「人と社会に役立つ事業」を世界へーーヒューマングループの海外事業が見据える未来

教育を核に人材、介護、保育などを事業展開するヒューマンホールディングスで海外事業本部の取締役を務める小澤研太郎は、ユニークな経歴の持ち主。FMラジオ局のディレクター、書籍編集者を経て通信教育会社で海外赴任を経験したのち、現在の仕事に就きました。自身の仕事に対する想いと、海外事業の成長戦略を語ります。
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自分で何かを生み出したい。ラジオ局のディレクター職から書籍編集者へ転身

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▲紙質や色味にまでこだわりぬいた英訳付き図鑑本。15年たった現在も好調だという

大学時代、東京のFMラジオ局でアルバイトをしていた小澤は番組づくりの面白さを知り、卒業後同局に就職。ディレクターとして実験的な番組を成功させ、局の看板番組を任されるなど活躍します。

しかし、入社3年目を迎えた頃から小澤の胸には不安と焦りが芽生え始めます。

小澤 「放送局のディレクターは芸能事務所やレコード会社に対して強い立場ということもあり、若くても知らず知らずのうちに生意気になってしまっていました。しかし、会社に守られていない素の自分にはどんな力があるのかと思うと、将来が不安でした。自分で何かを生み出せる人になりたい。そう考えるようになったのです」

クリエイティブな仕事、そして、消えてしまう音ではなく自分たちの作品が形になる仕事を求め、2001年に出版社に転職。持ち前の企画力に加え、撮影やデザイン、印刷など、書籍編集に必要な専門知識をどんどん吸収し、5年間で約50冊もの書籍を世に送り出します。

小澤 「新しい仕事でしたから、とにかく一生懸命。知らないことを熱心に聞くからか、プロの人たちから可愛がってもらいましたね。

撮影や印刷の色味に徹底的にこだわったデザイン・アート関係の分厚い豪華本や、絶滅動物をテーマにあえてモノクロで表現した絵本、博物館の収蔵品を紹介した図版本など、納得のいく仕事を思い切りやることができました」

そうした仕事が通信教育会社の目に留まり、2005年に転職。中学生の保護者向け情報誌の編集長として手腕を発揮します。そして、6年目に再び転機が訪れます。

当時、社内公募していた海外事業に応募し、2011年から6年間、家族とともに中国や台湾で海外生活を送ることになるのです。

海外赴任を希望したのは、父として子に“あること”を伝えたかったから

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▲人生と仕事を楽しむために、小澤は“ゼロイチ”が経験できる海外事業に飛び込む(中央が小澤)

実は小澤は、商社に勤務する父のもと、小・中学生時代をニューヨークで過ごしました。海外生活経験があり、英語も堪能な小澤が海外事業の社内公募に手を上げたのは、妻の妊娠中だったのです。

なぜ家族にとって重要なタイミングで、これまで築いたキャリアとは違う新しい仕事に挑戦し、生活環境をガラリと変えるような思い切った決断を下したのかーー。

小澤は当時の決断をこう語ります。

小澤 「 『自分が夢中になれる新しい仕事に挑戦したい 』と思い始めていた私にとって、日本に居てはできない、ゼロからイチを生み出すビジネスを経験できる海外事業は、非常に魅力的でした。また、父として子どもに何を伝えられるかと考えたとき、 『自分が楽しんで仕事をすること 』が大事だと思ったのです。

子どもには、世の中に出るのは楽しいことだと感じてほしい。そのためには、私自身が仕事と人生を楽しんでいる姿を子どもに見せることが必要だと思いました」

こうして中国に渡った小澤のミッションは、通信教育という概念のない中国で、通信教育事業を立ち上げることでした。日本のようにダイレクトメールが一般化していない中国で小澤が取った作戦は、人海戦術による電話営業。1000人近くの営業マンを集め、通信教育の電話セールスを指揮しました。 

そのほか、アジア地域で販売する幼児用英語学習教育の開発から販売戦略の立案を務め、事業は黒字化を果たします。さらに、中国・台湾に英語教室を展開する現地企業とのジョイントプロジェクトを軌道に乗せ、教室事業という新規事業を成功させました。 

“人口減”の問題解決につながるヒューマンのビジネスは、世界に通用する

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▲2019年4月、ヒューマングループの海外事業に携わるメンバーと

中国・台湾で海外事業を成功させた小澤は、2016年に帰国後、海外事業の責任者としてヒューマンアカデミーに入社します。

ヒューマングループは1997年に中国・天津での職業訓練校の開校を皮切りに、東南アジアやヨーロッパ、北米で教育・人材事業を展開してきましたが、当時の海外関連事業の売上高はグループ全体の2%程度と立ち止まっていました。 

しかし、入社前から小澤には「ヒューマングループの海外事業は必ず成功する」という確信がありました。

小澤 「ニーズさえ捉えていれば、事業は絶対に成功します。ヒューマングループのビジネスの最大の特徴は、実践的な専門教育を行う事業と、育てた人材を社会に送り出す事業が、 ひとつに連結していること。

