「環境検査システム」の導入で全国ナンバー1――リストラからはい上がった9人の物語

大分県大分市に、環境検査システムの導入で全国トップシェアを誇る会社があります。株式会社エイビス。実はリストラされた20~40代の9人で創業し、地方の中小企業ながら、環境検査の分野では非常に有名な存在となりました。これまでの波乱の道のりと今後の展望について、創業メンバーの言葉を借りて、赤裸々にお伝えします。
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不安を抱えながら9人で起業し、ひたすら走ってきた

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▲創業初年度の社員旅行。創業メンバー&アルバイトメンバ-で南紀白浜へ

私たち株式会社エイビスは、大分県大分市に本社を構え、東京支店と大阪営業所を置いています。“平成9(1997)年9月9日に9人”で会社を設立し、一貫してコンピュータソフトウェアの開発と販売を行ってきました。

9ばかりが並び、苦しい船出のように思われるかもしれません。確かに、私たち9人は全員、前の会社でリストラにあいました。大分の建設会社主体のグループ会社でソフト開発事業に携わり、エンジニアや営業として働いていたメンバーです。しかし、事業の撤退が決まって会社を辞めることに……。

そこで、有志9名で事業を引き継ぎ、新たにエイビスを立ち上げたのです。代表取締役社長の吉武俊一、専務取締役の佐藤誠樹、常務取締役の渡邉浩二、取締役統括部長の池部良の4人は、創業から2017年現在に到るまで、苦楽を共にしてきました。

吉武 「環境のシステムを開発して、すでに30件ほど導入していただいていたので、誰かがフォローしなければならない。ですから、お客様のためにも会社を作ることにしました。当時20代から40代までいて、営業だった私が社長になりました。あのときはみんな不安でした。だけど、少しずつ新しいことにチャレンジして、お客さんから“ありがとう”という言葉をもらい、そこにお金がついてきて。この20年、みんなでひたすら突っ走ってきたという感じです」
池部 「私は当時20代でした。エンジニアとしては、目の前の仕事を精一杯やっていくしかない。他社には絶対に負けないと思いながら、どうすればエイビスがもっと知られるか、そんなことばかり考えながら仕事に没頭していましたね」 

環境検査システムを次々と開発し、国内導入シェア25%に

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▲オフィスの風景

当社が創業前から手がけているのは、環境検査システムです。

渡邉 「当時はまだ環境分野があまり注目されておらず、こうしたシステムを作っているのは大手数社のみでした。私たちがその分野に参入すると決めたとき、まわりの反応は冷ややかで、結構笑われました……。それでも地道に開発して営業して回ったのです。最初にシステムを導入してくださったお客さまのことは、はっきり覚えています。今では息子さんが会社を継ぎ、引き続きお付き合いさせていただいています」

エイビスでは、環境検査の分析データ処理に特化した、業務効率の向上を支援するソフトウェアを提供しています。見積受注システムにはじまり、計画管理システム、検査システム(水質・食品・大気・石綿・浄化槽・作業環境など)、販売管理システム、顧客管理システムまでそろっており、見積受注から、受付、分析、報告書作成、請求まで、一貫してサポートすることができます。

時代やお客さまの声に応じて、次々と開発を進めていった結果、このようになったのです。

全国の民間検査機関や厚生労働省の指定検査機関、水道局、企業まで、2017年現在では250以上の機関や企業で導入していただいています。環境検査システムの導入シェアは25%にのぼり、トップをひた走っています。

佐藤 「環境に関する法律が改正されて、どんどん厳しくなっていく中で、大手企業は環境検査の関連会社を作って対応しているところもあります。当社には環境システムのバリエーションが一通りそろっているので、環境システムを検討するなら、まずエイビスに話を聞いてみようというお客さまが増えているのは、大変ありがたいことです」
池部 「当社には環境検査システム専門の開発・営業チームがいます。分析に関する専門知識があり、法改正にもいち早くきっちり対応できる。そのため、お客さまに信頼を寄せられているのだと思います。また、お客さまのニーズに柔軟に対応し、できるだけリーズナブルな価格で提供できるように努めています」

