事業のしくみ化や組織をつくるおもしろさに目覚めた中高時代

▲AIGATE 取締役の中西 健輔
中西 「パズルを解くのが好きなんです。結局ゲーマー気質なんですよ。いろんなプロジェクトを立ち上げ、軌道に乗せてきましたから、事業を立ち上げることそのものが超絶得意なんです」

AIGATE入社後すぐに動画広告の事業を立ち上げ、わずか1カ月で売上を確保。年間売上10億以上を見込む中西は、自他共に認める事業立ち上げのプロ。そういい切れるだけの経験があります。その始まりはオンラインゲームにはまった中学時代にありました。

中西 「学校をさぼって、ずっとネットゲームをやる毎日でした。でもネットゲームってある程度クリアすると、次のアップデートまで暇になってしまうんですよね。そのあいだの暇つぶしとして、ゲーム内のお助けマンみたいなことをやり始めたんです」

お助けマンの活動は、最初こそ他のプレイヤーのレベル上げをサポートする類のものでしたが、次第にその範囲を広めていきます。

中西 「オンラインゲーム内でカップルが生まれて、ゲーム内で結婚式を挙げるようなことがあるんですよね。

そこで僕が、教会っぽい立地のところに人を集めてあげて、神父などの演者をそろえ、現実の結婚式のようなイベントを企画してあげるんです。僕ひとりじゃ回らないので、20人ほどのプレイヤーを取りまとめ、チームとして運営していました」

何気なく始めたことが、他プレイヤーの需要を満たす事業となり、売上が立つようになっていったと言います。

中西 「お金が稼げることもそうですが、自分のつくったしくみが、大きくなっていくことがすごくおもしろかったんですよ。モノをしくみ化したり、自走する組織をつくったりすることを考えるようになった原点はあのころにあるんでしょう」

高校に進学した中西ですが、学校へはほとんど通わず、中学時代に得た収益を元手に、ネットで海外の洋服を買い付けし卸す事業をはじめました。

次にどんな服が流行るのか、実際ショップの店員にリサーチし、大学生やフリーターなどを仲間にして事業を拡大していきました。月に1,000万ほど売上げるまでに成長させます。しかし好調はそう簡単に続きませんでした。

中西 「仲間のひとりに資金を持ち逃げされてしまったんです。今思えば、お金の管理が悪かったのだと思いますが、他の仲間もそれをきっかけに離れていってしまいました」

精神的にも落ち込んでいた中西の活路となったのは、大学受験でした。

中西 「それまでまったく勉強していなくて、数学のテストなんか4点しか取れなかったんです。英語の文法もからきし。

でも受験勉強を始めて、コツコツと積み重ねることが確実に結果に現れ、成長につながることを知ったんです。最終的には模擬試験で全国1位を取ることができました。やるべきことをやれば誰だって伸びることができるとそのとき実感しましたね」

ビジネス経験を深め、自らの価値観を育てた大学時代

▲市民で数十年かけて浄化したベルリンのシュプレー川は、いまはボディサーフの聖地。社会課題への興味関心が高まったきっかけのひとつ

その後、中西は見事有名私立大学への入学を決めますが、授業の退屈さに嫌気がさし、再びビジネスへの挑戦を考え始めます。

中西 「しばらく遠ざかっていたものの、もう1回今の状況で挑戦してみたいと思いました。まず勉強するために、GMOベンチャーパートナーズというベンチャーキャピタルにインターンとして入ったんです。

リサーチやマーケティング施策を実践しながら学び、インキュベートしているプロジェクトに、実際にメンバーとしてジョインするなど幅広い経験をさせてもらいました」

学生ながらマーケティング事業の責任者をも務めた中西ですが、学んだことはビジネススキルだけではありませんでした。

中西 「当時のファンドマネージャーが、『なぜ自分たちがベンチャーに投資するのか』という話をしてくれたんです。世の中には問題があって、人には悩みがある。起業家はその問題や悩みをこの世から消していくサービスをつくる人達。

起業家のサービスが正しければ、世界中に広まり、世の中から問題が消えていくことになる。だから彼らに投資する価値があるんだと。それまでずっとゲーム感覚で事業をやっていた自分に、その言葉は深く刺さりました」

事業をつくる人を支えることを自分の生業にしてもいい、そんな風に思えた中西はいっそうビジネスにのめり込んでいきます。アドテクノロジーのベンチャー企業への参画、個人でWebマーケティングのコンサル業を始めるなど、大学1、2年生のあいだは寝る間も惜しむほどに働いたそうです。

しかし、そんな中西の前にまた大きな試練が待ち構えていました。蓄積した疲労によって中西は倒れてしまします。一時は脳手術をするほど重篤な状態でしたが、またそこでビジネスから離れたことで、奇しくも中西にとって新たな転機となりました。

中西 「目が冷めて最初に『ラッキー』って思ったんですよ。一度死んだようなもので、これから先はおまけの人生だと。

これまでに稼いだお金が一瞬にして消えるということも経験して、なんのためにビジネスをするのかを改めて考えたんです。ただ事業を起こしたり助けたりするのではなく、社会にとって本当に価値あることをしたいと」

