アグリテックが作る新しい農業のカタチ ~第12回NEDOピッチレポート~

NEDOピッチには、最先端の技術や新しいアイデアを持った起業家たちが集結。こうした起業家たちが企業と結びつき新たなビジネスを生み出しています。今回のテーマは「アグリテック」。さまざまな課題を抱える農業分野で、有望な技術を持つベンチャーはどのようにビジネスを仕掛けるのか、各起業家たちが展望を語りました
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日本の技術力で世界の食糧問題を解決

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日本における農業の分野では、少子高齢化による労働力不足が課題となっています。農林水産省による統計では、2010年には260.6万人だった農業就業者が、2016年には192.2万人とされており、数年の間に大幅に減少しているのです(※)。

その一方、世界的には今後人口増加による食料ニーズの高まりが予測されています。つまり、従来型の人間の労働力に依存する方法では、今後、世界の大きなマーケットに対応することができないということです。

ここで注目されるのが「アグリテック」。技術力を活かした新たな農業です。農林水産省は、労働力不足に対してICT技術を活用することにより、今後急速に失われていく可能性のある篤農家の「匠の技」、つまり暗黙知を形式知に変え、他の農業者や新規参入者等に継承していく取り組みを推進しています。

さらに、農林水産省が推進しているのが農業分野の6次産業化です。6次産業とは、生産(1次産業)、加工(2次産業)、流通販売(3次産業)の各産業を一体化することにより、新たなビジネスを生み出し、雇用や所得を増加させることが期待されています。

2016年11月に開催した第12回NEDOピッチのテーマは「アグリテック」。農業を成長分野にし、食料問題を解決しうる技術とアイデアを持つ6人の事業者が語ってくれました。

※農林水産省「農業労働力に関する統計」
http://www.maff.go.jp/j/tokei/sihyo/data/08.html

※農林水産省「AI(アグリ・インフォマティクス)農業について」
http://www.maff.go.jp/j/shokusan/sosyutu/sosyutu/aisystem/aisystem.html

これまでになかった技術によって“農業の常識”が覆る

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最初に登壇したのはベジタリア株式会社。同社は、最新の植物科学とテクノロジーを駆使して安心安全で持続可能な環境と健康社会の実現を目指しています。

「安心安全でおいしいだけではなく、栄養価が高くて機能性が高いものを、環境に優しい形で収量を上げていく。私たちは、そんなチャレンジをしている会社です。経験と勘と匠の技というのが今の農業ですが、最新の植物科学、IoTセンサー、人工知能などによって、科学とテクノロジーの農業を目指しています」(ベジタリア株式会社 代表取締役 小池聡氏)
同社では、さまざまな分野の人材や会社を採用・グループ化することにより、総合的な食と農業の分野にチャレンジしています。たとえば土壌管理、水質管理などを効率化する各種センサーを開発しているほか、センサーで収集したデータを活用し、病気や害虫を防ぐ最適な栽培環境を作っているのです。

今後は、オールジャパンでこれからの世界の食糧問題、人口問題、環境問題に取り組んでいきたいとして、幅広くいろいろな企業と連携したいと語り、締めくくりました。

続いて、安全で高栄養価の農産物を生産する、世界初のフィルム農法「アイメック」を開発・提供をしている株式会社メビオールが登壇。同社が開発したアイメックは、植物に有害な菌やウイルスを遮断し、必要なミネラルは通すことにより、土を使わずにフルーツトマトといった植物を育てることを可能としました。

「つまり、これまで農業としては“不毛な土地”とされていた、砂漠のようなところでも農業を営むことができるんです。従来の水耕栽培と比較すると、アイメックの方が高品質の野菜を作ることができ、さらにコストを抑えることができます」(メビオール株式会社 代表取締役 吉岡浩氏)
今後は、提携企業にアイメックを採用していただきたい、また、アイメックシステムを国内や海外で普及させるために代理店となっていただきたいと語りました。

両社ともに、従来の常識では考えられなかった土壌や水質の管理、砂漠での農業などを、最新の技術により実現しています。

3社目に登壇した株式会社UniBioは、アメリカやドイツから導入した技術を応用し、植物由来タンパク質を製造するバイオ技術の開発をしています。

「私たちは、従来であれば動物細胞や大腸菌由来で作っている有用タンパク質を、アニマルフリー(植物由来)で製造しています。これにより、再生医療の現場で必要不可欠な有用タンパク質を、安全、そして安定的に供給可能にいたします。」(株式会社UniBio 代表取締役 結城洋司氏)
また、従来の製造方法では非常に複雑であった製造工程を合理化することによりコスト削減を実現。この技術を用いて製造された有用たんぱく質について今後国際的な成長が予想されるアンチエイジング市場向け化粧品の共同開発、さらにはES細胞やiPS細胞といった再生医療分野での原料販売体制のご協力をいただきたいと語りました。

