期待を上回るヒット作となった『ジョン・ウィック』シリーズ

▲左からパッケージ宣伝担当・齊藤 竜、森 勇斗、制作担当・松谷 昴

ハリウッドスターのキアヌ・リーブスが、自身の復活を賭けて挑んだアクション映画『ジョン・ウィック』シリーズ。2014年に北米で1作目が公開され人気となった本作品ですが、ポニーキャニオンでは2015年の日本公開にあたり、買い付けから配給、宣伝、パッケージ宣伝に至るまで全権利を取得。ヒットを目標にメンバー一丸となって駆け抜けてきました。

そして2019年10月に3作目とな『ジョン・ウィック:パラベラム』の公開を経て、本年2月18日にはデジタル配信がスタート、3月18日にはいよいよパッケージソフトの発売を迎えます。 

『ジョン・ウィック』シリーズに関しては、買い付けの段階から「賭け」要素がとても強かったといいます。というのも、1作目公開前のキアヌ・リーブスは激太りがパパラッチされるなど、かつてのスマートでスタイリッシュな姿とはかけ離れたイメージがついてしまっていたのです。

果たしてキアヌが、作中でマフィアの世界へ“蘇った”ジョン・ウィックのように、ハリウッドの世界へ返り咲くことができるのか? それがチームの一番の不安要素でした。買い付けを担当したビジュアルクリエイティヴ本部制作部 2グループの松谷 昴はこう振り返ります。

松谷 「2013年の買い付け段階では、チャド・スタエルスキ監督もまだ無名に近かったですし、私たちにもどんな作品に仕上がるか見えていませんでした。握っていた情報としては、キアヌが『ガン・フー』と呼ばれるアクションに挑むということくらいだったんです。

そんな状況で気がかりだったのは、果たして主演のキアヌがどこまで“仕上げて来られるのか”。当時は人気も低迷気味でしたし正直心配でした」 

しかし買い付けチームの不安をよそに、2014年北米で公開された1作目『ジョン・ウィック』のなかでキアヌは見事に復活を遂げました。かつての超話題作『マトリックス』を彷彿とさせるキレのあるアクションで、観る者を魅了したのです。そして2015年10月、晴れて日本公開。キアヌの積極的なプロモーション活動も功を奏し、無事にヒット作となりました。 

SNSを駆使したプロモーションで“正しく遊ぶ”

▲キアヌ・リーブスといえば『スピード』『マトリックス』と齊藤。『ジョン・ウィック』で初めて彼を知る世代に彼のカッコよさを伝えたい。

劇場公開を引き継ぎ、パッケージ製作を始めとするパッケージ宣伝に携わったのが、ビジュアルクリエイティヴ本部プランニング戦略部プランニンググループ主任の齊藤 竜です。作品をよりわかりやすく噛み砕き、気軽にファンが作品に触れられるようにと、松谷ら買い付けチームとともに企画を練りました。

齊藤 「僕らおじさん世代にとってキアヌといえば、『マトリックス』や『スピード』の印象が強いんですよね。そんな同世代の方たちが『ジョン・ウィック』を観て、あの頃のワクワクする気持ちとか、『俺ももっと頑張ろう』みたいな高揚感を思い出してくれるといいなと。そんなことをイメージしながら企画を考えました」 

1作目のパッケージ宣伝では、キアヌと同世代で同じく芸能界への“復活”を果たしたタレントのヒロミさんに発売会見のアンバサダーを依頼。『ジョン・ウィック』 というゴリゴリのアクションをわかりやすく情報番組やwebで紹介してもらう、お茶の間に近づける宣伝に挑みました。このあと足かけ5年間の『ジョン・ウィック』シリーズの公開時・パッケージ、両宣伝展開を通して、特筆すべきは宣伝手法の変化でした。2015年の第1作から2019年の第3作公開にかけて、プロモーションのトレンドは大きく変革していくことになったのです。 

齊藤 「SNSの影響力が年々大きくなり、無視できない存在になっていきました。4年の間にSNSのトレンドもどんどん入れ替わり、1作目公開当時に主流だったFacebookに、2作目になるとTwitterが取って代わり、最新作ではYouTubeも加わって。

キアヌのファン層から拡げはじめ、 より若い世代も巻き込んでいきたい状況の中で、 私たちも慣れないSNSを駆使しながら宣伝手法をアップデートしていくことが求められましたね」

チームで試行錯誤しながら運営を始めたSNSの公式アカウント。初期の頃は愚直に作品情報を発信するに留まっていましたが、徐々にコアファンに向け“情報プラスアルファ”を届けられるようにと、チーム全体で創意工夫するようになっていったといいます。買い付けの松谷はこう語ります。   

松谷 「真面目に作品動画を投稿することもあれば、ガラッとトーンを変えて、愛犬家であるジョン・ウィックにちなんだ愛犬動画をアップしたり。『ジョン・ウィック:パラベラム』には寿司職人の殺し屋が登場するんですが、投稿文に寿司の絵文字をふんだんに使って遊びごころを見せたりもしましたね。

カジュアルさを大事にしながらも、誰のことも傷つけず、間違った情報を出さず、違法なことをしないように。“正しく遊ぶ”といった感覚を心がけながら運用していきました」 

「双方向のコミュニケーション」で、作品はより一層盛り上がる

▲「ジョン・ウイック:パラベラム」からチームに参加した森。SNSやYouTubeを駆使した宣伝施策を企画。

ビジュアルクリエイティヴ本部プランニング戦略部プランニンググループの若手社員森 勇斗は、『ジョン・ウィック:パラベラム』からプロジェクトに参加。主に担ったのはインフルエンサーを起用した宣伝施策でした。

