エンジニアの売り手市場に潜む、営業職のリスクを救えーーSES推進組合結成の裏側

システムエンジニアリングサービス(以下、SES)は、システム開発で必要なエンジニアの能力を企業に対して提供するもの。エンジニアの需要が高まり、営業活動をしなくても受注できるため、SESを行う企業の営業職にはスキルへの不安があります。そこで結成されたのが、New Generations Meet up(SES推進組合)です。
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営業活動をしなくても受注ができる。エンジニア不足による成長機会の損失

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▲New Generations Meet upの幹事メンバー

パソコンやスマートフォンの普及により、インターネットをはじめとする「情報通信」は私たちの生活に欠かせないものとなっています。その情報通信の技術を根幹から支えているのが、エンジニアです。より日常生活やビジネスを便利にしたいという思いから、エンジニアの需要は、年々高まっています。

そんななか、2013年ごろから行われるようになったのが、ソフトウェアやシステムの開発や保守・運用をするエンジニアの技術力を企業に提供するSES。エンジニアは、一定期間、技術力の提供を行う企業に常駐し、業務にあたります。2017年現在、このような契約で対応している企業が、東京都内だけでも5,000社以上はあるといわれています。

そこで叫ばれているのが、“エンジニアの不足”。取引先の企業からは、ひっきりなしに「他にもエンジニアがいないか?」という要望が多く寄せられています。そのため、自社のエンジニアだけではまかないきれず、SES事業を展開する企業のあいだでは、パートナーシップ契約が結ばれ、エンジニアの貸し借りまで行われているのです。

この需要と供給のアンバランスな状況は、SES事業を展開する企業の営業職にも、影響を及ぼしています。エンジニアの供給が追いついていないため、営業活動をしなくても、売上を確保できる。そんな状況が続いています。

「営業スキル」や「個人の成長」という観点で見たときに、ビジネスモラルや営業ノウハウなど、本当の意味で能力が向上しているのだろうか。そんな不安を、営業職である彼らは、常に抱えているのです。

さらに、SESを提供している企業のほとんどが、中小企業。業界は、これから成長できるのだろうか。そんな恐れも、ぬぐいきれません。同業種のなかで出てくる悩みや相談は、業界全体の成長性や将来のこと、自社の方向性や上司、代表者のこと、自分自身の営業スキル向上のことが中心です。

とはいえ、SESによってさまざまな企業に派遣されたエンジニアが、ITのものづくりの現場で活躍しています。営業職として、そのチャンスの広がりに貢献しているのも、私たちの誇りとなっているのです。

SES業界をもっと成長させ、エンジニアと派遣先の企業の中核として貢献したい。さらには、最前線で活躍しているエンジニアにフォーカスが当たるよう知名度も上げていきたいーー。

そんな想いから2013年にNew Generations Meet up(システムエンジニアリングサービス推進組合)を発足しました。

視野を広げ、スキル向上につなげる「分科会」

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▲奇数月に行なっている「分科会」(勉強会)

2017年現在、New Generations Meet upには、約50社、60人ほどの会員が加盟しています。私たちの主な活動は、奇数月に行なう「分科会(勉強会)」と、偶数月に情報交換の場として開く「懇親会」です。

分科会では、会員にヒアリングを行ない、題材を決めて議論を進めます。ときには、繋がりのあるIT企業の役員や外部講師を呼び、会員にとって、有意義な会になるよう工夫しています。

先日の分科会では、「業界や自社での技術トレンド」と「人材の募集が行われているプロジェクト内容(業務)のトレンド」を題材にしました。技術や企業からの募集が行われているプロジェクト内容(業務)のトレンドは、各社ごとに異なっています。そこで、業界の実態を把握したいという観点から、題材に選びました。

この日、分科会に出席したのは、30社、35人ほど。分科会での議論は、7〜8人ごとのグループに分かれ、リーダー、書記、タイムキーパーなど役割を決めて行われます。

そして、普段の業務のなかで、よく聞くキーワードを元に話は進みます。IOT・ビッグデータ・AI・VR・Fintech・イテレーション・車の自動運転。

「最近キーワードとしてよく聞くよね。でもこれっていったい何のことだろう。どうしたら自分の会社の仕事につながるだろう。」などと話しをしながら、わからない用語があれば随時調べたり、それぞれが持っている知識をお互いに補ったりしながら意見をまとめ、グループごとに発表をします。

