混沌、躍進、進化……コンサル出身の執行役員が振り返るAnker、グロースの軌跡

代表の井戸義経が2013年に創業したアンカー・ジャパン株式会社は、わずか5年で成長率は900%を超え、売上は70億円を超えるまでに拡大。今回は、アンカー・ジャパン躍進の立役者、執行役員の猿渡 歩が知名度ゼロからここまでの道のりを振り返ります。
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整備された環境から、「カオス」へ。とにかく何でも自分でやり続けた

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▲入社時の中国本社の様子
猿渡 「想像以上にカオスな状況でしたね。オフィスの半分は段ボールの山。メンバーも代表、自分、数名の社員とアルバイトのみ。ホームページは日本語、英語、ドイツが混ざっていて、いかにも整備されていない。本当に何もないところからのスタートでした」

マーケティング・セールス部門の立ち上げ社員として、2014年にアンカー・ジャパンに入社した猿渡は、当時のことを笑いながら振り返ります。猿渡は米国の大学を卒業後、コンサルティングファームに勤務。その後、プライベートエクイティファンドで業務改善のマネジメントを担当するなど、スタートアップ、ものづくりとは無縁の業界でキャリアを積んできました。

そんな彼がなぜ、180度異なるハードウェア・スタートアップにジョインにしようと思ったのか——それは「事業会社で自分の力試しがしたい」という思いと、本社を含むマネジメントの人間性、プロダクトに魅力を感じたからでした。

猿渡 「コンサルティングファーム、ファンドでの仕事を通じて成長できましたし、やりがいも感じていました。その一方で、事業会社で日本市場のPL責任をもって、どれだけ会社の成長に貢献できるのかを試してみたい思いがありました。
そんなタイミングで井戸からオファーをもらい、彼の人間性に惹かれたと同時に、ハードウェアのメーカーでセールスの責任者として日本市場における売上の責任を任されるというチャンスは、貴重な機会だと思いました。
また、Ankerのプロダクトが素晴らしかった。当時の販売ルートはほぼAmazonに特化していましたが、流通にかかるコストを大幅に抑えられるため、他社に勝るとも劣らない高品質の製品を低価格で提供できる。さらに、もともとPCやデバイス周辺機器が好きだったということもあり、入社を決めました」

入社前は一等地の最新設備を備えるオフィスで、事務作業はアシスタントに頼める環境。一方、当時のアンカー・ジャパンは古い雑居ビルにあり、マーケティングとセールスに関する業務全般のみならず、あらゆる事務作業も自分で行なわなければならない環境でした。

猿渡 「当時は宅配便の発送も自分でやりましたが、今まで自分で発送することがなかったので、送り状の書き方も知らなかったんですね。だから最初は郵便の種類を勉強することからはじまりました(笑)あらゆることを自分でやらないといけない環境でしたが、そんなカオス感も楽しんでいましたね」

外資系らしくない、権限の大きさ。製品を改良しAmazonのNo.1へ

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▲入社当時の主力製品だった、Anker Astro M3 13000mAh モバイルバッテリー

従業員数名、知名度ゼロのハードウェア・スタートアップだった当時のアンカー・ジャパン。そこに入社した猿渡は売上最大化に注力することとなったのです。

Amazonにおいては、カテゴリで1位を獲得している他社商品について、価格、品質、見せ方等について徹底的に分析し、日々の売上データを確認し販売戦略を細かく見直していきます。同時に、製品の品質面で劣る部分については、本社へ直接、品質改良を打診しました。

ほとんどの外資系企業は、販売戦略も製品の開発や改善も本社が決定権を持つ場合がほとんどですが 、Ankerグループは大きく異なります。販売戦略面は各国に権限があり、本社とも対等なコミュニケーションを図ることが可能なのです。

その大きな裁量権を生かし、最適化を進めた結果、Amazonの「モバイルバッテリー」のカテゴリで常に1位を獲得し続けるようになったのです。

猿渡 「ECはスピーディーに仮説検証ができ、データの分析も細かく行なえる。ただ、品質となると僕の手に及ばない。なので、本国に対して、プロダクト改良の依頼が出せて、対等にコミュニケーションが取れるというのは非常にやりやすかったですね」

スタートアップがEコマースに特化して販売を行なうという点は合理的でしたが、Ankerが展開するモバイル周辺機器の多くは、いまだ家電量販店や携帯キャリアショップなどのオフライン市場の方が、大きな市場でした。猿渡はオンライン市場で積んだ一定の実績を元に、オフラインでの販売拡大にも着手します。

当時はパッケージなどの改良が必要で、想像以上にオフライン市場への参入は困難でしたが、理由をつけて参入できないというのではなく、「参入するためにはどうしたらいいか?」と目的から逆算して様々な問題を解決しました。

たとえばパッケージに関しては、一から日本のオフライン市場向けにつくってもらうということは困難であったため、店舗什器へ吊り下げられるようフックを付けたり、日本語のステッカーを貼ったりと地道な努力を続け、少しずつ実績を積み重ねていきました。

