“宇宙”の活用が、未来のビジネスをつくり出す〜第23回NEDOピッチレポート〜

力あるベンチャーが大企業に向け自社のビジネスを語る「NEDOピッチ」。第23回のテーマは「宇宙」です。国家によるロケット打ち上げに世界中が感動した時代を経て、いまやベンチャーも宇宙産業に欠かせないプレイヤーに。手軽な宇宙旅行やリアルタイムの地図情報など、未来を感じさせるビジネスが生まれています。
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国・大企業・ベンチャーが手を取り合って宇宙ビジネスは発展する

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宇宙産業を国や大企業だけが担った時代はすでに過去の話。いまや、ベンチャーによるユニークなアイデアや技術が花開いています。国・大企業・ベンチャーが、それぞれの力を発揮しながら宇宙産業の発展に寄与する時代となったのです。

こうした状況を受け、内閣府では、2017年12月に改訂した「宇宙基本計画」において、3本柱のひとつとして、「民生分野における宇宙利用の推進」を掲げました。国が打ち上げた衛星によって収集したデータを民間に向けてオープン&フリー化するなど、環境面の整備が進んでいます。

内閣府 宇宙開発推進事務局 長宗豊和氏
「2018年度から、特定の地域の上空に長時間とどまる『準天頂衛星』を利用した測位サービスを開始します。従来のGPSでは10m程度の誤差がありましたが、準天頂衛星を使えば誤差はcm単位です。この取り組みにより新たなビジネスが生まれることを期待しています」

宇宙旅行や宇宙資源開発など、直接宇宙空間に向かうビジネスに注目が集まりがちですが、宇宙産業の技術を地球上で活用するビジネスも見逃せません。たとえば、準天頂衛星の技術は、身近なビジネスを生み出すことができます。

経済産業省 製造産業局 宇宙産業室 室長補佐 國澤朋久氏
「準天頂衛星による高精度測位は、農業機械や建設機械、あるいは自動車の自動走行に活用ができます。さらに、マラソンランナーの走行軌跡を測位して、タイムを伸ばすためのコーチングに活用するなど、様々な分野への応用も考えられます」

このように、私たちの暮らしをより豊かに変える可能性に満ちた「宇宙」が、第23回NEDOピッチのテーマです。宇宙ビジネスを手がけるベンチャー5社のプレゼンから、夢のある未来を覗いてみましょう。

50万円から宇宙ビジネスが可能に?圧倒的な低コスト化を実現

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「宇宙ビジネスは、限られた人だけのもの」ーー。そう考えられてきた理由のひとつに、圧倒的なコストの高さがありました。ここからは、こうしたコスト問題を解決する2社を紹介します。

まずは、株式会社ワープスペース。「宇宙で遊べる世界を実現したい」というモットーのもと超小型衛星の打ち上げを行なう筑波大発ベンチャーです。

株式会社ワープスペース 代表取締役 亀田敏弘氏
「これまで、小型衛星は、国や大企業の利用目的に合わせて開発が進められてきたため、一機あたり数億円のコストが必要でした。しかし、私たちは自社で部品の設計を地道に積み重ね、約 50万円まで低コスト化し、個人でも利用できる超小型衛星を開発しました」

同社は、すでに低コストで衛星の設計から打ち上げ、運用に至るまでを経験済み。亀田氏は今後、メーカーはもちろん、エンタメ業界などとも連携し、個人で遊べる宇宙用ドローンの開発を予定するなど、新しいビジネスの展開をしていきたいと、意気込みを述べました。

小型衛星を利用するためには、宇宙空間まで運搬するためのロケットが必要です。次に登壇したインターステラテクノロジズ株式会社は、北海道大樹町に本社工場を置くベンチャー。12回におよぶ小型ロケットの打ち上げ実験を経て、民間単独で打ち上げられる低コストの小型ロケットを開発しました。

インターステラテクノロジズ株式会社 稲川貴大氏
「従来の大型ロケットの開発には 100億円単位のコストが必要でしたが、これは高性能を追い求めた結果です。私たちは部品を内製化し、必要最低限の機能に絞った結果、一桁安くすることができました」

