日系企業のフィリピン進出における課題と展望――現状把握が成功への架け橋

株式会社ボーダー・アンド・ポーターは、日本企業の東南アジア進出をサポートする事業を計画中。その進出先として注目しているのがフィリピンです。すでに現地で事業展開している株式会社Grand Line代表の金光淳規さんと当社代表の本城直季が、フィリピンのマーケット事情や今後の構想について語り合いました。
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フィリピンも日本も地方商業施設での展開が鍵を握る

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▲Grand Lineフィリピン本社にて(左:ボーダー・アンド・ポーター本城 右:Grand Line金光代表)

株式会社Grand Lineは、フィリピンで日本人向けの英会話レッスンを展開するほか、日本からの留学生の受け入れを行ない、現地の大学と提携してオープンカレッジプログラムを運営しています。

また、オンライン英会話の最大手・レアジョブと資本業務提携し、英会話を学んだ方の留学先となる教室の運営なども行なっています。

Grand Lineを束ねる金光さんと本城は大学時代のゼミ仲間であり、2018年現在、ともに会社代表を務めているという縁があります。

当社は、クリエイティブを請け負う企業のEコマース展開をサポートしていますが、中でも次に来るのはフィリピンではないかと本城は考えています。いち早くフィリピンで事業をはじめた金光さんは、次のように話します。

金光 「2018年現在、フィリピンに進出している日本企業は、1500~1600社くらいあると思いますが、タイなどに比べると、製造拠点としてはまだ厳しいというのが正直な印象です。人件費は安いのですが、海運や空輸といった地理的な事情や電力コストを考えると、全体的には割高になるからです」

フィリピンという市場に注目は集まっているものの、コスト面でメーカーなどの進出に厳しい面もあるようです。

金光 「そもそも、フィリピンでないとできないという事業が、現状はあまりありません。それでも市場を獲得できているメーカーは、長年積み重ねたマーケティングのノウハウはもちろん、小売での流通も含め、売るための仕組みづくりからじっくりと取り組んできた結果、現在のシェアを獲得できているんです」
本城 「とはいえ、ファーストリテイリング(ユニクロ)は、進出してすぐにうまくいっているイメージがあります。『SM・モール・アジア』という最大手の大型複合施設と提携し、そこでの展開が保証されているという点が大きいのでしょう。今後ほかの商業施設にも展開していくでしょうね」

フィリピンで小売業などの事業を展開する場合、基本的には商業施設が中心になるとのこと。では、フィリピンで暮らす人々のショッピング事情はどうなっているのでしょうか。

事業を成功させるのに欠かせない国民性の理解

フィリピンの地方でのショッピングは、ほぼ商業施設に限られており、そこに出店しておけば一定の集客ができるというのが現状のようです。

日本の地方でも、「休日にはショッピングモールへ行こう」という状況はよく見られるので、日本と似ている点もあります。また、価格と品質のバランスも重要な鍵になります。

本城 「ファーストリテイリングの進出例を見ると、現地で流通している商品より少し高価ではあるものの、品質が非常に良い。そのことがフィリピン市場にマッチしている印象があります。競合より高価でも、品質が圧倒的に違うので、差別化をしやすいのでしょうね」

やはり競合との差別化は、どこの国でも共通の課題。また国民性を知ることも、ビジネス成功のためには重要です。当社の事業と親和性が高いネット事情についてフィリピンは、パソコンとモバイルを比較するとモバイル文化が成立しています。

金光 「たしかにネットを見たりなどはスマホ中心ですが、粗悪品が入っていたり発送されなかったりして、出品者が信頼されていないこともあってか、スマホで物を買う文化はほとんどありません。日本に比べて、品質保証に対する信頼のレベルが低く、自分の目で現物を見るまで購入を決めないんです」

一方で本城は、「自社で倉庫を持ちながら、配送もセットで展開」という手法が実現できないかと考えています。

本城 「シンガポールに、日本の方が代表をされているベンラックスという会社があり、健康食品やコスメを展開しています。自社で倉庫を持ち配送もセットにして、社員がバイクで配達するのが基本です。今後こういった方法はありなのではないかと思います」

しかし、フィリピンは陸輸送の手段が限られており、発注から到着までに2週間程度かかることも。そのためネットで購入されるのは、近くに店舗がなくて手に入らないものに限られることが多いといいます。

