自動バレーパーキングを拡張せよ──学生主体のハッカソンがボッシュの未来をつくる

1カ月間の開発期間で学生チーム同士が自動運転の課題解決に向けた開発内容を競い合う「自動運転ハッカソン」。ボッシュ・ジャパンの初めての取り組みが学生たちや社内にもたらした影響とは?自動バレー駐車技術リーダーと人事担当者の視点から、事業に直結する実践的な学生たちの挑戦を振り返ります。

学生による1カ月間の開発勝負──ボッシュ・ジャパン初の自動駐車ハッカソン

▲自動駐車ハッカソンに参加した学生メンバーとプロジェクトに関わったコネクテッドパーキングチーム

2019年9月18日、ボッシュ・ジャパンでは初の試みとなる「自動運転ハッカソン」を開催しました。そのテーマは、「自動バレーパーキングを拡張せよ」。

機械、コンピューターサイエンス、情報、電機電子系専攻の学生を対象とした本ハッカソンは、8名のインターン生が2チームに分かれて成果を競い合います。各チームは1カ月という短期間でプロトタイプ作成を進め、実践的な課題に取り組みました。

学生を巻き込んだ「自動運転ハッカソン」誕生の背景には、日本国内で新規事業として発足した自動バレーパーキングの実証実験における課題がありました。以前にもご紹介した「コネクテッドパーキング」を率いる技術リーダーである阿蘓将也がこのインターンシップに求めたのは、短期間でのトライアンドエラーです。

阿蘓 「日本における自動バレーパーキングの実用シーンを模索している中で、物流業界での技術転用における課題に直面しました。バレーパーキングは屋内での利用を想定した技術ですが、工場内の物流はすべてが屋内にあるわけではなく、屋外での走行もふまえた独自の開発が必要です。
しかし、私たちのボッシュの開発チームの母体はドイツにあります。見えてきた課題に対して、ドイツのエンジニアをアサインしてプロジェクトを新たに立ち上げるプロセスを取ると、クオリティの高い開発は可能になりますが物理的な工数がかかります。スピードが優先される開発の場合は、効率的とはいえない状況も出てくるのです。
そこで思いついたのが、学生とともに短期間でプロトタイプをつくるハッカソンです。学生たちは現場で実践経験を積みたい、私たちは熱意ある学生たちとともに新たな挑戦がしたい。お互いが win-winな関係を築けると考えたのです」

従来のインターンシップよりもさらに高度な技術や知識が必要になることもあり、参加者の選考フローは電話面談なども含め、現場の阿蘓とともに慎重に進めました。人事担当者としてハッカソン参加者の選考に携わった折原祐太は、選考プロセスの設計にこだわった理由を振り返ります。

折原 「学生にとって貴重な 1カ月を割いて参加していただくので、絶対に参加して良かったと言っていただけるインターンシップにしたいと考えました。現場と人事が密な連携を取り、今回はビジネスに直結する実践的な課題に取り組んでもらうため、 Pythonや C++といった使用言語に関する選考基準を定めました。
学外でもアクティブに活動しているかどうかも判断基準のひとつとしました。勉強をしてインプットだけになっている方と、しっかりアウトプットまでしている方の差は大きいと思っています。短期間で発表まで行うハッカソンでは、技術や知識だけでなく、アウトプットする力も必要だと考えました」

結果として選考を乗り越え、集まったメンバーは、知識欲とチャレンジ精神が旺盛で技術力も高い面々でした。ふたりが見守る中、学生たちは1カ月間の開発期間を走り始めました。

期待値を超える学生たちの能動性と成長

▲テスト車両を使った検証をボッシュの従業員と行うインターン学生たち

選ばれたメンバーの研究分野は多種多様です。自動運転に関わる学生だけでなく、ドローンや自然環境を学ぶ学生も中にはいました。ハッカソン企画前から長期インターンとしてすでにボッシュで業務に就いていた2名の学生は、各チームのリーダーを担当し、ハッカソン実施期間前から課題設定や準備について社員と綿密な打ち合わせを行いました。

折原 「インターン生のためにつくられた、ある程度答えが見えてしまっている課題設定では、本質的な業務体験にはなりません。リアルな課題に対して、できる限りメンバーが発見する仮説や主体性を尊重するため、ボッシュから情報や方針を出しすぎないことを心がけました。
特に、リーダーのふたりにはチームマネジメントを一任し、インターン生でありながらプロジェクトの責任を負う形をつくりました。こうした動きができるのは、ボッシュの強みだと思います」

リーダーたちはタスク管理やスケジューリングについて、折原や阿蘓の期待を超える能動的なマネジメント能力を発揮していました。その姿は、学生とは思えないものでした。

期間中、メンバーは技術面だけでなく、精神面でも大きな成長を遂げていきます。

阿蘓 「インターンの期間中は、週に 2〜 3回、状況を把握するためにプロジェクトルームでの学生たちのやり取りを確認し、週に 1回フィードバックの時間を設けて課題に対する進捗の共有を行いました。
それを 4週間続けていくと、自分と周囲のスキルの差に自信を失う学生もいました。それぞれの心の中で挫折と成長があったと思います。私が彼らに伝えたのは、『努力に勝る好奇心を忘れない』というメッセージです。エンジニアである以上スキルは必要なので、その部分で妥協はできません。
しかし、スキル習得の礎になるのは、好奇心です。これまでの大学で学んだ内容や、就職活動を見据えたニーズに固執した学習を努力で続けてしまうと、知的好奇心を忘れてしまいがちです。何かひとつ、自分が興味のある分野を見つけてとことん突き詰め、技術を伸ばしていく。その楽しさを経験できれば、最終的に良い結果を残せると信じています」

