人工知能が未来のビジネスを拡張する~第18回NEDOピッチレポート~

NEDOピッチには、最先端の技術や新しいアイデアを持った起業家が集結。こうした起業家たちが企業と結びつき新たなビジネスを生み出しています。今回のテーマは、「人工知能」。未来を創る技術として注目を集める知見を持ったベンチャーが、どのように最先端のビジネスを仕掛けるのか、各起業家たちが展望を語りました。
  • eight

今後20年の間に、人工知能は世界を大きく変えていく

C63bcd5ee4aa0a601e9d1d025d5d070d421d5039

人工知能の技術を活用して、社会をより良くしていくーーそんな期待が高まっています。2016年4月、産学官の英知を集めた「人工知能技術戦略会議」が創設。関係府省の連携のもと、国を挙げて人工知能技術の研究開発を推進するとともに、研究成果を社会に実装させるための取り組みが進められているのです。

経済産業省 研究開発課 小宮 恵理子氏
「人工知能戦略会議では、『人工知能の研究開発目標と産業化のロードマップ』を取りまとめました。おおむね2020年から2025年までに、AIとデータの一般利用が進展し、新たな産業が拡大することが想定されます。そのため、最終的には2030年以降、産業や環境など、さまざな領域が結びついて、AIが新しい価値を創造するエコシステムを構築していきたいです」

人工知能に注目するのは、行政の世界だけではありません。ビジネスの世界においても、AIベンチャーへの資金調達や事業提携の規模が飛躍的に伸びるなど、注目が高まっているのです。

2017年に入ると、国内の会社同士の連携にとどまらず、グローバルに事業提携する事例が次々と生まれてきています。たとえば、SNSニュースの配信を行うAIベンチャー・株式会社Specteeは、フジテレビ系列やAP通信と連携し、AIにより自動収集したニュースを、より早く利用者に届けるサービスを展開しています。

さらに、大企業が保有するデータを、ベンチャーの技術によりビジネスに展開する事例も生まれました。東工大発のベンチャーであるSOINN株式会社は、セブン銀行と連携し、ATMの取引データを活用。ATMの紙幣の増減を予測することで、紙幣を切らさず、かつ現金集配コストを削減するという独自のサービスを実現したのです。

このように、今後ますますビジネスとして拡大し、わたしたちの生活をより便利にする可能性のある”人工知能”。第18回NEDOピッチでは、最先端の技術とアイデアを持ち、人々の想像を超えるビジネスを手がける5人の事業者が、その可能性を語ってくれました。

※人工知能戦略会議「人工知能の研究開発目標と産業化のロードマップ」
http://www.nedo.go.jp/content/100862412.pdf

人工知能が、人間の認知能力の限界を超えていく

13ae0e27ea456773f0f78bca3fe8059d0e18b7fb

最初に登壇したのはHmcomm株式会社です。「人と機械との対話」の意味を社名に込めた同社が着目したのは、”音”。独自の音声処理技術により、これまでの技術レベルをはるかに超えた音声認識を可能とした同社は、音声認識AIプラットフォーム「The Voice JP」を提供しています。

Hmcomm株式会社 代表取締役 三本幸司氏
「スマートフォンに話しかけるような音声認識の技術はすでにありますが、たとえば離れた場所や雑踏のなかの音声だと、正確に認識してくれません。ところが弊社の技術では、たとえば会議の音声でも音声をテキスト化し、さらに話者も識別することができるんです」

Hmcommでは、さらにコールセンター向けの音声認識プラットフォーム「VContact」をサービス展開しています。このサービスでは、顧客からの電話の音声をテキスト化し、あらかじめ登録しておいたFAQから、問い合わせ内容に対応する回答の候補を提示するということを可能としました。

またVContactは、2016年9月にはソニーネットワークコミュニケーションズのコールセンターで導入が決定されています。三本氏は、コールセンターや金融窓口、接客業など、これからはさまざまな事業領域において、新たなサービスを一緒に生み出し、展開していきたいと語り締めくくりました。

続いて登壇したのは株式会社Congent Labsです。「人工知能を活用して生活の質を高める」というビジョンを掲げる同社は、世界最高水準の文字認識率を誇る「TEGAKI」をサービス開発。2017年にはその技術を認められ、13億円もの資金調達に成功しています。

株式会社Cogent Labs LEAD CORPORATE PLANNER 大隅文貴氏
「他社の文字認識サービスと比較しても、すでに、TEGAKIは早く正確に、様々な筆跡の手書き文字や活字を読み取ります。いま読み取れない筆跡を学習できる点も魅力です。電気、ガス、水道やクレジットカードの申込用紙などの様々な帳票を正確に読み取ります」

TEGAKIの高い文字認識精度を可能としたのが、Cogent Labsの多様なメンバーでした。同社には、コンピューターサイエンスや機械学習、量子物理学、統計学などの博士課程を修めた、国内外の一流の知見がそろっているため、そうした知見をAI技術と組み合わせることにより、世界でも類を見ないサービスを開発することができたのです。

