事業への想いを事業の成長や資金調達に繋げる——Onlabサポートの裏側

起業後すぐにOpen Network Lab(以下、Onlab)のシードアクセラレータープログラムに参加したTrimの長谷川裕介さんとPOPERの栗原慎吾さん。プログラム後も順調にビジネスを拡大しているふたりがどのようにOnlabと出会い、何を学んだのかをご紹介します。
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亡くなった母の代わりに、200万人の育児中ママに恩返ししたい

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▲プレゼンテーションを行うTrimの長谷川さん

外出先で授乳をしたり、おむつを替えるのに気を遣う。とはいえ、馴染みの場所でない限り、授乳室の場所などを調べるのは手間がかかる……。

そんな悩みを解決してくれるのが、Trim株式会社が運営している授乳室おむつ交換台検索アプリ「Baby map(旧名称ベビ★マ)」と、同社が新たに開発した、お母さんがベビーカーごと入って授乳やおむつ交換ができる完全個室のナーシングルーム「mamaro」です。

Trimは2015年11月に設立。Baby mapは代表の長谷川裕介さんが同社を創業する前に働いていたベンチャー企業で誕生しました。

長谷川さん 「私はベンチャーに入社する前に、母をガンで亡くしています。そのときから、人の役に立つ仕事をしたいと思って頑張っていました。だから、Baby mapを通じてユーザーであるお母さんたちを助けたい。どんなに願っても、私の母親にはもう恩返しができない。であれば、育児中のお母さんに恩返しするつもりでやろう、と」

当時、既に2万人のユーザーを抱えていたBaby map。自分が責任をもってサービスを広げていきたい、もっと沢山のお母さんを助けたい。

そのように考えた長谷川さんは、当時の社長に相談し、Baby mapを引き取る形で起業を決意しました。そんなTrimがOnlabと出会ったのは、起業直後のこと。知人の方からの紹介でした。

長谷川さん 「Onlab3期生でもあるピリカの小嶌さんから紹介してもらい、起業して1週間後には応募しました。初めての起業だったので、プロダクトや組織をどう作っていけばいいかわからなかったし、あと、資金も入れてもらえるということだったので、お金をもらえるのかな というイメージもありました(笑)」

2017年7月現在、Trimでは「mamaro」というプロダクトも開発中です。mamaroでは、授乳やおむつ替えだけでなく、離乳食をあげることもできます。商業施設や交通インフラなどに広げ、広告収益や、お母さんたちがネットの情報からリアルの施設に動くO2O(Online to Offline)データの蓄積を考えているようです。

アナログなやりとりに疑問を抱き、学習塾と保護者をデジタルで橋渡し

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▲アドバイスを参考に事業のブラッシュアップを行うComiruの栗原さん

そしてもう1社、学習塾を対象にしたコミュニケーションアプリ「comiru」を運営しているのが、株式会社POPERです。同社の創業は2015年1月。代表である栗原慎吾さんは、かつて学習塾を経営していました。

栗原さん 「学習塾を経営しているときに感じた課題の解決、というのが起業の理由です。学習塾では、生徒の保護者との連絡のため、驚くほど紙を使っていました。IT慣れしていた自分にとってはそれが無駄に感じたし、親世代のスマホ普及が進んでいるなら、もっとデジタル化できるんじゃないか、と」

学習塾では、「指導報告」というものを保護者に紙で渡しています。生徒の授業態度や、当日の問題や宿題に関して報告し、それをもとに生徒の両親が状況を把握する、といった仕組みです。しかし、その紙を毎回生徒たちに持たせるのはとても手間がかかる作業だったそうです。

そこで、学習塾と保護者のコミュニケーションを行えるツールとして、comiruを開発。サービス導入後は、作業量が1/10ほどに圧縮されるなど、ものすごい効果をもたらしています。

さらに、顧客保護者が塾を辞めてしまう解約率を、40%ほど減少することも可能とのこと。現場の手間を削減する、という切り口だと経営者としては食指が動きません。その点で、「解約を防いで売上アップにつなげる」という特徴は、強い営業トークになります。


