未来の社会を変えていく”移動の新しいカタチ” ~第16回NEDOピッチレポート~

NEDOピッチには、最先端の技術や新しいアイデアを持った起業家が集結。こうした起業家たちが企業と結びつき新たなビジネスを生み出しています。今回のテーマは、「モビリティ・物流」。独自の技術を持つベンチャーがどのように”人やモノの移動”に着目したビジネスを仕掛けるのか、各起業家たちが展望を語りました。
  • eight

技術の進歩がもたらした“移動”の新たな価値

79218e24b348cb3262f2fb388432b69235a4d632
自動車、船、飛行機――人類は長い歴史のなかで移動手段を増やし、そのたびに新たなビジネスを生み出してきました。そして今、移動に付随する新たな価値に注目集まっています。それが”情報”です。IT技術の発達により、人やモノの移動を通じて、暮らしに役立つ情報が得られるようになったのです。

たとえば自動車保険は、これまで車種や事故履歴など限られた情報に基づき提供されていましたが、自動車に取り付けたセンサーから走行データを収集することで、運転者個人にとって最適な料金で自動車保険を提供できるようになります。

このように、人やモノの動きが情報化されることにより、業務の効率化や個人の行動パターンに合ったサービス提供が可能に。つまり、これまでのビジネスを大きく変えていく可能性を秘めているのです。

また、人の移動や物流の“自動化”も進んでいます。人が直接操作しなくとも自動運転される車やドローンが身近になる日も間近。日本においては少子高齢化による労働人口の減少への対抗手段として、これらの実用化が期待されます。

こうした新技術を多くの人に届くビジネスとするために、ベンチャーと大企業が提携するケースが増えています。アメリカではドミノ・ピザが、Flirteyというドローンベンチャーと協業し、ニュージーランドの一部の顧客にむけてドローンでピザを配達するサービスを実現しました。

大企業とベンチャーの事業提携は日本でも。印刷大手である株式会社リコーが、ベンチャーのブルーイノベーション株式会社、東京大学の航空宇宙工学の研究室と共同しました。障害物を自動で回避し、三次元の立体地図を生成できるドローンの飛行システムを開発したのです。

このように今後の展開に期待が集まる「モビリティ・物流」をテーマにして、2017年4月、私たちは第16回NEDOピッチを開催しました。最先端の技術とアイデアを持ち、未来を創る事業を行う5人の事業者が、プレゼンテーションにより語ってくれます。

簡単に装着可能なデバイスが、動きを“見える化”する

Dcf81f0949d498e89f24546f4edd58718721eea5
最初に登壇したのは株式会社スマートドライブです。「移動の進化を後押しする」ことをビジョンに掲げる同社は、自動車に後付けできる小型デバイスを開発。従来からのデジタコに比べ1/20という圧倒的な低コストで走行データを収集することを可能にしました。

株式会社スマートドライブ 執行役員 元垣内 広毅氏
「シガーソケットに弊社のデバイスをグサッと刺すだけで、普通の車をコネクテッドカーとして通信可能にして、走行データを集められます。工事不要なので、営業用の車でも昼休みの時間だけで取り付けられるので、営業の邪魔にもなりません」

スマートドライブは、車両から収集したデータを活用してもらうため、「SmartDrive Data Platform」というプラットフォームを独自に開発。運転技術の診断や、車両位置の管理、車両メンテナンスのスケジューリングなどを一貫して行うことを可能にしました。

元垣内氏は今後、個人向けと法人向けのいずれもにおいても大きな市場を狙っていくとし、保険、リース、ディーラー、整備、メーカーなど、SmartDrive Data Platformを活用し、自動車の走行データと連携したサービスをつくる企業と広く提携していきたいと語り締めくくりました。

続いて登壇したのはライフラボラトリ株式会社。代表取締役である鈴木和浩氏が31年間在籍した富士通を退職し、富士通のベンチャー制度により立ち上げた同社は、ウェアラブルセンサーと壁や天井などに簡単に取り付け可能なBluetooth送信機により、人の位置や動きを測定する技術を開発しました。

ライフラボラトリ株式会社 代表取締役 鈴木和浩氏
「ポケットに入るBluetoothセンサーで、人の動きを測定します。これまでのものは測位精度が悪く3メートルほどの誤差が出るものですが、弊社はその誤差を1メートル以内におさめました。また、”立つ”と”屈む”や、”歩く”と”走る”という微妙な動きも見分けることができるんです」

人やモノの動線を最適化したいというニーズは、これまでもありましたが、コストや精度の問題から、そうしたニーズを満たす製品はありませんでした。しかし、ライフラボラトリの製品は高い測位精度を持ちながら、従来品の1/5という低コストを実現したのです。

鈴木氏は、ライフラボラトリでは開発したシステムの販売をすでに行なっており、運送会社や自動車メーカーなど、業務の効率化を望む企業にサービスを提供できるといいます。今後はVCなどから出資を受け、さらにビジネスを大きく広げていきたいと意気込みを語りました。