実務的なキーワードとして挙がったのは、2017年4月のガス自由化に向けて、エンジニアの人材募集が増えたことや、金融業界で最新技術を駆使した金融サービスであるFintechの活用が多く、お金の回転が速くなり、仕事も増えるのではないかといった期待など。それぞれの会社の特色を生かした内容となりました。

また、VRの普及に向けて、エンジニアの学習を3D領域やスマートフォンを対象にしたゲームエンジンのUnity開発に対応させているという企業もありました。

ビッグデータ絡みでは、膨大なデータの収集や分析などを通して経営戦略に生かしていくBI(ビジネスインテリジェンス)や、データをさらに細かく分析し改善策を考えるBA(ビジネスアナリシス)が活性化していて、そこにAIのデータをアウトプットするような形で活かすこともあるとのこと。

開発言語では、多く活用されているJava言語はまだまだニーズが多いのですが、「Apache Cordova」や「Monaca」など、スマートフォンやタブレットなどのハイブリットアプリに対応した言語が求められていることを感じています。

バランスを考慮してトレンドに対応した施策を行なうか、VRやAIなどの専門分野に特化し、市場での伸長を狙ってマーケティングしていくのか。この選択は、SESを提供する企業が、今後成長していくための分岐点となるでしょう。

エンジニアの業務は、市場のトレンドや、社会の動きのなかで発生します。そのため、最新の技術領域を上手く組み合わせて、エンジニアの提供を行なえるようになる、ひとつのきっかけとなりそうです。

分科会をきっかけに新たなビジネスの繋がりが生まれる

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▲分科会の内容をHPにて発信している

分科会での議論は、業務の参考になり、それぞれの実務に活かすことができています。分科会で議論した内容を、社内の営業メンバーで共有し、参考資料として活用している企業もあるのです。

また、幹事メンバーが毎回の分科会の内容を執筆し、自社のホームページで公開しているほか、メディアからの取材を受け、記事化されることも多くなってきています。

さらに、分科会を通じて出会った会員のあいだで、個別での打ち合わせや実際の業務を委託する契約に繋がるケースも頻繁に発生していて、新たな結びつきを生み出す場にもなっています。

2017年現在、約10名の幹事メンバーが、SES事業を展開する企業に向け、地道な説明を繰り返し、活動を広めています。その甲斐あって、毎月紹介なども含めて、新規で入会するメンバーも増えつつあるのです。

この活動を広めるにあたり、新たに知り合った人たちにヒアリングをすると、業界のことやSESのビジネスモデルを含めたさまざまな悩みやコメントが多く寄せられます。

そのような悩みを共有し、解決に向けてアイデアを出し合う。まさに業界の寺子屋的な活動ができているのかなと、感じています。

多くの可能性を秘めたSES。全世界へ広がることを夢見て

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▲New Generations Meet upのメンバー

今後、私たちは、SESのビジネスモデルを世界へ広げていきたいと考えています。

SESビジネスは、IT業界未経験の営業職が最初に通るビジネスモデルといわれています。エンジニアをさまざまな企業に派遣することから、他の業界とのシナジーが生まれ、成長に繋がるビジネスなのです。

しかし、多く見受けられるのは、会社での“独自ルール”に縛られているケース。そのようななか、SES業界の成長のためには何が必要なのかを追求し、業界を引っ張っていける団体を目指しています。

また、私たちが望むのは、地方にも活動を広げること。2017年現在、システムやソフトウェアなどの開発を国内の遠隔地で対応する「ニアショア開発サービス」の影響で、地方都市でもSESが行われはじめています。そのような人たちに対し、地域活性化も含めて、貢献していきたいです。

さらにシステム開発を海外の企業や法人に委託する「オフショア開発サービス」も、広がりを見せています。特に目立つのは、東南アジア地域へ進出している企業での取り組みです。日本だけにとどまらない、SESのビジネスモデルには多くの可能性があります。

アメリカをはじめとする主要国へも、この活動を広げていきたいーー。それが、私たちの目指す未来です。

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