「モバイルバッテリーといえばAnker」では物足りない。900%成長の超新星は何を目指す

外資系ハードウェア・スタートアップとして2013年に日本進出・事業開始。知名度ゼロからのスタートながら5年で900%超の成長を達成し、モバイルバッテリー等、展開する製品群はAmazonの各カテゴリーでNo.1に。ただ、実現したい未来はまだ先。アンカー・ジャパンのこれからを、代表の井戸義経が語ります。
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世界中のハードウェア企業を見渡す中で見つけた、「ダイヤの原石」

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▲写真中央下が代表の井戸。周りを固めるのがAnkerグループの初期メンバーです

「製造業の世界で何かチャレンジをしたい」ーー私は大学生の頃から、この思いをずっと胸に秘めていたんです。ゼミは製造業における経営管理を専攻しており、仲間たちの多くは大手のメーカーへと就職していく。最初は私もメーカーへの就職を考えていましたが、ふと、こんなことを思ったんです。

「競争の激しい職場でたくさんの経験を積み、20代でとにかく成長したい」、と。

その理由から、ファーストキャリアは金融業界に身を置くことにしました。非常に楽しかったです。投資銀行や投資ファンドで約10年間働き、さまざまな経験をすることができましたし、成長の実感も得ることができました。

このまま、金融業界でキャリアを積んでいくことも考えていましたが、10年働き、区切りも良かった。これは自分が昔から関心があったものにチャレンジする良いタイミングだと思い、金融業界を離れ、製造業の世界で起業することにしました。

どんな事業を手掛けようか……。いろんな事業アイデアを考えていたのですが、私にはエンジニアリングのスキルもなければ、ものづくりの経験もありません。考えた結果、自分でゼロからプロダクトを開発するのではなく、高い成長のポテンシャルを秘めたブランドを海外で見つけ、それを日本という今なお世界でも有数の市場と結びつけることで、そのブランドの成長を後押ししていくのが良いのではないかと思ったんです。

考えつくあらゆる手段でリサーチをしました。各国のEC市場やクラウドファンディングサイトの調査、トレードフェアや外資系企業のコミュニティを通じた探索など。その中で、とりわけ気を引いたのが「Anker(アンカー)」でした。

詳しく調べてみると、米Google出身のエンジニアがシリコンバレーで立ち上げた会社で、質の高いスマートデバイス周辺機器を展開している。製品も取り寄せて精査したところ、大きな可能性を感じ、日本での事業プランを急きょ作成してコンタクトをとってみました。

そうしたら、「面白そうだから、本社に来てくれ」という返事が来たんです。「よし、ではシリコンバレーに行こう」と思ったら、「違う、本社は中国にある」と言われまして。「あれ?」と思いつつも、話をしに行くことしました。

初年度いきなり“10億円”の年間売上目標。正直、ありえないと思った

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▲創業間もない頃のオフィス。オフィスの中なのにダンボールは平積み、まさに混沌の時代です

現地では、創業者のスティーブン・ヤン、彼の右腕であるドンピン・チャオ(現社長)と会って話をしたんですが、強い衝撃を受けましたね。彼らは大真面目に、「私たちは10年でSamsungのような巨大メーカーを創れる」と言うんです。数年前までコードを書いていたプログラマーの作った会社が、どうしてそんな巨大なメーカーになれるのか?最初は半信半疑でしたが、何度も彼らと話す中で、段々と腹落ちしてきました。

最初はプロダクトが優れているというところにしか目がいっていませんでしたが、Ankerの凄さはもっと深い部分に起因していました。

インターネットを通じて、世界中のお客様に直接製品を販売する。それはすなわち、世界中のユーザーの方々と直接つながるということ。

そのことにより、毎日お客様からのフィードバックが大量にもたされ、それをどのメーカーよりも精緻に、迅速に分析し製品の改善や開発に活かしていく。それこそが、Ankerの競争力の源泉だったのです。

私自身、製造業は巨大な組織やサプライチェーンを構築して事業を展開するものだと思っていました。しかし彼らは、インターネットの普及によって大きく変化した消費行動、流通構造を前提とし、これからのメーカーのあるべき姿から逆算し、事業を構築しようとしていた。それをメーカー出身でもない彼らが考案し、実現していることが何より驚きでした。

その後日本への本格進出が正式に決まり、2013年にアンカー・ジャパンを設立。Ankerブランドを日本で成功させようと心に決めたんですが、ヤンたちから出た言葉を聞いた時、一瞬、ひるんでしまいました。

「初年度に10億円の売上をつくろう」と言うんです。

Amazonで売りはじめた段階での売上が、年換算3,000〜4,000万円くらい。知名度もまったくと言っていいほどありません。正直、「絶対無理だろ」と思いつつも、なめられてしまってはいけない、それでは会社を作った意味がない。とにかく、愚直に泥臭いことも色々とやっていくことにしました。

