本音の悩みに誰よりも耳を傾ける”コーチング社員“が、個人と会社の価値観を結ぶ

仕事上の不安から、恋人とのケンカまでーービジネスパーソンが抱える悩みは多種多様です。Sansan株式会社人事部の三橋新は、「コーチング」の手法を用いて、これまで1,500時間以上かけて、多くの社員と向き合ってきました(2017年11月時点)。たったひとりではじめた三橋の活動は、会社と社員の“幸せな“関係を生み出しています。
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迷える30代が見出した圧倒的な強みは、人を和ませる“雰囲気”

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▲人事部・三橋新
どんなに優秀な人間であっても、人生から悩みが尽きることはありません。やりがいのある仕事にモチベーションが高まったと思えば、翌日にはプライベートな悩みにより思うように仕事が進まくなる……。そうした気持ちの変化のなかで、私たちは毎日の仕事に取り組んでいます。

Sansanは、「成果に向き合うことで、人は成長する」という共通認識のもと、社員がそれぞれに高い目標を掲げています。こうした風土のなか、「ビジネスの出会いを資産に変え、働き方を革新する」というミッション達成に向けて、社員は力を尽くしてきました。

しかし、高い目標に向き合うが故に、壁にぶつかることも少なくありません。そうしたときに、悩める社員にとって心の拠り所となっているのが、人事部の三橋新です。彼は、自身が身につけた「コーチング」の手法を用いて、社員の悩みに日々耳を傾けています。

三橋 「なんとなく悩みを抱えていて、だけど何が問題なのか分からないことってありますよね。コーチングの役割は、相手の話を傾聴することで悩みを明確にすることです。さらにその悩みに踏み込んで、自分から解決に向かえるようサポートしていきます」

彼がコーチングに出会ったのは、30代を迎えた頃。それまで、経営企画やマネージメントなど、10を超える部署を経験してきた彼は、自身の進むべき方向性に悩んでいました。2013年、8月のことです。

三橋 「20代のころは、与えられた仕事でベストを尽くすというスタンスで、仕事への不満もありませんでした。ところが、専門性のある同僚が圧倒的な成果を出しているのを見ていて、ふと、『自分の強みってなんだろう』という疑問が沸いたんです」

疑問に対して答えを見出せなかった三橋は、ほかの社員から自分自身への評価を聞くことのできる人事制度「強マッチ」を活用することに。このときに参加者から出てきたのが、「三橋の強みは、話しやすい雰囲気」という言葉でした。

三橋にとって思いもよらぬ言葉でしたが、彼は“雰囲気”という漠然とした強みを、どのように育てていけばいいのかを模索しはじめます。そうして思い至ったのが、「コーチング」でした。

同じ会社で働く社員だからこそできる、誰よりも共感をもったコーチング

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▲ストレングスファンダーを使って強みを活かすコーチング。 強みはコーチングのテーマとして、扱うことが多い
「コーチングの価値とは、何だろう?」――コーチングの資格を取得するためスクールに通いながらも、その価値を明確に認識できなかった三橋は、オフィスを実践の場としました。昼休みなど、業務時間以外の時間を使って、コーチングに取り組む日々がはじまります。

三橋 「当時は、仲の良い同僚などをランチに連れ出し、カフェなどで1時間程度コーチングを実践していました。周りの人は『どうしたの?』という反応で、ちょっと変人のように見られていた気がします(笑)。でも、徐々に私がやっていることを理解してくれる社員が増えていきました」

実践を繰り返すなか、三橋は一緒に仕事をする同僚が、実にさまざまな悩みを抱えていることを知ります。強みとなる“雰囲気“により、目の前の人の心を開かせる彼のもとには、仕事だけではなく、プライベートの悩みまで相談する社員が集まってきました。

三橋 「印象的だったのは、『はじめて100%話を聞いてもらえた』といわれたことです。たとえば彼氏のことを相談していたのに、気がつくと相手の話に付き合わされていたということがありますよね。でも、コーチングでは、相手の言葉に完全に耳を傾けます。私の場合、『壁であろう』と思っているくらいですから」

