日本流オープンイノベーションとCVCの未来~第3回 Mirai Salonレポート

Mirai Salonは、株式会社アドライトが主催するオープンイノベーションの未来を語り合うイベントです。第3回目のテーマは「日本流オープンイノベーションとCVCの未来」。ベンチャー企業と大企業が連携することで生まれたイノベーション事例の紹介を通じて、参加者と新たな知見を分かち合う時間となりました。
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アドライトが手がける、ハンズオンでのオープイノベーション支援事業

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株式会社アドライト 代表取締役 木村 忠昭

自社だけではなく、他社や官公庁、大学といった外部のアイデアや技術を結ぶことにより価値創造を実現する「オープンイノベーション」。今、新規事業の開発にあたり最も期待されている手法です。一方、企業の境界を越えることから、自社だけで進める事業と比較すると困難が伴うともいわれています。そこで求められるのが、経験豊かなプロの手による細やかな支援。

私たちアドライトでは、イノベーションを創出するために、大企業とベンチャー企業の間に入って、支援先企業の経営に深く関与するハンズオンでの支援事業を行なっています。企業経営の改革プロジェクトのメンバーとして参画し、立案からプロセス管理、人材等のリソースのアレンジなど、実践的な支援を徹底して実施しています。

さらに、大企業や官公庁の新規事業担当者の方々にオープンイノベーションの認知を広げ、理解を深めてもらうため、本イベント「Mirai Salon」の主催もしています。オープニングではまず、当社代表の木村より、参加者の皆様へイベント開催の主旨をお伝えしました。

木村「 Mirai Salonでは、大企業やベンチャー企業など、さまざまな関係者の方々のオープンイノベーション事例を聞きながら、参加者の皆様を巻き込んだパネルディスカッションを行ない、オープンイノベーションの成果や工夫したポイントなど、現場の声をお届けします」

今回のMirai Salonでは、日本のオープンイノベーションと併せ、CVC(コーポレートベンチャーキャピタル)もテーマに掲げられました。CVCとは、主に大企業がベンチャーに投資を行ない、事業シナジーを生み出していく活動のこと。提携先の事業をCVCにより育てながら、自社の事業と連携させて価値を生み出していくのです。

昨今は、大企業が自社内にCVCを設立し、自社の資金を直接的にベンチャーに投資して事業シナジーを狙う事例が増えています。今後はますますCVCの規模が拡大し、オープンイノベーションを推進していくことが期待されます。

今回登壇したのは、IoTやAIの新進気鋭のベンチャー企業2社と、オープンイノベーションに積極的に取り組む注目の大企業2社。各社がそれぞれに取り組んだオープンイノベーションやCVCの活用事例を紹介し、その後、登壇した4社にアドライトの木村を交えてパネルディスカッションが行なわれました。

※ 本イベントは、三菱地所株式会社様に共催いただき、EGG JAPAN(東京・丸の内)にて開催致しました。イベント冒頭では、三菱地所株式会社の加藤様より、東京・丸の内が魅力的なビジネスセンターであり続けるために行われている、日本の中小ベンチャー企業に対してのビジネス開発支援や誘致活動等についてご説明いただきました。

ベンチャー企業が仕掛けたオープンイノベーションの成果とは?

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株式会社カブク 代表取締役 稲田 雅彦氏

最初に登壇したのは、株式会社カブク。2013年に設立した同社は、デジタル製造技術3Dプリンターを活用し、在庫リスクをゼロにしたオンデマンドの一点モノ製造のサービスを手がけています。同社の代表取締役である稲田雅彦氏は、会社設立前、エンジニアとしての経験から、オープンイノベーションの必要性を感じていたといいます。

稲田氏「前職ではシリコンバレーに出向き、現地のスタートアップと組み新規事業を開発していました。そのときに、ものごとをオープンにしていくことで、最終的に自分たちに利益が返ってくるということを肌で感じたんです。この精神を持ち込み、日本のものづくりをもっと元気にしたいと我々が掲げたビジョンが、『ものづくりの民主化』なのです」

