「すべてのビジネスに“使える”AIを」 Appierのチャレンジマネジメント

2012年創業のAIソリューションのスタートアップAppierは、プロダクトの拡大期に入り着実な成長を遂げています。執行役員を務めていた日本マイクロソフトから、Appierに転職したCSO(最高戦略責任者)のショーン・チュウが、スタートアップ企業に飛び込んだ想いと、今後の成長戦略を語ります。

ビジョンに共感し、入社後CSOとしてインパクトを発揮

▲Appier CSO (最高戦略責任者) ショーン・チュウ

私は、今までソニー・ピクチャーズ・エンタテインメント、ウォール・ストリート・ジャーナル、モトローラで働き、その後日本マイクロソフトに10年在籍し、執行役員を務めていました。マイクロソフトではオンラインサービスやマーケティングなどを担当して来ましたが、もっとビジネス全般にインパクトを与えたいと思っていました。

そこで、2017年4月にAppierのCEOチハン・ユーに会い、6月に入社を決めました。それまでAppierのことはほとんど知りませんでしたが、チハンの「すべてのビジネスに使えるAIを提供する」というビジョンに共感でき、Appierなら、今まで蓄積してきた自分の経験やノウハウを活かすことができると思ったからです。

当時のAppierは広告ツール製品がメインでしたが、チハンはアドテクでNo.1を目指すのではなく、AIのパワーをあらゆるビジネスに適用していこうと考えていたんです。

これからはスタートアップ企業でインパクトを与えたいという思いが強かったので、転職に不安はありませんでした。Appierなら思う存分活躍できると確信したからです。幸い私はAppierの成長戦略の策定・実行に責任を持つCSOという立場で、ビジネスに対してインパクトを発揮できるようになりました。

2018年9月現在は東京をベースにして企業向けAIの普及に注力するとともに、日本と韓国における事業拡大を牽引しています。

具体的にはAppierの成長に関わるあらゆるプロジェクト、たとえば、社内統制の整備や製品の開発で必要なマーケットフィードバック、マーケットの拡大策などをCEOであるチハンと相談しながら策定・実行しています。東京をベースにしているのは、多くの割合のレベニューが日本と韓国から来ているからです。

成長に必要な施策はすべて実行する

▲展示会のブースデザインに関してミーティング

ようやく社内は整備されてきましたが、入社直後はかなり手探り状態でした。最初の1カ月は社員や部門長にヒアリングを行なって、各自抱えている問題点や成長を阻むハードルは何かを探りました。

今までの経験から、プロダクトやマーケット以外に、社内体制や情報伝達など基本的なことが回らなければ成長は難しいことがわかっていましたので、社内体制を整備しつつ課題解決に取り組みました。

会社の土台をつくるためには、当たり前ですが、情報共有の仕組みが必要となります。私が入社した当時は、かなり情報が分断されている感じがありましたので、 最初の一歩として、マンスリープロダクトレビューとマンスリービジネスレビューに取り組みました。グローバルで各部署、各部門の1カ月の活動を共有・フィードバックする仕組みです。

組織が小さいときは意思決定は早いのですが透明性は低くなりがちです。当時も、社員との一体感の醸成が課題でした。情報共有の仕組みを整えることで意思決定の透明性を高めることができ、社員が同じ方向に向くことができ、会社のベクトルを合わせて無駄なく実行できるようになりました。

そして、現在はトレーニングシステムの改善にも取り組んでいます。プロダクトチームが優れたものをつくっても、一人ひとりまで情報が届くタイムラグがあり、情報が正しく伝わらないこともあります。そのままでは優秀な人材を採用しても、人材をフルに活用できないため成長スピードが鈍ってしまいます。

また、ユーザーニーズに対応した製品を迅速に開発できるようマーケットイン方式を取り入れました。以前は、顧客からの要望などは本社の一担当者が聞いて対応することはありました。しかし、それでは担当者が別のプロジェクトを抱えていると開発が遅くなり対応できませんし、今後の成長を考えた戦略的な開発もできません。

