「これからのシブヤ」について考える、カフェから生まれるアイデア

渋谷に本社を構えるボッシュが運営する「café 1886 at Bosch」。まちの人やアイデアが集まる“場”になりたい──。その想いから場を提供しているイベント「green drinks Shibuya」。コミュニティの場としてより発展するために大切なことを、イベントの主催のおふたりに伺いました。

「これからのシブヤ」を考えるトークイベントから生まれる新しい交流

▲撮影:nD inc. / Ayako Hiragi

ある日の夜、café 1886 at Boschでとあるイベントが開催されました。

── その名は、green drinks Shibuya。

渋谷区の民間企業や区の職員、さまざまな背景を持つゲストたちと一緒に「これからのシブヤ」を考えるトークイベントです。

私たちボッシュは交流の場を提供し、NPO法人グリーンズ主導のもと、共同主催で開催しています。2017年5月から定期的に毎月第3木曜日にこのカフェで開催しています。「働き方」や「子育て」、「再開発」など社会問題にまつわるテーマを掲げ、それぞれのテーマに合ったゲストを招いてトークセッション、ワークショップ、交流会を行っています。

参加者は毎回多種多様。平日の夜という時間帯もあり、渋谷で働く会社員から渋谷に何十年も住んでいる年配の方、学生、テーマに興味を持った遠方の方などが集まります。この日のテーマは「コレクティブインパクトの現在地」。コレクティブインパクトとは、立場の異なる組織(行政、企業、NPO、財団、有志団体など)が、セクターや組織の壁を越え、お互いの強みを出し合い、ある特定の社会的課題の解決を目指すアプローチです。

長谷部渋谷区長による激励のあいさつから始まり、株式会社フューチャーセッションズ主催、渋谷区協賛の「渋谷をつなげる30人」のプロジェクトに参画するコアメンバーをゲストに迎え、スタディクーポンやCLEAN & ART、アーバンファーマーズクラブなど渋谷区で実施済みのコレクティブインパクトの事例を参考に、「コレクティブインパクトは、どのようにしたら生まれるのか?」「そのために必要な環境や仕組みとは?」といったテーマでパネルディスカッションを行いました。

登壇したゲストの皆さんは、「最初から社会課題の定義をせず、ゆるいつながりの中で異質な人たちと一緒になることでおもしろいことができる」「コレクティブインパクトにつなげるうえで大切なのは、まずはやりたいことや思っていることを周りの人に気軽に言える場があること。それからひとりの『やりたい』という強い想いから、異なる立場の地域の仲間を増やし、イノベーションを起こす『共創』へつなげていく──」と口をそろえました。

イベント終了後、サンドイッチやドリンクを片手にゲストと参加者たちの間で交流会を毎回行っています。普段、会社にこもり、仕事をしているだけでは出会えないほかの企業や団体、個人とつながる時間──。この交流をきっかけに、新たな人とつながり、アイデアが生まれ、ソーシャルグッドにつながっていく可能性に満ちています。

当日は総勢100名以上の方にご参加いただき、多くの方が地域とのつながりやコレクティブインパクトに興味関心があることを伺えました。

渋谷ならではのイノベーティブなことを生み出す場に育てたい

▲株式会社フューチャーセッションズ 野村恭彦さん

実はgreen drinks Shibuya は、「渋谷をつなげる30人」から生まれました。

「渋谷をつなげる30人」は、株式会社フューチャーセッションズの代表・野村恭彦さんが運営しており、2019年時点で第4回を迎える渋谷区の総合政策「ちがいを ちからに 変える街。渋谷区」の実現のために、企画を立案・実行するまちづくりプロジェクトです。

渋谷というまちで、ただ知り合ってつながるのではなく、お互いに持っているスキル、知見、アイデアを持ち寄り、それらをつなげることで新たなものを生み出したい──そういった想いから生まれました。

ひとつのプロジェクトに、30人もの人が半年から1年という時間をかけ進めていきます。ポイントは、プロジェクトメンバーの30人がただのプレイヤーになるのではなく、“コミュニケーションのハブになっている”ということ。そこから、さらに周りにいる外の人たちに働きかけて、輪を大きくし、規模を大きくしていきます。

そうして紡がれた関係性は、単純にお互いを高め合うというわけではなく、「この人のためならちょっと無理もできる」という温かみが感じられるもの。そんな関係性のコミュニティが誰かのサードプレイス(自宅や職場とは異なる第3の居場所)になれば、もっと世界はおもしろくなると信じています。

野村さん 「考えてみると、ファーストプレイスである自宅も、セカンドプレイスである職場も契約があって窮屈ですよね。契約のない自由なサードプレイスとしてコミュニティがあれば、そこでこそイノベーティブなことが生まれると思います」