カブクは、オープンイノベーションを活用してさまざまな製品を生み出しました。たとえば本田技研工業株式会社が開発した超小型電気自動車の「MCβ」を、カブクが食品メーカーの物流トラック用にカスタマイズ製造。通常は約18~24か月の製造期間が必要となるところ、3Dプリントの技術により2か月に短縮することに成功したのです。

さらにカブクでは、株式会社スクウェア・エニックスと連携し、プレイヤーがゲームの画面上で作成したキャラクターのフィギュアを3Dプリント製造するなど、積極的に大企業と協業した革新的なビジネスを開発。稲田氏は、「今は国をあげて、オープンイノベーションを推進する大きな流れがあり、その流れに乗って幅広く事業を行なうことができる」と語りました。

続いて登壇したのは、カラフル・ボード株式会社です。個人の感性を学習する人工知能「SENSY」を開発する同社は、株式会社三越伊勢丹ホールディングスなど、多店舗を持つ大企業と連携し、一人ひとりの顧客に最適なファッションを提案するサービスを提供。同社代表取締役CEO、渡辺祐樹氏はこう語りました。

渡辺氏「私たちは、アパレル企業にタブレット型の顧客対応ツールを提供しています。この端末にランダムに表示される服のデザインに対し、顧客が”好き”か”嫌い”を選択すると、その人のファッションに関する嗜好性のデータが蓄積されます。このデータにもとづき、店内の在庫から顧客の好みに合う商品を提案することができるのです」

この他にもカラフル・ボードでは、AIによるワインソムリエの開発など、提携先の企業と一緒に新しいアイデアを考え形にしています。渡辺氏は、「提携先にどんな課題があり、私たちの技術でどのように解決ができるのかを話し合いながらトライアルを重ねることで、オープンイノベーションを実現できる」と語り、プレゼンテーションを締めくくりました。

このように、登壇したベンチャー企業2社は、いずれも大企業との連携により、自社独自の技術を多くの顧客に提供することができました。一方、大企業がイニシアチブをとってオープンイノベーションを活用するには、いったいどうしたらいいのでしょうか?

続く大企業2社のプレゼンに、そのヒントが見いだせます。

大企業が手がけるオープンイノベーションのカタチとは?

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株式会社ニコン 新事業開発本部 CE事業 CEBDチーム 主幹 坪井 聡一郎氏

大企業を代表して1社目に登壇したのは、オムロン株式会社です。ヘルスケアの分野で知られる同社ですが、メイン事業は工場の自動化設備などの製造業。これまで自社独自でさまざまなイノベーションを起こしてきました。しかし、同社で新規事業創出を担当する今西充氏は、会社として新規事業が多産できていない状況を感じるようになりました。

今西氏 「オムロンは、世界初のATMや自動改札機を開発するなどの歴史があり、チャレンジ精神が根付いています。しかし変化のスピードが速い現在、自社だけでイノベーションを起こすのは難しい。そこで、外部のリソースを活用するオープンイノベーションの取り組みをはじめました」

オムロンは2014年7月に、新規事業の創出を目的としてオムロンベンチャーズ株式会社を設立。事業開発推進活動や、投資を通じて事業シナジーを生み出すCVCを通じてベンチャー企業と積極的に連携し、技術や人材、自由なアイデアを自社へ取り入れる体制を整えました。

たとえば、ものづくりをテーマに活動するハードウェア系ベンチャーをオムロンが支援するインキュベーションプログラム「コトチャレンジ」では、起業家や新しいビジネスの育成に力を注いでいます。

こうしたオムロンベンチャーズの取り組みは、一例として農業分野の事業検証を開始しました。ベンチャー企業と栽培ハウスの環境整備システムを共同開発し、これまで農家が手動で作業していた温度や湿度管理を自動化する事業を開始しています。今西氏は「オープンイノベーションにより社会課題を改善する新しい事業を作りたい」と語りました。

最後に登壇したのは、デジタルカメラの開発などの映像事業で知られる株式会社ニコン。同社の新事業開発本部で主幹を務める坪井聡一郎氏は、まだ会社にオープンイノベーションに取り組む体制がまったくない状況のなかで、社外の力を借りながら新規事業を形にしていった過程を語りました。