栗原さん 「解約率が減るのは、保護者とのコミュニケーションが密になるためです。成績が落ちて不安になったお母さんを放置してしまうと信頼が希薄になってしまいます。しかしそのとき、指導プロセスを見せることで繋ぎとめることも可能なのです」

栗原さんの目論見通り、comiruは各学習塾家庭へのスムーズな導入に成功。最初の1年半で、約10社の学習塾と有料契約を結び、ビジネスが回りはじめました。彼は、作ったプロダクトが市場にフィットしていることを確信します。

しかし一方で、今後の成長曲線を描くことができていない。どうすればいいかわからない……。そんなとき、開発を手伝ってくれていたエンジニアがOnlabを紹介してくれたそうです。

栗原さん 「当時は、Onlabのことをまったく知らなくて。でもウェブサイトを見ると、シリコンバレーのノウハウを学べると記載されている。ちょうど抱えている課題を解決できるかもしれないと魅力を感じ、応募を決めました」

こうしてOnlabのシードアクセラレータープログラムに応募した、長谷川さんと栗原さん。それぞれが事業に対する強い想い、それを支える実体験があります。だからこそ、厳しい時期を耐え、資金調達に成功することになるのですが、最初からすべてが順調だったわけではありませんでした。

厳しいメンタリングと集中合宿で、起業家としてのレベルを上げる

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合宿でプレゼンテーションの練習を重ねるTrimの長谷川さん

Trimの長谷川さんは12期生、POPERの栗原さんは13期生。それぞれOnlabと出会ったタイミングは違えども、最初に大きな気づきを得ることができたそうです。

長谷川さんは、定例の進捗報告の際に、事業のポイントを厳しく指摘されたといいます。

長谷川さん「会社員の感覚で、事業責任者が提出するような資料を作って行ったら、『これはなに そんな数値計画はいらないよ』と言われました。KPIをどうするかの前に、プロダクトが世の中に必要とされているか、その検証ができているのか、と突っ込まれたんです」

「これまでにない価値観や視点で、仕事の進め方をたたき込まれた」。長谷川さんはそのように当時を振り返ります。そして、さらに混乱する事態にも直面しました。対話するメンターによってアドバイスの内容が異なったのです。

すべてのアドバイスを採用するとなると矛盾が生じる……。長谷川さんは悩みに悩みました。褒められれば喜び、否定されるたびに凹んだようです。しかしその甲斐もあり、日を追うごとに、自分のビジネスに必要なアドバイスを取捨選択できるようになったのです。

ビジネスの答えは、必ずしもひとつとは限りません。さまざまな意見や情報を見聞きし、その上で自社にフィットするものを選んでいくーー。その連続です。長谷川さんは、プログラムを通じて、起業家として、そして経営者として必要な意思決定力を養うことができたようです。

一方、栗原さんもOnlabのメンタリングを受けて、「ビジネスが大きくならないのでは」という厳しい指摘を受けることに……。課題感は自分でも認識しており、その重要性を改めて実感したそうです。

栗原さん 「メンターにダメ出しをもらいまくったので、すでに課金ユーザー10社との契約があったのですが、一度ゼロからビジネスを作り直すくらいの覚悟で考え直しました。2ヶ月間、さまざまな角度で意見交換していきましたね」

熟考に熟考を重ね、その上で、当初のビジネスモデルに帰ってきました。comiruは現代の市場にフィットしているので、それをどうやってスケールさせていくのか、というところに戻ってきたのです。

プログラムの中で苦労した点について、おふたりは声を揃えて「合宿」と即答します。Onlabでは卒業前に、プレゼンテーションをする機会があるのですが、それに備えて泊まりがけの合宿があるのです。