退院した中西は、見分を広めようとアメリカのカリフォルニア大学サンディエゴ校に留学。

シリコンバレーのITビジネスを実地で学ぶなど、これまでとは異なる価値観に触れる中で、活動の幅を広げていきました。

中西 「ソーシャルメディア内の情報を人工知能で解析し、選挙の結果を予測するという論文を書いたんですよ。その後に、これに特化した研究団体として、ソーシャルメディアデータ研究所を大学の助教授と一緒につくり、今でもそこの研究員をやっています」

大学卒業後も、就職はせずに慶応義塾大学大学院へ進学し、メディアデザインを学びます。学問に関心を抱くようになった背景には、社会課題への興味関心が強まっていたことがあります。

中西 「資本主義が限界を迎えているともいわれている中で、次の社会経済がどのように変わっていくのか?というのが、今でも僕の中では大きなテーマです。

社会主義へ向かおうというわけでなはなくて、今の資本主義のしくみはアップグレードされなきゃいけないと思っています。実際、アメリカでは株主の利益を最優先に追求するような動きへの批判が高まっています。

よりヒューマニズムに根差した社会にしていくにはどうしたらいいのか。そんなことを考える中で、ソーシャルメディアやデザイン思考を学ぶことが重要だと考えたんです」

AIGATE代表の竹尾との出会いが、自らのキャリアを考えるきっかけに

▲ペルー先住民の村で。世界を旅することで日本とはまるで違う文化や価値観を目の当たりにする

大学院を卒業した後の中西は、さまざまな事業の立ち上げや支援活動を行ってきました。とくに事業の種、いわば社会課題解決の種を事業として成り立たせるために、資金集めから組織づくり、ときには実務までもサポートしてきたといいます。

また、視野を拡げるために頻繁に海外へ旅するようになりました。

中西 「僕たち日本人が信じている社会はあくまで日本の社会なんです。

たとえば、日本にはワーク・ライフ・バランスという考え方がありますが、海外の人は、より生活を尊重する全然違う感覚で生きている人もいます。日本とはまったく違う価値観を持った社会を旅することで、自分が目指していくものは何かというのを常に自問自答することができますね」

奔放ながらも、ビジネスという観点から社会課題と向き合ってきた中西ですが、AIGATEの代表、竹尾との出会いが三度目の転機となりました。

中西 「竹尾さんに出会ったころは、市場化しにくい問題は誰がやるんだとか、市場化することで新たに生まれた問題は誰が解くんだということをよく考えていました。

経済合理性が行き過ぎた社会では、マイノリティの問題が置いてけぼりになっちゃうんですよね。介護がいい例で、そもそも経済的に成り立ち難い」

とくに日本はそうした問題に対しての危機感が弱く、遅れていると感じていた中西。当時、偶然つながりを持った竹尾に、そうした課題感を伝えるうちに、人柄に引かれていきました。

中西 「竹尾さんに諭されたのは、もう少しビジネスに向き合ってからそうした大きな問題を考えてもいいんじゃないかということでした。大きな社会課題に向き合って本当に解決したいと考えたときに、自分ひとりでは到底実現できる話ではありません。

そうしたとき、キャリアや実績がないとできないことがたくさんあるし、効果の高いポイントにアプローチしにくいとは感じていましたから。AIGATEでしっかりと実績を残すことで、その糸口をつかめるかもしれないと思ったんです」

AIGATEで実現する中西自身の再生

▲中東・山岳地帯を気球で抜けながら日の出をみて

AIGATEに取締役として参画した中西は、これまでに培った事業立ち上げの経験を生かし、広告事業のさらなる成長を図るため、動画広告の新規事業を立ち上げます。

中西 「動画広告事業は、YouTube広告の企画から運用までワンストップで請け負うサービスで、いわばYouTube広告のプロダクションですね。

入社したのは19年の9月でしたが、11月にはチームづくりと座組づくり、リサーチのすべてを済ませ12月にサービスをリリース。その月末には売上が立ちはじめました」

入社以前から何度も経験してきた事業の立ち上げですが、AIGATEに入ったことで、売上が立つことだけでなく、社員の成長にも喜びを感じるようになったといいます。

中西 「すでに動画広告の事業は25歳の女性メンバーに任せはじめています。以前から結果を出している人だったので、次のリーダーにしたいと思っているんです。

25歳の若手が、たった3カ月で1,5億の新規事業を立ち上げたという実績になるわけですよね。それってメンバーのキャリアにつながりますよね。

新規事業の立ち上げって、ビジネスとしてのインパクトだけではなくて、人の成長にすごくつながるんですよ。そういった側面でも新規事業はすごく価値があると思います」

AIGATEで提供できる自身の価値を実感しはじめた中西は、動画広告にとどまらず、AIGATEのクリエイティブ力を磨いていきたいと語ります。

中西 「広告事業はこのまま伸ばしますが、もう少しクリエイティブの領域をやろうと思っています。AIAGTEは企業再生・事業再生を支援する企業です。

これまで通りクライアントの売上成長に直結する部門のサポートを軸に、ブランディングやデザインクリエイティブの領域まで、マーケティング戦略から一気通貫して再生を支援できるようになると、このAIGATEは間違いなく強くなるんです」

再生をテーマに事業を急スピード拡大し、まだ成長の過渡期にあるAIGATEだからこそ、奔放な中西が十二分に活躍できる環境があり、彼が求めるキャリアを形づくっていきます。

これまでの実績と取締役という立場から、あたかも再生の請負人にも見られますが、社会課題の解決という夢を実現するために、彼自身が自らの再生を願いAIGATEを選んだのです。