多様なバックグラウンドと強みが生み出した、独自の社内研修プログラム

モルソン・クアーズ・ジャパンでは、一風変わった社内研修プログラムが行われています。その名も「MCJカレッジ」。講師はほぼすべて社員が担当しています。「社員全員がエンターテイナーであれ」というミッションのもと、多様なバックグラウンドをもつ社員がそれぞれの強みを活かし、講座をつくりあげていった舞台裏とは?
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“学ぶ文化”を醸成して個人と会社の成長へつなげる社内研修プログラム

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日々仕事をしているなかで、他部署との協力関係がうまく築けず、コミュニケーションエラーによるストレスを感じたことのある人は多いのではないでしょうか。

このような現象は往々にして、相互の業務に対する理解不足によるもの。相手がどんな仕事をして、どんな意図で発言しているのかを理解できれば、避けられるぶつかり合いもあるはず……。

一方、私たちモルソン・クアーズ・ジャパン(以下、MCJ)では、2016年6月に立ち上げた社内研修プログラム「MCJカレッジ」により、従来あらためて聞くこともなかった部署ごとの業務を学ぶ講座も用意されており、業務の円滑な進行や、部署間のコミュニケーション推進の助けになっています。

MCJカレッジの発足は、こうした“学び”の姿勢を一部のみならず社全体に浸透させるべく、研修プログラム化を決断したことにはじまります。そして人事チームの関口みどりが旗振り役となり、2016年4月から講座の企画がはじまったのです。

社内研修というとよく見受けられるのが、外部講師による講座ですが、MCJカレッジの講師は原則、社員です。その背景には、ただ知識を受け取るだけでなく、自分がもっている知見は周囲に伝え、相互に成長していく“学ぶ文化”を醸成していきたいという思いがあります。

私たちMCJの社員は、約50名(※2017年5月現在)全員が中途採用。前職は同業のメーカーだけでなく、食品会社やアパレル、医療機器、航空会社と、じつに多種多様です。

講師の選定をしようと社員のリストとにらめっこをしていた関口は、これだけ多様なバックグラウンドがあるならば、それだけ強みもさまざまだということに気がつきました。

そこからは講師候補一人ひとりと対話を重ね、講師や部署の強みを活かすかたちで講座の内容を練り上げていく……。なかには、MCJカレッジの立ち上げに疑問を感じる社員もいましたが、関口は、幾度となくその必要性を訴えました。

関口「本社にいる社員にはほとんど声をかけましたね。快く引き受けてくれる社員もいれば、『必要がないのでは?』という考えの社員もいました。でもこれは、ひとりで作り上げることはできない。社員みんなで作るからこそ価値がある、という気持ちだったんです」

さらに、関口は、受講する側の社員にも「どんなことを学びたいのか」「会社にとって何が必要なのか」と生の声を拾い続けます。そうして対話を積み重ねた結果、最終的には、なんと40種類近くの講座をデザイン。それを元にひとつのプログラムを立ち上げ、半年間で15講座を開講できたのです。

関口 「講師には、単に強みのある分野で講座をやってくださいと頼むのではなく、部署のなかや他部署とのやり取りで困っていることは何ですか、ではこういう講座をやったら改善の手助けになりませんかと、一緒に考えて内容をつくっていきました。私は人事職の前は秘書をやっていたので、その頃から経営サイドや各部署の状況をできるだけフラットに、俯瞰で見るようにしていました。その経験が、部署間をつなぐ講座の企画にも役立っていると思いますね」

スタートから1年が経とうとしている2017年5月現在、MCJカレッジは3期目に入っており、受講者はのべ600名以上にのぼります。今回は、その多彩なプログラムのなかから、いくつか特徴的なものをご紹介します。

グローバル視点での「日本のお酒市場」講座であらためて自社商品を位置づけ

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▲マーケティング本部ブランド・マネージャーのビンセント・ニコルの講座風景

マーケティング本部ブランド・マネージャーのビンセント・ニコルは、MCJ唯一の外国人社員。彼が開講した講座は「世界のRTD」です。

RTD(Ready To Drink)とは、フタを開けてすぐにそのまま飲める飲料。とくに缶酎ハイや瓶入りカクテルなど、割る手間のかからないアルコール飲料を指します(デジタル大辞泉より)。日本ではRTDは若者を中心に人気があり、独自の市場を形成しています。

ビンセントは、ビールだけでなくRTD市場全体について理解しておくべきだと考えています。

海外の市場に精通している彼自身の知識に加え、日本のRTDのマーケット・トレンドについても徹底的に調べ上げた結果、全3回の連続講座になることに。国内市場をグローバルな視点で捉えた、従来とは違う角度でのマーケティング論となりました。

ビンセント 「僕の講座は、すぐに業務に活かせるという類のものではありません。でも本当は、マーケティングの考え方をどうセールスに活かしていくかなど、実用レベルにまでもっていきたい。これまでの講座ではそこまで到達できていないので、今後はより考え抜かないといけませんね」

