斬新なアクション「ガン・フー」が観客を魅了する

▲映画『ジョン・ウィック』の 左から制作担当・松谷 昴、配給担当・山内 隆史、配給宣伝担当・島田 有希

ハリウッドスターのキアヌ・リーブスが、自身の復活を賭けて挑んだアクション映画『ジョン・ウィック』シリーズ。2015年10月『ジョン・ウィック』、2017年7月『ジョン・ウィック:チャプター2』、そして2019年10月『ジョン・ウィック:パラベラム』と三部作が続々日本で公開され、人気を博しました。

キアヌ演じる主人公ジョン・ウィックは、かつて裏社会で恐れられていた伝説的暗殺者。一人の女性との出会いをきっかけに裏稼業から足を洗い、妻と愛犬とともにひっそりと平穏な日々を送るようになります。しかし幸せな生活は長くは続きません。妻の病死で悲しみに暮れていたジョン・ウィックのもとにロシアンマフィアが現れ、愛車マスタングと妻の形見でもあった愛犬の命を奪われてしまったのです。この出来事を機に復讐の鬼と化したジョン・ウィックは再び裏社会に蘇り、マフィアたちと対決していきます。 

作品の見所の一つが、ジョン・ウィック操る「ガン・フー」です。ガン(銃)とカンフーをミックスさせた銃術で、接近戦に持ち込み短時間に多数の敵を倒すことができるというもの。これまでに見たことのない斬新なアクションシーンが観客を魅了し、3作目の興行収入は1作目を大きく上回る結果となりました。 

ポニーキャニオンでは、2015年に公開された1作目から3作目において、買い付けから配給、宣伝、パッケージ宣伝に至るまで全権利を取得しています。まだヒットが約束されていなかった本作品に対して、なぜ一か八かの大きな決定に踏み切ることができたのでしょうか。

『ジョン・ウィック』とともに「再起動」を果たしたキアヌ

▲『ジョン・ウィック』は「チーム全員で育てた映画」と松谷。島田は「宣伝に正解はない」と話す。

2014年、北米での公開を前にいち早くこの作品に目をつけていたのが、映画作品の買い付け(権利を買ってコンテンツを運営する仕事)を担うビジュアルクリエイティヴ本部制作部 2グループの松谷 昴です。

松谷 「2012年頃から、キアヌ・リーブス主演の新しいアクション映画が公開されるという情報は握っていました。ただ当時はキアヌ自身のキャリアが低迷期にあったことや、“愛犬が殺されたことに怒って敵を皆殺しにする”というストーリーが果たして日本人にウケるのか、という懸念もあり……。実際に台本を取り寄せて読んでみたり、数字を弾いたりしつつ、買い付け・配給・パッケージ宣伝のメンバーたちと、買い付けに踏み切るかどうか何度も話し合いましたね」 

作品自体のクオリティにとどまらず、劇場で当たる作品なのか、パッケージや配信になった段階で伸びる作品なのかなど、考慮すべきいくつかの客観的要素があるといいます。さらにそこに個人の想いが加わり、せめぎ合いになることもしばしば。『ジョン・ウィック』の買い付けにあたっては、全員一致で賛成とまではいかなかったものの、他の配給会社が手を挙げる前のタイミングで買い付けに臨むことが決定。しかしその後、キアヌの激太り写真が激写されるなど、不安は募るばかりでした。 

松谷 「メンバー間にも微妙な空気が流れるなか、映画の撮影が始まりました。ですが、撮影の様子を画像で見た瞬間びっくりしましたね。そこには、あれほど太っていたのにすっかり身体を鍛え上げたキアヌの姿が写っていたんです。全盛期に劣らぬほど格好いいキアヌでした。

その後も新しい画像を見るたびに、不安と期待が入り混じる複雑な心境ではありましたが、2014年に北米で公開されると予想以上にヒット。キアヌ・リーブス復活といえるようなシナリオが見事に出来上がったんです」

『ジョン・ウィック』で繰り広げられるアクションは、新技術でありながら「リブート=再起動」の一面も併せ持ちます。キアヌの代表作『マトリックス』を彷彿とさせるような仰け反りポーズが再現されるなど、往年のファンに懐かしさを感じさせつつ、クスッとさせるようなユーモアも見どころです。北米から映像を取り寄せて初めて1作目を観た時の感想を、公開までの宣伝を担当したビジュアルクリエイティヴ本部 プロモーション&プランニング戦略部配給グループの島田 有希はこう語ります。 

島田 「まず感じたのが、これまでに見たことがないアクション映画だということでした。ガン・フー、いい意味でちょっとダサくて逆に斬新だなと。また、監督チャド・スタエルスキがこだわったという撮影方法も印象に残りました。