大隅氏は、TEGAKIにより、利用者の業務を効率化して、本来時間をかけたい業務に集中してもらえたらと語りました。同時に、ニーズのある企業との連携も視野に、業界横断的な、長期的ビジネス課題を解決していきたいとのこと。

このように、両社はいずれも、音声や文字という、これまで機械での認識が難しかったものを、スピードと正確さという点で情報化することに成功しています。

続いて登壇する企業が着目したのは、AI技術の応用力です。一体、どのようなビジネスを生み出しているのでしょうか。

人工知能によって現実となる、”近未来予測”

0519b3965d7a79394c05c720a9c45c8f2f2c30be

3社目に登壇したのは、京都大学発の人工知能ベンチャーである株式会社PrediXTです。同社が京都大学の新熊准教授が発案した技術を発展させ開発したのが「Truemind」。収集したデータを統合することにより、人や組織の潜在ニーズの変化を顕在化し、近未来の予測を可能にするという、画期的なものです。

4社目はHEROZ株式会社が登壇。創業者のひとりが将棋のアマチュア六段保持者であり、同社のエンジニアが開発した将棋人工知能は、2017年4月、8大タイトルを持つ現役のプロ棋士に対し、勝利をおさめました。

HEROZ株式会社 執行役員 開発部長 井口圭一氏
「弊社が提供する『将棋ウォーズ』という将棋ゲームのアプリがありますが、5手100円でAIが代わりに最善手を指してくれるんです。普通の対局では、自分が指すのが50手くらいですから、将棋ウォーズを10回使えば、プロ棋士にも勝てるんですよ(笑)」

同社は、将棋のほか、同じボードゲームのチェスやバックギャモンでもAI技術を応用しています。こうした技術は、膨大な量のデータから特徴を自動で見つける「機械学習」や、人間の脳内にある神経細胞のつながりをモデルにした「ニューラルネットワーク」といった最先端の知見を活用しているため、金融や製品設計、物流など、さまざまな分野に応用可能です。

井口氏は、同社は研究にとどまらず、サービス化までのノウハウを持っているため、新たなサービスも素早く作っていけるといいます。今後は、パートナー企業と提携し、”次の一手”をどうするかという、将棋にも通じるビジネス上の課題を、AI技術を用いて解決していきたいと語りました。

これらの2社は、AI技術が幅広い分野に応用できる可能性を感じさせてくれました。続いて登壇するベンチャーは、AIを活用するためのコンピューター設備を、クラウドサービスにより安価に提供しています。

AIをビジネス化するために必要な環境をたったの10分で提供

D55ed5b3d048010cdaaac8a7e89c73b6adbc4b22

最後に登壇したのはエクストリームデザイン株式会社。2015年に創業した同社は、機械学習やビッグデータなど、AI技術開発において高速演算処理のために必要とされるスーパーコンピューターをクラウド上で利用できるサービス「XTREME DNA」を開発しています。

エクストリームデザイン株式会社 代表取締役 柴田直樹氏
「スーパーコンピューターを自社だけで整備するとなると、高価ですし、通常は数週間程度の時間が必要となります。ところが、弊社のサービスを使えば、クラウド上でのスーパーコンピューター環境の利用が10分でできますし、利用時間に応じた利用料金なので、低コスト化することも可能です」

XTREME DNAは、製造業における、設計シミュレーションや、ゼネコンが手がけるスマートシティにおけるリアルタイムデータ分析、医療分野における画像解析など、幅広い分野で必要とされる数値分析を可能とする環境を、低コストかつ迅速に提供します。

柴田氏は、「スーパーコンピューターの民主化」を目指しており、XTREME DNAによって、スーパーコンピューターを用いたサービス開発を目指す大企業と積極的にコラボレーションし、より良いサービスを生み出すための提案をしていきたいと語り、締めくくりました。

登壇した5社は、これまで人間の力では処理しきれなかった情報をAI技術により価値に転換することに成功しています。今後、彼らの手がけるビジネスが、私たちの生活を効率化し、社会のカタチを変えていくことでしょう。

NEDOピッチは、このようにさまざまな技術を持つ企業同士が、それぞれの技術や展望を語り、互いを知ることで、新たなアイデアを生み出す事業パートナーとつながる場所です。今回のNEDOピッチを通じて生まれたつながりが、どんな未来を創りだしていくのか、私たちもとても楽しみです。

【第18回NEDOピッチの映像】
- NEDO Channel:人工知能
https://www.youtube.com/playlist?list=PLZH3AKTCrVsXD7bX2pqHcFCw02GCOFS9_

【第19回NEDOピッチのご案内】
- テーマ:AR・VR
- 日 時: 2017年8月29日(火)18:00〜20:00(受付開始:17:30~)
- 場 所:NEDO川崎本部5F
- 参加費:無料
- 申込み:https://www.joic.jp/index.htm

関連ストーリー

注目ストーリー