子育ても、仕事もあきらめなくていい。2年間の育休が僕に教えてくれたもの

厚生労働省「平成29年度雇用均等基本調査(※)」によると、日本の男性の育児休業取得率は5.14%。そんな中、ボッシュのエンジニア・押川克彦は、2年間の育児休業制度を活用し、キャリアも着実に積み重ねています。仕事の学び、育児での気付きを相互に生かす彼の体験と、男性育休取得推進への想いをご紹介します。
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「やるからには一番高いところを目指す」育児休業のフル活用を決意

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▲ボッシュのエンジニアである押川とその家族
押川 「仕事に対してもなんでも、やるからには 1番を取りたいタイプです。育休は最長 2年取れるということを知りまして、それならばフルで取ろうと思いました」

押川は燃料電池技術の研究に従事するエンジニア(2019年5月現在)。子宝に恵まれたら、妻とともに自分も育児休業制度(育休)を利用しようと考えていました。そんな時、妻が妊娠。社内で開催された育休説明会に参加し、ボッシュの育休制度では最長で2年間取得できることを知ります。

もともと、家事は妻と分担し、育児も同様にフェアに協力していきたいと考えていた押川にとって、育休は自然な選択肢でした。しかも自分が育休制度を目いっぱい利用する事例をつくることができたら、ほかの男性も育休を取得しやすくなるのではないか――そんな想いが押川の背中を押しました。

「2年間、育休を取りたいです」そう上司に打ち明けると、快く承諾してくれたと言います。

押川 「私が所属している部署では、上司とのコミュニケーションにおいて、何でも話しやすい文化が根付いています。 普段から、仕事以外のプライベートなことも気軽に話し合いができる環境があったことが良かったのだと思います。あとはひとえに、上司の人間性ですね」

上司だけでなく、チームの同僚も押川の2年間の育休を快く受け入れてくれました。その背景には、チームに迷惑をかけまいという押川の事前の努力もあります。大学との共同研究の内容や、業界の委員会での代表職など、自身の仕事を漏らさずリスト化して共有し、休業が始まってから同僚が困ることのないように配慮しました。

押川 「立つ鳥跡を濁さずで、なるべく周りに迷惑を掛けないようには心掛けましたね。育休取得を継続的なカルチャーとして育てるには、お互いのことを考慮し、気持ちよく仕事ができるような仕組みにしないといけないと思っていました」

こうして首尾良く育休に入った押川。しかし、すべてがままならない“育児の洗礼”が待ち受けていたのです。

生後数カ月は、右往左往……。しかし徐々に復帰への道筋を描いていった

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▲押川は、育休中は想像以上の忙しさだったと振り返る

こうして始まった2年間の育休。押川は当初、育児をしながら資格の取得にも励もうと考えていました。しかしその目標は、子どもとの生活が始まった途端に、あっさりと覆されてしまいます。

押川 「資格を取ろうと思い、育休前に段ボール一箱分も本を買いましたが、初めの 1年は触れませんでした。考える暇もありませんでしたね。育児ってこんなにやることが多く大変なのか……と」

右も左もわからない奮闘の数カ月を過ごしたのち、徐々に子育てをともなう生活が落ち着きを見せ始めます。そこでふと、“社会と分断されている”という状況に気付きました。

自分から情報を取りにいかない限りは、社会や会社で何が起きているかわからず、仮に会社がなくなっていたとしてもわからない――そんな現状に危機感をおぼえ、押川は上司に定期的に連絡を取り、社内や業界の情報収集をするようになりました。封印していた専門書にも目を通し始め、自己研さんに努めます。

そのおかげで、復帰後は比較的にスムーズに波に乗れたと押川は言います。復帰初日の仕事は、会社が出展する展示会での業務。会社に出勤せずに会場に直行し、ブースに訪れた来場者に研究の説明を行いました。

押川 「復帰前にしっかりと準備をしていたので、『なんでも来い!』という感覚でした(笑)。
育休を取れたとしても、復帰後の不安は付きまとうのではないでしょうか。育休中にも、会社の情報を自分なりに取得しておくことは大切だと思います。あとは、いつかは復職するという意識を強く持ち続けること。その気持ちがあるのとないのとでは、まったく違うと思いましたね」

また、子どもの急な病気で早退や休みを余儀なくされた際も、上司や同僚の理解ある対応に何度も助けられました。

さらに押川自身も、仕事になるべく穴を空けない工夫をしました。病気やけがなど、子どもの体調は突発的に変わります。しかし、押川は子どもの体調がどんな時に崩れやすいかを観察。だいたい金曜日に疲れがたまって熱が出やすい、という傾向がわかるようになると、金曜日にはなるべく会議を入れないようにする、といった策を講じました。

押川 「うちの子どもは体調を崩すことが比較的少なくて、それは本当に子どもに感謝しています。ただ、私は思うようにならないことをそのままにしているのが好きではありません。できないならば、できるように何か対策を講じる。育児の局面だけではなく、私の人生のフィロソフィーですね」