アグリテックで不要な労働時間を短縮させる

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4社目に、株式会社ヨコヤマ・コーポレーションが登壇しました。同社は2013年にドローンを開発するTEAD事業部を立ち上げ、企画、設計から販売まで総合的に行っており、初の農林水産航空協会認定の産業用大型農薬散布ドローンを開発しています。

「農薬散布を行う大型ドローン機体の販売所、教習所、整備所、これを三位一体としてひとつのビジネスにしています。それにより、安心安全な運営を実現してるんです」(株式会社ヨコヤマ・コーポレーション 古屋誠一氏)
同社は、ハイブリッドドローンも開発。一般的なドローンの飛行時間が10〜 15分程度なのに対し、ハイブリッドドローンは1〜2時間程度飛行することが可能となります。資本面でのご支援、長時間飛べるドローンが必要な企業との共同研究、海外展開を行なっていきたいと今後の展望を語りました。

続いての登壇者は株式会社ルートレック・ネットワークス。土壌水分量、土壌EC値と日射量から作物の生長に合わせ自動的にかん水と施肥を実行する「ゼロアグリ」というシステムを開発しています。

「点滴灌漑という農法により節水ができ、収穫量が上がりますが、これは非常にノウハウがいります。その問題をICTの力で解決したのがゼロアグリです。日射センサー、土壌センサーからの情報を分析し、その結果に基づいて最適値を割出し、水と肥料を撒く……。この繰り返しによって土壌内の環境を作物に合わせて最適化できます」(株式会社ルートレック・ネットワークス 代表取締役 佐々木伸一氏)
ゼロアグリを活用することにより、水と肥料を供給する労働時間の90%程度が削減できる。削減された時間を使って、作物の手入れや従業員の教育、収穫といった時間に充てることができるといいます。

また、ゼロアグリで集積したデータを用いることにより、品質の安定化や収穫量の維持が可能になるため、各社との事業提携を通じて、農業を盛んにし、農村に子どもたちの声が戻ることを目指したいと締めくくりました。

こちらの2社は、農業散布用のドローン、点滴灌漑を自動化するシステムを商品としています。これらの技術を活用することにより、従来は人の手により行われていた作業を、大幅に効率化することに成功しているのです。

国際競争力を高めるだけでなく、社会課題を解決するアグリテック

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最後に登壇したKAKAXI株式会社は、農地に簡単に設置できるIoTデバイスを開発しており、そのデバイスにより、消費者が作付けから収穫まで見ることができるというクラウドサービスを展開しています。

「農地に置くカメラの中に気温、湿度、日射、雨量を測るセンサーが入っています。この中にグローバル対応の3GのSIMも入っていて、このカメラとA4サイズのソーラーパネルがあるだけで、世界120カ国どこに持っていっても、スイッチを入れるだけで動き出す仕組みです」(KAKAXI CEO 大塚泰造氏)
このデバイスにより取得した数値データをネットワーク化することによって、より幅広い予測や応用が可能になります。また、デバイスにはコミュニケーション機能があるため、消費者が生産者に対し、農作物を食べた感想を知らせるなど、互いにコミュニケーションを取ることができるのです。

顧客の食に対する安心安全ニーズを分かりやすい形で提供したい企業や、低コストのセンサーを必要とする、農業のIT導入支援を行っている会社と提携していきたいと語りました。

今後、産官学が連携して今後ビジネス展開をしていく気運がますます高まっていくことが予想されます。それを後押しするように、2016年4月には、「知の集積と活用の場 産学官連携協議会」が発足されました。新たな技術を活用した、ビジネスによる課題解決が期待されているのです。

今回登壇した6社を含めて、さまざまな技術を活用する企業が、農業の生産性を高めることにより国際競争力を高めてくれる。なにより、今後予想される食料不足の問題に貢献してくれることでしょう。

NEDOピッチは、このようにさまざまな技術を持つ企業同士が、それぞれの技術や展望を語り、互いを知ることで、新たなアイデアを生み出す、事業パートナーとつながる場所です。今回のNEDOピッチを通じてつながった技術が、どんな未来を創りだしていくのか、私たちもとても楽しみです。

【第13回NEDOピッチのご案内】
- テーマ: 人工知能
- 日 時: 2016年12月20日(火)18:30~20:45(受付開始:18:00~)
- 場 所:NEDO川崎本部5F
- 参加費:無料
- 申込み:https://www.joic.jp/news/news_i29_u1.htm

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