森 「僕は、今どのコンテンツでどんなことが流行っているのか日常的にチェックするように心がけているんです。最近はスキマ時間でTikTokをよく見ているんですが、やはり動画の力は侮れないと日々感じていて。なかでもYouTubeがここまで大きなコンテンツに育ったからには、それを宣伝に活用しない手はないということで、積極的に関わらせてもらうことになったんです」 

は膨大な量の映画チャンネルを一つひとつ確認しながら、魅力的なYouTuberを探し続けます。 

森 「キアヌ愛や『ジョン・ウィック』愛を持ったYouTuberに、どうしても出会いたかったんです。動画って『言わされてる感』(宣伝感)が露骨に出てしまうので、愛情を持っている方に伝えていただくのが一番なんですよね。そんな方たちに、オリジナリティのある切り口で作品を紐解いてもらう。

今の時代、僕たち“中の人間”が伝える情報よりも、彼らのような影響力のあるキャラクターが発信する情報にこそ“力”が宿ると思うんです。宣伝とはいえ、一方向ではなく双方向のコミュニケーションが求められるようになってきていますよね」 

こうして発掘された2組のYouTuberとともに『ジョン・ウィック』のプロモーション動画が製作され、これまでに2本が公開されました。3月18日『ジョン・ウィック:パラベラム』のパッケージ発売に合わせて3本目の動画が公開されてこの施策は完結します。“双方向のコミュニケーション”について、買い付けの松谷がこんなエピソードを明かしてくれました。 

松谷 「動画だけではなく、SNSはまさに双方向ですよね。実は『トリロジー・エディション』のパッケージについて、Twitter上でファンとの間に印象的なやり取りがあったんです。パッケージに描かれるのが銃を分解したスタイリッシュなビジュアルなんですが、これを見た銃マニアのアカウントが『これはエアガンではないか?』という投稿をして、一時ツイッターが“ざわざわ”したんです」
 

一歩間違えると問題に発展しそうな一件ですが、公式アカウントはユーザーの声に耳を傾け臨機応変に対応しました。 

松谷 「ビジュアルはアメリカから送られてきた素材でしたが、確かにそうだと、『作品に適さないビジュアルを作ってしまいました。ご指摘を受けて製作し直します』と発信しました。すると皆さんとても優しく受け入れてくださって。

逆に、ファンからの発信を受け止めて、きちんと返す。当たり前のようなキャッチボールが、結果的に『ジョン・ウィック』という作品のムードを盛り上げることに発展しました。この経験は大きな学びになりましたね」 

夢を語りながら、プロとしてのプライドを持ち続ける

▲劇場公開1作目からのチラシを見ながら、盛り上がるチーム「ジョン・ウィック」

買い付けから宣伝、配給、パッケージ宣伝。ポニーキャニオンとして全権を取得して日本の映画市場に送り出した『ジョン・ウィック』シリーズも、2019年10月に公開された『ジョン・ウィック:パラベラム』によりいったん完結となりました。3月18日にパッケージ『ジョン・ウィック:パラベラム』の発売を待つなか、3人が仕事の醍醐味について語ります。

 森 「最近はYouTubeと合わせてTwitterキャンペーンの運営やインフルエンサーとのタイアップ施策も企画しています。そのなかで、とても感動する出来事があったんです。大好きなラジオのパーソナリティの方が、番組のオープニングトークで『ジョン・ウィック』愛を30分くらい語ってくれたんです。

それを聴いて感動し、すぐに自らタイアップ・オファーを出したところ快諾してくださって。やっぱりいい企画の根底にあるのは作品愛だと痛感しましたね。これからもどんどん愛に溢れた施策を打ち出していきたいです」 

事故が起こらないよう安全に収めることと、挑戦すること。この塩梅を見極めるのがプロジェクトの醍醐味だと語るのは松谷です。 

松谷 「僕は配給チームやパッケージの宣伝チーム、両方とも関わっているんですが、それぞれが結果を出しながら、最終的に全体としてトラブルのない統一の取れたプロジェクトに収めることが仕事の醍醐味だと感じています。とはいえ、やはりルーティンの繰り返しではなく、いかに新しいことに挑めるか模索することも忘れてはいけない。 

ジョン・ウィックシリーズのパッケージ製作でいえば、スチールブックというこれまで出したことのない形を企画したり、海外から送られてくる素材を駆使しながらシズル感のあるビジュアルをつくったり。新しい施策を一つひとつ積み上げながら、ポニーキャニオンだからこそ実現できる斬新な取り組みを開拓していければと思っています」 

齊藤は、楽しみながらも日々研鑽しなければならないことが仕事の面白さだと言います。 

齊藤 「この仕事って、夢見がちなことを堂々と語るのが許されていると思うんですよね。『ジョン・ウィックに触れれば、きっと今よりくなった気分に浸れるよ』という夢のあるメッセージを、宣伝という仕事を通して届けられるのはとても楽しい。

一方で、お客様の期待を裏切らないために、“プロらしい”仕事を怠ることはできないというプレッシャーもあります。SNSなどツールの運用方法もそうですし、作品やその背景、周辺情報に対する収拾力についても同様です。『私たちよりも、お客様の方が詳しいこともある』という戒めを忘れずに、日々学習ですよね」

『ジョン・ウィック』という作品とともに走り抜けた日々。3月18日『ジョン・ウィック:パラベラム』のパッケージ発売とともに一旦エンディングを迎えますが、彼らの挑戦はこれからも続いていきます。