特任助教からコンサルタントへ 未開のキャリアに挑む新入社員の挑戦

「知恵の流通の最適化」を理念として掲げ、大学院生(修士・博士)、大学院出身の社会人、ポストドクター、研究者のキャリア支援を行なう株式会社アカリク。大学院卒を積極採用し、多様なバックグラウンドを持つ社員が在籍中です。今回は研究所で特任助教として活躍した後、アカリクに参画した白井英登をご紹介しましょう。
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美大受験そして挫折。新たに出会った世界で広がった知的好奇心

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▲2018年4月に就職支援コンサルタントとして入社した白井英登

「院生やポスドク一人ひとりの人生を輝かせたい」──就職支援コンサルタントとして2018年4月に入社した白井英登は、そう語ります。

大学院の博士課程後期を経験したのち、研究所にて特任助教として活躍していた白井。これまでずっと研究を続けられたのは「努力を重ねることで結果につながるからだ」と振り返ります。

白井 「今思えばこの考えは、中学生の頃、勉強に励んだことがきっかけだと思います。実はあまり勉強は得意ではなく、学力は学年でも相当下位にいました。高校進学が危うくなって初めて、危機感から勉学に真面目に取り組んだんです。
数学や物理といった理系科目は勉強すればするだけ点数として返ってきて、それが嬉しかったことを覚えています。理系脳になった礎となっていますね。答えが綺麗に求められることも心地よかった」

ところが、高校に進学した白井が没頭したのは「美術」。絵を描くのが好きだったため、自分で美術部を立ち上げ、美術大学への進学を考えます。

白井 「結局美大には行けませんでした。絵が得意なだけではダメで……。香川大学工学部の材料創造工学科(2018年現在は創造工学部創造工学科先端マテリアル科学コースに名称変更)に進むことにしました。ものづくりのための材料開発や設計を学ぶことができるんです。
材料創造って、珍しくないですか。材料創造って何をやるんだろう、創造って何かクリエイティブなことをやるのかな、と調べていくと、研究分野は広範囲で、物理、化学、生物などの、私が興味を持っている分野の研究に携われる、と。面白そうだと思って飛び込みました」

大学に入学した当時は、みんなと同じように就活をして、卒業後は民間企業に就職するのだろうと思っていたという白井。ところが研究の面白さに目覚めてしまったのです。

研究をしていると「もっと知りたい、答えを知りたい」という底なしの知的好奇心が生まれ、そのとりこになり修士課程に進むことを決意しました。

この先、どうしようか──大好きな研究の裏に忍び寄る影

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▲修士時代に就活してみたもののピンと来なかったと振り返る

修士課程に進んだ後、修士1年の時に就職活動をする時期になりました。白井は研究を続けたいと思いながらも、周りも就職活動をすることが自然な流れがあったこともあり、就職活動をはじめます。

白井 「修士1年の時に、合同企業説明会に行ったり情報収集をしたり、真面目に就職活動をしていました。私は地方の大学に在籍していたんですが、博士課程へ進学する人はほとんどいなかったので、就職しか選択肢がないと思っていた節もあります。
しかし、就活をしてもピンとくるものはありませんでした。できるなら、もっともっと研究をしたいなと感じていました。就活にまったく身が入っていなかったので、エントリーシートが全然書けませんでしたね」

自分はこの先どうしたいのか、何のために就職するのか──そんな思いを抱えながら、参加した学会で白井はある決意をします。

白井 「修士 2年の時にドイツのミュンヘンで開催されたCLEO/Europeという学会に参加する機会があったんです。そこで海外の研究者たちが雄弁に自分たちが行なってきた研究結果を発表する様を見て、圧倒されました。新しい知識に触れて、新しい刺激があって。やっぱり自分はそういう場所に身を置きたいと強く思いました」

民間企業に就職するのではなく、研究者としての道を選んだ白井。博士課程に進学し、修了後は研究所に特任助教として在籍することになります。

研究をずっと続けていきたいと思っていた白井にとって、研究所での毎日は刺激的でしたが、その一方で「任期」という現実が重くのしかかります。

白井 「研究所で研究を続けられることに喜びを感じながらも、生きた心地はしませんでした。カウントダウンがすでに入った瞬間からはじまっているんですから。好きなことを研究できるけれど、この先どうしようという不安が常にありました。目の前の仕事を楽しんではいましたが、その先のことを考えて就職活動を並行して行なっていましたね。
できればアカデミアのキャリアを積み上げていきたいという思いがあったので、もちろんそういった関連の職を中心に探していましたが、そもそも求人が限りなく少ないんです。しかも私の分野においては、倍率は数十倍の世界です」

2017年の2月、白井はアカリクが主催する博士・ポスドク向けの合同企業説明会に赴きました。そこでアカリクに出会います。

一通の選考案内メールが、道を開いた

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▲面接では必ず「30歳を過ぎた新入社員で浮かないか質問した」

