人工知能で「超」効率的な未来を実現するビジネス~第13回NEDOピッチレポート~

NEDOピッチには、最先端の技術や新しいアイデアを持った起業家たちが集結。こうした起業家たちが企業と結びつき新たなビジネスを生み出しています。今回のテーマは「人工知能」。話題性のある人工知能の分野で、有望な技術を持つベンチャーがどのようにビジネスを仕掛けるのか、各起業家たちが展望を語りました。
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人工知能は未来の仕事を大きく変えていく

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冒頭にトーマツベンチャーサポート技術チームの松本雄大氏から、人工知能のテーマ概観について説明がありました。オックスフォード大学により発表された論文によると、これから10年から20年後の将来、人間の職業の一部を人工知能が肩代わりできるようになるとのことです。

この論文について、人工知能が人間の仕事を奪うという否定的な見方もありますが、その一方で、人工知能の分野で新しいビジネスが生まれていくと見ることもできます。実際に、人工知能の分野に対するベンチャーキャピタルの投資額は年々増加をしており、2015年にはついに100億円以上の資金が投資されました。

人工知能のベンチャー企業が大企業と事業提携をしている分野に目を向けると、よく話題となる自動車業界の他にも、広告、小売、サービス、金融、不動産、医療などで事業提携が生まれてきています。これから様々な分野で人工知能の新しいサービスが世の中にでてくる事が予想されます。

さらに、人工知能技術戦略会議 ベンチャー育成・金融連携タスクフォース 主査 栄藤稔氏によると政府も人工知能のビジネス活用を推進しています。総務省が取りまとめた「平成28年度版 情報通信白書」において重視されているポイントは3つあり、①人工知能(AI)の実用化の可能性、②人工知能(AI)導入が雇用に与える影響と社会の受容性、③人工知能(AI)導入による既存の仕事・業務の代替の可能性、および新規の仕事・業務の創出となっています。

このように人工知能はますます実用化に向かい、未来のビジネスを大きく変えていくことが期待されています。

2016年12月に開催した第13回NEDOピッチのテーマは「人工知能」。未来の産業の構造も変えゆくこの分野に果敢に取り組む、最先端の技術とアイデアを持つ5人の事業者が語ってくれました。

※総務省「平成28年度版 情報通信白書」
http://www.soumu.go.jp/johotsusintokei/whitepaper/ja/h28/html/nc142000.html

ユーザーの顧客体験を最適化する

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最初に登壇したのはイタンジ株式会社。同社は、不動産仲介を自動化するAIチャット「nomad」を開発し、テクノロジーの力で不動産投資をスムーズにし人々の生活を豊かにすることを目指しています。

イタンジ株式会社 CTO 横澤佑輔氏「たとえば不動産取引の質問に対して、AIが回答することで業務の効率化が可能となります。現状は、質問の約60%はAIによる返信ができるようになっています。通常、不動産営業マン1人当たり40人ぐらいお客さんを相手にするのが限界のところですが、nomadの場合、5人で、5,000人のお客様の相手ができる。つまり、単純比較すると25倍の生産性を持つシステムを作っていることになります」
同社ではnomadの他に、人工知能による不動産査定サービス「Value」を展開しています。過去の成約事例や為替、株価などのデータをもとに、ディーププラーニングにより将来の不動産価値を予測し、投資価値の高い物件の情報をユーザーに提供するというものです。

不動産業界でのIT活用の取り組みは、アメリカではすでに多くの事例があります。日本でも追随するべく、不動産関係だけでなく、インフラや鉄道など、不動産と密接に関係する企業や生活製品のメーカーなどと幅広く連携したいと語り、締めくくりました。

続いて、ユーザーの感性を学習する人工知能「SENSY」を開発し、1人1台のパーソナルな人工知能を持つ社会を目指して事業をしているカラフル・ボード株式会社が登壇。

カラフル・ボード株式会社 代表取締役CEO 渡辺祐樹氏「ユーザーごとの異なる感性を覚えさせたいと考え、SENSYと名付けました。ユーザーごとの興味や、ファッション、味覚、音楽などのセンスを理解して、本当にユーザーが必要とする商品やサービスの情報を提供する技術として開発しています」
同社は、さまざまな企業と連携し、SENSYの技術を用いて、顧客に対して嗜好に合ったレストランやお酒、ファッションを、そのシーンごとのニーズに合った選択として提案しています。さらに集めたデータを解析することによって、顧客の嗜好のトレンドをリアルタイムに可視化することも可能となるのです。

渡辺氏は、人工知能を使って実際にどういた課題を解決できるのかを企業とともに考え、立ち上げに協力していきたいと語りました。

両社ともに、人工知能を活用した独自の技術により、さまざまな顧客に対するサービス提供を最適化することを実現しています。

提携企業のビジネスにも、より活用しやすくするなる

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株式会社クロスコンパス・インテリジェンスは、東工大発のベンチャー。ディープラーニングに研究開発の焦点を当て、より身近にAIのアルゴリズムを使ってもらうためにプラットフォームの流通を手がけています。