このように、両社はいずれも、すでにある機械や設備に簡単に取り付け、データを集めることを可能とする製品を開発・販売しています。続いて登壇する企業は、どのようなビジネスを生み出しているのでしょうか。

グローバル共通の課題を、日本企業の技術が解決する

2718924db78306a11f4fe71387eb2416b61095ee
3社目に登壇したのはGlobal Mobility Service株式会社(以下「GMS社」)。同社は、遠隔での自動車制御により、“車を必要とする人がローンを組めない”という問題を解決する画期的な仕組みを開発し、日本だけでなくアジアでも事業展開しています。

GMS社 代表取締役 中島徳至氏
「消費者の車離れという声を耳にしますが、実は世界中で20億もの人が車を買いたくてもローンが組めないという現実があるんです。私たちは、IoTの技術を使いこの問題を解決しました」

電気や通信料金の場合、支払わなければ強制的にサービスがストップするため、支払うインセンティブがはたらくもの。ところが自動車ローンの場合、支払いが滞ったからといって、債権者が車を止めることはできないため、ローンの審査は厳しくならざるを得ませんでした。

この問題をGMS社は、デバイスにより遠隔で自動車のエンジン起動を制御し、リアルタイム位置を始めとする多様な車両情報をセンシングする技術により、債権者が安心して資金を貸せるようにすることで解決。その結果、これまでローン審査が通らなかった人でも車を保有することが可能になったのです。中島氏は、GMS社のビジネスによって、国を越えて多くの人の生活を豊かにしていきたいと意気込みを語りました。

4社目はTrillium株式会社が登壇しました。同社は、インターネットとつながるコネクテッドカーの数が世界中で飛躍的に数を増やしていくなか、サイバーセキュリティの重要性を認識。世界でも類を見ない車両向けのセキュリティサービスをグローバルに提供しています。

Trillium株式会社 代表取締役社長 ディビッドM.ユーゼ氏
「現在走っている自動車には最先端の技術が使われているように見えますが、実はその75%以上は、1980年台のネットワーク技術とハードウェアを使っています。このことは車を盗難したり、操作することはハッカーにとって非常に簡単なことだということを意味しています」

米国ではすでにコネクテッドカーのハッキングに対して危機感を強めており、FBIなどが車の使用者に対して警告を出しています。ディビッド氏は、シートベルトやエアバックのように、近い将来サイバーセキュリティも、車両に「標準装備されるもの」になると考えています。

自動車が外部から操作される社会に警鐘を鳴らしたディビッド氏。Trilliumのソフトウェア・サイバーセキュリティ・ソリューションは車の種類やOSによらず、セキュリティサービスをグローバルに提供できるため、自動車市場の大きな日本企業と一緒に、スピード感をもってビジネスを広げていきたいと語りました。

これらの2社は、世界中で共通して抱えている課題を、独自の技術により解決していきます。続く最後の登壇者も、世界を視野に入れていました。

人の手では困難な作業をドローンが担っていく

821c5794595043f767626971360412423174eb44

最後に登壇したのはテラドローン株式会社。アジア市場で広くバイクの開発・販売を行うテラモーターズ株式会社を設立した徳重徹氏が、次はテラドローンを設立し、実務用ドローンの領域でグローバル市場をリードしようと考えています。

テラドローン株式会社 代表取締役社長 徳重徹氏
「私たちは、業務用ドローンの分野で世界トップを目指します。まず日本国内でフォーカスするのはドローンによる土木測量。弊社のドローンを使えば、これまでよりも効率的かつ低コストに測量することができるんです」

同社の技術はインフラ点検においても活用されます。オーストラリアにおいて、これまで広大な範囲にもかかわらず人の手を使って行われていた電力線点検を、ドローンにより効率化したのです。今後は、AIの動画認識技術も取り入れ、点検作業のさらなる効率化を目指しています。

グローバルな視点でドローンビジネスを考えるテラドローンは、ドローン関係のソフトウェア会社であるベルギーのUnifly NVとも提携。さらなる事業展開に向けて動いています。徳重氏は、今後は資金援助をしてくれるVCやドローンによる測量や点検のニーズのある企業と提携して、スピード感をもってビジネスをしていきたいと語りました。

以上登壇した5社は、人やモノの動きに”情報”を取り入れ、これまでになかった技術を製品やサービスとして実現しています。今後も、こうしたビジネスにより人やモノの移動のカタチが変わり、新たな価値を生み出していくことでしょう。

NEDOピッチは、このようにさまざまな技術を持つ企業同士が、それぞれの技術や展望を語り、互いを知ることで、新たなアイデアを生み出す事業パートナーとつながる場所です。今回のNEDOピッチを通じて生まれたつながりが、どんな未来を創りだしていくのか、私たちもとても楽しみです。 

【第16回NEDOピッチの映像】
- NEDO Channelモビリティ・物流特集

【第17回NEDOピッチのご案内】 
- テーマ:素材 
- 日 時:2017年月5日30(火)18:00~20:00(受付開始:17:30~)
- 場 所:NEDO川崎本部5F
- 参加費:無料 
- 申込み:https://www.joic.jp/news/news_i45_u1.htm

関連ストーリー

注目ストーリー