奈良・宇陀に新たなうねりを生むロートの取り組み

奈良県の南東部に位置する奈良県宇陀市。ロート製薬の創業者、山田 安民の出生の地であり、ロート製薬の大切な場所として代々受け継がれています。

企業はなんのために存在しているのか?社会にどう貢献するのか?東日本大震災を経て改めて考えるようになったロート製薬。これからの社会を考え、日本の各地域に目を向けるとさまざまな課題があります。

社会に生かされている企業として少しでも取り組むべきであるとの考えで、代々受け継がれてきたこの大切な地でも取り組みを行っています。

宇陀市では、2014年から美と健康のアプローチのひとつである食の根幹「農業」をスタート。農業法人はじまり屋として有機JASの野菜を関西や関東の一部店舗(小売店)や飲食店を通じて、たくさんの方々にお届けしています。

さらに農業だけではできない地域の貢献(ねづき)の新しい在り方として、2017年には「Next Commons Lab奥大和(以下、NCL奥大和)」として官民連携の取り組みをスタート。

食と農をテーマにこの地で生業づくりをしたいという想いを持った起業志望者(ラボメンバー)のサポートや、地域でのコミュニティづくりを行っています。

ラボメンバー約10人と共に「NCL奥大和」の事務局として活動をする生田 優希。ロート製薬のアグリファーム事業部に所属をしながら、将来的に宇陀を中心にした奥大和という土地が、挑戦や起業したいという人たちであふれ、新しい文化が生まれるような町にしたいと思い、一人ひとりの伴走をしています。

ラボメンバーの活動は一人ひとり異なります。地ビールをつくったり、馬との共生社会を目指し交流プログラムを行うメンバーがいたり。直近ではジェラート屋もオープンし、さまざまな形で宇陀という街に新たなきっかけが生まれたことで、少しずつ新たなうねりが生まれています。

地元民をファンに変えた、とことん向き合うメンバーの逃げない姿勢

生田がこのチームへ参画したきっかけは社内公募でした。

生田 「手を挙げて現地に飛び込みましたが、裸のまま草原に放り出された感覚で、すべて自分たちでゼロから考える環境であることを痛感させられました」

ロート製薬に根づく文化「若手でも手を挙げるなど、挑戦を良しとする」。社内公募もそのうちのひとつです。

縁のない地域でしたが、ゼロからイチを生み出す仕事に興味を持っていた生田が飛び込んだのは2017年春のこと。

右も左もわからない状況からのスタート。地元の方も当初は外から来た生田を快く歓迎していたわけではありませんでした。それでも住民票を移し、地域のひとりとしてお祭りなど行事にも積極的に顔を出すように。

宇陀市内にはロート製薬2代目の山田 輝郎さんのことを知っている方も多くいらっしゃいます。きっかけは教育施設の一部や駅前の時計台、文化センターなどを寄贈されていたこと。

ロート製薬として深く思い入れのある土地ですが、実際に地域の方々からの感謝も多く、ロート製薬が取り組みをする中で、「ここでなければ絶対できない」という想いもあります。

さまざまな志を持った若いラボメンバーがたくさん来て、生田がサポートをする中で、現在はそれぞれの想いが少しずつ形になっていくフェーズに。

閉まるお店が多い中、逆にお店をオープンする動きも見えてきたことで、一部の地元の方の中には「若い人がこの土地で頑張ってくれている」と、ファンになって勝手に宣伝してくれる方も。

生田 「少しずつ町の様子も変わる中で、地域の方々も温かく迎えてくれ、血縁を越えた家族のような関係がたくさんできたんです。現地にいるからこそ、夢やビジョンを語る場を継続的につくるなど、逃げない姿勢が重要なのだと感じました」

十人十色の個性豊かなメンバーと刺激し合うからこそ見えたこと

約10人のラボメンバーもバックグランドが異なり、個性が豊か。

「NCL奥大和」としてチームをどうつくるか?とともに事務局として、「NCL奥大和」としてどう地域の方々と共に歩んでいくのか?地域の方々とのコミュニケーションも欠かせませんし、奈良県や宇陀市など行政との関係構築も必要です。