2013年当時、モバイルバッテリーを展開しているメーカーは日本にもいくつかあり、アンカー・ジャパンは後発として市場に参入。ただ、製品名称が統一されておらず、いろんな呼び方をされていたので、私たちは「モバイルバッテリー」とし、市場に定着させることを狙いました。ビジネスパーソンをコアとなるターゲットユーザーとして定め、品質や機能性の高さ、ブランドが大事にしていることが伝わるよう、コミュニケーションを周到に設計していきました。

まずはAmazonで1位になることに注力すべく、会社のリソースのほとんどをAmazonでのマーケティングに投下。もちろん、ハードウェアのマーケティングに関する知識はありません。とにかくいろんな会社の商品を見ては、なぜ売れているのかを分析し、成功要因と思われる点は貪欲に取り入れていきました。

今でこそインフルエンサーマーケティングが流行っていますが、当時からIT業界の有名人や影響力のある方々に会いに行き、製品を見ていただき、フィードバックをいただくこともやっていましたね。

とにかく泥臭く試行錯誤した結果、Ankerのブランドを少しずつ一般の方々に広げていくことができ、創業から2年目にはAmazonのモバイルバッテリーの分野で1位を獲得できました。

そして、私をひるませた、あの10億円という目標も達成できました。

モバイルチャージングカンパニーから、ライフエンパワーメントカンパニーへ

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▲Eufyのスマートスピーカー。今後も新しいブランドを世に提供していきます

新興企業はリソースが限られますから、そのリソースを正しいことに集中して投下しなければなりません。Ankerにとって、それはAmazonでの販売でした。電子機器の販売が拡大期にあり、また大手メーカーに支配されていない。そこを押さえることが、ECチャネルでの成功だけでなく、波及的にオフラインチャネルでの拡大にも役立ちました。

今だから言えますが、家電量販店には最初は全然相手にしてもらえませんでした。当然ですよね、名もない新興メーカーなのですから。その扉を開いてくれたのは、お客様でした。少しずつ家電量販店の店頭で「Ankerのモバイルバッテリー、置いてないの?」という声が増え、2015年頃から本格的に取り扱いが開始。オンライン、オフライン両方のバランスのとれた成長が実現しました。

その後、思わぬ追い風が吹きます。KDDIとのコラボレーション製品の販売に加え、「ポケモンGO」がスタート。モバイルバッテリーの需要が急増したことで、売上は60億円を突破しました。これは予想していなかった出来事だったので驚きましたが、モバイルバッテリーの便利さを知る方が増えたことも事実。

ここからモバイルバッテリーを持ち歩くことで、日常生活が快適に、便利になった方がひとりでも増えたんだと思うと、嬉しい限りです。

時代の流れに乗りながら、地道にマーケティング施策を展開した結果、創業から5年で900%超の成長を実現でき、「モバイルバッテリーならAnker」と言っていただける方も増えました。しかし、我々のゴールはここではありません。

私たちはモバイルバッテリーの会社になりたいわけではなく、顧客の生活を力強くサポートし続ける会社であり続けたい。それが本来のメーカーのあるべき姿ですし、プロダクトの本質は人の生活を豊かにすることにある。

そこで私たちは、2017年9月からAnkerの姉妹ブランドとしてスマートホーム ブランド「Eufy」とスマートオーディオ ブランド「Zolo」の展開を開始し、スマートライフ領域へ参入しました。

「Mobile Charging Company(モバイルチャージング カンパニー)」から、「Life Empowerment Company(ライフエンパワーメント カンパニー)」を目指していくことに決めたんです。

10年後も愛され続ける、真の「ブランド」になることを目指して

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▲資本を20倍に増資、私たちは唯一無二の存在へと駆け上がっていきます

2018年3月現在、「Eufy」からはスマートスピーカー、「Zolo」からは完全ワイヤレスイヤホンを展開していますが、製品を開発するにあたって何よりも意識しているのが、顧客のニーズを満たすということ。近い将来にメインストリームになっているような、かゆいところに手が届くような製品を開発し、提供したいと思っています。

顧客に寄り添い、顧客のニーズを満たす。これが、アンカー・ジャパンのフィロソフィーです。メーカーの独りよがりのプロダクトアウトの考えではなく、マーケットインでの商品開発を徹底する。今後もこのフィロソフィーに基づいて製品を開発し続けていきますし、その姿勢こそが私たちを唯一無二の存在へと引き上げていくことにもつながっていくと信じて。

5年、10年と顧客に愛され続けるような会社でありたい。そのためには私たちが何より大切に考え、徹底してきたフィロソフィーを礎に、お客様に信頼し、認めていただくことが必要不可欠です。2017年12月にその一歩として資本を20倍に増資しました。アンカー・ジャパンはここからさらにアクセルを踏んで日本市場での展開を強化していきます。

そう、すべては生活のより幅広いシーンで、ユーザーの皆さまに力を与えるためにーー。

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