民間企業で就職をするにしても、研究や開発といった理系の職に就くだろうと思っていた白井は、自分のこれまでの研究を活かせるであろう理系学生向けの合同企業説明会に参加。

そこでアカリクのブースを見かけました。「自分と同じ境遇の博士・ポスドクの就職支援サービスをしているアカリクが、なぜ理系学生向けの合同企業説明会でブースを出しているんだろう」という純粋な疑問が湧き、話を聞いてみたのです。

白井 「大学院生の就職支援というニッチな取り組みをしているアカリクの人事と話せるということで、ブースに寄ってみました。博士やポスドクの就職支援をしているアカリクが、社会を、そして自分たちをどう思っているのか聞けるかなと思って。『本当にわかっているのか?』という、若干挑戦的な気持ちもありました(笑)
実際話をしてみると、なんと社員の7割が院卒、さらにその半数は博士課程出身で、私と同じポスドクの社員も在籍していると聞いて驚きました。院生の就職に対して真摯に向き合い、そして本当の意味で理解している。そういうビジネスを真っ向からやっている会社なんだと」

開発職でも研究職でもなく、自分の行なってきた研究とはまったく違う環境で、キャリアや経験を活かしながら働けるとわかって、白井は興味を持ったと言います。

イベント参加から数日後、アカリクから選考案内メールが届きます。

白井 「書類選考免除でいきなり面談OKという案内が来たので驚きましたね。自分に興味を持ってもらえたのがとても嬉しかったです。それからは、いろいろな社員と面談させてもらいました。
大げさではなく、面談で会う社員が全員明るくて、健気に真摯に接してくれました。一番大きかったのは、歳は関係ないと言ってくれたことですね。30歳を過ぎて新入社員として入社して、浮かないか不安でしたから。質問した相手がみな『まったく気にしない』と答えてくれたのは、心強かったです」

選考を進む中で納得がいくまで社員と面談を重ね、最終面接に進んだ白井。心の底から強く、アカリクの一員として働きたいという想いがこみ上げます。

白井 「博士課程に進んだらキャリアの選択肢が少なくなってしまうという風潮を変えたいんです。博士課程出身者を採用する企業が増えれば、就職のことを心配せずに、本当に価値がある人たちが博士過程に進学してくれるようになる。そういう社会をつくりたいと思っていました。
代表の林信長から『知恵の流通の最適化』のためにアカリクが取り組んでいる施策やこれからの未来の話を聞いて心が躍りました。林の考え方は、私にとって斬新で、共感でき、絶対に自分もここで価値を生み出せるような人間になりたいと強く思ったんです」

熱い想いを最終面接でも語った白井は、2018年4月にアカリクに入社しました。

アカデミックキャリアを武器に、博士やポスドクが活躍できる未来を創る

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▲年齢もバックグラウンドも異なるが、同期は「よきライバルであり、よき仲間」

アカデミアの世界での経験が長い白井にとって、入社してからはまさに新しい驚きと刺激の連続の日々です。コストや時間に対する価値観もまったく異なります。

失敗と反省を繰り返しながらも、毎日新しいことに挑戦する白井は、同期がいてくれるからモチベーション高く取り組めると語ります。

白井 「同期にはとても恵まれていますね。ちょっとしたことでも議論できるのが心強いです。みんな自分の意見を出してくれるし、誰も意見を否定しない。同期で助け合って、昨日より今日、今日より明日と成長していくのがよくわかります。年齢もバックグラウンドも異なるけれど、よきライバルであり、よき仲間ですね」

これまでのアカデミックなキャリアを武器に、自身と同じような境遇の方々に対してできることを模索しながら、全力で目の前の仕事に取り組む日々。

アカデミアでポスドクとして働き、そこから殻を破って一歩外に出てみて白井が気づいたことは、自分の視野を広げて可能性を探ることが重要だということでした。

決して、アカデミアの道を捨てるのではなく、これまでの自分が積み上げたものを活かして社会に還元できるものはないかと必死になって新しい道を探すことが必要なのです。白井にとってのそれはアカリクでした。

白井 「これは大学院出身者側の固定観念だと思うんですが、自分はこの研究しかしてこなかったからこの研究をしている企業しかダメだろうという考え方をしてしまうんです。その考えは、捨てたほうがいいと思っています。もちろん、即戦力を求めている企業もありますが、そうでないところもある。
きちんと自分の目で、耳で確かめたほうが絶対にいいんです。それをこれからは、私が博士・ポスドク・研究者の方々や企業に伝えていきたいですね」

美大受験、研究生活、特任助教を経ての民間就職……自身の心の声に耳を澄まし、人生というキャンバスにたくさんの色を重ねてきた白井。

これまでとはまったく違うキャリアへ一歩踏み出し、また一色新しい色が加わりました。これからより一層、その絵はカラフルに色づき、深みを増していくことでしょう。

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