製品開発に関しては、本社がプロダクトやテクノロジー考えてマーケットに投入するというプロダクトアウトが基本でした。スタートアップ時点では、インパクトあるプロダクトやテクノロジ―のリリースのためにもそれで良かったんです。

しかし、製品が浸透してユーザーが増えてくると、マーケットイン方式の方がより適しているので、本社にプロダクトマーケティング担当を設置して、会社の戦略として開発の優先順位をつける体制をつくりました。

ローカルな問題を拾い上げて本社にフィードバックするサイクルをつくることができ、日本や韓国市場の手応えは良くなり、着実に成長を続けられるようになりました。

フェイルファーストで、失敗を素早く次につなげる

今でこそ、Appierは順調に成長戦略を策定・実行していますが、すべての製品やサービスが想定通りに市場に受け入れられるものではないことを経験しました。それがきっかけで、マーケットからのフィードバックが重要と考えるようになりました。

失敗はできるだけ避けたいのはもちろんですが、失敗を恐れていては新しいことにチャレンジできません。Appierではフェイルファースト(失敗するなら早く失敗して、失敗をずるずる引きずらない)という考えがあり、失敗したと思ったら素早く撤退して、次のプロジェクトに取り組むことができました。

この失敗は、今まで経験した中でもかなり大きいものでした。ただ、フェイルファーストのおかげで、失敗を引きずることなく、素早く次の開発につなげることができました。スタートアップのAppierならではだと思います。

その後は、毎月のマンスリープロダクトレビューやマンスリービジネスレビューを活かして、顧客ニーズに対応した製品を開発できるようになりました。

それらのレビューをベースにCEOと相談しながら方向性を決め、プロダクトチーム、エンジニアリングチーム、マーケットチームが連携して開発しています。製品はマーケットチームが上げたニーズを反映してプロダクトチームが製品化しますが、それだけでは先進性が発揮できません。

そこでテクノロジーチームが、次のステップにつながるテクノロジーを実装した製品に仕上げます。それによって、他にはない製品をリリースすることができるんです。

マーケットシェアよりマインドシェアトップを目指したい

▲新製品アイコアの発表パーティで台湾のスタッフと談笑

2018年からAI主導の先行型マーケティング・オートメーション・プラットフォーム「アイコア」の開発に集中していましたが、8月にローンチすることができ、マーケティングオートメーションの製品を投入することができました。

今までプログラマティックプラットフォーム「CrossX」のデータを使ってより効果の高い広告を出したり、より精度の高いオーディエンスの分析は可能でしたが、顧客にエンゲージメントする方法がありませんでした。

そのため、Eメールやお知らせを出すことができなかったんですが、アイコアによってエンドツーエンドのマーケティングが可能になりました。いわばマーケティングのラストワンマイルが解決できたわけです。

次のステージは、Appierのコアテクノロジーをどうやってより多くのマーケットに展開していくかになります。現在3つのマーケティングテクノロジー製品(CrossX、アイソン、アイコア)を投入していますが、コアテクノロジーはマーケティング分野に留まらないと考えており、それ以外の分野で使えるAIツールを開発しており、既に実証実験を行なっています。

これからAppierのAIプラットフォームを一層普及させていくに際して、お客様からは「Appier製品を導入したら売上が上がった」と言ってもらえるようになることが目標です。

また、今後のAppierについては、マーケットシェアを目指すよりも、「AIであればAppier」と思われる、お客様の中でマインドシェアトップの会社でありたいと考えています。

社会に対しては、AIによって人間が単純作業から解放されることに加えて無駄の排除に貢献できると考えています。たとえば、興味のないDMなどを送らないようにすることで、企業は資源や財源の負担を減少でき、ユーザーは情報過多の負担から解放されます。

Appierは成長の過渡期にありますが、私のように楽しみながら全力投球できるよう、社員一人ひとりがノウハウや才能をフルに発揮できる場になるよう取り組んでいます。

また、日本チームを大きくして各自が100%以上の力を発揮できるようにすることで、良い人材を集めさらなる成長を目指しています。

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