プロジェクトルームで議論を重ね、就業時間後はフリースペースで卓球を楽しむ姿なども見られたハッカソンチームのメンバーたち。2チームはそれぞれライバルでしたが、お互いが興味関心を持って相手チームのタスクを手助けする場面もありました。確かなチームワークを築き、お互いを尊重しながら、彼らは成長していったのです。

開発成果の発表日は、彼らのインターン期間の終了日。当日は、他の新規事業部や現場の技術者など、さまざまな部署から多くの社員が発表を聞きに訪れました。

ハッカソンを通じて生まれた学生と社内の心境の変化

▲現場のエンジニアや新規事業部のメンバーが見守る自動運転ハッカソンでの発表
折原 「発表を終えた後の彼らの表情は達成感に満ち溢れていて、すがすがしいものでした。彼らが成し遂げたことが、今後ボッシュで働くか否かに関係なく、今後の学生生活や就職活動、その後の社会人生活につながる良い体験になれば嬉しい限りです」

コネクテッドパーキング事業の責任者である瀬川太郎は、全力を尽くした学生たちとの1カ月をこのように振り返ります。

瀬川 「本当に優秀な学生がたくさんいることに気がついた 1カ月でした。時間の都合などもあり、椅子の上にライダーを置いて実験している姿は、若さならではの柔軟さを感じ、逆にフレッシュなアイデアや刺激をもらい、私たちも勉強になることも多かったです。
これからボッシュはコンポーネントを売っていく事業だけではなく、徐々にアプリケーションによるソリューション提供にシフトしています。まさに、コネクテッドモビリティを担っている、この部署ではサービスを展開していく上で、人はもちろんのこと、能力、知識、ノウハウ、経験などの目に見えない資産が非常に大事だと考えています。
最後にいきつくのは “人 ”ですので、ボッシュの未来を担う人材とひとりでも多く出会うために、来年もこのような機会をつくっていきたいと考えています」

今回のインターンシップでは学生だけでなく、多くの社員にもポジティブな影響をもたらしました。

阿蘓 「当日は人事、広報、新規事業部などさまざまな部署の社員が参加していましたが、他部署からも発表のクオリティに対する評価が集まりました。次は自分たちの事業部でも実施したいという声もありました」
折原 「今後、日本市場にローカライズをした開発を国内で積極的に行っていくことは全社的にも重要なポイントです。社内だけでなく、社外の若い世代とコラボレーションしていくというひとつの道を今回提示できたのかなと思います」

また、今回の取り組みは参加した学生たちの心境や進路にも変化をもたらしました。

阿蘓 「大学院への進学を決めていたメンバーがいるのですが、今回の経験を通じ、休学してもう一度ボッシュのインターンシップに臨みたいという話がありました。彼が感じたのは、より実践的な現場で開発に携わったほうが学べる幅が広いということでした。
選考のときから能動的なメンバーが集っていましたが、今回の実践的な経験を通じて、彼らはより能動的になったのかもしれません」

ボッシュの文化を知るチャンスを、より多くの熱意ある学生に届けたい

リーダーシップの重要性やお互いをリスペクトする姿勢、年齢に関わらず多様性を生かしたアイデアの創出など、今回のハッカソンプログラムにはボッシュの企業文化が凝縮されていました。

折原 「ボッシュではダイバーシティを尊重しているので、求める人材像をあえて限定しません。ただ、企業文化として大切にしているキーワードはあります。それが『イニシアチブ』、『リスペクト』、『スパーク』の 3点です。
自ら率先して課題を発見し行動する『イニシアチブ』、お互いの立場やスキルを尊重しあう姿勢の『リスペクト』、相手と課題をシェアし、ともにつくり上げることで火花のようなアイデアや結果を生み出すビジョンが、『スパーク』という言葉に込められています。
こうしたカルチャーに共感する方には、ぜひインターンシップや今回のようなハッカソンなどの機会を通じてボッシュに触れてほしいと考えています」

ボッシュのインターン参加を希望する学生は年々増加しており、学生たちの成長機会をさらに提供できるよう今後も受け入れ体制を強化していきます。本ハッカソンの成功は、そのためのひとつのステップとなりました。

折原 「まだまだボッシュは日本国内での知名度について課題があります。ですが、職場で一緒に働く機会さえあれば、企業文化の魅力や働きやすさに触れられるので、ボッシュを好きになっていただける自信があります。
今回のようなハッカソンは来年も実施したいと考えています。人事として、あるいは “人 ”のプロフェッショナルとして、今後も社内の協力者を増やしながら学生たちの成長機会を創出していきたいです」

ある新規事業チームから生まれたアイデアが、ボッシュ・ジャパンの未来を形づくるひとつのきっかけになった今回のハッカソン。この一歩をもとに、ボッシュは今後も熱意ある若きリーダーの活躍の場を生み出していきます。

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