ベンチャーの“最先端技術”が、私たちの健康を支える〜第20回NEDOピッチレポート~

長く健康に生きていきたい――多くの人の願いに応えるべく、果敢にビジネスに取り組むベンチャーがいます。今回のNEDOピッチのテーマは、「ライフサイエンス・ヘルスケア」。自宅にいながら腸内環境を調べたり、ガン診断がより手軽で確実にできるキットが生まれたりと、ユニークなビジネスが次々と登場しています。
  • eight

ベンチャーの医療分野参入を「低コスト化」と「規制緩和」が後押しする

Cc295bb5f2c83cb27ce0ad494a7a42ddffaef1b6

「人生100年」という時代は、すぐ目の前かもしれません。日本人の平均寿命は男性80.98歳、女性87.14歳となり、世界的にも平均寿命は伸び続けています(出典:厚生労働省「平成28年簡易生命表の概況」)。

長い人生をさらに充実させるために、欠かせないのが“健康”です。そこで期待が集まるのが、「ライフサイエンス・ヘルスケア」分野を手がけるベンチャー。この分野は、かつては医療機関や大手企業を中心に発展してきましたが、近年、ベンチャーが活躍できる環境が整ってきました。

その要因のひとつが、生物を扱うライフサイエンス分野における圧倒的な低コスト化。たとえば生物の遺伝情報を解析する「ゲノム解析」は、1990年には30億ドルのコストで13年間かけて解析をしていました。ところが、今や1日だけで解析が可能に。しかも必要なコストはたった1,000ドルにまで低下しました。

また、医療や介護を扱うヘルスケア分野においては、規制緩和が進んでいます。2015年6月には、遠隔診療に関する法的整備がなされ、薬局から離れた患者にも服薬指導をできるようになりました。

こうした低コスト化や規制緩和という追い風を受け、独自の技術をもつベンチャーと、大手製薬会社等の提携事例も次々と生まれています。たとえば、大手の武田薬品工業は、ベンチャーのノイルイミューン・バイオテック株式会社と事業提携し、がん治療に関する新技術の研究開発を行なうことになりました。

2017年9月の第20回NEDOピッチのテーマは、飛躍的な成長が予想される「ヘルスケア・ライフサイエンス」。最先端の技術やアイデアを持つ5名の事業者によるプレゼンから、私たちが、より健康に生活を送るためのヒントを見つけていきましょう。

自宅にいながら、自分の体質を把握できる。カギは「腸内フローラ」

5131b028667dc20060bf42645b3fbb3d4a9a541f

健康への第一歩は、自分の体質を知ることからはじまります。体質を手軽に調べられるキットを開発したのが、株式会社サイキンソーです。

社名の由来は、ヒトや動物の腸内で共存する腸内細菌の集まりを意味する「細菌叢」(腸内フローラ)。同社は、独自に開発した「Mykinso」によって、自宅で誰でも腸内フローラを検査できるようにしました。

株式会社サイキンソー 代表取締役 沢井悠氏
「『Mykinso』で、その人の腸内フローラと、食生活などの情報と関連付けることで、腸内環境を整えるための生活習慣を提案できます。このサービスによって、疾患の治療や病気の予防を目指します」

同社は2017年9月現在、地域病院や薬局などへの導入を進めています。今後は、医療機関への販路を持つ企業や、個人データを活用したヘルスケア事業を手がける企業などと提携していきたいということです。

一方、医療の発展を、ロボット技術で支えようとするベンチャーが、ロボティック・バイオロジー・インスティテュート株式会社(以下「RBI社」)。同社が開発した汎用ヒト型ロボット「まほろ」は、ヒトの実験作業を自動化できます。まほろの導入により、研究者は知的生産に専念することができるのです。

ロボティック・バイオロジー・インスティテュート株式会社 代表取締役社長 髙木英二氏
「まほろにはアームがふたつあり、0.1ミリ単位の繊細な動きが可能なため、人間の動きをそのまま移すことができるんです。これまで特定の人だけができた複雑な実験も、まほろによって、何度も繰り返せるようになります」

RBI社が今後目指すのは、研究者がロボットを介して実験手法をシェアし、遠隔操作で実験を指示できるサービス。髙木氏は、ロボット機器やソフトウェアの技術を持つ企業や、サービスを利用する臨床検査、製薬を扱う企業などとの提携を考えています。「いずれは大量の実験データを用いたAIビジネスも展開していきたい」ということです。

続いては、日本人の死因第一位に君臨する「がん」に関する話題です。(出展:厚生労働省「平成28年性別に見た死因順位」)

