未知なる宇宙が革新的なビジネスを生み出す ~第15回NEDOピッチレポート~

NEDOピッチには、最先端の技術や新しいアイデアを持った起業家が集結。彼らが企業と結びつき新たなビジネスを生み出しています。今回のテーマは、「宇宙」。未来への夢を感じさせる宇宙産業の分野で、有望な技術を持つベンチャーがどのようにビジネスを仕掛けるのか、各起業家たちが展望を語りました。
  • eight

官から民へーー変わりゆく宇宙産業のプレイヤー

0a5b9d3b26b502438df45725c8999f884b48948c

スペースシャトルや人工衛星の打ち上げなど、宇宙産業は従来、国家事業として推進されてきました。たとえば、世界初の有人月面着陸をしたアメリカの「アポロ11号」や、2010年に地球に奇跡的な帰還を果たした日本の小型惑星探索機「はやぶさ」は、いずれも国家機関により開発されたものです。

しかし、昨今はこうした宇宙産業を民間企業が担うケースが増えています。アメリカの民間企業であるSpace Exploration Technologies(通称「スペースX」)が自社でロケットを開発し、打ち上げを成功させたニュースは世界中に衝撃を与えました。宇宙産業は、もはや国家機関だけのものではないのです。

民間企業が宇宙をビジネスに取り入れる流れは、日本でも起きています。たとえば、2016年に設立され、養殖産業の効率化をサポートしているウミトロン株式会社は、人工衛星から取得する海面温度やプランクトン分布のデータから魚の行動を解析。その結果から、魚への餌やりを効率化することに成功しています。

宇宙産業に参入する民間企業が増加しているのは、宇宙産業をビジネスに活用するニーズの拡大に加え、法制度の整備も、その背景にあります。2016年には、「宇宙活動法」と「衛星リモートセンシング法」が成立し、日本において宇宙産業を進めるための法律面の環境が整えられました。

また、2016年に閣議決定された「日本再興戦略2016」の中でも、宇宙産業は成長戦略のひとつとして掲げられることに。今後、国家戦略として、宇宙ベンチャーの創出や、新たな技術イノベーションの促進を図り、2020年度までに100の宇宙関連の新事業創出を目指すこととされました。

内閣府 宇宙開発戦略府推進事務局・平田
「法律などのインフラ面の整備が整ってきており、民間企業が宇宙産業に参入しやすい状況になってきています。次に必要なのはプレイヤーをいかに生み出していくか。私たちは、宇宙産業の担い手を増やすための取り組みを進めていきます」

このように、宇宙産業を幅広いプレイヤーが担っていく気運が高まっています。2017年3月に開催した第15回NEDOピッチでは、初めて「宇宙」をテーマに取りあげました。最先端の技術とアイデアを持ち、宇宙の視点から事業を行う5人の事業者が語ってくれます。

※「日本再興戦略2016」 http://www.kantei.go.jp/jp/singi/keizaisaisei/pdf/2016_hombun2.pdf

超小型人工衛星が実現する地球のリアルタイム観察

444fd03c1543000efdd133950e038228efbc93a1
最初に登壇したのは株式会社アクセルスペース。2008年の創業以来、超小型衛星の設計開発を手がける同社は、人工衛星を超小型にすることにより、民間企業でも独自に衛星を持てるレベルまでコストを下げることに成功しました。

株式会社アクセルスペース 代表取締役 中村友哉氏
「コストを下げることによって、より多くの衛星を飛ばすことができます。これまでは限られた地域が数週間に1回程度しか撮影できなかったが、この衛星群によって世界のあらゆる場所が毎日のように撮影することが可能になる。撮影した画像は、農作物の成長や都市の発展の様子のモニタリングなどに活用できます」

アクセルスペースは2015年に19億円の資金調達を行い、超小型衛星群による高頻度の地球観測実現に向けて動き始めています。まずは2017年末に計画の第1段階として3機の打ち上げを予定。さらに2022年までにその数を50機にすることを目指しています。

中村氏は、衛星画像から得られる情報は、今後さまざまな分野で使われるようになると考えています。アクセルスペースが開発する超小型衛星により、顧客となる企業のニーズに合わせたソリューションを提供していきたいとして締めくくりました。

続いて、人工衛星により集めたデータを人工知能により解析するソフトウェアの開発などを手がける株式会社スペースシフトが登壇。同社は天候の影響を受けないレーダー衛星の情報を扱うことにより、衛星画像を通して集められる24時間365日の地上の変化のデータを、独自の方法で解析しています。

株式会社スペースシフト 代表取締役 金本成生氏
「人や車の動きなど、衛生画像による情報を抽出することによって、経済活動の分析を行うことができます。たとえば駐車場の利用状況と株価の関連など、これまで使われなかった情報を経済指標として使えるようになるのです」

スペースシフトは、ほかにもユニークな商品を販売しています。それが超小型衛星キット「ASTRAT KIT」。このキットを購入すれば、80万円という手の届く価格で人工衛星を製作することができるのです。ASTRAT KITはクラウドファンディングでの資金調達に成功し、現在出荷の準備が進められています。

金本氏は、衛星データにより読み取れる情報は地表のあらゆる変化だといいます。事業提携ニーズとして、スペースシフトのデータ解析技術を必要とする企業や、EC事業者など消費者のデータを多く持つ企業と連携していきたいと意気込みを語りました。

