ロボットが活躍する社会に向けて、企業はどう在るべきか~第9回NEDOピッチレポート~

NEDOピッチには、オープンイノベーションを創出することを目的とし、産業の核となる「技術」に着目したIoT、ヘルスケアなど幅広い分野の起業家が集まっています。第9回目となる今回は、ロボット分野の起業家たちが、参加者とともにロボットの未来像について議論を交わしました。
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ロボット市場が再び注目を集めているワケ

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引用:日経ビジネス2016年3月7日号スペシャルリポート(トーマツベンチャーサポート試算)
2000年代前半、各大手メーカーから次々とロボットが登場しはじめました。ところがリーマンショックの影響もあり、その夢や将来性への投資は一時的に影を潜めることになります。

そして近年、ロボットは再び注目を集めるようになりました。その背景にあるのは、人口減少に伴う労働力不足。2040年ごろの日本では、全産業合計で約600万人分の労働力が不足するといわれています。

その労働力不足を補うため、必然的に注目が集まったのがロボット。経済産業省と国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(以下NEDO)が共同で推計したデータでは、2015年には1.6兆円だったロボットの市場規模は、2035年に9.7兆円まで拡大していくことが読み取れます。

労働力不足が顕著な分野(小売・医療・福祉など)でのロボット活用はもちろん、すでに定着している産業ロボットも2.5倍成長が見込まれる。こうした流れを読み、日本政府でもロボットを成長産業のひとつとして位置づけ、積極的な議論、予算組みがなされています。

大きな期待を背負っているロボットですが、課題も多く存在しています。企業ごとのニーズに適したロボットが存在していない、現場で稼働するまでに手間とコストがかかる……。さらに運用していくうちに、想定を越える、新たな課題も出てくるかもしれません。

そのような中、今回、NEDOピッチに登壇したベンチャー企業は、こうした課題の解決も含めてロボット市場の未来を創るために試行錯誤を繰り返していました。第9回NEDOピッチ(2016年6月28日開催)のテーマは「ロボット」。ロボット技術を持ち、未来を創ろうとしている5社が登壇。それぞれの目標、技術について熱をもって語ってくれました。

ロボットが活躍する範囲を広げる、新たな視点

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最初に登壇したライフロボティクスは、ヒトのそばで一緒にはたらく新しいロボットの概念“コ・ロボット(協働ロボット)”を展開する企業。日本社会が抱える人手不足の解消を目指し、あえてコ・ロボットに特化した産業用ロボットを開発しています。

ライフロボティクス代表取締役 尹祐根氏
「基本的に産業用ロボットは、ヒトには持てない重いものを持ち、ヒトには出せないスピードで仕事をする“究極の性能”を求めて開発されているもの。ゆえにヒトの予想を越える事故が起こる可能性もあり、ヒトと働く場所が分けられています。当社の『CORO』はコ・ロボットに合う機能・性能に特化し、ヒトのそばで共に働くロボットです」
同社は産業技術総合研究所発のベンチャーとしても注目を集めており、主力製品「CORO」はすでに大手化粧品やヘルスケア、食品、自動車メーカーに導入されています。新しい概念(コ・ロボット)のため、これまで産業用ロボットを導入していなかったサービス業の分野など、人手不足に困っている業界なら幅広く対応できると尹氏は語りました。

続いて登壇したMUJINは、ロボットの導入時に必ず必要になるティーチング(ロボットに動作を学習させること)を自動化することで、ロボットを簡単に知能化でき、導入から稼働までの待機時間を短縮する事で、産業用ロボットの導入障壁を下げることに貢献しています。

MUJIN最高経営責任者 滝野一征氏
「実際に、現在一番困難といわれるばら積みピッキングロボットの導入期間を12ヶ月→3ヶ月に短縮した事例もあります。ロボットは、メーカーごとに形状やプログラムが異なり、またロボットが扱うモノも、金属部品、食品、日用品など、形状がさまざま。こうした周辺環境の変化に対してロボットがティーチレスで動く事ができて初めてロボットが活躍できる領域も更に広がっていきます」
現在は物流や自動車メーカーを中心に導入が急激に進んでいる状態ですが、製品のピッキング作業などは流通、小売の世界でも必ず発生します。従来ロボットが適用できなかった新しい分野でもMUJINコントローラをロボットに搭載するだけで可能になります。今後さらにロボットメーカーやエンドユーザ、Sierの皆様と共に挑戦していきたいと滝野氏は語りました。

ロボットは導入検討から、実際に稼働するに至るまで、時間やコストもかかります。しかし、稼働しなければ成果を挙げることもありません。続いて登壇した3社も、社会のニーズを見ながら、企業の導入障壁を下げる工夫をしていました。