稲川氏は、「小型衛星を運ぶニーズはますます高まっていく」と予測し、今後は、メーカーなどの事業会社と提携するとともに、広告スポンサーも募集していると語ります。自社の広告が掲載されたロケットが宇宙へ飛び立つ姿は、きっと大きな注目を集めることでしょう。

所要時間90分。宇宙空間に飛び出して、青い地球を眺める小旅行

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既存のイメージを覆す、手軽な宇宙旅行が実現するかもしれません。その技術を支えるのが、PDエアロスペース株式会社の、「ジェット・ロケット切り替えエンジン」です。ロケットの発射台がなくとも、空港からジェットエンジンで宇宙に飛び立つことができる時代が迫っています。その仕組みとはーー

PDエアロスペース株式会社 代表取締役 緒川修治氏
「離陸した機体がジェットエンジンで急激に加速し、エンジンを停止すると、投げられたボールのようにゆっくりと高度を上げ、やがて宇宙空間に到達します。その後、地球の引力に引っ張られて地球に戻る『弾道飛行』により、全行程で約 90分の手軽な宇宙旅行が可能になります」

既存の常識を打ち破る短時間の宇宙旅行により、誰でも気軽に地球の青さを目にできる未来が実現しそうです。緒川氏は、まず2019年4月までに無人機の開発を進め、低コストで利便性の高い宇宙輸送インフラ構築に尽力したいと話しました。

次に、宇宙開発において注目される炭素系新素材の「カーボンナノチューブ」を利用して、“新世代の電池”を開発した、スペースリンク株式会社が登壇。同社が開発した「CNTハイブリッド金属燃料電池」は、スマートフォンの充電時間を約1分にまで短縮できるなど、これまでのバッテリーの常識を打ち破ります。

スペースリンク株式会社 取締役 阿部晃城氏
「一般に使われているリチウムイオン電池と比較して、CNTハイブリッド金属燃料電池は、カーボンナノチューブをインク状態にし、導電性の不織布と合成することで、充電スピードと発電量の優位性を両立させています。このバッテリーにより、スマホの急速充電や、ドローンの長時間駆動など、多くのことが可能になります」

CNTハイブリッド金属燃料電池は、リチウムイオン電池と比較して発熱もないため、ウェアラブル端末など、安全性が求められる分野での応用にも期待されるところです。阿部氏は、「今後も宇宙と地球の技術を用いて、100年先、さらに先の未来をつくっていきたい」と決意を語りました。

小型レーダー衛星が実現する、地球上をリアルタイムに見ることができる世界

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「今日の遊園地混んでいるかな」「この渋滞どれくらい続いているだろう」――そう思い立ったら、すぐにスマホで今の状況を確認することができるようになるかもしれません。株式会社QPS研究所は、小型のレーダー衛星を用いて、“リアルタイムに更新されるGoogle マップのような世界”をつくろうとしています。

株式会社QPS研究所 代表取締役社長 大西俊輔氏
「従来の観測衛星はカメラを用いているため、天気の悪い日や夜間は観測することができないという問題がありました。そこで私たちが着目したのが、“レーダー”。このレーダーを搭載した小型衛星を36機打ち上げることで、地球上のほぼどこでも平均 10分以内に観測することのできるシステムを開発しています」

同社は、衛星画像を、“新たな価値”として活用することも視野に入れています。たとえば、人や車などの動きの画像データを収集して経済予測を割り出すなど、さらなる展開が期待されます。大西氏は、「世界の宇宙産業にインパクトを与えたい」と参加者に向けて語りました。

以上、今回登壇した5社は、ベンチャーならではのユニークな発想によって宇宙ビジネスにチャレンジしています。彼らの挑戦が、まだまだ無限の可能性に満ちた宇宙でどのように進化していくのかーー。非常に楽しみです。

【第23回NEDOピッチの映像】
- NEDO Channel:宇宙
https://www.youtube.com/playlist?list=PLZH3AKTCrVsXgXxoJ1fj93veqLI43fdOa

【第24回NEDOピッチのご案内】
-テーマ: Future of Work
- 日 時: 2018年3月6日(火)18:00 ~ 20:15 (受付開始:17:30~)
- 場 所:NEDO川崎本部5F
- 参加費:無料
- 申込み:https://www.joic.jp/index.htm

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