外国人エンジニアを採用し、日本企業に派遣する「GITサービス」が拓く未来像【前編】

ヒューマンリソシアの「GIT(Global IT Talent)サービス」は、海外の優秀なITエンジニアを自社で採用し、国内企業に派遣する人材サービス。2016年7月の開始以来、人材不足に悩む企業から新たなソリューションとして注目され急成長を遂げるサービスの、誕生から今後の展望までを語ります。
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IT人材不足の解決策として「外国人エンジニアの派遣活用」の道を選ぶ

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▲入江は入社当初から、ITエンジニアの人材派遣部門を伸ばしたいと考えていた

ヒューマンリソシア経営戦略室バイスプレジデントの入江直樹が、同社の戦略担当になったのは2011年のこと。前職での経験からIT分野に精通する入江は、ヒューマンリソシアで技術者派遣の部門を強化したいと考えていました。

入江 「当時から ITエンジニアの人材不足が問題となっており、人材確保に苦労されているクライアント企業がたくさんありました。

人材が足りない分野にソリューションを提供することが私たちの使命であり、今後さらに日本の労働人口が減少していくことを考えると、 AIや IoT、ビッグデータ活用、プログラムやソフトウェア開発など IT系のスキルを備えたエンジニアの人材不足がますます深刻化することは見えていました。

ニーズのあるところに企業の成長の活路がありますから、 ITエンジニアの人材派遣部門を伸ばしていきたいと考えたのです」

ヒューマンリソシアは人材サービス事業で30年の実績があり、全国28拠点を有し、クライアント企業は3500社にのぼります。

しかし、事務系の職種の人材派遣が全体の約9割を占めており、ITエンジニアなど技術系の職種に関しては、決して強いとは言いがたい状況でした。

技術者の人材派遣を専門とする競合他社もひしめく状況下で、どのようにしてエンジニアを確保し、派遣サービスへとつなげていくか。

入江の頭にひらめいたのは、「世界中から優秀なITエンジニアをスカウトし、自社で正社員として採用したうえで、クライアント企業に派遣する」というアイデアでした。

入江 「自国を飛び出して日本で働いてみたいという海外のエンジニアは少なくありませんが、彼らにとって最大の課題が『日本語の壁』。

日本語ができないために日本で働くことを選択肢からはずす人も多いのです。となれば、日本語の壁さえ取り払うことができれば、世界中から広く優秀な人材を日本へ呼び込める可能性がある。

幸い、ヒューマングループの中核であるヒューマンアカデミーは日本語教育で長年の実績があり、国内・海外で日本語学校を展開しています。

その教育力を活かせば、外国人エンジニアに日本で活躍できるだけの日本語能力を養うことができるだろう、と考えました」

「日本語の壁」を越えるために万全のサポート体制を構築

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▲2017年12月の忘年会にて。外国人エンジニアの交流の場も定期的に設けている

ヒューマンリソシアのGITサービスは、海外のエンジニアを自社で正社員として雇用し、顧客企業に派遣するサービスです。

正社員で雇用し派遣する形態は、働く人にとっては雇用と収入が安定するメリットがある反面、人材会社にとっては派遣先が決まらない間も人件費が発生し続けるというリスクがあります。

あえてそのリスクをとった理由を、入江はこう説明します。

入江 「クライアント企業から人材オファーをいただいてから海外の人材を採用し、在留資格の取得や入国手続きを行なうとなると、半年くらいかかります。するとタイミングが合致せず、機会損失につながってしまう。
しかし、採用先行であれば、日本に来るまでの手続き期間から日本語教育をはじめ、来日後に研修で日本のビジネスマナーや日本で働くために必要な知識や技能を身につけてもらったうえで、派遣先に送り出すことができます。

採用先行はリスクもありますが、逆に『教育』という私たちの強みを活かせる方法でもあるのです」

一般に、外国人が日常会話レベルの日本語を習得するまでに、約400から500時間の学習時間が必要と言われています。1日6時間の日本語学習を月20日間行なったとしても、約4カ月かかる計算になります。

しかし、日本で働く海外エンジニアに求められるのは、日本語で話し、コミュニケーションが取れること。

ヒューマンアカデミーはコミュニケーション力養成を重視した独自の日本語教育メソッドを有しているため、約3カ月間で日常会話レベルとされるJLPT(日本語能力試験)のN4レベル相当まで引き上げることが可能でした。

ヒューマンリソシアが採用した外国人エンジニアたちに、日本企業で働くために必要な日本語コミュニケーション力を育成したうえで、派遣することができるのです。

また、初めて日本で暮らす外国人にとっては、文化や環境の違う日本での生活に馴染めるか、不安も大きいものです。

その点についても、ヒューマンリソシアでは万全のサポート体制を整えています。

入江 「外国人エンジニアたちには、来日後まず私たちが手配するシェアハウスに入居することを勧めています。

シェアハウスでの暮らしは、同じヒューマンリソシアのエンジニア仲間や話し相手がいて、すでに日本で働いている先輩社員と交流できるので、ホームシックや日本での生活に対する不安も軽減できます。

