とあるフリーライターが挑む「新しいPR支援」の事業化

2015年10月より、ストーリーテリング事業を展開しているPR Table。核となる「ストーリー」の製作には、ライター・エディターをはじめ、多くの外部の方々がかかわってくれています。そのうちのひとりが、フリーランスである大島悠。彼女の思いを通じ、ストーリーテリングの可能性を探ります。
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「企業のストーリーをつくる仕事が事業化した!」即レスで参加の意を表明

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▲2015年9月15日、投稿された新サービスの告知。一番はじめに反応したのが、実は大島だった

大島がPR Tableにかかわるようになったのは、当社がストーリーテリング・サービスをスタートする直前の2015年9月のこと。サービス立ち上げにあたり、ある日、私たちは自社で運営するオンラインコミュニティ「PR Table Community」にライター募集の告知を投稿しました。

それをたまたまリアルタイムで見ていた彼女は、その募集にいち早く手を挙げたのです。それは、投稿からわずか30分後のことでした。

大島は、会社案内やコーポレート・サイト、社内報などの企業広報ツールを提案・制作することを生業としているフリーランスのライター・ディレクターです。

25歳のときに、企業広報専門の制作会社に入社。企業のビジョンや強みなどを伝えるために経営者や社員の思いを深掘りし、表現手法を探りながら最適解を探していく仕事の面白さに目覚めていきました。

多くの企業にそうしたライティングのニーズがあることを知った彼女は、2012年、29歳のときに独立し、フリーライターとして活動を開始。しかしほどなく、自分の仕事が意外にニッチなものであることに気づきます。

仕事自体の依頼はそれなりにあったものの、周囲のライター仲間には共感してもらえないことがほとんどでした。「企業の言いたいことを代わりに書いてるだけで、何が面白いの?」と言われたことも……。

大島 「今でもそうですが、ライターだと名乗ると、たいてい『どの雑誌に書いてるの?』『何のメディアに載ってるの?』と聞かれるんです。そしてみんな、ライターというのは好きなジャンルのことを書く仕事だと思っていることが多くて。当事者ですらそう。
企業広報関係の仕事をする面白さや意義を、なかなか理解してもらえないもどかしさをずっと感じていました。そもそも、書きたいことを書くのがライターの仕事ではないはずなんですけどね」

そうした気持ちを抱えながら3年のときを経て、出会ったPR Tableの事業。社内に埋もれているさまざまなストーリーを掘り起こし、コンテンツ化していくというサービスは、まさに自分が取り組んできたことそのものじゃないか――。

大島 「自分と同じ課題感をもっていて、しかもそれを事業として立ち上げる人たちがいた。そのことが、とにかくすごくうれしかったんです。これに私が手を挙げない理由は何ひとつない、と」

PR Tableのストーリーテリング事業は、共同創業者のひとりである菅原弘暁を中心に、2015年10月、最小限のリソースでスタートしました。はじめは大島も、ひとりのライターとしてストーリー製作に携わるようになります。

自分のスキルが事業の成長に直結、かかわる意義の大きさを感じる

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▲2015年4月12日のPR Table主催イベントで、はじめて「編集者」として名刺交換

事業開始から数ヶ月後。案件数やライターの急激な増加に伴い、今度は編集担当として動けるメンバーが必要になってきました。そこで私たちは、翌年2016年の2月から、もともと企業案件に慣れていた大島に声をかけ、エディターとしてかかわってもらうことになったのです。

とはいえ、彼女も当時はまだ事業の根幹に深く立ち入っていくつもりはなく、PR Tableは“取引先のひとつ”にすぎませんでした。

しかしそのスタンスは、2016年3月のある日、菅原がアップした1本のブログによって大きく変わることになります。

その日は2件の取材が重なったため、それまでは必ず一緒に取材に行っていた菅原と大島が、はじめて同時進行で別々に行動。業務の手配なども、大島が自身で行ったのです。

今でこそPR Tableでは、クライアントのコンサルティングや取材の調整、取材後の音声書き起こし手配、ライターへの諸連絡といった業務オペレーションがシステム化されていますが、創業当初はほとんどが手作業で行われていました。

「――取材終わりに、スマホで自分が何もしなくても仕事がすごい動いているのを見て、電車の中で泣きそうになったよね。いや、ちょっと泣いてたかも。

外から見たら、“蟻の一歩”と言われてしまいそうな進化でも、当事者からしたらすごい意味があることなんです。」(PR Table Founders Blog 2016/3/14より)
大島「あ、そんな風に思ってくれたんだ、と。私はスタートアップと関わるのがはじめてだったので、それがすごく新鮮な感覚だったんです。誰かと仕事をするとき、より大きな価値を感じてもらえたほうが自分もうれしいじゃないですか。だから、それならもう少し、一緒にがんばってみてもいいかなと思ったんですよね」

これが契機になり、大島は、それまでよりも一歩深くPR Tableと関わるようになっていきます。

エディターやライターへのリスペクトがあるから、対等に対話ができる

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▲2016年からは、編集だけではなくオペレーション構築や体制づくりにもたずさわるようになった