ロボットとヒトが協力することで成果につながる

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京都でエンジニアリング会社として経験と実績を積み上げてきたスキューズは、その独自の技術を生かして、世界のものづくりを支えることを目的にロボット事業も手がけています。つまむ、掴むなど、ヒトの手と同じ動作ができるロボットを開発する傍らで、ロボットとラインをパッケージ化して、導入から運用までの手間を省くことを可能にしています。

スキューズ代表取締役 清水三希夫氏
「当然、お客様ごとにニーズは異なる。トライ&エラーを繰り返しながら、最終的に『これだけの時間が短縮できる』『コストがこれだけ削減できる』という成果を提供することを心がけています」
同社製品の特徴は、工場内を大規模に改修するのではなく、必要なところから少しずつ導入できるところ。10年、20年先も使ってもらうことを念頭に置き、医療や自動車、食品大手と共に培ってきたノウハウをオープンにして、社会に還元していきたいと清水氏は語りました。

続いて登壇したのは、静岡県浜松市から駆けつけたリンクウィズ。創業からまだ1年強ですが、すでに10社以上に製品が導入されており、急成長を見せるベンチャー企業です。産業用ロボットがセンサーで物体形状を自動認識し、生産品のバラつきに合わせてリアルタイムで作業を調整する、自動ロボットコントロールツール「L-Robot」を展開しています。

リンクウィズ代表取締役 吹野豪氏
「ロボットの問題はひとつ、常に設定された動作しかできないことです。自動車を組み立てる際、溶接するフレームが10mmズレていたら、ロボットはその誤差にも対応しないといけません。製品上の問題はなくても、ロボットには大きな誤差。であるならば、ロボットがその違いを判断し、考えて動く事が出来ればいい。」
IoT(Ineternet of Things)の概念も取り入れ、工場内で稼働するロボットでデータを集め作業をサポートするPDCAサイクルを作り上げる。ロボットを活躍させるため、すべてをロボットに任せるのではなく、人や環境にロボットが寄り添うことで「もっとロボットを活躍させたい」 そんな想いを持つ企業と協力していきたいと吹野氏は語りました。

最後に登壇したのは、1998年からガスタンクや橋梁などの点検ロボットを手がけているイクシスリサーチ。会場にも同社の点検ロボットを導入、活用している企業も集まっていました。

イクシスリサーチ代表取締役 山崎文敬氏
「当社のロボットを導入したお客様が気づくのが、段差を越えられないこと(笑)。そういうときは、ヒトが手を添えればいいんです。お互いが不足を補い合うことでコストダウン、成果に繋がると考えています」
ロボットは“かゆいところ”を見つける、ヒトはそれを見つけやすいようにサポートしていく。役割分担を明確にし、お互いの長所を生かしていくのが、これからのロボットとの関係性なのかもしれません。点検ロボットはカスタマイズ性が高いため、エンジニアリング会社にも開発のベースとして活用してもらいたいと山崎氏は語りました。

社会課題に取り組む企業の“在るべき姿”

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近年、人件費などの面から海外に工場を構えても、優位性、メリットが少なくなってきています。その一方で、日本国内の労働力不足は今後より深刻になっていくでしょう。こうした背景もあり、ロボットは新たな“黎明期”に突入したといえるのです。

会場からの質疑応答に対して、登壇者のひとりが「ロボットは要望から生まれるもの。ただ勝手に『便利なモノを作ったので使ってください』ということではない」と返しているシーンもありました。これは、新しい時代に向かっていく中で、社会課題に取り組む企業の“在るべき姿”を示唆しています。

「何が正解なのか? 何が必要とされているのか?」 それは、まだ誰も答えを持っておらず、これから探していくものです。NEDOピッチに登壇した5社はその答えを求めて自ら市場に飛び込みながらも、他社の声に耳を傾け続けています。なぜなら労働力不足は、ベンチャー企業だけで解決できる課題ではないからです。

産業用ロボットはすでに一定の普及を見せていますが、旧来の概念に合わせて考えを狭める必要はありません。たとえば、ライフロボティクスのCORO、スキューズのハンド型ロボットは、従来の産業用ロボットとは異なった概念を持つため、有名な飲食チェーン、コンビニエンスストアなどを支える日が来るかもしれません。

そしてロボットが活躍する範囲が広がれば、MUJINやリンクウィズのように、導入や運用の手間を省き、ロボットが働きやすい環境を作っていく技術や考え方をもつ企業が必要になってきます。イクシスリサーチをはじめ各社が語るように「ロボットとヒトが協力して働くこと」が、未来を考えていくために重要なのです。

NEDOピッチは、社会課題に対する解決手段となる技術を有するベンチャー企業が、その研究開発の成果と事業提携ニーズ、そして“想い”を、大企業やベンチャーキャピタル等の事業担当者に伝える場所。

その場にいる全員が「社会課題をどう解決できるか」を考え抜いているからこそ、世の中に価値を提供できる事業提携が生まれます。今回のテーマであるロボット分野から、どのような事業提携が生まれるのか、私たち自身も楽しみにしています。

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