「成長、つまりできることを増やすこと」のために、僕らは時間と機会を創出する

この数年「働き方改革」に多くの企業が取り組み、日々模索しています。同じくいくつもの案を出しながらも正解に至らず、もやもやする日々を送っていた株式会社ベーシックの人事総務部部長の新田良。課題をシンプルに考え抜き、至ったふたつの施策で大きな変化を社内にもたらすことができました。その手法とはーー?
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社員が成長するために会社ができることは何か?

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「とにかく社員がしっかり成長できる会社にしてほしい」——。

きっかけは代表である秋山の言葉でした。2017年度の四半期が過ぎ、人事育成方針として「人材育成の北極星は“成長”だよ。僕らの理想は、社員がしっかり成長できる会社。誰に聞いても成長が実感できている状態をつくってください」と人事総務部の部長である新田にそう告げたのです。

ベーシックでは、成長を「できることを増やすこと」と言語化しています。また、当時、上場をめざす会社の動きもありました。そのためにも、生産性が高い会社という姿もめざすところでした。

新田にとって、大テーマは成長と生産性の高い会社。

新田 「それはいったいどんなものだろうか。もやもや考えていました。いろいろな会社に話を聞きにいったら、残業を減らして効率性・生産性があがったという会社があったんです。もちろん残業を減らすことが目的ではありません。生産性の高い状態が目的です」

とはいえ、当時の新田には、現状社員一人ひとりの残業が本当に業績アップに関係しているかと問われると「それを計るすべはなかった」と自身で振り返ります。

新田 「考えていくうちに、生産性の向上とは“時間を創出”することだなと。業務の中においては、それは成長につながると思いました。ただし、事業の成長につながるか?時間を生み出すだけでは個人の成長にはつながらない。それだけではダメだ。では、どうするか……」

この解を導き出すのにひと役買ったのは、実は、外部環境の変化でした。

ベーシックでは中途採用応募者から「いま副業をしているが、入社後も続けられるか」と問われることが増え、その声の拡大に比例するように、世の中の企業は続々副業を解禁。さらには、厚生労働省のモデル就業規則は、それまで副業は原則的に禁止であったのに、2016年年末に認める方向に切り変わったのです。

新田 「生まれた時間を活用して、副業することは個人の成長につながる。つまり、できることを増やすためには、まず“時間の創出”と、そして“機会の提供”が大事だと思ったんです」

勇気を持って踏み切った「タイムマネジメント」が、働き方を大きく変えた

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▲ある社員のGoogleカレンダー
Googleカレンダーに予定をすべて記入する。
会議も打合せも、個人の作業時間も何もかも。

これが、時間を創出するために新田の選んだ施策でした。

実は、ベーシックでは2016年から、残業申請制度を導入。残業削減に少し効果を出しはじめていました。制限をかけることが個人のタイムマネジメントの工夫を生むことを新田は実感していました。

新田 「何か大掛かりな新しいツールを導入するのは違うと感じていました。いまあるものを使って、いまの習慣の延長線上でできること。理由は、誰でも入りやすいから。新しいツールはもうそれだけで心理的ハードルが高くなります。さらに自分の仕事のやり方を否定されているような気がして抵抗感を覚えやすいんです」

それでも最初の説明会では「それで本当にうまくいくの?」という疑問のような声は多少ありました。しかし、すでに試用期間として社内のあるチームで1ヶ月実施し、効果を目にしていた新田は「とにかく、みんなでやってみよう」と働きかけます。結果、誰もが驚くような残業削減成果を打ち出したのです。成功の要因を新田はこう分析します。

新田 「意外と、自分の仕事の中身と関わっている時間を知っている人は多くない。でも、作業時間も記入するということは、この作業は30分でやると決めることであり、時間の見積力も必要になる。この見積能力がつくことは作業の効率化にもなるし、自然とかかる時間が減ってくるんだなと感じた人も多かったと思うんです」

実際に「今までわかってなかったけれど、仕事にこんな時間をかけていたんだ」「自分はこんな仕事をしていたんだ」など、自分のやっている仕事自体が見えてきたという声も多く、時間の使い方に対する意識の向上につながっています。

新田はさらに「これを自律でやろうとするとすごく難しい。甘えが出てしまうから。でも、会社としてやるんだと言ってあげることが大事なんです」と語ります。

新田 「成功の要因は、“みんなと同じことやろうよ”という空気をつくったこともそのひとつ。“残業減らそう”だけでは、やり方は本人次第になってしまうけれど、方向を決めて全員で同じ方法を一定期間続けてやってみる。これがよかったと思っています」

