IoTが生み出す「超」スマートな社会~第14回NEDOピッチレポート~

NEDOピッチには、最先端の技術や新しいアイデアを持った起業家が集結。こうした起業家たちが企業と結びつき新たなビジネスを生み出しています。今回のテーマは、あらゆるモノにITの力を加える「IoT」。有望な技術を持つベンチャーがどのようにビジネスを仕掛けるのか、各起業家たちが展望を語りました。
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IoTはなぜ注目を集めているのか?

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「IoT」を一言で解説すると、「Internet of Things=モノのインターネット」。従来はバラバラに存在していた機械や天然資源といったさまざまなモノがITにより接続され、新たな価値を生み出すーー。これまで実現不可能とされていた製品やサービスを生み出す力としてIoTに注目が集まっています。

IoTに注目しているのは、民間企業だけではありません。2016年に経済産業省により取りまとめられた「産業構造審議会 中間整理」においても、政府は今後、ビッグデータや人工知能と合わせ、IoTを最大限に活用し、人々の生活を豊かにする「超スマート社会」を世界に先駆けて実現させると発表されました。

それでは、IoTによって具体的に何が可能になるのでしょうか? たとえば現代社会が直面しているエネルギーの問題の解決に貢献します。これまで人の手で管理していた機械を自動制御することで、エネルギーの効率的な運用ができるようになるため、大幅な省エネが期待されるのです。

エネルギー分野のほかにも、製造や流通、医療など、IoTの活用が望める分野は多種多様。現在、IoTをキーとして、事業分野を横断する提携件数が飛躍的に伸びています。大企業とベンチャーが技術や人材を交流させることによって、新たな製品やサービスが次々と生まれているのです。

たとえば、物に取り付けてインターネットから位置を追跡する「MAMORIO」という製品があります。ベンチャー企業が開発したこの製品を、au損害保険株式会社が活用。損害保険の対象となる物にMAMORIOを取り付けることにより紛失防止を図るとともに、紛失の真偽の確認を効率化することが可能になったのです。

このようにIoTは様々な企業の力を連携することで、ますます実用化に向かっています。2017年2月に開催した第14回NEDOピッチでは、このIoTをテーマに取りあげ、最先端の技術とアイデアを持ち、身近なモノに新しい価値を加える5人の事業者に語ってもらいました。

※経済産業省「『産業構造ビジョン』~第4次産業革命をリードする日本の戦略~産業構造審議会 中間整理」http://www.meti.go.jp/committee/sankoushin/shin_sangyoukouzou/pdf/008_05_01.pdf

遠く離れたモノをIoTがアクセス可能にする

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最初に登壇したのはユカイ工学株式会社。同社は、「ロボティクスで世界をユカイにする」をテーマに、家族をつなぐコミュニケーションロボット「BOCCO」の開発・販売を手がけています。

ユカイ工学 代表CEO 青木俊介氏
「BOCCOは家族とのコミュニケーションを容易にします。たとえば留守番をするお子さんに対して、『おやつ作っておいたよ』といったメッセージをスマートフォンから送ると、BOCCOが帰宅したお子さんにメッセージをかわいい仕草で読み上げてくれます」

BOCCOには、こうしたコミュニケーションツールとしての機能だけでなく、セキュリティのための機能も持っています。自宅のドアにBOCCOと連携するセンサーを取り付けることにより、ドアの開閉を離れた家族に通知。子どもが自宅に無事に帰ってきたかを離れた場所にいる家族に知らせ、不安を解消してくれるのです。

現在ユカイ工学は、大手ハウスメーカーに、モデルハウスで顧客とコミュニケーションをとるロボットを提供するなど、積極的に事業提携を進めています。青木氏は、今後も同社の技術を活用した協業を進めていきたいと語り、締めくくりました。

続いて、照明器具や空調をインターネット上で制御する技術を開発しているNetLED株式会社(以下「Net社」)が登壇。同社の開発するIoT照明システム「NetLED」は、既存の照明器具と取り替えるだけで、インターネット制御を可能にするのです。

Net社 代表取締役社長 徳永氏
「NetLEDを使用することにより、人がいるところは点灯し、人が離れると消灯するなど、照明を無線制御することが可能となります。必要な明るさを、必要な場所に、必要なだけ供給できるのです。その結果、80%程度の電力の削減が期待できます」

Net社は照明器具のほか、空調の制御にもIoTを活用。商業用ビルなどでは従来からBEMSと呼ばれる空調システムは使われていましたが、大掛かりな工事が必要となり、金銭的・時間的コストがかかります。そこで同社のサービスは、室外機にIoT対応アダプターを取り付けるだけで、低コストかつ簡単に空調効率を高めることを実現しました。

徳永氏は、同社のIoT制御技術は空気清浄機や消臭機など他の電化製品にも応用可能とし、今後は家電メーカーなど、Net社の技術を活用し協業可能な企業や、資金調達の面で協力をもらえる企業と連携して、サービスを大きく広げていきたいと意気込みを語りました。

