ビジネス戦略も手法も違う日本で起業したい——海外企業を日本へ導くOnlabのサポートとは

海外企業からの応募が増加しているアクセラレータプログラムを運営する、Open Network Lab(以下、Onlab)。海外から第9期生として参加し日本でモビンギ株式会社を立ち上げたWayland Zhangさん。Onlabはどのように彼をサポートしたのか、その裏側をご覧ください。
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日本市場の課題と可能性を見出し、新たなクラウド自動化サービスを提案

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モビンギ株式会社のメンバー
2017年現在、日本の多くの企業はAmazonやマイクロソフト、富士通などさまざまなクラウドサービスを利用していますが、クラウドサービスの管理には専門のエンジニアが必要で、非常に多くの工数がかかります。また同時に、業界的にサーバー側のエンジニアが不足しているという課題も存在しているのです。

そんな課題を解決するためにモビンギ株式会社が提供するのが、基盤構築から運用、モニタリングまでを自動化するソフトウェアです。直感的な操作で、複雑な作業が簡単に実行できるため、基盤専用のエンジニアを雇う必要もなく、コストや時間が大幅に削減できます。

このサービスを開発したのは、Onlabの第9期生であるWayland Zhangさん。モビンギ株式会社の創業者です。Waylandさんは、プログラムに参加する前に、基となるサービスで香港に会社を立ち上げました。そのとき、日本市場で事業展開の可能性を感じたそうです。

Waylandさん 「香港で事業を立ち上げたとき、お客さまのなかに日本企業も数社ありました。その共通課題が、データの保管場所をクラウドに移管したいというもの。日本にもこうしたニーズがあるんだなと思ったんです」

クラウドコンピューティング領域における日本市場のポテンシャルを感じたことも、日本での事業展開を決意したきっかけでした。実は、amazonの提供するクラウドサービスプラットフォーム「AWS(アマゾンウェブサービス)」では、アメリカについで2番目に大きな市場が日本だったのです。

Waylandさん 「アメリカでこの分野は競合他社が乱立しているけれど、日本ではまだまだ未開な分野でした。そのため、競合する企業がいないことも大きなビジネスチャンスだと捉えたんです」

さっそく日本のアクセラレータプログラムをインターネットで検索してみたWayland さん。そこには、グローバルという視点で比較したとき、非常に初歩的ですが大きな課題があったのです。

言葉の壁を越え、日本で起業したい。その想いをサポートするOnlab

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創業者のWayland氏
まず、知人の紹介でOnlabの存在を知ったWaylandさんは、他にも条件のよいプログラムはないかインターネットで検索をします。もちろんいろんなサイトを見つけました。ところが……。

Waylandさん 「どのプログラムのウェブサイトも日本語表記しかなくて、私には読めなかったんです。英語の表記があったのはOnlabだけ。それに面接で、みなさんが英語で話してくれたときは、とても安心したことを覚えています。日本なのにとってもグローバルな環境だなと感じました」

その面接から一貫してWaylandさんのサポートを続けてきたのは、シニア・インベストメント・マネージャーの山本陽介です。

山本 「課題の捉え方、そしてその課題にどのようにトライしていくかという内容は、非常に現実的で納得できるものだと最初の面接で感じました。取り組む価値があるし、成し遂げたら良いサービスになると感じていました」

Onlabのプログラムに参加した後、Waylandさんはアメリカの「500 Startups」というアクセラレータプログラムにも応募し、見事に選出され投資を受けています。500 Startupsとは、シリコンバレーを拠点に世界50カ国1,500社以上に出資しているシード投資ファンド・アクセラレーター。非常に大規模なプログラムです。

Waylandさん 「メンターの存在やミーティングのやり方など、Onlabとアメリカのプログラムは非常に似た環境だったので、やりやすかったですね。ただ500 Startupsは毎期40〜50社卒業しますがOnlabは5〜7社。その分、Onlabは1チームに対して手厚い。細かいところまでフォローをしてもらえたと思います」

こうしたOnlabの取り組みは、実際に海外で活躍している卒業生が現地のニュースで取り上げられるなど、少しずつ注目を浴びるようになってきました。

「世界に通用するプロダクトを作り上げるスタートアップの育成」というビジョンを掲げている私たちOnlabは、海外への門戸を広げるべく、グローバルに対応できる環境を整えています。

海外と日本の商習慣の違いを学び、日本ならではの戦略を決断

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モビンギ株式会社のメンバー
Onlabプログラムを通じて、「海外と日本では、やり方も考え方もいい意味でまったく違う」とWaylandさんは強く感じます。

Waylandさん 「どのように日本でビジネスを進めていけばよいか商習慣を教えてもらえたのは本当によかったですね。これまで海外でやっていたのとは全然違いましたから」

たとえば、Onlabでメンターから“日本の企業は海外に比べて期待値が高い”というアドバイスをもらったことで、モビンギは日本向けには海外で提供しているサービスよりも、よりクオリティの高いサービスを開発すると決断——。そのために開発期間を延ばし、何度もミーティングを重ねてプロダクトを改良していきました。

また日本では、ネームバリューやブランドが非常に重んじられるということも、学んだことのひとつです。

Waylandさん「私たちはOnlabを卒業したばかりの小さなスタートアップなので、最初は信頼を得ることが難しかった。そこは1年、2年……とじっくり時間をかけて築いていきました」

いちばん難しかったのは、立ち上げのために“日本人”チームメンバーを集めること。Waylandさんは現在日本語を勉強中ですが、当時のコミュニケーションは英語のみ。言語の壁もあったため日本人メンバーの必要性を感じていました。

Waylandさん「モビンギの初期メンバーで取締役の堀内さんは、Onlabからの紹介だったんです」

初期メンバーも揃い、モビンギ株式会社は2015年1月いよいよ創業。着実にお客さまを増やし、2017年4月現在、富士通株式会社など大手企業を筆頭に30社の日本企業へサービスを提供しています。

日本で家族の次に頼れる存在——Onlabの手厚いサポートの裏側

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Onlab Demo Dayの様子
Onlabのプログラムを卒業してしばらくの間、Waylandさんにとって、いちばん苦しい時期が続いたといいます。

Onlabでは、プログラム参加チームに対して1年間インキュベーションスペースを無料で貸出しているのですが、Waylandさんも、1年間Onlabのスペースを利用しながら、その分コストを抑えて事業実働まで奮闘しました。その苦労があったからこそ余計に、最初の契約が実ったときのことを「気持ちよかった」とWaylandさんは表現します。

Waylandさん「最初の契約を獲得したとき、日本ではじめてサービスについて自信がつきました。そして、今度は事業をどのように成長させるかという視点にすぐ切り替わりましたね」

こうして、着実に事業を拡大しているモビンギ。最近では社員数も増え、いまより広いオフィスへ引っ越し予定です。

そして、現在も四半期に一度はOnlabのメンバーとコミュニケーションをとっているWaylandさんは、Onlabで開催する卒業生のイベントにもよく参加して後輩の育成にも協力してくださっているのです。

Waylandさん「日本に来た当初、Onlabは家族以外で唯一相談できる相手でした。今ではOnlabは仲の良い友人のような感覚でいろんな相談をしています。やはり日本でビジネスをはじめるなら、日本のアクセラレータプログラムでちゃんと学ぶことがいちばん重要だと実感しましたね」

私たちOnlabでは最近、海外からの応募も増えています。アメリカはもちろんのこと、ヨーロッパ、アジアなど様々な国や地域からご応募をいただいています。世界に通用するスタートアップの育成に、これからもよりいっそう活動の範囲を拡大していきます。

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