金光 「メトロポリタン・マニラ(通称メトロ・マニラ)であれば、本城さんの構想も実現可能かもしれません。メトロ・マニラだけで人口は3000万人ほどいますし、高所得者も多い。その中で事業を展開するのが、効率としては良いと思います。
今後は倉庫管理と物流をセットで実施する企業が、フィリピンでも出てくるでしょうね。在庫管理や物流など、それぞれを専門とする企業はすでに存在しますから」

フィリピン人の気質と生活、そしてビジネス風土に対する知識が事業展開には必要となりそうです。

ライセンス取得数の多さや会社設立の厳しいルールが事業開始のハードル

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▲マニラの街並み

当社の新しい事業として、シンガポールやマレーシアで売れている日本のコスメをフィリピンで展開するためのサポートを検討中です。

その際に必要なのが、フィリピン国内への進出と、越境ECとしての展開です。しかし、フィリピンでビジネスを展開する際、しばしば話題になるのがライセンスの多さと、行政処理に要する時間の長さです。

金光 「日本のコスメ商品をフィリピンで展開するためには、FDA(Food and Drug Administration)の許可証が必要ですが、申請の際には成分や効果などの詳細を説明しなければならず、ハードルはかなり高い。
仮にフィリピンでの経験値や地元企業とのつながりがあるとしても、申請が通るまでに何カ月もかかります。また、輸入業者のライセンスの取得にも時間を要します」

そんな問題に対し、現地にいるからこそビジネスサポートできるのがGrand Line社の強みです。当社としても、日系企業の進出支援を行なう際に同社と業務提携する予定です。

本城 「さまざまなライセンスが必要とされることもあり、確実に勝機のあるビジネスでないと勝負自体が厳しくなってくるでしょうが、逆に、取ってしまえばすごく強い。確実な勝機があり腰を据えてやる覚悟があれば、成功する可能性も高くなるのではと感じています」

現地で事業を行なうには会社設立が必要となりますが、この手続きにも多くの関門が待ち受けています。

金光 「オフィスは指定された行政区で借りなければならず、開業届の内容どおりに事業を行なっているか、行政地区の担当官が立入検査します。
特に国外の人間がフィリピン国内向けに事業をする場合、フィリピン人を6割以上は入れる必要があります。外資100%の場合は資本金約2000万円以上が基本。もちろん業種によって変わるので、2000万円以上でもダメなケースもあります」

こうした会社設立に関する厳格な規定に対しても、Grand Line社から協力を得ることで成功率が高まると考えています。

当社独自の展開に加え、Grand Line社の持つ税務顧問や会計顧問、法律面などでの企業支援を生かし、当社の誇るビジネスモデル構築力やサポート力を提供していきたいと考えています。

今後の展望が期待される「人材派遣業」

海外企業のフィリピン進出にはさまざまなハードルがあるようですが、最近では国際的な競争力を高めるため、小売り分野の外資規制緩和を検討する動きも出てきているようです。

そうした状況の中、当社では、フィリピンから日本企業への就職をサポートするような人材紹介業も計画しています。

金光 「フィリピン海外雇用庁(POAE)の登録・許可が必要となりますが、人材派遣業の可能性はあると思います。2018年現在、日本在住のフィリピン人は26万人ほどで、技能実習生はおそらく2万5000人くらい。それとは別に、学校の先生など、高度技能人材も今後増えていくと思います」
本城 「外資規制の問題はありますが、フィリピンから日本への人材派遣は仕組みづくり次第では可能性がありそうですね。
たとえば日本で英語の先生を探している学校を見つけ、POEAを通して派遣する。そこで得た手数料をもとに、先生たちのトレーニングを行なうといった仕組みを構築できれば、日本の学校側も安心できるでしょう」

当社では、メイン事業であるクリエイティブ関連の人材派遣についても、フィリピン進出を念頭に準備を進めています。

金光 「フィリピンでは最近、システムエンジニアがすごく増えています。というのも、システムエンジニアは高収入で、一般的な仕事の3~5倍ほどの賃金をもらうことができる。そういう面では、システム系の学校の卒業生を日本に派遣するのもいいかもしれないですね」

フィリピンの現状や課題を踏まえつつ、ゆくゆくはオフショアとして、クリエイティブセンターやCG開発なども含めたオペレーションセンターの設立も視野に入れています。

その一環として、現地でビジネス活動を行なうGrand Line社と協力し合い、両社がともに発展していけるようなビジネスチャンスをつかめるよう動いていければと考えています。

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