長谷川さん 「1泊2日の合宿というので、最後はバーベキューして飲み会になるのかなと思っていましたが、全然違いました笑」

まずは合宿に向けて、2日間徹夜して資料を作成。しかし、あっけなくやり直しを指示されることになります。そこからまた徹夜の連続……。「ほとんど寝られなかった」と本当につらかったといった表情で当時を振り返ります。

長谷川さん 「あとで見返したら、あの1週間で47回スライドを書き直しています。最終的に使ったのは16枚で、発表時間はたった5分です」

栗原さんも同様に、合宿までに資料を作りましたが、やはりほとんどゼロから作り直しになりました。

加えてプレゼンテーションの練習でも、とりあえず人の前で話す、と言ったレベルではなく、どこに抑揚をつけるのか、ここの言葉は言わなくてもいい、など徹底して作り込みを続けるのです。

栗原さん 「屋外での声出しもしたのですが、外に出たら、なにか吹っ切れた感じがして、声の音量が上がった気がします笑。また、実はメンターの方に『先生口調のしゃべり方がよくない』と指摘されて、家に帰ったら奥さん相手にプレゼンテーションをしたり、動画を見たりなど、ひたすら練習をしていましたね」

血のにじむようなプレゼン練習。そのような努力・研鑽の積み重ねの甲斐もあり、長谷川さん、栗原さんともに、プレゼンテーションのレベルを格段に上げることに成功したのです。

デモデーで受賞、調達、そして事業のスケールを目指す

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▲Onlabのデモデーで最優秀賞を受賞したComiruの栗原さんとチームメンバー

Onlabプログラムでは最後に、デモデーが開催されます。日本国内のVCや事業会社など200名前後の招待客が集まる前でプレゼンテーションをするのです。

厳しい指導に耐え、プレゼンスキルを磨き上げたことで、12期の長谷川さんは「カカクコム賞」を、13期の栗原さんは「最優秀チーム賞」をそれぞれ受賞しました。

ふたりとも「Onlabに参加してよかった」と声を揃えます。

栗原さん 「いろいろな会社を繋げてくれたり、調達に関して相談に乗ってくれたり。卒業後もチャットで相談すると、すぐにレスをくれるので助かります。メンター制度が続いているのは嬉しいところですね」

長谷川さん 「あと、様々なサービスが割安に使えるのはよかったです。特に、Amazonのウェブサービス無料枠はすごく助かっています。5,000ドルくらいですが、あれがなかったら、資金繰りが結構厳しかったかもしれません(笑)」

長谷川さんにとってOnlabは、積極的に何かを手伝ってくれるのではなく、困っているときにヒントをくれる、いわば「壁打ちの相手」のような存在のようです。メンターと話すことによって、多角的な視点で考えられるようになったといいます。

長谷川さん 「ユーザーへのインタビューが必要であれば、人集めをOnlabが手伝ってくれたこともあります。僕らが大きくなることで、Onlabの価値を上げることができる。2017年3月に資金調達もできて、ようやくアクセルを踏めるタイミングになりました。Baby mapの改善と、mamaroの普及を進めていきたいです」

一方で栗原さんは、「Onlabに参加したから今の自分がある」と語ります。シード期のスタートアップなら、参加して損はない。そこまで言わしめるメリットのひとつが、メンターから伝授された「投資家に向けたストーリーの描き方」です。

たとえば、学習塾全体のユーザーとしては400万人の保護者がいて、そのIDの取得を目指すというストーリー。もし、保護者100万人分のIDが得ることができれば、それを活用して、次のビジネスの一手を打てるようになるーー。そんな話をできるようになったのです。

栗原さん 「実際にそのストーリーを投資家の方に伝え、いい反応をもらっています。現在2017年7月は、資金調達をしてチームは6名になり、次のシリーズに向けてアクセルを踏んでいるところです。今は契約のクロージングに人が介在しなければいけないのですが、将来はウェブでスケールさせます」

社会をよりよくするサービスを展開するTrimとPOPER。スケールを目指して新たな一歩を踏み出した起業家を、Onlabはこれからも支援し続けます。

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