事業立ち上げから1年あまりが経った2016年秋ごろ、ストーリー製作の案件数は加速度的に増えていました。しかしそのウラで、解決すべき課題も次々と積み上がりつつあったのです。

その頃PR Tableは、最小限のリソースで業務を進めていくために、効率を重視して完全リモート化した外部スタッフオペレーションを構築しようとしていました。しかし大島は、コミュニケーション不足によるストーリーのクオリティ低下や、外部ライターの離脱を懸念しはじめます。

大島「もうすでにかなり首を突っ込んでいたので、他人ごとではなくて。とはいえ、あくまでも社員ではないですからね。どこまで出しゃばっていいものか……という迷いはありました。
でもやっぱり、目指しているゴールは同じでしたから。それに1年のお付き合いから、真摯に提案すれば話を聞いてくれる人たちだという安心感があったんです。そうじゃなかったら、何も言わずにそーっとフェイドアウトしてたかもしれないですけど(笑)」

そこで彼女は、そのとき感じていた課題と、それに対する改善提案などを整理して、菅原に対して率直に投げかけることに。

そこでいくつかの議論を交わし、業務改善を行ったのをきっかけに、PR Tableと大島のあいだにあった、見えない“遠慮の垣根”がまたひとつ取り払われました。

菅原 「誰に対しても垣根をなくすかと言われたら、それはちょっと違うかもしれない。でもこの人は、保身を考えているわけでも、ポジショントークをしているのでもなく、本気で事業を良くしようとしてくれているーー。そう思えたから、僕らも本気で向き合えたのだと思います」
代表である大堀兄弟(航・海)や菅原は、事業のことだけではなく、会社の未来について大島に話すように。そして大島もその未来に向けた提案や体制づくりに、積極的にかかわるようになっていったのです。

大島「フリーランスの作り手として仕事をしていると、企業から単なる“下請け”扱いされることも多いんです。でもPR Tableの場合、良いストーリーを書いて価値を生み出すエディターやライターに対するリスペクトがすごく強くて。だから期待には応えたいし、たとえダメなところがあっても少しずつ一緒に改善していこう、と思えるのかもしれないですね」

ちなみにPR Tableのオペレーションシステム開発は、いまも“ずっと継続中”です。日々ディスカッションを交わしながら、細かな改善を重ねています。

あえてフリーランスのまま、新しい広報・PR支援の形を模索していく

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事業を通じて「ミスマッチのない社会を実現する」――PR Tableのビジョンに共鳴し、事業の成長に大きくかかわっている大島。彼女はこの事業を通して、企業広報・PR支援の新しい形を模索していこうとしています。

細やかな情報発信抜きにしては、あらゆる企業活動が成り立たなくなっている今の時代。

たとえば「いい人材が採用できない」などの課題を抱えているのに、コーポレート・サイトを見ても事業内容や社員の働き方がイマイチよくわからないなど、必要な情報発信ができていない企業も少なくありません。

大島「せっかく採用候補者の方が『どんな会社かな?』と興味をもって調べてくれていたとしても、そこに情報が用意されていなければ意味がないですよね。それだけでも、会社にとっては大きな機会損失です」

しかし客観的に自社の魅力や強みを認識し、しかるべき人に伝わる表現を模索したうえで、最新のコンテンツを常時そろえておくのは……かなりハードルが高いことです。

だからこそ、プロのPRパーソンやエディター、ライターがもっと活躍できるのではないか。企業が言葉にできていない価値を掘り起こして形にした「ストーリー」は、重要なコンテンツのひとつになり得るはず。大島はそう考えています。

大島「もし私が『好きなジャンルのことが書きたい』と思っていたら、この仕事には向かなかったでしょうね。でもここには確実に書き手へのニーズがあって、それは決して“企業の言いなり”なんかじゃありません。ビジネスを活性化するために、絶対必要なことなんですよ」

スタートアップの成長スピードを間近で体感し、さらに深く事業に参画していきたいと考えた大島は、2017年1月から定期的にPR Tableのオフィスに常駐するようになりました。

彼女はあくまでも、社員ではなく、かといって完全な“外部の人間”としてでもなく、プロジェクトメンバーのような立ち位置で、会社の成長に貢献しようとしています。

大島 「あえてフリーランスのまま、半分は他の仕事をしながらPR Tableにかかわることで、他の仕事で得た知見も活かせるかな、と。状況はめまぐるしく変わっていて、もはや単なるエディター、ライターではなくなってきていますけど。
でも自分にできることがあるうちは、自分の立ち位置や役割を柔軟に変えながら関わっていくつもりです。そんな働き方もアリだと思っているんですよね」

PR Tableのストーリーテリング事業は、まだまだ発展途上。解決すべき課題やハードルにぶつかることも多々あります。しかし大島自身はそのスピーディーな変化を楽しみながら、日々の仕事に取り組んでいます。

どんな企業にも、必ずストーリーが眠っています。それを掘り起こし、磨きあげて多くの人に伝えていく――なかなか理解してもらえなかった、この仕事の面白さと意義。大島はそれを、今度はひとりではなくPR Tableの仲間とともに、より広げ、深めていきたいと考えています。

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