現段階でそれぞれの違いを認めつつも、どんなチームをつくるべきか?事務局員として、生田の悩みはあります。それでも地域で活動をする中で、結局は人と人との関係。個人としての存在や価値を求められていると感じ、さまざまな活動をしていきました。

ラボメンバーのミーティングを月1回設定して「NCL奥大和」内のチームビルディングに注力しながら、メンバーと地域を結ぶためのコミュニティづくりの一環で「NCL奥大和」を知ってもらうために想いを伝える場や、外部のファンディングを活用して、図書館をつくるプロジェクトを立ち上げることで交流の場をつくっています。

生田 「ラボメンバーは『自分たちの未来は自分たちでつくる』という気概のもと集まっている人たちが多いので、これまでにない刺激で私自身の行動も変わりました」

今、生田が大切にしているのは、多様性を受け入れることや常識というものを捨てること。

いろいろな考え、立場の人がいるということを理解し、許容することでどんなチームになるべきかをいつも考えています。「永遠の課題です」と話すものの、いろいろな立場の人と未来に向かってひとつのプロジェクトを進めていることが、彼女にとってやりがいの一部になっています。

ロート製薬では、モノづくりをして、お客様にご愛用いただくことでビジネスを展開していますが、今後の社会を考えると、このビジネスモデルも考えなければならないかもしれません。

それらを考え、小さくても実行していく場が宇陀にはあります。しかもこの地は「ロート製薬」があらゆるところに散らばっている、原点の場所。ここでの活動を通じて、ロート製薬に対する誇りと共に活動を通じて見えてきた成果もさらなる活動の源になっています。

生田 「2014年から始まった農業法人はじまり屋では昨年有機JASを取得し、『NCL奥大和』でも現在宇陀で事業やお店を構えているメンバーも約半数と、通常よりも早いペースで実業が見え出しています。さらに、コミュニティづくりの一環として外部ファンディングにより小さな図書館もつくることができたので、さらにコミュニティづくりを加速させていきたいです」

ポジティブに未来を考えるきっかけを──避けられない課題を宇陀から変える

現在、この地を通じてロート製薬が目指すのは、これまでの地域貢献の形ではなく、今の時代に合った企業の関わり方で宇陀を成立させていくこと。

生田 「これまでの企業による地域貢献の代表例は、工場等を建て雇用を生み出し地域経済の一端を担っていることが多かったと思います。少子高齢化が急速に進む現在、地方の背負う課題をそのアプローチだけでは解決できなくなっていると感じています」

地域における企業の役割のひとつとして、もっと根本である「人づくりからのまちづくり」や「小規模でもその土地の特徴を生かした事業」というものだと考えていると言う生田。

生田 「その中のひとつのロールモデルとして、社会に発信できるものにしていきたいです。徐々に効果を発揮することで、10年後には宇陀がとてもおもしろい町になっていて、実はロートも関わっていたとなったらいいなと思います」

また、ロート製薬の社員を含めさまざまな人に興味を持ってもらおうと考えています。

生田 「社員がロート製薬を知るきっかけのひとつとして、創業者の出生地である宇陀へ気軽に関われるようにしていきます。そして、ロート製薬としてみんなで未来を考えるきっかけの場所となればいいなと思っています。また、社内メンバーだけでなくたくさんの方々にも知っていただきたいですね」

宇陀市は日本の課題先進地域。0~4歳は約650人に対して90~94歳は約700人。25~29歳が少なく、高齢者がたくさんいらっしゃる。生田が現地に赴任をして以降、亡くなる方もいらっしゃいました。

日本各地に残るさまざまな課題。その中でも日本の人口減少・高齢化は避けられません。新たな地域貢献のひとつとして、活動をすることで、そのことが挑戦人口を増やす鍵だと生田は言います。

生田 「地域や地域の人々と多様に関わる人々を指す『関係人口』ではなく、たくさんの人がさまざまな取り組みをしながら、その『挑戦を応援する地域の人口』、つまり、『挑戦人口』を増やして地域を良くしていきたいですね。生き方はいろいろあっていいと思うし、そのアプローチで『NCL奥大和』もラボメンバーと一緒に伴走していきたいです」

生田とラボメンバーの挑戦はこれからも続きます。