クレイジーな人たちが気づかせてくれた “世界の可能性を拓く”事業の誕生秘話

勉強の「わからない」を解決できるEdTechサービスを手がけるアルクテラス株式会社。一人ひとり理解の仕方が違うからこそ、一人ひとりに合った学習方法を提供し続けています。そんなアルクテラスの創業背景には、代表取締役社長 新井豪一郎の意外な過去と、生き方に大きな影響を与えたある原体験がありました。
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突然勉強が得意に!“落ちこぼれ”だった自分からの脱皮

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2歳からイギリス、小学校1年生~5年生までは東京と横浜、小学校5年生~中学校3年生までをオーストラリアで過ごした新井少年。小学校の頃は、自分に自信がなく、目立つことが嫌いなおとなしい子どもでした。

授業に集中できず、いつもそわそわ。勉強もスポーツも苦手なのに、自分の意志とは無関係に目立ってしまう……そんな新井少年に変化が訪れたのは、小学校6年生の頃。あることがきっかけで、突然勉強が得意になったのです。

勉強が苦手ながらもやらなければいけないと考えた新井少年。当時はオーストラリアに住んでいましたが、親にお願いして日本の参考書を取り寄せます。そしてその参考書を読んでみたところ、すごく簡単に理解できることに気づきました。

新井 「授業中、耳で聞いて理解できなかったことも、文字や図にして、目で読めばわかることに気づいたんです。自分に合った学習法であれば理解できるんだと勉強が楽しくなりましたね」


こうやって勉強すれば良いんだ――そのことに気づいてからは、勉強に苦労することはなくなりました。学校の授業が分からなくても気にならない。なぜなら、事前に内容を読んでおくか後で読むかすることで補えるから。

こうして自分に自信を持てるようになり、日本に戻った新井少年。勉強もスポーツもすっかり得意になりましたが、本音と建前の使い分けが苦手で、典型的な“帰国子女”でした。そのためか友達は少なく、腰の大きな怪我によって大好きなサッカーもできなくなり、鬱々とした日々。一時は不登校にもなっていました。しかしこのとき、もう一つの転機が訪れます。

部屋で腐っていた新井少年に、父親がある本を買ってきてくれました。それは「竜馬がゆく」(著者:司馬遼太郎)。今日を生きるのに必死な自分と、社会を変えようとしてイキイキしている竜馬。二人はまるで対照的でした。しかしそんな竜馬も小さい頃は内気な少年。剣道を通して心も体も強くなり社会に出ていったのです。

こういう生き方もあるんだ――新井少年の中で、何かが変わりはじめました。「怪我が治ったら格闘技をやろう!」と思い立ち、その後の大学時代は空手三昧。不可能じゃないかと感じるような過酷な練習を重ね、どんな状況でも乗り越えられるようなタフさが身につけていきました。

こうして自分を変えようと 必死に“脱皮”してきた新井。そんな彼が「世界を変えよう」という思いに至るのは、もう少し先の話です。

自分を変えてくれた「教育」で、世界を変える

「自分が世界を変えられると本気で信じる人たちこそが、本当に世界を変えているのだから」
大学卒業後は、日本電信電話株式会社(NTT)でエンジニアとして働くことに。在学中空手の稽古に明け暮れて自分が何をしたいのか全く見えない中で「入社後に最も選択肢が多いと思われる」と考えて入社しましたが、企業のカルチャーがどうしても自分に合わず、「この組織に染まってしまって良いのだろうか」と悩みはじめます。

そんなとき、衝撃的なCMに出会います。Appleの伝説的CM『Think Different "Crazy Ones"(クレイジーな人たち)』です。“彼らはクレイジーと言われるが、私たちは天才だと思う。自分が世界を変えられると本気で信じる人たちこそが、本当に世界を変えているのだから。”というメッセージに、新井は奮い立ちます。

大きな志を持っていても、大きな組織に染まっていく人がたくさんいます。新井は自身がそうならなかった理由を「運良く、本当にその組織で浮いていたから」「リスクを取ろうとする姿勢があるから」と振り返ります。

そしてビジネススクールへ進学。そこでアルクテラス共同創業者の白石と出会います。卒業後は「経営者視点で仕事ができる」という理由でコンサルティングファームへ入社しました。起業したいと思っていたものの、どんな事業がしたいのかを決めきれていなかったのです。

しかしNTTで4年間、コンサルファームで3年間過ごすうちに、徐々にやりたいことが頭の中でカタチになっていきます。社会人生活を通して、すぐに話が伝わる人とそうではない人がいることを感じていた新井。コミュニケーションの仕方によって、理解できたりできなかったりすることがあった少年時代の自分を思い出し、既存の教育が一人ひとりの学習者に最適化されず、生徒たちが本来持っている力を引き出して切れていないことについて考えるようになっていきました。

