B2Bで「製造業に使うモノ」が当たり前にシェアされる世界を、自分たちが切り開く

国内初の精密機器B2Bマーケットプレイス「Ekuipp(エクイップ)」。創業者の松本悠利は外資石油サービス会社で石油探査機器を10年間開発してきたキャリアを持ちます。なぜ製造業のエンジニアがIT企業を創業したのか。その理由を松本が語ります。

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「原油価格の下落でオフィスがすっからかんに」——創業に至った松本の体験

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▲Anyble創業前、外資石油サービス会社に勤めていた時の松本(写真右下)

Anyble株式会社は、2018年3月に私が設立したスタートアップです。「新しいマーケットプレイスをつくる」をテーマに、同年4月にB2Bで精密機器を売買、レンタルできるマーケットプレイス「Ekuipp(エクイップ)」を公開しました。

もともと私は石油業界のエンジニアとして10年間研究開発に携わってきて、そこでの原体験がAnybleを創業するきっかけになっています。

シェール革命。これに伴って原油供給過剰が発生し、2014年頃から原油価格が急落しました。もちろん原油価格の下落は前職の石油サービス会社にも影響が及んで、一気に人員整理が加速しました。

米国の日刊新聞ヒューストン・クロニクルによると、リストラ(首切り)された人数はグローバルで7万人(2018年3月時点)。日本国内の会社で数千人のリストラが実施されて大きなニュースになっていますが、そんなレベルではありませんでした。本当に人がどんどんいなくなり、オフィスもすっからかん。

正直、私が入社したときは、やっぱり大企業=安定というイメージを持っていて、何かあっても大丈夫だろうと心の中で信じていました。結局のところ会社に思いっきり頼っていたというか。実は、父の勤務していた会社も当時絶対潰れないといわれていたんですが、私が高校生の時にバブルが弾け、あっさり倒産しています。

私は学生時代と前職時代2回の経験を通じて、「もう企業に頼るのはやめて、自分で切り開いていく」と強く思い、迷わず起業という選択肢を選びました。失敗しても自分の責任。大企業といえど、絶対安泰とは言い切れない時代になってきていると思います。

しかし、ただ意気揚々と起業すると言っても、何をするの?というところがネックでした。何かの問題を解決しなくてはいけない。そして、自分だからこそ気づける問題であるか。さらにビジネスになりうる市場規模か。こんなことを考えて日々過ごしていました。

そんな時、当時の景気悪化に関連してぱっと気づくことがありました。

「人はいないのにモノがあふれている……」ふと浮かんだアイデア

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▲使わないであろう測定器が多く格納された倉庫の様子。Ekuipp(エクイップ)を発案するきっかけとなった

会社は不景気になると負の循環がスタートします。予算カット→プロジェクト縮小→人員縮小→目標未到達→予算カット……。

負の循環によって、予算・プロジェクト・人といった様々なものが変化していくことを感じました。そんな中、あまり変化しないものがありました。それはモノです。特に実験、評価に使用する測定器たちです。

倉庫にいくとさらにその状況は顕著に分かります。私はプロジェクトの倉庫管理の担当でちょくちょく倉庫に顔を出していました。そこには、今後使わないであろう測定器たちが、うじゃうじゃと格納されています。その金額も数十万から数百万まで。

全員ではないんですが、エンジニアの気質として、「いつか使うかもしれないから取っておこうという」考えがあると思います。その考えもすごく分かります。

なぜなら、あるプロジェクトのために数百万円もする高価な測定器を買って、数回使うものの、プロジェクトが終わると倉庫にしまうという流れをよく見るからです。

ただ現実的には、結局使わないという場合がほとんどです。そして残念ながら、最終的には廃棄しています。

こんな状況に置かれている会社はほかにもたくさんあるはずです。使うかもしれないから売らない。でもほとんど使わない。さらに、最終的に手放すと判断したところでも、買取業者に査定してもらうにも時間がかかるうえにかなり安く買いたたかれるため廃棄する。