このように、両社はIoTにより離れた場所からモノにアクセスし、生活を効率化させることを実現しています。

経営を効率化させる”IoT”イノベーション

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3社目に登壇したのはフォトシンス株式会社。「最高の技術とアイデアを追求し、日常を進化させる」ことをビジョンに掲げる同社は、世界初の後付け型スマートロック「Akerun」を開発・提供しています。

フォトシンス代表取締役社長 河瀬航大氏
「Akerunを扉の内側に貼り付けるだけで、スマートフォンやsuicaなどで開閉できるようにします。Akerunをいったん設置すれば、開閉状況がオンライン上で把握できるため、従業員の勤務時間管理にも活用することができるのです」

さらに、従来の扉では実現不可能だったことを可能にしました。それが合鍵のリアルタイム作成機能。たとえばスタッフがオフィスに出入りしたい場合に、わざわざ鍵を受け渡すのは面倒なもの。そうした課題を、同サービスはインターネットから一時的な合鍵コードをスタッフのスマートフォンに付与することにより解決しました。

河瀬氏は、Akerunは高齢者の見守りサービスやホテルのフロント業務などにも活用できると考えています。事業提携のニーズとして、労務環境の整備に力を入れている企業や、オフィスの移転を控えている企業にも活用してもらいたいと語りました。

4社目は株式会社フェニックスソリューション(以下「フェニックス社」)。同社は、世界初の、金属や水分の近くでも高精度な読みとりが可能な「RFIDタグ」を開発。製造や物流の管理を効率化します。

フェニックス社 取締役副社長 和田康志氏
「当社のRFIDタグを取り付けると、読取機から商品情報を瞬時に把握できます。この技術を活用すれば今まで、製造業や物流業でもっとも効率化が難しかった金属製品の入出荷管理を、劇的に効率化させることができるのです」

以前からICタグを取り付けて情報を読み取る方法はありましたが、ICタグを金属製品に取り付けると、電波干渉が起き、正しく検知できなくなります。フェニックス社のRFIDはこの課題を解決。取り付ける金属そのものをアンテナとして利用し、電波の伝達に成功したのです。

和田氏は、産業界で広くRFIDタグを使ってもらい、これまで入出荷管理にかけていた人件費や時間短縮、サプライチェーン、ビッグデータに役立ててほしいと考えています。また、RFIDタグを広く展開し様々な顧客のニーズに対応するためには製造開発パートナーとの連携を進めたいとして締めくくりました。

これらの2社は、IoTにより、労務管理や製品管理を効率化することに成功しています。これらのサービスはさまざまな企業の経営に大いに役立ってくれることでしょう。

IoTは、モノの価値を“再生産”する

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最後に登壇した株式会社Liquid Japanは、「生体認証をもっと生活にとけこむカタチに」をミッションとして事業展開しています。このミッションのもと同社が開発・提供しているのが、指紋などを活用し簡単かつ低コストで利用できる認証インフラ「LIQUID PAY」です。

Liquid Japan 代表取締役 保科秀之氏
「目指しているのは、ユーザーがパソコンやスマートフォンさえも使わずに、手ぶらで便利な生活ができる社会インフラを作ること。私たちが開発したLIQUID PAYでは、登録した指紋情報に金額をチャージしたり、指紋で決済をしてから後日コンビニで支払うといった『手ぶらで決済』を可能としました」

LIQUID PAYは、日本に来る外国人旅行者にも便利なサービスを提供します。事前にパスポートと指紋を登録しておけば、ホテルに指紋認証だけでチェックインをすることが可能となるのです。ホテル側も、従来から行っているパスポートを預かってコピーを取るという処理が不要になり、チェックイン時の煩わしさを解消しました。

Liquid Japanは現在、長崎県のテーマパーク「ハウステンボス」など、積極的に外部と事業提携を進めています。保科氏は、指紋認証のセンサーの共同開発や、同社が設計した製造・受託できる企業などと連携したいと語り、国内外問わず、指紋認証の普及に努めていきたいと語りました。

以上5社のプレゼンを通して、これまでに人が目や手を使って管理してきたモノが、IoTにより自動的に管理される未来が見えてきました。IoTにより、既存のモノが新しい価値を生み出したり、生活や仕事から無駄をなくし新たな時間を生み出すなど、私たちの生活を豊かにすることが期待されます。

NEDOピッチは、このようにさまざまな技術を持つ企業同士が、それぞれの技術や展望を語り、互いを知ることで、新たなアイデアを生み出す、事業パートナーとつながる場所です。今回のNEDOピッチを通じて生まれたつながりが、どんな未来を創りだしていくのか、私たちもとても楽しみです。

【第15回NEDOピッチのご案内】
- テーマ:「宇宙」ベンチャー特集
- 日 時:3月28日(火)18:00~20:15(受付開始:17:30~)
- 場 所:NEDO川崎本部5F
- 参加費:無料 
- 申し込み:https://www.joic.jp/news/news_i40_u1.htm

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