そしてついに会社を起業すべく動き出します。教育事業で提携すべく、なんと株式会社星野リゾートの中途採用試験に潜り込み、星野社長に提携を“直訴”したのです。

新井 「でも進めていく中で、事業が拡大しそうにないことに気づいて断念しました。すると星野社長が『経営者としての経験を積むために、スキー場の再生事業の責任者をやらないか?』と誘ってくれたんです。いざ入社すると、あまりに楽しくて『起業したい』という気持ちも忘れかけていました」


ちょうどそんなとき、新しいコース開発のために、保有するスキー場の場外を滑っていた新井。木に激突する事故を起こし、自らの死を強く意識したといいます。

「世界を変える」と決めたのに、まだ何もできていない……そう思った新井は、再び立ち上がります。3年強の事業責任者の経験を経て、アルクテラス創業に向けて一気に舵を切りました。

すべての学ぶ人にとっての道しるべ「アルクテラス」が誕生

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「アルクトゥルス」という、うしかい座で一番明るく輝いている星があり、昔、ポリネシア諸島からハワイにたどり着いた人たちは、この星を頼りに航海したと言われています。

アルクテラス株式会社は、“学習者たちにとっての道しるべになるサービスを提供したい”という想い、そして“歩く道を照らす”という意味を会社名に込められ、2010年に創業しました。

アルクテラスの事業は3つ。生徒の学習スタイル診断ツール「カイズ」、ノート共有ができるソーシャル学習アプリ「Clear」、そして、個別指導塾「志樹学院」。どの事業もとても大事ですが、創業以降、会社を支えてきてくれたのが「カイズ」です。

大学生のアルバイト講師でも、それぞれの生徒さんに合った教え方で指導できる。少年時代の新井が体験した”自分に合った方法で学習すれば、人は本来持っている可能性を発揮できる”を最も体現したサービスといえるでしょう。そんな「カイズ」には、ある嬉しいエピソードがあります。

新井 「不登校生にボランティアで勉強を教える、認定特定非営利活動法人Teach For Japan(以下TFJ)で指導していた先生とお話する機会あり、『カイズのおかげで、本当に生徒を変えることができた、色々な生徒の力を引き出せるようになった』という報告をくれたんです。』


「カイズ」で学習スタイルを診断したところ、視覚から情報を収集することが得意であるという結果を得られ、数学が苦手な生徒さんに図形などを見せながら教えていくと、目に見えて理解が進み、本人が「自分にはもうTFJは必要ないと思う」と言うくらい数学が得意になり、学習の意欲も高まったのだそうです。

勉強が苦手な生徒さんを多く抱えているTFJですが、カイズの力で、勉強を教えた先生自身が何年経っても忘れないくらい、大きな成功体験を残すことができたのです。

このように、「カイズ」を活用してしっかり教えることで、生徒さんたちはきちんと授業の内容を理解することができる。一人ひとりに合った学習方法を提供することができる。それは私たちアルクテラスにとって大きな自信となりました。

アルクテラスの事業拡大が、世界の可能性を拓く

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その一方で、新しい課題も見えてきました。自宅に帰えると生徒さんは一人になってしまうのです。そこで、在宅での勉強もサポートする必要性を感じ、生徒さんが自分のスマートフォンで使えるソーシャル学習アプリ「Clear」事業を開始したのです。

「カイズ」と「Clear」は、今はバラバラの事業ですが、実現しようとしている未来は、一つです。それは、世界の人々に一人ひとりの特性に合わせた学習体験を提供し、世界の可能性を拓くこと。いつかこの二つのサービスを活用しながら私たちアルクテラスが、本当に提供したい教育を実現できる“学校”をつくっていきたいと考えています。

私たちは、新井少年のような“落ちこぼれ”をなくすことができるこの教育事業を拡大させ、世界で最も利用されている学習サービスにしていくことで、この未来を本気で実現しようとしています。

なぜなら、本来持っている力や得意分野を伸ばして、自分の好きなことにチャレンジしていく人たちが、今までになかったような世界をつくっていくだろうと信じているから……新井が「竜馬」や「クレイジーな人たち」と出会えたように、それぞれの個性を引き出すきっかけになるために、アルクテラスは存在したいのです。

人が本来持っている可能性をもっと発揮できる世の中をつくるために――35歳という年齢で起業した新井は、長い間、その“想い”を温め続けてきました。だからこそ、誰よりも鮮明にビジョンを描くことができているのでしょう。自分に自信がなかった少年はいつしか大人になり、いま仲間とともに、子どもたちの歩く道を照らし出そうとしています。

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