──私たちのカフェは、そのハブとなるような場所でありたい。そこから生まれるものは、必ずしもビジネスである必要はなく、お互いにギブし合える関係をつくることで、結果的にコミュニティが形成されればいい。そうして生まれたひとつがgreen drinks Shibuya なのです。

渋谷で社会実験をし、成功モデルを世界へ発信

▲NPO法人グリーンズ 植原正太郎さん

green drinks Shibuya をメインで運営しているのは、NPO法人グリーンズ の植原正太郎さんです。

フューチャーセッションズのイベントにグリーンズのメンバーが登壇するなど、以前から交友のあった野村さんと植原さん。「渋谷をつなげる30人」で本格的につながり、green drinks Shibuya から協働するようになりました。

green drinks Shibuya を私たちのカフェで実施することになったのは、「渋谷をつなげる30人」に社会貢献活動を担当している弊社の佐伯が参加したことがきっかけでした。

そこで佐伯と植原さんが出会い、3人の共通の興味が、渋谷をテーマに「人と人をつなげること」だったことから開催することになりました。

ボッシュの経営するカフェでイベントを行うまでを、植原さんはこう振り返ります。

植原さん 「佐伯さんから、ボッシュは単純なカフェ営業がしたいのではなく、ボッシュと渋谷あるいは東京をつなげるハブのような場所になりたいという想いでつくったと聞きました。でも、自分たちでそういう企画をするのは難しい、と。だったら、その部分をグリーンズが手伝えるなと感じました」

ボッシュにはカフェという“場”があり、植原さんのグリーンズにはまちづくりの知見がある。そして、野村さんは地域に根ざしたソーシャルイノベーションや人脈づくりができる。三者がお互いにリソースを持ち寄って生まれたコミュニティこそが、green drinks Shibuya なのです。

渋谷にいる若い人たちにムーブメントを起こしたいというグリーンズの想いと、ボッシュのカフェを利用して、若い人たちのコミュニティやネットワークの場をつくりたいという私たちの想いが重なり、始まったこのプロジェクト。

共通の目的は、渋谷で生きている自分たちの手で渋谷の未来をつくっていくことです。そして、このプロジェクトを社会実験として行い、ここから生まれた渋谷モデルを世界に広めていきたいと考えています。

野村さん 「渋谷って、よく新しいものを受け入れるまちって言われるじゃないですか。渋谷で新しい発想を実験して、それがコミュニティのスタイルになったところでいろいろな地域に広める。そうやって “受け入れてもらえる ”スタイルをつくれるというメリットが渋谷にはあるのではないでしょうか」

コミュニティ運営のプロが語るcafé 1886 at Boschと渋谷

これからもコミュニティの役割を担うカフェであり続けたいと願うcafé 1886 at Bosch。この場所の運営を、コミュニティのプロである野村さんと植原さんが携わるとしたら、どのように変えていくのか── 。

野村さん 「ボッシュが持っているイノベーションの要素を、もっと持ち込んでもおもしろいかもしれないですよね。ボッシュがつくっているテクノロジーを生かしたアイデアを渋谷で実験し、その成果をこのカフェで発表するっていう循環をつくるとか。で、カフェ自体をボッシュの本社があるドイツに逆輸入する!」
植原さん 「ボッシュって、実はすごく最先端の ITを生かしたものづくりをやっていますよね。でも、それをそのまま宣伝すると関心を持たれづらいと思うので、『未来の自動車について考えよう』などの企画をボッシュ主催でやるとか」

たしかに、ボッシュならではの特性を生かしたプロジェクトやイベントを実施し、コミュニティづくりを活性化していくのはいいかもしれません。

野村さん 「あと、会員制度があってもいいかなって。もちろん会員じゃない人も普通に使えますが、『俺は会員なんだけどね、ふふん』みたいな(笑)。で、会員同士は情報交換ができたりして、サロン的な役割を担えてもおもしろいですよね」

私たちのカフェに毎日のように立ち寄ってくれている、ヘビーユーザーならではの意見です。

野村さん 「渋谷にはおもしろいプレイヤーが集まっていると思います。別にビジネスのためにじゃなくて、その人たちと信頼できる仲間になって、彼らとこのまちをつくる。自分のワークとライフをつなげていく。それって、単純に渋谷に会社があるからなのですが、それ以上に、僕らは渋谷で仕事をし、渋谷に生きているってすごく感じます」

再開発により、大きく姿が変わりゆく渋谷。最先端の情報を持った人たちが集まる渋谷。これからの可能性を秘めている渋谷。そんな渋谷だからこそ、できることがきっともっとあるはずです。café 1886 at Boschは、そんな想いを持った人々のハブのような存在であり続けたいです。

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