「#beORANGE」津波を知らせるオレンジの旗が、人々と海の共存を実現する

これまでになかった “海の防災”のあり方を、海に映えるオレンジフラッグで提唱する新プロジェクト「#beORANGE(ハッシュビーオレンジ)」が2016年7月18日にスタートしました。プロジェクトを推進する一般社団法人防災ガールの代表 田中美咲は、なぜ#beORANGEを立ち上げるに至ったのでしょうか?
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「想定外だった」と言い続け、死者数が減らないのはなぜ?

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地震、津波、豪雨、火山……自然災害が多発する国、日本。対策を呼び掛ける声が多いにも関わらず、災害での死者数は減少していないのが現状です。のちに一般社団法人防災ガールの代表理事となる田中美咲は、「災害のたびに人が死ぬのはなぜだろう」と疑問を持っていました。

田中「頑張って対策をしているのに『想定外だった』と言い続けていて、人々が災害からなにも学べていないと感じていました。どんな対策をしていたのか見てみると、防災訓練をはじめ、すでに確立された教育しかやってきていない。もっと想定外に対応できる、自活力を持った若者が増える教育をしないと意味がないと考えるようになったんです」
同じことを繰り返さないためにーー。東日本大震災をきっかけに、何かできないかと考えた田中が2013年に設立したのが「防災ガール」。2015年には一般社団法人になりました。「もっと防災をオシャレでわかりやすく」というコンセプトを掲げ、おしゃれな防災グッズを販売したり、プロジェクトの企画開発や運営、講演などの活動を行っています。

田中は、そうした活動を行うなかで、災害の中でも特に“津波”に関しては防災対策が不十分だと感じていました。島国である日本の津波災害の発生率は、世界的に見ても高いと言われており、一度起きると数万人規模の被害者がでます。

この30年以内に南海トラフ地震が起こる確率は70%以上。被害は東海から四国、九州東部の太平洋沿岸全域に及ぶと想定され、1回目の揺れから約30分で30cm、その後地域によっては34メートルもの津波が押し寄せるとも言われています。

それを知らずに海で遊ぶような状況は、考え直さなければならない。日本人として、海のデメリットを知りながら海と付き合う必要がある。そう感じた田中が、新たに立ち上げたプロジェクトが「#beORANGE」です。


田中「#beORNAGEのメッセージは『防災をやれ』『海に行くな』ということではありません。地震が起きたら、津波が来る。その可能性と対策をきちんと認識し、海と付き合っていこうというプロジェクトです」

たとえ津波被害にあっても、海は“宝”である

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福島で働いていた頃
津波対策への想いはあったものの、どのように伝えていけばいいのかわからずにいた田中。そんなとき、社会起業家を育てるプログラム「SUSANOO」で気仙沼から参加していた方と出会います。

その方はサーフィンが好きで、お気に入りのサーフスポット気仙沼で暮らしていました。しかし、大震災がきっかけで防波堤ができたため、これまでのように自由にサーフィンをできなくなってしまったそうです。

田中「地元の方々は、津波がきて人が亡くなったからといって、全員が海を嫌いになっているわけではありません。サーファーや漁業を営んでいる人にとって、海は“宝”。海のことはずっと大好きなんです。だからこそ、防波堤をつくるばかりではなく、サーファーや漁業など海に関わる人々のコミュニティのあり方に着目すれば、人々が恒久的に海とともに生きることができるのではないかと考えました」
震災から3年が経過した2014年頃、若い女性が現地ボランティアとして支援できることが減ってきたこともあり、「防災ガール」として防災を広め、人々に根付いた活動を開始しました。
田中「避難訓練などは、どうしても面倒なイメージを持たれがちです。これが楽しいものになれば防災意識が高まるのではないかと考え、『もっと防災をオシャレでわかりやすく』というコンセプトで防災ガールを立ち上げました」
海の防災ムーブメントを起こし、海と人がともに生き続けていく社会をつくりたいーー。そう願う田中の想いが、「#beORANGE」につながっていくことになります。