住まいの手配から生活相談まで私たちが責任を持ってサポートし、外国人エンジニアたちに安心して『日本に行ってみよう』と思ってもらえる環境を整えることが大切だと思っています」

外国人エンジニアが加わることで日本企業も活性化する

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▲「企業側に外国人エンジニアを正しく理解してもらえるよう、さまざまな努力をした」と語る入江

GITサービス事業の開始に際し、入江にとって最大の不安は「日本企業では、海外とのビジネスが格段に増え、英語を話せる社員も増えているとはいえ、企業側が外国人エンジニアを“派遣”ですんなり受け入れてくれるか」という点だったといいます。

入江 「クライアント企業に話をすると『確かに優秀な人材で、自社に必要な技術スキルも備えている。でも……』と、躊躇される場面が少なくありませんでした。
社内に外国人がひとりもいないような企業では、職場に外国人を受け入れることは、やはりというか、日本語でのコミュニケーションに漠然とした不安感があるようです。その不安をいかにして払拭していくかが課題でした」

そこで、入江たちはGITのサービスを理解してもらうために、外国人エンジニア達の日本語力によるプレゼンテーションを収録した動画を見ていただく等、さまざまな工夫をして地道に抵抗感の払拭に努めてきたといいます。

入江 「事業開始から 2年以上がたちますが、『業務上のコミュニケーション』や『勤務態度』においてクライアント企業からご指摘をいただくことは皆無です」

GITサービスが浸透するにつれて、クライアント企業から「外国人エンジニアが加わると職場の活性化につながる」と評価する声も増えてきました。

入江 「日本人ばかりの環境に外国人が加わることで、職場の刺激剤になるんです。

会社としてはグローバル化を目指しているものの、現場のグローバル化が進まないと悩んでいる企業では、『外国人エンジニアには英語で話してほしい』と要望されるケースもあります」

日本企業が今後成長を続けるには、ダイバーシティ(人材の多様性)の推進が大切だと言われています。外国人エンジニアの派遣活用が、組織におけるダイバーシティの推進やグローバル化に一役買っているのです。

世界のエンジニアが国境を越えて活躍する「ハブ」となりたい

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▲採用した外国人エンジニアは、サービス開始から2年超で300人以上にのぼる

GITサービスは2016年7月の開始以来、2018年9月までの累計で300人超の外国人エンジニアを採用。1年前に比べて3倍増のペースで成長しており、2020年には現在の3倍強の1000人まで増やす計画です。

採用された外国人エンジニアの出身国は実に33カ国にのぼり、タイやインド、ミャンマーといった東南アジア・南アジア諸国に加え、ヨーロッパ、北米・南米、中東、アフリカと、まさにグローバルです。

入江 「今後は、現地におけるダイレクト・リクルーティングや海外の大学との提携をさらに進め、積極的に人材を採用していく予定です。

すでにアジアやヨーロッパの 10カ国で、採用セミナーを通じて人材の募集・選考を行ない、採用後は現地で日本語教育を行なったうえで来日できる体制を整えています。

大学との連携についても、インドやロシア、ルーマニアの大学と協定を結び、 ITを専攻する学生に日本語講座を提供し、卒業後は当社を通じて日本で ITエンジニアとして働ける道を用意します」

GITサービスの未来像と役割について、入江はこんなビジョンを描いています。

入江 「世界中のエンジニアが日本の扉を開くときの『鍵』になりたい。

そして、これからのIT業界を考えたとき、エンジニアは場所に縛られて働くのではなく、自分のやりたい仕事を、やりたい場所でやりたいように働くというワークスタイルと、国境を越えて活躍できるスキルが求められるようになると思います。

自国を出て日本で働いてみたい、日本で働いた経験を活かして自国に戻ったり、また別の国で新たにチャレンジしてみたい、という海外エンジニアに活躍のチャンスを提供するハブ(中継拠点)として、 GITサービスを育てていきたいですね」

国によって事情は違いますが、世界中の企業が採用に訪れている国もあれば、IT系の大学を卒業しても自国の産業が未成熟ゆえに、自分が学んだ技術を仕事に活かせないといった国もあります。

“日本で高度な技術に触れ、スキルを高めたい” “マンガやアニメ、ドラマで親しんだ憧れの国・日本で生活してみたい”と願う海外の優秀なエンジニアを日本へ呼び寄せて、自身のキャリアアップにつなげて欲しい――。

そんな夢を入江は描いています。

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