NEDOピッチから生まれた初の事業提携――大企業とベンチャーの協業が新たな成果を生む

JOICでは、オープンイノベーションを生み出すことを目的として「NEDOピッチ」を定期開催し、ベンチャーの熱いプレゼンを大企業に届ける機会を提供しています。そして2017年、NEDOピッチをきっかけにした初の事業提携が生まれました。両社が事業提携に至った背景には、どのような物語があったのでしょうか。
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NEDOピッチを通し、はじめて生まれたオープンイノベーション

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▲エネフォレスト株式会社 代表取締役 木原寿彦氏

「これまでのやり方では通用しない」――そんな悩みを持つ企業が増えています。顧客のニーズの激しい変化に対応することが、年々難しくなっているからです。そのためビジネスを変化させることが求められますが、自社だけで変化を起こすのは容易ではありません。

そこで注目されているのが、”オープンイノベーション”。自社内だけではなく外部のアイデアやサービスを組み合わせ、革新的なイノベーションを起こすことで、事業を成長させる手法のひとつです。オープンイノベーションは今後ますます、ビジネスに取り入れられていくことが予想されます。

2015年7月、オープンイノベーション協議会(現在のオープンイノベーション・ベンチャー創造協議会、JOIC)は、国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)と共同し、オープンイノベーションを生み出すために「NEDOピッチ」をはじめました。ベンチャーが大企業に対してプレゼンを行い、事業提携のきっかけを生む場を原則毎月1回提供しています。

そして2017年1月、ついにNEDOピッチをきっかけとした初の事業提携が生まれました。「ヘルスケア・ウェルフェア」をテーマとした第7回NEDOピッチで登壇したエネフォレスト株式会社が、株式会社白青舎との事業提携に至ったのです。

白青舎は1954年に設立した、歴史ある企業。清掃や警備などを通じて、ビルの環境を総合的に整備しています。一方のエネフォレストは、2006年に設立したベンチャー。独自の技術による空気感染対策殺菌装置「エアロシールド」の開発・販売を手がけています。

事業の内容も規模も異なる2社が事業提携に至った背景には、それぞれが抱えていた課題がありました。

競合他社との差別化を図るための“種”を、事業提携によって育てていく

白青舎は1954年の創業以来、ビルメンテナンスをメイン事業として、関東、中部、関西を拠点に百貨店や病院、介護施設といった取引先を多数抱えてきました。しかし代表取締役の内田隆氏は、自社の今後の経営戦略について考えずにはいられない日々を過ごしていました。

内田氏 「ビルメンテナンス事業自体は、新規の参入のみならず役務を支える人手不足も深刻化し、業界全体の競争は激化するばかり。とはいえ価格だけの競争に走れば、白青舎がこれまで最も重要視し、またお客様からの信頼を勝ち得てきた『業務の品質』のみならず『接客サービスの質』を維持できなくなってしまう……そうしたなか、勝ち残るために何ができるだろうと考えていたんです」

そこで内田氏が自らに問うたのが自社の優位性でした。長年のビジネスで培った信頼感には自信がある。ただ、それだけでは競争に勝ち残れないのではないか――そんな悩みを抱える内田氏に、NEDOピッチの参加者から紹介されたのが、エネフォレストの代表取締役である木原寿彦氏だったのです。

エネフォレストが独自に製造販売している「エアロシールド」は、高い殺菌効果を持つ「UV-C波長」の紫外線殺菌照射により、空気中のあらゆる菌・ウイルスを不活性化するという他にはない技術を用いた製品。内田氏は、白青舎が行っているビル清掃の事業と組み合わせる可能性に思い至りました。

内田氏 「白青舎が目指しているのは、安心安全な空間をトータルで提供することです。これまでも清掃事業の一環で床やドアノブの付着菌を除去していましたが、空気まではケアできていなかった。そこでエアロシールドの効能に非常に関心を持ったんです」

さらに内田氏を事業提携に向けて後押ししたのが、木原氏への共感でした。感染症という社会的課題を本気で解決したいという強い思いを受け止めた内田氏は、ついにエネフォレストとの提携を決めます。白青舎が代理店として、エアロシールドを販売することを決断したのです。

事業提携を実現させるにあたり、内田氏は白青舎の社内での意思統一を図りました。既存事業があることから、「なぜ新しいことをやる必要があるのか?」という社内からの声に対し、内田氏は今後の白青舎ビジネスビジョンを掲げることによって、それらに答えました。

内田氏 「これまでも、白青舎は百貨店様を中心にしながらビルメンテナンスの各種役務を主たる業務としながら誠実、ひたむき、正直に実行してきました。新たにこの商品の販売を業務に組み入れることで真に安全・安心・快適な環境衛生を提案できるわけです。