坪井氏「新規事業のアイデアを考えていたときに、『ニコンの画像処理の技術が農業の品質管理に応用できるのでは』と仮説を立てました。しかしこのアイデアを実際に形にする資金が社内になかったので、農林水産省の「攻めの農林水産業」というプロジェクトに事業企画書を出してみたんです。そこで見事採択されて予算が確保できたおかげで、計画を進められました」

さらに坪井氏は、人材不足の課題も外部からサポートを得ることで解決しました。まずは外部のベンチャーと手を組みコンソーシアムを形成。農業の研究者や農家へのアプローチを協業しました。また、経済産業省によるイノベーター育成プログラム「始動Next Innovator2015」へも応募。このプログラムを通じ、さまざまなメンターの意見を聞くことで事業プランをブラッシュアップしていきました。

こうした取り組みが実を結び、ニコンの画像処理の技術を活用し、「画像から農作物の成分を検出できる技術」としてアイデアを実現。デジタル画像から、野菜や果物の品質評価を目指すことになりました。坪井氏は、「お金や人がなくとも、アイデアがあれば新規事業を起ち上げることはできる」と語り、話を締めくくりました。

企業・組織の相互理解がオープンイノベーションの発展につながる

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パネルディスカッションの様子

続いて行なわれたパネルディスカッションは、ご登壇頂いた4名が、モデレーターであるアドライト木村や参加者の皆様からの率直な質問に答えて、皆でディスカッションしていくかたちで進んでいきました。

木村からは「ベンチャー企業と大企業が連携するためのポイントはなにか」という質問が投げかけられ、カブクの稲田氏とカラフル・ボードの渡辺氏は、それぞれの経験から「大企業側の事情を理解することが大事だ」と答えました。

渡辺氏 「大企業は組織が大きいぶん、利害関係が複雑です。そのため誰が責任者なのかを把握し、その人を動かすために何が必要なのかという情報をきちんと整理する必要があります」

稲田氏「私自身が大企業で新規事業を行なっていた経験があり、プロセスの進め方やスピード感は理解しています。日本でオープンイノベーションを進めるには、そういった大企業の文脈を理解する必要を感じていますね」

また、「CVCとして大企業がベンチャーに投資を行ない、事業シナジーを生み出すためのポイント」についても質問が寄せられました。オムロンの今西氏とニコンの坪井氏は、投資を行なう側として「何のためにCVCをするのかを明確にすることが大切」と語ります。

今西氏 「オムロンでは、ベンチャーにCVCとして投資するにあたって、共同テーマをしっかりと決めているんです。自社のニーズを明確にして、それに合うベンチャー企業と連携するなど、お互いにWin-Winになるように心がけています」

坪井氏 「CVCにより事業シナジーを起こそうとするときに、『他社ではなく、自社内でもできるのではないか』と反対意見が出ることがあります。そのため、何のためにCVCを行ない、事業シナジーを起こしていくのかという点を明確にする必要があると思います」

これまで、オープンイノベーションにより工業のデジタル化を進める企業や、あらゆるモノをインターネットでつなぐIoTによる事業を生み出す企業が登壇した「Mirai Salon」でしたが、第3回目となる今回は、大企業のCVCを活用した成功事例がとても詳しく紹介されたのが特徴的でした。

そしてパネルディスカッションでは、プロジェクトを成功に導くためには、自社内だけでなく、提携先企業との利害を調整するなど、関わる人たちへの細やかな配慮が必要となることが示されました。

私たちアドライトは、オープンイノベーションに取り組みたい企業のプロジェクトメンバーの一員となってトータルでプロジェクトを推進するという、実践的なハンズオン支援を行なっています。大企業やベンチャー企業など、異なる企業文化の事情を理解し、それぞれが調和的に機能するためのサポートをするのが私たちの役割です。

これからも、こうしたオープンイノベーションの事業創造サービスを多くの企業に提供することによって、日本の産業にイノベーションが数多く生まれることを大きく期待しています。そのようなワクワクする未来を、私たちと一緒に創ってみませんか?

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