副業を解禁することは、個人の成長と可能性を拡大すること

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もうひとつの解、副業解禁。これに対しても新田は30社近くの企業を調査し、実際に話を聞きに行くこともしました。

そこで、さまざまなことがわかります。メリットもデメリットも、どちらにも共通項がありました。まず、副業を解禁したもっとも大きなメリットとは、どんなものだったのでしょうか。

新田 「副業解禁で成功している会社では、副業をしたいと思うような人材は、もともと副業ができるくらいスキルも能力もあるし、そもそも時間創出ができているといいます。そして、そういう人材は、副業をすることでさらにモチベーションがあがり、さらに、よい仕事環境を生み出しているんだということでした」

それこそ、“個人の成長”です。まさにベーシックが求めているもの。

では、どうしても踏み切れていない企業が憂慮しているデメリットとは……。

新田 「デメリットはふたつ。本業がおろそかになることと、ノウハウの流出。でも、メリットの方が多いと素直に思いました。そのデメリットを払拭する制度を整えればいいだけだと」

実際に副業を解禁している企業の事例を参考に、ベーシックが制度として決めたのは3つ。まず承認制であること、そして競合に関連する仕事はNG。最後に、本業に支障をきたさないこと。

新田 「競合する仕事に関しては、シンプルにまったく同じことでなければOKだと思いました。たとえば、メディアのライターが自分の書く力を使って、他メディアに何かを書くのはOK。それは文章力を磨くことになる。本業にも活かすことができる。ただし、僕らはウェブマーケティングメディアをやっているから、競合のメディアに寄稿するのはダメという風に」

副業解禁の動きのきっかけとなった背景の中で、記憶に残るある社員の言葉があります。

「僕はベーシックのこと好きだし辞めたくない。でも副業もやりたいんだ」——。

できるかぎりルールはシンプルに、そして社員を信じる方向で解禁すれば、副業にはメリットしかないのではないか。生産性を高めて生まれた時間を、副業で活かせば、個人の成長につながり、それが、会社の成長になるーー。

このサイクルこそが、冒頭の秋山の言葉に対する、新田の解だったのです。

社員一人ひとりの協力と、一旦決めたなら必ずやるという素質

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▲人事総務部 部長・新田良
1ヶ月目で81%削減、2ヶ月目で61%削減。

これが“Google カレンダーに予定をすべて書き込む”というタイムマネジメントが実現した残業時間削減の成果。明確な数値になってあらわれました。結果的に、残業が減って得られた時間で、副業をスタートした社員もいます。

副業解禁に関しても、社内的にもおおむね好感触。解禁後、4ヶ月で社員の11%が副業を申請しました。まずは狙ったとおり、時間の創出が成長=機会の提供になったといえるでしょう。

そして、さらに目指すのは次のステージです。

新田 「タイムマネジメントに関しては、いま安定期に入りました。個人でできる範囲のことは出尽くしたのではないかな。次は無駄な会議はないか、不要な仕事はないかとか、経営陣が環境を整えていく番だと思っています」

理想は、きちんと結果を出して定時に帰るという姿。実際に、そうした生産性の高い人材を全社表彰で評価するなど、社内的にも理想の働き方として発信しています。

新田 「秋山と話しているんですが、たとえば定時に終わったときに、疲れ切ってヘトヘトになっている方が仕事人としてかっこいいよなって(笑)。それくらい夢中になって没頭できているということだから、きっと充実もしている。それなら定時に帰ることの後ろめたさもないだろうし」

副業に関していえば、まだまだスタート地点。今後はさまざまな自己啓発の機会も提供し、副業を推奨、いずれは副業必須という環境にまで持っていきたいと新田は未来を描いています。

こうしてプロセスを紹介すると、社内の大きな抵抗もなく、スムーズなプロセスを辿ったように見えるふたつのプロジェクト。難関は、実は新田本人の心理的ハードルでした。

新田 「なぜなら、ベーシックの社風でもあるんですけど“決めて、やろうぜ!”といったことは、みんな必ずやってくれるんです。そういう人材が集まっている。だからこそ、みんなに提示する前に“本当にこれでいいのか”と、自分にGOを出すのが一番ハードルが高かったですね」

その高いハードルを乗り越えるために、新田が欠かさずやったこと。

それは、ゴールを見失わないように、常にゴールを見直すこと。もちろん、そのゴールとは、社員一人ひとりが成長することで高い生産性を生み出している状態。まさにベーシックらしいゴールのことです。

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