会社で学んだことを育児に生かし、育児で鍛えられた習慣を仕事に生かす

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▲育児は仕事をする上でも、大きな“気付き”を与えてくれた

ボッシュでは世界各国で、ダイバーシティの理解促進に取り組んでいます。押川は育休を取る前、タイムマネジメントに関するタスクフォースに属していました。その時に学んだことは、実際に自分の育休中にとても役立ったと言います。

タイムマネジメントの基礎は、「何をやっているのかを見える化する」こと。実際に仕事の様子を記録してみると、メールを読んだり同僚と話をしたり、またほかの人に話しかけられたりして、仕事自体に集中している時間は1時間の中でも意外と少ないことがわかります。

それを目の当たりにすれば、自分からムダを省くように工夫するようになるというものです。

押川 「育児中は 1日があっという間に終わってしまう。一体何をやっていたのだろう?と、日々モヤモヤが募っていきました。
そこで、子どもが生まれて数カ月が経ち、少し余裕ができてから、1日のタイムラインをつくってみました。すると、何もしていないようだけど、実は数多くのタスクをこなしていたことがわかりました。見える化されることで、モヤモヤが晴れる良いきっかけになりましたし、自分の糧になったなと思っています。
このタイムラインを育休復帰後に社内閲覧用のブログに載せたところ、好評を得ました。女性社員に『夫に見せたいのでこの表、いただけませんか』と言われたりして。少しでも子育てへの理解を促すきっかけになったのならば嬉しいですね」

会社で学んだことが、育児中のモヤモヤを晴らす助けになったと言う押川。反対に、育児で学んだことが仕事に生かされていることもあります。

それは、育児でも仕事でも、どんなことでも「プライオリティが非常に大切だ」ということ。

押川 「育児をしていると、やらなければいけないと思うことはたくさんありますが、すべてをこなすのが難しい場合もあります。命に関わること、命は脅かさないけれど後々子どもに悪影響を及ぼすこと、やらなくてもなんとかなること……そんなふうに細部化して、自然に取捨選択しています。
これは仕事でも同じです。私はそれまで、なんでもやりこなしてやろう、ベストを尽くして一番の成果を出そうと考えていました。でも、育児を通して、仕事でもプライオリティを付け、やるべきことや付加価値の高いものに力を注ぐという習慣が磨かれました」

ひとりでもふたりでも、男性社員の意識が変わって行動に移してくれることが成果

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▲押川は、社内のスピーチコンテストに参加するなどし、育休の経験を発信している

育休から復帰した後、押川はダイバーシティ啓発活動の一環である育児タスクフォースに加わりました。年1回実施されるダイバーシティ推進イベント「ボッシュ・ダイバーシティ・デー」で、育休に関する体験談や成果を発表しています。

ほかにも、社内ブログに育児の体験談を載せ、育児休業制度自体を社員に説明する啓発活動を自主的に行ってきました。

押川 「とくに日本の社会では、男性の育休取得率を急激に上げることは難しいかもしれません。育児は女性が主に抱える課題であり、男性側には関係ないという無意識のバイアスが育てられているのかもしれません。しかし、何人かの男性社員が『スピーチを見たよ』『感銘を受けました』と言いに来てくれて。
さらに育休を取るという行動に移してくれる人も出てきました。ひとりでもふたりでも、誰かの意識と行動を変えることができたなら、タスクは達成できたのかなと思っています」

国の制度で2年間もの育休が許され、しかも休業給付金もあるという恵まれた環境の日本。しかし実際には、男性がその制度を利用するとは言いにくい空気が、日本全体で醸成されています。

ボッシュが本社を構えるドイツでは、夫と妻で育児を分担することは当たり前という意識があります。ドイツ本社に研究成果を報告するなど本国とコミュニケーションが多かった押川は、「子どもに熱が出たため、会議を欠席します」と比較的言いやすい雰囲気に救われたと振り返ります。

そうした風潮を当たり前のものにしていきたいと、押川は考えています。

押川 「実は育休をしっかり取れる環境づくりは、将来の介護離職の問題にも関係してくると思います。育休を取ることで、上司や同僚と協力し合い、休業期間を乗り越える経験をしておけば、いつやってくるかわからない介護休暇にも対応できる体制が整えられると思います。
そうすれば、会社と社員、双方の機会損失も低減できます。さらに、どんどん人材が減っていくこの時代に、人材を確保できる仕組みが自然につくられていく、そんな風潮が生まれていくことを望んでいます」

私たちボッシュは、新しいアプローチや独自のアイデアをより多く生み出す財産として、ダイバーシティを尊重し、さまざまな取り組みを行っています。

押川が切り開いた道もまた、男性の育児と働き方に関する多様性を拡げるひとつのケース。より豊かな企業文化をつくりだすため、私たちは一つひとつの歩みを大切に積み上げているのです。

※厚生労働省「平成29年度雇用均等基本調査

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