ポケモンとのコラボ製品で、Ankerブランドの認知向上を狙う

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▲ポケモンとのコラボレーション製品
猿渡 「BtoCがメインの商材なので、いかに多くの客層の方に認知していただくかというのが非常に重要です。そういう意味で、2016年7月にローンチされた『ポケモンGO』の大ヒットは、今までモバイルバッテリーを持つことがなかった方々が、その必要性に気づく大きな契機となったのも事実。
その頃同時に、ポケモンから共同商品をつくらないかという話もいただいていました。創業当初からキャラクターとのコラボも選択肢のひとつとして考えていましたが、創業初期はコアのターゲット層を充分取り込んでから客層の拡大を行なおうと優先順位付けしていました。
当時は一定の層を取り込み、ちょうど販売層の拡大を狙っていたため、このようなプロジェクトを実施するには非常によいタイミングとなりました」

猿渡はメンバーを率いて、ポケモン側への提案やデザインの調整、提案、このすべてにタッチ。最終的にモンスターボール型のモバイルバッテリーとBluetoothスピーカーの共同企画、販売を実現します。ここでも、Anker側の意見を盛り込んでいただくことに。

たとえばピカチュウの顔がプリントされたBluetoothスピーカーでは、ポケモン側に追加依頼を行ない、ピカチュウが音に聞き入っている顔にしてもらったり、色も公式カラーの黄色だとインテリアとしてマッチしないと考え、あえて茶色にしてもらったり。Ankerらしい、お客様を意識したこだわりの製品となりました。

猿渡 「Amazonと家電量販店での販売に注力して、毎日の売上を維持し続けることも大事ですが、他の企業とアライアンスを組めば既存の販売チャネルでは出会えない層の潜在顧客とも出会える。また、素晴らしいブランドとコラボすることによって、お互いのブランド向上に資すると考えました」

現場のキーパーソンである猿渡、そして代表である井戸の二人三脚で成長を続けていったアンカー・ジャパンは現在、30人の社員を擁し、売上も70億を突破。そして急速に拡大を続けています。その中で猿渡、井戸頼みではなく、メンバー個々が責任を持って、主役になってやりきるポジティブな空気も生まれています。

たとえばあるメンバーは、家電量販店以外の販売チャネルを増やすべく、自身の考えで楽天モバイルと交渉しMVNO業界に進出。また別のメンバーは、購買率を上げるためのあらゆる施策を自分自身の裁量で推し進めるなど、メンバー全員の貢献により、この高い売上成長率を実現できています。

猿渡 「全社の方針に沿い、計画に論理性がきちんとあれば、アンカー・ジャパンは自分の思ったことを、責任を持って進めていくことができます。財政の基盤も整っているので、あらゆる挑戦ができる環境があるというのは珍しいのかな、と」

変わり続けるから、ずっと面白い。アンカー・ジャパンは次なるフェーズへ

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▲アンカー・ジャパンは今後も新たな価値の創造に努めていきます

徐々にボトムアップの組織体制が機能し、成長を続けるアンカー・ジャパン。2013年の創業から5年が経った今、チャージングの分野で培った強みやノウハウを活かし、新たな製品カテゴリへの挑戦や取り組みも進められています。

猿渡 「ずっと、Amazonでモバイルバッテリーを売るだけだったら、会社としては安定はしても、多分飽きていたと思います。でも、Ankerグループは進化し続けています。スマートスピーカーや車載カメラ、モバイルプロジェクターなど商品カテゴリをどんどん増やし、販売チャネルも拡大していく。Anker公式サイトも日本独自で一新して独自コンテンツの拡充、また直接製品が購入できるようになり、初の直営店もオープンさせるなど、多岐にわたる挑戦を続けています。
表現が適切かわかりませんが、会社がすごく『生きている』ような感じがあります。変化しているからこそ、その息吹を感じられるというか。とにかく、常にチャレンジングなフェーズにあるな、と思っています」

そしてビジネスの成長に呼応するように、屋台骨となる組織もまた、社員全員が同じ方向を目指せるよう、しっかりとした基礎がつくられつつあります。その大きな柱となっているのが「Empowering Smarter Lives」というコーポレートミッションと、Ankerらしさの源泉である「Rationalism(合理的に考えよう)」「Excellence(期待を超えよう)」「Growth(共に成長しよう)」という3つのコーポレートバリューです。

人数が増えていくにつれ、非効率化してしまう部分をいかにオペレーショナルに仕上げて、各人が活躍しやすい環境を構築していくか――それがビジネス部門の執行役員として、マネジメントにあたる猿渡が今後取り組むことのひとつです。

自分の立てた戦略を実行に落とし込みやすく、必要だと思うことは自らの手でつくり上げることができる。それがアンカー・ジャパンで働くことのやりがい。私たちは今後もお客様の生活をより豊かに彩るため、「次の当たり前」になる商品をつくりだし、新たな価値の創造に努めていきます。

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