研究者の未来を支える「社会インフラ」を、ビジネスの手法で創り出すことが私の使命

大学院生(修士・博士)、大学院出身の社会人、ポストドクター、研究者のキャリア支援を行なう株式会社アカリク。2016年に新卒で入社し、就職支援コンサルタントとして活躍する吉野宏志は、アフリカの言語を研究していた博士課程出身者です。おもしろさと社会貢献性を追求し、アカリクを選んだ理由を吉野自身が語ります。

博士課程に進学したからこそわかる「安心して研究ができる環境」の必要性

▲「大学院出身者の出口戦略が足りていない」と語る吉野

幼い頃からの将来の夢は研究者。企業に就職だなんて考えたこともなかった私が、博士課程修了後にアカリクへと入社することになったのは、「自分の信念と直感」が「アカリクの理念」と見事に合致していたことが最大の理由でした。

大学院に進学する多くの方々と同じく、私も研究者として世界で活躍したいという思いを抱いていました。ただ、実際に大学院での研究活動をはじめてみると、研究のその先にある人生を意識するたび、狭い専門分野の中で常にトップを争い続けて生きていくことに不安を感じるようになりました。そして、周りを見渡すと同じように不安を抱えている大学院生がたくさんいることを知りました。

そうした時期を経て「安心して研究できる環境を整えるためには、大学院出身者の出口戦略(キャリアパス開発)が足りていない」と、当事者として強く感じるようになりました。この状況を打開するには学内で有志が取り組むだけでは難しいと考え、「外部からの積極的かつ専門的な支援が必要だ」という思いが湧き上がってきました。

それと並行して「私はなぜ研究しているのか」と自問するようになりました。突き詰めて考えると、私が研究するモチベーションは「答えを知りたかった」というとても単純なものでした。たまたま答えを知っている人が世界に存在しなかったから自ら進めていただけで、私にとって研究は「手段」でしかなかったんです。

「研究」という鎖から解き放たれたことで、大学院出身者が共通して抱えている課題に取り組むことを仕事にしようという決意が生まれました。継続的に実現し続けるためにも「利益を生む組織として取り組む」という指針もできたので、その瞬間から自分の中では企業へ就職するのは当然の流れとなりました。

そこから「知恵の流通の最適化」を掲げて大学院生や研究者のキャリア支援に特化しているアカリクにたどり着くのは、時間の問題でした。大学院時代の指導教員の言葉を借りると「研究者とは職業ではなく生き方」ですので、何かを探究する人は誰しも「研究者」になりうるわけです。そんな「研究者」が当たり前に活躍する社会のインフラを、一緒に創りたいと思って入社を決めました。

異国の地で暮らして学んだフィールドワークが議論や思考の礎になった

▲大学院の研究でエチオピアの農村へ。一緒にどぶろくを飲みながら親交を深めた

公立高校を卒業した後、そのままイギリスの大学へ進学して「エジプト学(Egyptology)」という古代エジプトを対象とする研究分野で学士課程を修めました。私は特に古代エジプトの文字や言語が大好きで、「言語の起源」を探究するために日本へ戻り、大学院への進学を決めました。

大学院ではフィールドワークと文献調査を組み合わせて、中近東からアフリカの言語を対象に研究していました。フィールドワークは基本的に単独行動で、エチオピア南部の農村に住み込んで単語から表現、短文から物語まで言語の構造を探るために調査しました。実は私が調査していたエチオピアの言語は古代エジプトの言語と遠い遠い親戚関係にあるので、「言語の起源」を探るための手段として取り組んでいました。

大学院は修士課程と博士課程が統合された5年制の一貫制博士課程だったので、正直なところ少しのんびり構えてしまった時期もありました。ただ、3年目あたりからは学外で発表する機会も増えて、様々な研究をしている大学院生やトップ研究者たちと交流するようになり、このままではいけないと気持ちを切り替えて研究に取り組みました。

私の大学から大学院までの研究過程を振り返ってみると、「時代・場所・文化の異なる様々な人たちと意思疎通を試みる」ことの連続でした。数千年前の古代人が残したパピルスを読み解いたり、前提となる常識が異なるヨーロッパやアフリカの人たちと議論を交わしたり、異なる学説や見解を支持する研究者からの鋭い質問に対応したり……とにかく一筋縄ではいかないことばかりだったと感じます。

端的に言うと、大学から大学院までの約10年間をかけて「異文化コミュニケーション」の実地訓練を受けてきたようなものです。今の仕事でも同じようなことをしているので、研究で培ったスキルがビジネスに活きていると感じています。