社会のなかで必要とされる企業となること、その意義について少しずつ理解を得られるように説明し論議を重ねる場を持ちました」

こうした内田氏の努力の甲斐あって、白青舎は競合他社との差別化に向けて一歩前進したのです。

一方、エネフォレストにとって、白青舎との事業提携はどういった意味があったのでしょうか。

大企業とつながることで、ベンチャーが描くビジョンを叶える

エネフォレストが開発した製品・エアロシールドには、木原氏の「世の中から感染症をなくしたい」という思いが込められています。インフルエンザや結核など、空気感染により広がる病気には深刻なものも少なくありません。にもかかわらず、まだその対策は十分ではないのが現状です。

木原氏 「感染症って、実はごく身近にあるものなんですよ。その感染症が、ときにはお年寄りや乳幼児の命を奪うこともありますよね。でも、エアロシールドによって感染症の原因となる菌をなくせるんです。エネフォレストの事業が人の命を救うことにつながるわけですから、もっと事業を大きくしていかなければと思っているんです」

しかし、一介のベンチャーであるエネフォレストには、十分な販路がまだないのが現状でした。そんな課題を抱えるなか、木原氏はある日、NEDOピッチの運営を支援する関係者から、「NEDOピッチへ出てみない?」と声をかけられます。

木原 「『もちろん出ます』と即決しました。私たちのようなベンチャーにとって、大企業にプレゼンする機会は貴重なんです。しかもNEDOピッチなら、数十社に対して一気に説明できる。めちゃくちゃ効率がいいんですよね。普通は1社ずつしか営業をかけられないですから」

さらに、木原氏にはもうひとつNEDOピッチに参加した理由がありました。それが、”参加者の熱意”。貴重な時間を割いてNEDOピッチを聞きにくる企業担当者であれば、つながることで良い結果が期待できると考えたのです。そして2016年4月、木原氏は思いを込めて事業のプレゼンをしました。

木原氏 「プレゼンではとにかく、現状をありのまま正直に伝えることを意識しました。そして何より、どんな思いでこの事業をやっているのかをストレートに話しましたね。思いに共感をしていただかないと、良い事業提携につながらないと思っていたので」

そしてその思いを受け止めたのが、白青舎の内田氏だったのです。

エネフォレストにとって、白青舎と事業提携するメリットは、販路拡大にとどまりません。エアロシールドは設置後も定期的なメンテナンスが必要となるため、木原氏は白青舎が長年培ってきた技術や、全国にある工事拠点を活かしてもらえると考えたのです。

このように、NEDOピッチを通じ、2社それぞれに価値のある事業提携が実現しました。それでは今後、2社はどのような事業展開を考えているのでしょうか?

オープンイノベーションが生み出すWin-Winな事業提携

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オープンイノベーションを成果として結実させるためには、事業提携した後でもクリアしていかなければならない課題があるものです。

2017年現在、白青舎とエネフォレストはビジネスをより成長させるために、お互いの課題を一つひとつ解決しながら、連携をより深くしている最中です。

木原氏 「ある病院の医師にエアロシールドを紹介した際、『この商品は日本に大きなソリューションをもたらす』と評価していただきました。目に見えない空間を殺菌により清潔にして、安心や健康を生み出せることに価値を感じていただいたようですね。白青舎さんにも、そんな商品価値をちゃんとお客様に伝えていただけるように、エネフォレストとしてフォローしていきたいと思います」

一方の白青舎も、エアロシールドをより多く販売するために模索を続けています。顧客ターゲットをどこに置くのか、価格設定は今のままで適切なのか――意思決定を他社とともにする難しさを感じながらも、疑問の一つひとつに対してエネフォレストとコミュニケーションを取りながら、より良い連携方法を探っているのです。

内田氏 「ビジネスの状況は常に変化し、しかも加速度は増しています。これからの会社をどう育てていきたいか、ゴールはどこを目指しているのかという根本的なところに立ち返って、何よりも現場最前線で働くメンバーとのコミュニケーションを意識してとり続けることが大切です。エネフォレストとは製販一体となった事業展開を今後も目指して参ります」

両社が支援しあえるのは、互いの目指す場所が一致しているからこそ。そして良い提携関係を続けていくためには、互いのビジョンを共有していくことが大切なのです。

今回の2社のように、事業提携によりビジネスを成長させる可能性を持つ企業は、数多く存在するでしょう。しかし、その可能性が”つながる場がない”ことにより消えてしまうのは、非常にもったいないことです。NEDOピッチは、このミスマッチを解消するためにあります。

木原氏 「NEDOピッチに出て、当社の状況は一変しましたね、白青舎との事業提携ももちろんですし、何より直接的な売上にもつながりました。あのときNEDOピッチに出たからこそ、今があると感じています」

登壇するベンチャーにとっても、それを聞く大企業にとっても価値あるものとするために――JOICは、今後もNEDOピッチを通じてより多くのオープンイノベーションを生み出していきます。

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