株式会社クロスコンパス・インテリジェンス 代表取締役社長 佐藤聡氏「私たちは、あらゆる人が人工知能を利用可能となる世界を目指しています。そのために、圧倒的な低価格で、かつ、利用しやすいプラットフォームを用意。製造業を中心に、産業の各分野において人工知能の力を広げていきます」
同社は、ビジネスで課題を抱える企業に対して、ディープラーニングを用いて解決をしています。たとえば製造業における異常検知について、従来では不可能だったレベルでの正確さで「正常」「異常」を判断し、誤検知の発生を防ぐことに成功しました。また、より身近に人工知能のアルゴリズムを使ってもらうために、プラットフォームの流通にも取り組んでいます。

佐藤氏は、ハードウェアを提供しているプラットフォーマー、歩留まりに悩む製造業の事業者、製造業の事業者に向けてシステム構築などをするSIer事業者などと事業連携をしていきたいと語りました。

株式会社PKSHA Technologyは、東京大学の松尾豊教授の研究室の卒業生により創業されました。同社は自然言語処理/機械学習/深層学習技術を活用し、ユーザーの体験を変化させる事業に取り組んでいます。

株式会社PKSHA Technology 代表取締役 上野山勝也氏「私たちは、人工知能分野の技術群によって、最終的にエンドユーザーの体験を変え、世の中を新しくすることを重視しています。たとえば、NTTドコモさんと共同開発したWeb接客ツール『ecコンシェル』では、スマートフォンを通じて企業と顧客をより強く結びつけ、顧客に提供するサービスを高度化することを可能としました」
同社は機械学習を用いたCRMソリューション、領域特化型の画像認識エンジン、自然言語処理技術を用いた汎用型対話エンジン、顧客行動に基づいた次世代与信エンジンなどを独自に開発しており、そうした技術を必要とする事業者に提供しています。

上野山氏は、直近ではコールセンターやFAQの効率化を必要とする事業者など、同社のサービスにより人工知能を事業に取り入れたい企業と連携していきたい、と語りました。

こちらの2社は、提携する企業のビジネスに合わせた提携先の課題解決をしています。

人工知能は、これからのビジネスの“メインストリーム”となる

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株式会社Finatextは、既存の金融サービスをよりユーザーフレンドリーにするために、これまで明日の株価を予測する「あすかぶ!」や、気軽にFX運用を試す事ができる「かるFX」など、無料SNSアプリの開発提供を主に行ってきました。

同社は更なる金融サービスの革新のため、人工知能、ビッグデータ解析技術を活用した研究開発を行い、「誰よりも早く、正確な」投資判断をするための金融情報サービスを開始しています。

例えば、POSデータを活用したリアルタイムの物価動向を示す「日経CPINow(旧東大日次物価指数)」は昨年1月の日本銀行のマイナス金利の導入前にいち早く景気の変調を察知し、投資家に金融政策の変更をアラートしました。また、機械学習技術を活用した企業の業績予測サービスでは、決算発表の1ヶ月以上前から伊藤園の売上高を誤差2%以下で予測することに成功し、投資家の資産運用を革新しています。

株式会社Finatext シニアアナリスト 辻中仁士氏「実は、ビッグデータはさまざまな面白い使い方ができるんです。例えば、中国の建設機械のIoTセンサーから稼働状況をトラッキングすることで中国の不動産投資活動の変調を予測したり、JR山手線の乗降客数のデータからGDPを予測することができます。私たちが今米国海洋大気庁(NOAA)と共同開発しているデータは衛星から夜間の地球の写真を入手し、それを中国やインド等の景気動向の把握に活かそうとしています。こうすることで、『衛星』という夢のプロジェクトのマネタイズを果たそうとしています」
辻中氏は、金融情報サービスと人工知能を活用すると、マネタイズの可能性が広がり、開発者の「夢」が一気に実現に進むプロジェクトがあると考えています。そのため企業とともに、そのようなプロジェクトを一緒に作っていきたいと語りました。

これまで人が手間と時間を使い、経験や勘により活用していたデータ。人工知能は、それらを圧倒的なスピードと精度でビジネスに活用することを可能とします。つまり、顧客の一人ひとりにフィットしたサービスや商品、情報が効率よく提供されることが期待されているのです。

人工知能は、今後のビジネスの”メインストリーム“となっていきます。今回登壇した5社を含めて、さまざまな技術を活用する企業が、既存のビジネスから無駄をなくし、より便利で暮らしやすい社会を作ってくれることでしょう。

NEDOピッチは、このようにさまざまな技術を持つ企業同士が、それぞれの技術や展望を語り、互いを知ることで、新たなアイデアを生み出す、事業パートナーとつながる場所です。今回のNEDOピッチを通じてつながった技術が、どんな未来を創りだしていくのか、私たちもとても楽しみです。

【第14回NEDOピッチのご案内】
- テーマ:IoTベンチャー特集
- 日 時:2月28日(火)18:00~20:00 - 場 所:NEDO川崎本部5F
- 参加費:無料 申し込み:https://www.joic.jp/news/news_i36_u1.htm

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