ついつい何かと「完ぺき」を目指しがちですが、様々な考え方に触れ続ける中で、私はお互いの利益を最大限にする妥協点や根本的な解決のための課題を見つけることが身についたと思います。

エチオピアでの調査は渡航前の安全確認や予防接種にはじまり、入国後の移動ルートや行動計画を考え、緊急時の対応をまとめるといった経験になったので大きな糧となっています。現地では数十kgのバックパックを背負って移動したり、農村でマラリアに罹患して3日かけて緊急帰国したりと、肉体的・精神的にもタフになったと思います。

思い描いていた大学院生のキャリア支援、アカリクという唯一無二の存在

▲海外で実施されたカンファレンスにて研究成果を発表

研究員や大学教員として大学に残る選択肢がずっと自分の中では有力だったんですが、最終年度にさしかかる少し前になって、学内のキャリアパス開発支援プログラムに参加してみることになりました。

冒頭で述べた、私が研究をしたかった理由が「世の中にまだない答えを知りたかっただけ」ということに気づいたのは、実はこのプログラムに参加したことがきっかけだったんです。すんなりと腑に落ちてしまったので、その先はもう「今すべきことは何か」を考えるようになりました。

その時にたどり着いた答えは「大学院生やポスドクには研究職以外のキャリアパスが存在するんだと当事者に認識してもらうことが重要」ということ。この考えは今も変わりません。

具体的な方法を考え、まず思いついたのは、研究者や大学教員として内部から働きかけること。しかしながら、この方法はできる範囲が限定的になってしまうと思いました。公務員や政府の方向にいくことも考えました。しかし、この方法も自分の意志が反映されにくく現場から遠すぎると感じたため、企業や公益法人への就職を第一に考えるようになったんです。

そんな中、大学院生向けの就職情報サイトということで登録していた「アカリクWEB」を通して、アカリクの自社採用スカウトメールが届きました。アカリクは自分が今まさに取り組もうと意気込んでいたことを、事業会社として取り組んでいました。しかも10年近くも前から。(吉野が就職活動をしていた2015年当時)「これはもう話を聞きに行くしかない!」と思ってすぐに応募しました。

選考を通して、自分のビジョンがアカリクと合致していることを確認していたので、内定が出た時は嬉しかったです。それと同時に、実際に自分には何ができるのかと具体的なことを考えはじめるようになりました。

同じく博士課程出身のメンターの社員に、入社前からアイデアをいくつか提案していました。時間をかけてブラッシュアップし、「アカリク式PBL」という自社インターンシップ企画を立案したんです。

入社から1年半後にこの企画が実現した時はとても感慨深かったです。これは自社採用につながる施策だったので、実際に内定者をだし、効果が出たのも嬉しかったですね。信念にもとづいて描いていたことを形にして動かせたこの経験は、大きな喜びと自信につながっています。

アカリクという「チーム」として、研究者の価値を社会全体に発信していく

▲大学やキャリアセミナーで講師として登壇する機会も多い

アカリクは研究者のキャリア支援を専門とする日本唯一の企業です。ここから先はさらに「社会インフラ」として成長することが必要だと考えています。

アカリクは人生を左右する出来事である「就職・転職」に携わっています。ひとりの方に対して、実際に私たちが支援できるのは期間にすると1年にも満たない期間でしょう。もっともっと大学院生やポスドクを支えていくために、今後は社会インフラとして「キャリア教育」や「政策提言」にも積極的に取り組んでいければと考えています。

自身のキャリアについて深く考えるようになるのは、就職活動をはじめてからという方が大半です。私もそうでしたから。仮にもっと早い段階から、研究を行ないながらもキャリアへの考えを深めていたなら、もっと選択肢が広がっていたかもしれないのに、と悔しい思いをすることがよくあります。就職・転職活動をはじめるずっと前の段階から「キャリア教育」を受けることは、欠かせない要素なのです。

また、企業や社会全体に大学院生やポストドクターの価値を認識してもらうために、積極的な情報発信をしていくことはアカリクの理念を実現するために必要です。社会全体に価値を共有していくためにも「政策提言」といった形を取ることで、もっと広く外側へと働きかけることも必要です。

「研究者」が当たり前に活躍する社会を実現するためには、大学院生やポストドクターが安心して研究できる環境を整えていかなければなりません。それは、個人では到底できないことです。

アカリクには私と同じ博士課程出身者も多くいますが、もちろんそうでない者もいます。一人ひとりのカラーがまったく違います。共通の性質で集めた仲間はグループと呼びますが、私は、アカリクは「知恵の流通の最適化」という目的のために集まった団体であり、「チーム」だと思っています。アカリクというチームと共に、私は「研究者が安心して研究できる社会を創る」という夢を実現したいと思っています。

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