目指したのは、地元の人々にとって“負担”にならない防災プロジェクト

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現地に足を運び、設置テストを行ってきました
#beORANGEの構想が完成したのは2015年末。まずは「新しいプロジェクトをやろうと思っているけど、これについてわかりますか?」という相談からはじめ、仲間集めをすることに。

クリエイティブやインターネットに強い若者だけでなく、津波対策を学術的に説明してくれる役割として、京都大学防災研究所の畑山満則先生や、法律から防災を変えようとする弁護士さんにもご協力いただけることに。また、より多くの方に協力していただけるようメンバーが多い非営利団体にも声掛けをしていき、徐々に仲間を増やしていきました。

 今回のプロジェクトでは、津波被害の確率が高いといわれている、高知、愛知、静岡の3拠点からスタート。

田中「海といえども、場所によって地形がまったく異なるので、津波到達の仕方も当然変わってきます。愛知は沿岸部の標高が低かったり、高知は市内が渋谷のように水はけが悪かったりという問題がある。地元の方にとって負担にならないように気を配り、その土地にとって使いやすい形かどうかヒアリングしながら進めていきました」
フラッグのカラーは、青の対照色(補色)とされ、海で遊ぶ人たちから見て視認性の高いオレンジをチョイス。当初は正方形のフラッグを想定していたのですが、実際に設置してみるとバスタオルが干されているようにしか見えなかったので縦長に変更しました。
緊急時だけ掲げていたのでは忘れられてしまう恐れがあるので、夏休みや海の日など頻繁に掲げても色があせないようにパラシュートで使われる生地にするなど、さまざまな工夫を凝らしてます。さらに、フラッグを作るだけでなく、緊急時に認識されるように看板を掲げて広報活動を行うなど、地元に根付くための周知徹底も怠ることはありません。


プロジェクト構想当初より、地元の方々に受け入れてもらうために、段階的に行政に話をしていた田中。しかし、「やりましょう」という話になっても、細かい調整をクリアにするまでには、長い時間がかかりました。そして行政の支持を得てからも、地元の人との話し合いのために、何度も現地に足を運ぶようになります。

田中「いきなり東京から来た若者がその土地のことも理解せずにプロジェクトを提唱しても、すぐに受け入れられるはずもありません。現地の方との相互理解を深めるために、私たちのこと、私たちが目指すものを知ってもらって、ゆっくりでも一緒にプロジェクトを進めていくことを選びました」

ついにプロジェクト始動! “オレンジ=津波防災の色”を広めていく

こうした地元の方々との対話を重ね、ついに#beORANGEは、2016年7月18日海の日に正式にスタートしました。

防災ガールが企画開発し、日本財団「海と日本プロジェクト」が助成・共催する今年度のプロジェクトは11月5日津波防災の日までの予定ですが、将来的には、高知・愛知・静岡の3拠点を中心にしながら他の地域への展開も考えています。
田中「私たちは、その土地にずっと居続ける団体ではないですが、せっかく信頼関係を築くことができた土地なのでその後も定期的に見に行きたいと思っています。でも、私たちが抜けたあとも運用できるように引き継がなければ意味がない。単発のイベントで終わらせず、地元で生きていく方々が容易に継続できるプロジェクトにしようと決めています」
プロジェクトの目的は、海に1回でも訪れたことがある人が、何か非常事態があったときに、すぐに避難できるようにすること。オレンジフラッグを避難タワーや津波避難ビルに定期的に掲げてもらい、津波防災の文化を日常に創っていきます。


田中「まずは知ること。それから、行動するかしないかを決断してほしいです。いつか自分が海で被災したとき、ちょっとでも『オレンジをみたら逃げろ』と覚えてもらっていたら、救われる命があります。だから、ひとりでも多くの方に知ってほしいんです」
人々と海が共存し続けるーー。

そんな未来を創る#beORANGEの挑戦は、まだはじまったばかりです。

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活動内容については、こちらをご覧ください。

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