講座の内容について、実践での応用が課題だと考えているビンセント。しかし実際の受講者アンケートでは想定外の効用もありました。

RTD市場と、そのなかでの当社の主力商品「ZIMA」について知識を得たことで、あらためてZIMAに対する愛情が深まったというのです。

関口 「その社員は、酒類業界以外から転職してきたんです。それまで自分がもっていた知識とは違う観点で市場を見ることができて、今の日本の市場におけるZIMAの存在価値を彼なりに見いだせたのではないかと。自社製品を見つめ直すいい機会になったと思います」

「物流講座」で部署間理解を進めつつ、どの業界でも役立つ知識を得る

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▲物流部門のマネージャーを務める石橋冴子の講座を受講した社員

サプライチェーン本部で物流部門のマネージャーを務める石橋冴子は、MCJカレッジ立ち上げの報を聞いて、いち早く講師をやりたいと手を挙げました。

それというのも、石橋はふだんから、部署間の相互理解不足により生まれる“ズレ”を肌で感じる立場にあったのです。

たとえば、自社の製品が海を渡って港に着いても、さまざまな貿易上の手続きがあり、すぐに手元に届くわけではありません。しかしお客さまに一日でも早く商品を届けたい営業チームにとっては、通関などの貿易事務にどのくらいの期間を要するのか知識がなければ、足止めを食っていると感じてしまうこともあります。

物流部門以外の社員は、業務として貿易事務に携わることはないでしょう。でも知識があれば、社内での確認はスムーズに進みます。ひいては商談の際にも的確な回答ができるというメリットもある――石橋はそのように考えて、物流と貿易の基礎を学ぶ講座を立ち上げました。

石橋 「最初のきっかけは、皆さんに貿易事務を知っていただいたら、自分の部署の仕事がやりやすくなるだろうというところですが(笑)、メーカーなどモノを流通させる仕事なら、当社でなくてもどの業種でも、この知識は役に立ちますよね。だからちょっと耳に入れておいたらいいのでは? とオススメする感覚で講座を開きました」

第1期は、貿易一般にまつわる基礎的な内容をレクチャー。第2期では、MCJの業務に特化した「MCJロジスティック」講座を開講しました。1期目で基礎知識が頭に入ったうえで、自社バージョンの講座を受講することができ、より理解がしやすかったと好評を得ています。

パソコン講座で劇的に業務改善。今後も「楽しんで成長していく」講座を継続

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▲営業本部・営業企画部のプランナーである宮島孝文の講座を受講する社員

最後にご紹介する「エクセル講座」。パソコン講座というと外部講師が担当することが多いようですが、もちろんMCJカレッジでは社員が講師を務めています。

営業本部・営業企画部のプランナーである宮島孝文は、需要予測のスペシャリスト。前職では当たり前のように使っていたエクセルの機能が、MCJではまったく使われていなかったことに衝撃を受けます。

営業マンがエクセルの機能や使い方を知り、作業の時間短縮ができるようになれば、今以上に営業活動に時間を費やすことができるのではないか……。そう考えたのが、エクセル講座を担当することになったきっかけでした。

宮島 「そのときは転職したばかりで、自分がどういう人間なのか多くの人に知ってもらいたいという気持ちもありましたね。そうすれば自分の仕事もグッとやりやすくなる。それに、講師を引き受けたおかげで、気軽に質問など声をかけてもらってコミュニケーションをとる機会も増えたので、そういう意味でもすごくよかったと思っています」

パソコンのスキルをしっかりレクチャーしたおかげで、営業チームでは「今まで2時間かけていた内勤業務が30分で終わった」と大幅な効率アップが実現。宮島がかかわる業務だけでなく、全体的な業務改善効果が出ています。

このように、講師を務めてくれた社員の強みと協力で成り立っているMCJカレッジ。参加した社員のマインドが変わったり、実際の業務で改善が見られたりと、さまざまな効果が得られており、本社だけでなく、地方在住の営業マンに向けても、インターネット会議システムを導入した研修を行っています。

はじめは、立ち上げに賛同する声ばかりではありませんでしたが、研修後の理解度や活用度をはかるアンケートによると、90%以上の社員が「満足」しているとのこと。

社内で切り盛りする研修プログラムは、初回限りで息切れし、立ち消えてしまうことも少なくありません。しかし、1年にわたって継続できているのは、講師と受講者が一緒にアイデアを出し合い、ともに作り上げる姿勢があるからだと考えています。

講座の内容も、毎期同じではなく、広がりが生まれています。関口が講師を務めた社員、講座を受けた社員と会話をしているうちに、「こういう講座があったらいいんじゃない?」と新しいアイデアが浮かんでくることもしばしば。みずから学び、知見を共有する文化の土壌ができつつあります。

そして、なによりも大切にしなければいけないのは「楽しんでやる」ということ。人事がつくったプログラムを社員にやってもらう……ではなく、主役はあくまで講師と受講者。それは「社員全員がエンターテイナーであれ」というミッションあらわれでもあります。

関口 「自分たちが楽しいと思えないと、その先にいるお客さまを楽しませることはできませんよね。MCJカレッジを楽しんでやるということは、『一人ひとりがエンターテイナーであれ』というミッションにつながっています。今後は、昨年よりもっといいものにしていけるよう、社員と対話を重ねてプログラムを生み出し続けたいですね」

“顧客と消費者のファーストチョイスとなる”――私たちは共通の理念に向かって、常に社員同士、高め合いながら成長を続けていきます。

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