アジアや欧米などの外国では、机上の学問よりも、仕事に直結するような実用的・実践的な専門教育のニーズが高いので、ヒューマンの提供する教育事業は国内以上にフィットすると思ったのです」 

ビジネスを展開する際、普遍的で継続的に発生するニーズや、社会にとって切迫感があるテーマを捉えたビジネスほど投資がしやすく、成功の可能性も高まります。そうした観点から小澤が注目したのが、“人口減”というキーワードです。

ヒューマングループが展開するさまざまな事業は、日本が直面している“人口減”の問題解決に貢献する事業でもあります。中長期にわたってグローバル人材を育て、その人材を労働力として確保するというヒューマングループのビジネススキームは、現在の世界情勢だからこそ通用する、と考えたのです。 

小澤「人口減少社会の問題を乗り越える解決策は、大きく分けて3つ考えられます。 1つはAI (人工知能 )やロボット技術などを活用して、人手を省力化すること。第 2に、海外から外国人労働者を受け入れて、労働力不足を補うこと。そして第 3に、人口減による国内産業の落ち込みをカバーするために、海外でも稼げる人材を育てること。 

ヒューマングループの事業は、この 3つをカバーしています。そこで海外事業では、この 3つに対して『アセット(経営資源)の選択と集中』を行うことにしたのです」

そのため海外事業の成長戦略は、「3つの柱」に集約されています。

1つ目の柱である「ジャパンプレミアムコンテンツ」は、ロボット教室に代表される、ヒューマングループが国内で培ってきた独自の教育コンテンツを海外に展開するビジネスのこと。

2つ目の「国際労働力供給ビジネス」は、日本語教育と、グローバル人材の派遣・紹介などの人材事業を組み合わせたビジネス。

そして3つ目の「現地プレミアムコンテンツ」は、海外の優秀なコンテンツを日本や別海外拠点エリアに横展開する逆輸入ビジネスのことです。

2017年6月にヒューマンホールディングスの取締役に就任した小澤は、これら3つに事業戦略を絞り、「アセットの選択と集中」を図ることで海外事業の基盤を安定させる方針を打ち出しました。

「為世為人」をビジネスで体現するには――。哲学のように考え続ける

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▲海外事業拡大時に一番に考えるのは、相手国の人にも役立つビジネスかどうかだという

ヒューマングループの海外関連事業は、小澤の入社後に成長が加速。2018年度にはグループ全体の10%を超える程度に到達しました。

今後のさらなる飛躍に向けて、小澤が思い描く戦略とは――。

小澤 「事業領域の選択と集中を進める中で、もっともレベルアップするのが、事業に携わる “人 ”です。やるべきことに集中できる環境を与えられると人は成長しますし、成果が出ると自信もつきます。

人がレベルアップし、基盤となる事業が安定すれば、その事業に付随する事業を新規事業として手がけたり事業エリアを拡大したりすることで、加速度的にビジネスを成長させていくことが可能になる。今後は、競合他社との差別化ポイントを強化していく中で、海外事業の規模の拡大を加速していくことが大切です」

この先、海外事業を大きくしていくために小澤が一番に考えているのは、「相手方の国の人にとっても役に立つビジネスを行うこと」です。

小澤 「国際労働力供給ビジネスで言えば、私たちはインドネシアで保育事業を始めた。これは、介護職として日本へ働きに来たインドネシア人が自国へ帰った後、保育園で働ける道を確保する意味もあります。

ヒューマンで身につけたスキルを生かして日本でも自国でも働ける、という人材のローテーションが可能な仕組みを整えることが、働く人たちにとってありがたく、また国際労働力供給ビジネスの中で勝者と敗者を分ける決め手になると考えています」

ヒューマングループの経営理念は、“世のため人のため”を表す「為世為人(いせいいいじん)」。これは、地球上で最も価値のある資産である“人”を原点に、仕事を通じて社会と人々のために貢献することを指します。小澤はこの経営理念に共鳴し、入社を決めたと言います。

小澤「いつも『為世為人とはどういうことだろうか』と哲学のように考え続け、私たちの仕事はこれを体現できているだろうかと自らに問い直しています。 

世のため人のためになる事業を日本から世界へ広げ、人と社会の成長の環を無限に連鎖させていくことが、ヒューマングループの海外事業の役割。 

私はその動きを先導していくべき立場にあって、『 為世為人 』のフィロソフィーを体現する道を示し、ぶれない決断と勇気を持って、グループ全体の仲間たちに対して明確な言葉で発信していくことが大事であると考えています」

人を育て、育てた人が活躍できるしくみをグローバルに整えていくことで、よりよい社会を実現する――。

そんな大きなビジョンを掲げ、ヒューマングループの海外事業は、第 2の飛躍に向けて走り続けています。

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