人材育成のため、コーチングを取り入れている企業はSansanだけではないでしょう。しかし、同じ会社の社員がコーチングをするというケースは稀だと思います。三橋は、コーチングを内製化する価値を、このように考えています。

三橋 「コーチングで大切なことは、最初に安心できる関係性を作ることなんです。私は、コーチングをする相手と同じ会社にいて、彼らが抱えている問題に共感できる。ですから、より相手の気持ちに寄り添ったコーチングをすることができるんです。もちろん、いつでも声をかければコーチングしてもらえるというメリットもあるでしょう」

社内でコーチングを行う価値を確信した三橋は、会社に認めてもらうため、会社公認の部活動「よいこ」に申請し、承認を受けます。このことは、より多くの社員にコーチングを受けてもらうきっかけとなりました。

ひとりきりでスタートしたコーチング活動が、社内制度として採択される

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▲手を使ってクレヨンで絵を描いてもらうことも、 自分の潜在課題を可視化する良い手段になる

このタイミングで、三橋が果敢にチャレンジしたことがあります。それが、社長の寺田親弘に対する、マンツーマンのコーチングでした。

一般社員が、社長にコーチングをするーー前代未聞のチャレンジに挑んだ背景には、「社長にもコーチングの価値を知ってもらいたい」という三橋の真摯な想いがありました。

こうした彼の行動が、コーチングに対するクチコミをSansanの経営陣にも届かせることになります。「伸び代がある社員を、どう伸ばしていくのか」という、人事上の課題への対応策として、三橋のコーチングに注目が集まったのです。

その結果、三橋はそれまでの部署から、人事部に異動することになり、コーチングは、「コーチャ」として社内制度化されました。当時、コーチングを受ける人が増えたことで、本来業務とのバランス調整に悩んでいた彼にとって、ようやくコーチングに専念できる環境が整ったわけです。

本来業務となってから、新卒の社員であれ、役員であれ、積極的にコーチングをする三橋は、ときには、「最近元気がないな」と感じる社員にも、様子を見ながら声をかけます。そうしたときに意識しているのは、「会社と個人の価値観を重ねる」ことでした。

三橋 「Sansanの社員は、それぞれに高い目標をもっています。私自身も社長から課題を与えられますし、プレッシャーを感じることも少なくない……。そんなときは、会社と個人の価値観が重なっていないと、モチベーションが生まれないんですよね。ですから、コーチングによって、その重なりを明らかにしていきたいと考えています」

目の前の人が変わる喜びを胸に、“終わりのない”コーチングに挑む

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「ストレスが減った」「自信がついた」など、三橋のもとには、コーチングを受けた社員からの喜びの声が届きはじめました。実施したアンケートでは継続希望率100%、満足度は5点満点で4.81。このような高い評価を受けたのは、コーチングを受けた社員が具体的な成果を感じたからでしょう。

三橋 「彼からは許可を得ているので、お話しますが、『部下が自分についてこない』という悩みを抱えていた同僚にコーチングをしたところ、最終的に、彼は『部下をコントロールして成果をあげようとしていた自分自身』に問題があると理解し、その後の行動の変化につなげていきました」

三橋がコーチングを学びはじめて、約4年が経った2017年11月現在、社員数約360名のうち150名がコーチングを受け、その総時間は1,500時間にものぼります。しかし、彼は「コーチングには終わりがない」とし、さらなる高みを目指しています。

三橋 「私は、コーチングを天職だと思っているんです。一生続けていきたい。至らない点はありますが、やればやるだけ成長できますから、まずは10,000時間を目指しています。いずれはプロと呼ばれるような実力を身に付けたいですね」

彼のコーチングには、リピーターも少なくありません。すでに50回以上のコーチングを受けている人もいます。同じ相手であってもコーチングを続けられる理由について、彼は「人への興味がつきないから」と考えています。

三橋 「人間の可能性に自然と目を向けてしまうんです。だから、コーチングをきっかけに可能性が開かれていくのを見ていると、本当に嬉しい。実際、目に見えて行動が変わっていきますからね」

社員のあらゆる悩みを受け止められる会社が、社員と “幸せな”関係を築き、それにより事業が成長していくーーそんな未来を見据えて、三橋はこれからも、目の前の人の思いに耳を傾けていきます。

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