社長の切実な思いから生まれたみまもりシステムは、海外へと進出

▲「みまもりシステム」のサービス動画

そんな当社が、新たなテーマとして取り組みはじめたのが「みまもり」です。高齢化が進む社会において、介護を受ける方やご家族をサポートしたい、高齢者の事故を防ぐとともに介護事業に関わる方々の負担を軽減したい、安心安全に暮らしてほしいという思いから、「みまもりシステム」の開発に着手しました。

吉武 「開発のきっかけは、実は私の父が認知症を患い要介護になって大変だったという自分の体験からきています。介護現場を知るにつれ、私たちが培ってきた技術を使って、介護を受ける方や高齢者をみまもるシステムを作ることができればという思いが募り、会社の新事業として立ち上げました。
はじめは、会社のみんなに驚かれましたが、これからの世の中に必要なことだと賛同してくれて、うれしかったです。介護現場の声を丁寧に聞きながら、開発を進めていきましたが、なかなか思うように進まず、ようやく2015年に販売をスタートしました」

“みまもりシステム”は「介護施設・病院向け」「在宅介護・在宅看護向け」「離れて暮らすご家族向け」の3種類があります。いずれも経済産業省のロボット介護機器開発・導入促進事業として開発しました。2018年現在は、九州と関東、関西にある介護施設や個人宅などで、幅広く活用されています。

さらに、このシステムは海外にもチャレンジを開始しています。2016年にJICA(国際協力機構)の中小企業海外展開支援事業に採択され、急速に高齢化が進むタイ・バンコクの郊外の病院で、調査を行いました。コンサルの研究所や大分県、大学などと連携した産学官の連携プロジェクトです。

その結果、採択が決まり、タイ語に翻訳してカスタマイズした“みまもりシステム”が、2017年12月から2年間、現地での導入検証を行い活用されること目指します。

吉武 「当社の事業において、このシステムが占める割合は数パーセントですが、社会的な意義も大きい分野ですし、タイ以外の他国展開もスタートしました。これから積極的に伸ばしていきたいと考えています」

オリジナルの商品で人・社会・地球に貢献する「強くて いい会社」を目指して

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▲代表取締役社長の吉武俊一(中央)、専務取締役の佐藤誠樹(右)、取締役統括部長の池部良(左)

1997年に9人で立ち上げたエイビスは、20年経った2017年には社員が60人を超えるまでに成長しました。創業当時の9人は誰ひとり辞めることなく、今も全員在籍しています。事業内容は、環境関連から介護、医療・健診ソフトの開発と販売・保守サポート、各種ソフトウェアの受託開発まで広がりました。

しかし、この20年の間、非常に苦しい時期もありました。

吉武 「2012年のことですが、業績が落ち込み、みんなの給料を少しずつ下げて、3名の社員に辞めてもらった年があります。私たち自身がリストラにあう辛さを十分にわかっているのに……本当に辛い苦渋の決断でした。
それまでは『いい会社にしよう』という思いのもとで、社員がほとんど辞めない会社でした。だから、そのとき私たちは誓ったんです。もっと強い会社になろうと。会社が大きくなって人が増えていく限りは、会社としてきちっと強くなっていなければいけない。いい会社に『強い』をつけようやっ!って、経営陣で話しました。
それまで私の中に甘い部分があったのだろうと、目が覚めました。『会社をするからには、一緒に働く人たちを幸せにしたい』、いつもそう思っています」

当社は3つのマインドを掲げています。絆・貢献・利益です。

吉武 「私たちの核は、心の絆。商品を通してさまざまな絆を提供し、人と人の間に絆が広がってほしいと願っています。安全・安心を提供する商品を通して、人にやさしい社会づくり、美しい地球の未来に貢献することも私たちの使命です。
そして、利益。会社が継続して、お客さまに喜ばれること、社会のお役に立つことを目指すには、やはり利益が必要です。お客さまの喜びの声が大きくなれば、それだけお金が入ってくると信じつつ、組織として強くあるための経営をしていきたいと考えています」

創業時に20~40代だったメンバーは、今では40~60代になりました。次の代へとエイビスのマインドを受け継ぐ時期に入ってきました。

2022年には社員100人、環境検査システムの国内シェア50%を目指し、それを実現するために新しい環境システムを開発中です。海外展開も視野に入れ、これからも当社は心の絆を大切に、強くて いい会社として力強く歩んでまいります。 

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