より頻繁に、確実に。「血液」でがんを診断する技術が誕生

60418e2fb9f2081649f54c57577676e1c980f46a

2017年現在、正確にがん診断を行なうためには、体内の臓器から、生体組織を採取しなければなりません。しかし株式会社オンチップ・バイオテクノロジーズ(以下「オンチップ社」)が開発した「On-chip Sort」は、そんな常識を変えようとしています。

株式会社オンチップ・バイオテクノロジーズ 代表取締役/CEO 小林雅之氏
「従来の手法では、診断が頻繁にできませんし、患者さんの状況によっては必要な体内組織を取れないケースもあるんです。ところが、On-chip Sortは血液から、がんの発現を示す血中循環腫瘍細胞を検出できますから、これらの問題を解決します」

同社は2017年9月現在、On-chip Sortを国内中心に販売していますが、今後は海外へ販路を広げる予定です。臨床検査関連企業やバイオ機器メーカーなどとの提携や、投資家からの支援を受けながら、最適な医療の実現を目指すということです。

また、睡眠薬を使わずに、睡眠障害を解決しようとするベンチャーも。サスメド株式会社が着目したのは、アプリやクラウドなどの「デジタル技術」と、患者の「習慣」です。

サスメド株式会社 代表取締役(医師) 上野太郎氏
「日本は世界的に見て、圧倒的に多くの睡眠薬が処方されていますが、依存性や高齢者の転倒リスクがあると厚生労働省により報告されています。そこで私たちは、ふだんの習慣を見直すことで、睡眠薬に頼らずに睡眠障害を改善する『認知行動療法』を取り入れました」

同社は2017年9月現在、1日の行動や睡眠時間などの情報を解析し、患者ごとの対処法を提示するスマートフォンアプリの開発を進め、医療機関と連携して臨床試験を実施しています。上野氏は、医療データを活用したい自治体などへサービスを提供するほか、社員の睡眠障害に悩む企業の人事の力にもなりたいと語りました。

確実で副作用のない医療を目指して。武器は低コストで培養できるiPS細胞

7e51ad31af1ae04f52370dfbc03767e959b2e5f9

画期的な新技術が生まれると、その技術をより多くの人に届けるための努力が必要となります。2016年8月に設立された株式会社マイオリッジは、京都大学の山中伸弥教授が開発したiPS細胞に由来する心筋細胞が抱えていた、コスト・安定性・機能性の問題を解決させる培養技術を開発。再生医療や創薬の分野において期待が集まっています。

株式会社マイオリッジ 代表取締役社長 牧田直大氏
「たとえば新薬の開発をする場合、動物で副作用がないことを確認できても、いざ人間に使うと副作用が起きてしまうという問題がありました。こうなると多くの時間的、金銭的コストが無駄になってしまいます。そこでヒトのiPS細胞を使って、人間に対する副作用を事前に検査する必要があります」

マイオリッジは細胞培養に低コストな物質を使ったり、独自の培養方法を開発したりして、より使いやすいiPS細胞を培養することに成功しました。牧田氏は、海外に販路をもつ商社や、培養装置の開発をする機械メーカーなどと提携し、グローバルに展開したいと語りました。

今回登壇した5社は、医療が抱えていた課題をとらえ、最先端の技術により解決に導いています。今後、彼らの手がけるビジネスは、私たちが長く健康な人生を送るための大きな力となってくれることでしょう。

このようなベンチャーの取り組みが長く続くように、国もサポート体制を整えています。NEDOピッチに参加した経済産業省の担当者によると、ベンチャーは株式上場するまでの成長を果たしても、上場後の資金調達に難航し成長を止めてしまう現状があるということです。

経済産業省 生物化学産業課 課長補佐 前田慶太氏
「国内のベンチャーは、上場後の資金調達に課題を抱えています。経済産業省として今後、ベンチャーが思い描いた事業が実現できるよう、ベンチャーと投資家が対話し円滑な資金調達ができるように環境づくりに努めていきたいと考えています」

NEDOピッチは、さまざまな技術を持つ企業同士が、それぞれの技術や展望を語り、互いを知ることで、新たなアイデアを生み出す事業パートナーとつながる場所です。今回のNEDOピッチを通じて新たな技術がビジネスを生み出し成長していくことが、私たちもとても楽しみです。

【第20回NEDOピッチの映像】
- NEDO Channel:ライフサイエンス・ヘルスケア

【第21回NEDOピッチのご案内】
-テーマ:アグリ・フード
- 日 時: 2017年11月28日(火)18:00 ~ 20:00 (受付開始:17:30~)
- 場 所:NEDO川崎本部5F
- 参加費:無料
- 申込み:https://www.joic.jp/index.htm

関連ストーリー

注目ストーリー