当時流行っていたアクション映画は、カット割りを細かくつなぐことでアクションを際立たせるスタイルが多かったんです。でも『ジョン・ウィック』は、長めのカットで一連のアクションシーンをすべてしっかりと見せる。それがとても玄人っぽく、格好良く感じられたんです」

チームの想いとキアヌの作品への愛が共鳴し、ヒットへ

▲キアヌ・リーブスの初来日作品の配給も担当していた山内。

北米でのヒットを受け、メンバーたちの日本公開に向けての期待値は上がっていきます。配給(映画館や興行会社と向き合い公開までのすべての仕事)を担当するビジュアルクリエイティヴ本部 プランニング戦略部 配給グループ主任の山内 隆史は、大きな追い風を感じていたと語ります。

山内  「公開前のタイミングで、キアヌが来日しているというニュースが出たんです。どうやら別のドラマのロケハンで来ていたらしいんですが、それがメディアで話題になって。“ラーメンが大好きなキアヌ”とか“(一人)ぼっち行動をするキアヌ”とか、日本にとどまらない世界的なキアヌ・フィーバーが到来して。

そんな経緯もあって、こちらから宣伝を仕掛けたわけではないのに信じられないくらいのパブリシティが出て、僕たちにとっても本当にラッキーだったんです」

『マトリックス』以降、目立ったヒット作に恵まれなかったキアヌ主演の作品ということもあり、配給担当としても苦戦が予想されていました。しかし、予想以上にキアヌ自身が作品に対して前向きになってくれたことで、日本での公開がスムーズに進んだのは紛れもない事実でした。 

山内  「正直なところ、2014年から2015年の映画市場を見れば、『ジョン・ウィック』の公開に関しては劇場サイドも、もちろんファンだって疑心暗鬼だったと思うんです。僕たちがどんなに自信を持ってその魅力を伝えたところで、本当にヒットするの? キアヌ、身体はちゃんと動くの? と。

でも北米のインタビューで、キアヌ自身が『こんな風に自分が復活を果たせるなんて予想もしていなかった』と語ったほど素晴らしい作品に仕上がって。公開前にはしっかりプロモーションのために来日してくれるなど、積極的に作品に関わってくれたおかげで、僕たちもガッツリ、キャンペーンを張ることができました」

ヒットのための「正解」はない。試行錯誤することが醍醐味

▲いよいよパッケージ発売となる『ジョン・ウィック:パラベラム』。発売を前に談笑?中のチーム『ジョン・ウイック』

キアヌ自身の映画への想い、そしてメンバー一丸となって買い付けから配給、プロモーションに奔走した結果、『ジョン・ウィック』は日本でも大ヒット。その後、続編公開に従って人気は衰えることなく上昇し、2019年『ジョン・ウィック:パラベラム』に関してはシリーズ史上ナンバーワンヒットとなりました。買い付け担当の松谷は感慨をこう語ります。

松谷  「いくら内容が良くても、テーマや題材が市場に合わずヒットに至らないという経験は僕にもいくつもありますし、そのたびに家でひっそり反省したりもしてきました。そのぶん、みんなで頭をひねりながら買い付けた作品が話題になり、シリーズとともに人気が加速していくのはとても感慨深いものがありましたね。特に『ジョン・ウィック』に関しては、ポニーキャニオンの配給チーム全員で育てたという自負があるんです」 

配給担当の山内は作品のヒットについて、自らのキャリアとキアヌへの想いを重ねます。 

山内  「ポニーキャニオンに来る前に別の会社で配給の仕事をしていたんですが、ちょうど入社した年に担当したのがキアヌの主演作『ハートブルー』だったんです。キアヌの初来日作品なんですが、あれから30年近く経ってもう一度彼の作品に、しかも復活作品に携われるとは……。長いスパンで活躍する役者さんの映画にかかわり続けられるのは、この仕事の醍醐味のひとつだと感じます」

予告編などの動画製作にも携わった宣伝担当の島田は、地道な活動が実を結んだのではと分析しています。 

島田  「『ジョン・ウィック』に関しては、ワンカットで長く撮影されたアクションシーンをどうやって短い動画にまとめるか、とても苦心しました。プロモーション動画ひとつでヒットが生み出せるわけではないですが、観た人をいかに引きつけ、次回作への興味を絶やさずに持続してもらうか。そのための創意工夫の積み重ねが結果に繋がったのかな、と。

 私は、宣伝に“正解”はないと思っています。もし宣伝の正解がわかったら、すべての映画は当たるわけですから。正解がわからないまま、この動画を出したからお客様が100人増えたのかなとか、このツイートが跳ねたから300人増えたのかな、と予想しながら仕事をするのって、結構面白いんですよ」 

3月18日、『ジョン・ウィック:パラベラム』のパッケージ発売を控えた現在。チーム全員が『ジョン・ウィック』プロジェクトの成功を祈り、見守ります。