このように、両社はいずれも、人工衛星のデータを、より身近に、幅広く活用するためのサービスを提供しています。続く2社は、”宇宙産業”という言葉とすぐに結びつかないユニークなビジネスを展開しています。

今までになかった、”暮らしを変える”宇宙ビジネス

C78c2eac106e73c3d59fa715e2274813e4325c1e
3社目に登壇したのはスペース・バイオ・ラボラトリーズ株式会社(以下「スペース・ラボ社」。広島大学発のベンチャーであり、「手に届く、身近な宇宙」をコンセプトとする同社は、重力制御装置「Gravite(グラビテ)」を開発し、これまで宇宙空間でしかできなかった低重力や過重力環境を地球上で長時間再現することを可能にしました。

スペース・ラボ社 代表取締役 河原裕美氏
「これまで、地球上で宇宙ステーションのような無重力を再現する場合、非常に短時間に限られていました。しかしGraviteは重力のベクトルを時間軸で積分するという独自の技術により、無重力状態を長時間再現することを可能としたのです」

スペース・ラボ社の研究の成果は、2017年2月、イギリスの科学誌「Nature」に取り上げられます。この反響は大きく、掲載以来、同社には2万通を超えるメールが届くことに。Graviteの技術に興味を持ったのは、タンパク質や植物、水生動物の研究者など、さまざまな分野の研究者や企業でした。

Graviteは現在、アメリカのNASAに納入されるなど、新しい研究開発のツールとして注目を集めています。地球の1000分の1の無重力や、3倍の過重力の状態で実験できるため、思いもよらぬ研究結果が期待されるのです。河原氏は、既存の発想にとらわれないアイデアを持つ企業と積極的に連携したいと語りました。

4社目は株式会社ALE。同社は、世界初の宇宙エンターテイメント企業として、人工流れ星事業「Sky Canvas」を手がけています。夜空をキャンパスにみたて演出するエンターテイメント事業は、200を超えるメディアから取り上げられ、大きな注目を集めました。

株式会社ALE 取締役副社長 岡島礼奈氏
「人工衛星に特殊な素材の粒を詰めて打ち上げて、宇宙から粒を放出することで、人工的に流れ星を再現することができます。この技術を使って、流れ星を楽しむという新しい文化を生み出していきたいと考えています」

ALEは、「SHOOTING STAR challenge」として、2019年に世界で初めて、人工流れ星を広島で流す計画となっています。夜空に光る人工流れ星は、半径200kmの範囲から見えるため、広島だけでなく、瀬戸内地方や四国の海岸など多くの地域から楽しむことができます。

岡島氏は、旅行会社や出版社など、人工流れ星を使って、一緒に事業に取り組める企業と広く提携したいと考えています。また、人工衛星の技術や資金面で支援をもらえる企業と提携し、宇宙産業を平和的に利用する活動を盛り上げていきたいとして締めくくりました。

これらの2社は、再生医療やエンターテイメントという、これまでは宇宙産業の技術を、思いもよらぬ形でビジネスにしています。今後の宇宙産業の幅広さを予感させてくれるプレゼンでした。

宇宙産業を“地上から”支えるビジネス

0d22100b863fdbb754f4e8e2a689a3533ba64079
最後に登壇した株式会社インフォステラは、小型人工衛星の通信インフラサービスの開発・提供事業を展開しています。人工衛星の増加に伴い、人工衛星と地上の通信アンテナの需要が急増する中、同社は既存のアンテナの空き時間を利用した画期的なサービスを提供しています。

株式会社インフォステラ 代表取締役 倉原直美氏
「2000年代に入ると、人工衛星の打ち上げが増大しました。その結果、人工衛星から発する通信を受ける地上のアンテナが不足するという事態が起きてしまう。この問題の解決のため、インフォステラでは、衛星用アンテナのシェアリングを可能にするプラットフォーム『StellarStation』を提供します」

インフォステラが目をつけたのが、地上にあるアンテナが使用されていない”空き時間”でした。StellarStationでは、アンテナ所有者からアンテナの空き時間を集め、衛星運用者に従来比1/10以下の価格で通信機会を提供します。さらにアンテナ所有者にも売上を還元します。

インフォステラでは、アンテナを所有し空き時間を提供してくれる人や、アンテナ設置のための場所を提供してくれる人を募集中。倉原氏は、宇宙産業にとって必要不可欠となる地上のインフラを扱う事業は、将来的な発展があると考えています。今後は、衛星データを扱う企業など、幅広く提携していきたいと語りました。

以上5社のプレゼンを通して明らかになったのは、宇宙産業が民間企業の力で大きく推進している姿です。そして、宇宙産業の担い手がますます増え、革新的なビジネスが生まれる未来を予感させてくれました。宇宙産業は今後、より身近に、より人々の暮らしを豊かにするものとなっていくことでしょう。

NEDOピッチは、このようにさまざまな技術を持つ企業同士が、それぞれの技術や展望を語り、互いを知ることで、新たなアイデアを生み出す、事業パートナーとつながる場所です。今回のNEDOピッチを通じて生まれたつながりが、どんな未来を創りだしていくのか、私たちもとても楽しみです。

【第16回NEDOピッチのご案内】
- テーマ:物流・モビリティ
- 日 時:2017年4月25日(火)18:00~20:15(受付開始:17:30~)
- 場 所:NEDO川崎本部5F
- 参加費:無料 
- 申し込み:https://www.joic.jp/news/news_i42_u1.htm

関連ストーリー

注目ストーリー