、バイオ系、それぞれの最先端技術を持つ、5名の事業者がプレゼンします。私たちが安心して生きていくための「食」を、彼らはどのように進化させようとしているのでしょうか。

農業専用ドローンが実現する、低コスト・高品質な農業

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農家の減少が続く日本の農業に、ロボット技術で立ち向かう企業があります。「テクノロジーが農業を変える」をコンセプトに創業した、株式会社ナイルワークスです。同社は、“農業専用”のドローンの製造開発を手がけ、生産コストを大きく下げることに成功しました。

株式会社ナイルワークス 代表取締役社長 柳下洋
「弊社のドローンは、農地の場所と作業の内容を指定するだけで、1cmの精度で指定した場所に農薬や肥料を散布することができます。必要な箇所だけに散布することで農薬使用量を従来の4分の1に減らせますから、コスト削減はもちろん、食の安心を確保することにもつながります」

さらに、同社のドローンは生育診断用の専用カメラを搭載していて、農作物の生育状態を映像で把握し、収量を予測することができます。柳下氏は、「高品質なお米をリーズナブルに提供することに力を尽くしたい」と意気込みを語りました。

野菜の栄養価を、従来の10倍以上にまで高めることに成功したのは、株式会社 恵葉&菜 健康野菜(けいはんな けんこうやさい)です。栽培プラント設計と製造を手がける同社は、農作物の環境を最適な状態にすることで、野菜本来の味と栄養バランスを両立させた「高機能健康野菜」を大量に生産しています。

株式会社 恵葉&菜 健康野菜 代表取締役 池祐史久氏
「市場に出回っている野菜は、年々ミネラルなどの抗酸化成分が減少しています。弊社はこの問題を、光や溶液の環境などを整えた栽培プラントで解決しました。しかも、自社でプラントを開発していることから、低コストで高機能健康野菜を生産することが可能です」

同社が栽培する作物のもうひとつの特徴は、その“おいしさ”。決め手は、苦みやえぐみにつながる硝酸態窒素を大幅に減らしたことにあります。池氏は、今後、抗酸化成分を活用したアンチエイジング分野や、健康マーケットにビジネスを広げていきたいと語りました。

ゲノム研究により可能となった、“カラフルで美味しい”お米

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「田んぼアート」をご存知ですか?水田に色のついた稲を植え、文字や絵などを表現するアートで、地域活性化や、農地の有効活用策として注目されています。この田んぼアートをゲノムの技術で進化させているのが、株式会社リーゾです。

株式会社リーゾ 代表取締役 門奈理佐氏
「これまでの田んぼアートでは、緑色以外の部分には食べることのできない観賞用品種が使われていました。そのため、収穫すると廃棄しなくてはいけなかったんです。しかし、私たちが開発した独自の『ゲノム育種法』を用いることで、食べられる品種で色のついたお米をつくることが可能になりました。たとえば、コシヒカリに古代米をかけあわせることで、黒色のお米が開発できたんです」

同社は、2017年11月現在、黒色のお米「美食同玄米」を販売し、売上を伸ばしています。今後はさらに色のバリエーションを増やし、農業機械メーカーや広告代理店、地域おこしなど、幅広く事業提携を進めていきたいと述べました。

農業の生産性を飛躍的に伸ばすのは、愛媛大学発のベンチャー、PLANT DATA株式会社です。同社は、植物の生体情報を計測し栽培管理に生かす、「植物生体情報プラットフォーム」を提供しています。

PLANT DATA株式会社 代表取締役CEO 北川寛人氏
「日本のトマトの平均収量は平米10kgですが、弊社のクライアントであるオランダの農家では、平米70kgまで伸ばしています。植物の生体情報を測定し、光合成による反応などを“見える化”するこで、より生育に適した環境に整えることができ、国内でも平米220kgまで収量を増やせる可能性があります」

北川氏によると、植物生体情報プラットフォームにより、高栄養の野菜づくりや、ワクチンのような有用成分の生産にも役立てられるということです。今後、植物の生体データを活用に興味をもつ企業と一緒に幅広くビジネスを展開していきたいと語り、締めくくりました。

生命のブラックボックスをなくすことが、バイオ産業を発展させる

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遺伝子や遺伝子からつくられるRNAに直接アプローチすることで、植物の発育を高めるなどの効果が期待できる「ゲノム編集、及びRNA操作」。エディットフォース株式会社は、独自のタンパク質工学技術により、新たな産業を切り開いていきます。

エディットフォース株式会社 代表取締役社長 中村崇裕氏
「私たちはゲノム編集技術を、穀物・花き類の収量向上や機能性原料の作出に活かすことを考えています。特に面白いのは、only one techであるRNA操作技術です。mRNAの翻訳増強によるタンパク質生産性の向上、また夾雑タンパク質の除去など、RNA操作ならではの技術革新を目指しています」

これまで、バイオ産業では、品種改良等により生み出される成果には不確実が含まれるために、投資対効果が不明瞭であるという課題がありました。中村氏は、ゲノム編集やRNA操作といった科学的な方法によって、より精度高く生物を制御することにより、この課題を解決し、医療や化学、食糧などの分野を支援することで、バイオ産業を発展させたいと語りました。

今回登壇した5社は、いずれも、独自の技術にビジネスを掛け合わせることで、世界が共通して抱える「食の課題」を解決しようとしています。今後、彼らの手がけるビジネスは、人類が健康的に生きていくための大きな力となってくれることでしょう。

NEDOピッチは、様々な技術を持つ企業同士が、それぞれの技術や展望を語り、互いを知ることで、新たなアイデアを生み出す事業パートナーとつながる場所です。今回のNEDOピッチを通じて、新たな技術がビジネスを生み出し成長していくことが、私たちもとても楽しみです。

【第21回NEDOピッチの映像】
- NEDO Channel:アグリ・フード
https://www.youtube.com/playlist?list=PLZH3AKTCrVsV1uv3fKX34IKYfb2-iGsOB

【第22回NEDOピッチのご案内】
-テーマ:IoT(Internet of Things)
- 日 時: 2017年12月19日(火)18:00 ~ 20:30 (受付開始:17:30~)
- 場 所:NEDO川崎本部 5F
- 参加費:無料
- 申込み:https://www.joic.jp/index.htm

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