こんな問題を解決できたらいいなと思い、法人間で計測器、測定器を直接売買、レンタルできるマーケットプレイスのアイデアが浮かびました。そして、このアイデアを前職の同僚に話したところ、「一緒にやろう」と意気投合して創業しました。

「どこまで、何かを犠牲にできるのか」創業して立ちはだかった大きな壁

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▲Anyble創業当初の松本(左)と共同創業者(右)

創業するのはいいものの、製造業からITへのビッグチェンジ。何もかもわからないことだらけでした。

営業、マーケティング、広報、資金調達、メンバー集め、そして情報収集。スタートアップ関連の本を読み漁って、セミナー、イベントなどに参加して、いろいろな人とディスカッションして情報収集しながら、とりあえずやってみようという姿勢で少しずつ前へ前へと進んでいきました。もちろん空回りばっかりでしたけど、それでも一日一日何かを吸収していこうと頑張っていました。

ただ、その中でも一番苦労して、そして結局成し遂げることができなかったことは、初期の創業メンバー全員の熱量を維持することです。

初期の創業メンバーは私を含めて4人。実は集めること自体はそんなに苦労しませんでした。ただ、集めるのと維持するのはまったく違いました。

あるときメンバー全員に何でスタートアップで挑戦するのと聞いたら、いろいろな回答がありました。「リスクを負っても大きな経済的なリターンが欲しい」「何かをやり遂げて自分が生きたという証拠を残したい」「事業に共感がもてたから」。

すべてに問題があるわけではないんですが、初期のメンバーが、何かを犠牲にしてでも、自分と一緒に挑戦できるのかどうかを理解できておりませんでした。

「家庭の事情で一緒にはもうできない」「事業に興味はあるけれど、お金がすぐもらえないからほかの仕事をやる」など、気持ちは全員ばらばら。結局、自分だけが孤軍奮闘していて、継続して一緒にやっていける創業メンバーを集めることは難しいことを痛感しました。

残念ながら初期メンバーは4人から2人になってしまいましたが、もう1人の共同創業者とは、考えていることや思いを伝えてたくさんディスカッションすることによって、同じ熱量を維持して事業に取り組めています。

製造業の計測器、測定器が当たり前にシェアリングされる世界を目指して

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▲B2Bのシェアリングエコノミーのさらなる可能性を信じ、日々奮闘している。

C2Cのシェアリングエコノミーは徐々に浸透してきていますが、B2Bのシェアリングエコノミーは、まだまだこれからだと思います。 私個人として、B2Bのシェアリングエコノミーは製造業の世界を一気に変えるものだと信じています。

競合他社に勝つという考えも非常に大事ではありますが、B2Bのシェアリングエコノミーの考え方の根底は「企業間で、共有して、協力して、経済を活性化させる」ことだと思います。

ほとんどの製造業ではなんらかの設備投資をするし、その設備投資がどれだけの収益を生むかということも考えています。

B2Bのシェアリングエコノミーが活性化すれば、今後設備の調達手段として、新規購入・レンタル・リースといった既存の手法に加え、「他社から直接買う、借りる」という選択肢もでてきます。また、設備投資での投資対効果のシミュレーションでは、余剰時の貸し出しによって得られる収益や、最終的な売却を視野に入れることも可能になります。

B2Bのシェアリングエコノミーによって、設備の調達手段における選択肢が広がり、新たな利益調達の方法も生まれ、最終的に経済が活性化する。

これはどの製造業にとっても魅力的ではないでしょうか?

私たちが提供している、法人間で計測器、測定器が売買、レンタルできるマーケットプレイス「Ekuipp(エクイップ)」もまだまだユーザー数が足りなく、これからというフェーズです。時間はかかるかもしれませんが、5年、10年後には「B2Bのアシェットシェアリングは『Ekuipp』」と言われるくらい、国内だけにとどまらず、国外にも利用されるような、魅力的なマーケットプレイスを築けたらいいなと思っております。

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