経験を学びに変え、「夢に近づく力」を身に付けるために。ディレクターが描く未来

「ポートフォリオ」という言葉を、皆さんは聞いたことがありますか?普段の生活ではあまり聞き慣れない言葉ですが、「学びのアルバム」と言い換えると少しイメージが湧くかもしれません。今回は、「ポートフォリオ」のディレクターの安部 亨が、自らの原体験とともに、その未来へはせる想いをご紹介します。

学校生活を諦めたくない

2011年にベネッセに入社、2016年にClassiへ転職した安部。


安部は、高校生時代の出来事をきっかけに「振り返ること」「そこから次のステップを考えること」の重要性を感じていました。

安部 「校則などに対して感じていた違和感や理不尽さを先生に直接相談したんです。そのときに先生が『できないと思った瞬間はチャンス。自分から生まれた違和感からスタートしたことは成功する確率は高い。失敗してもいい、成功するかはわからないけどそれは成長の機会になる。俺は応援する』と言ってくださったことが私の背中を押してくれました」

違和感を払拭すべく、生徒会長になった安部は、全校集会でスピーチをします。

安部 「そこで失敗してしまったんですね。ただただ緊張してうまく話せない。先生に『次の全校集会では、どう変えればうまくなりそう?』と聞かれても答えられませんでした。そこで、先生から言われた『不安なら、まずは自分の録音したスピーチを聞いてみたら?』というアドバイスを実践してみることにしてみたんです」

録音して、自分の声を客観的に聞き、自分の現状を分析することで、何を直したらいいのか見えてくるようになったといいます。

安部 「生徒会長として活動した期間で、自分がやりたいと思ったことや興味があることに向かっているときは、集中力も高まるし、試行錯誤すらも楽しいと思いました。今振り返ると、このプロセス自体が学びだし、自分で工夫したり別の分野からアイデアを発見したりすることが成長につながったと思います。経験したことが自分の中に蓄積されて今の自分をつくっていくという感覚です」

その後大学に進学した安部は、カフェでのアルバイトで「潜在的な力を引き出す工夫」に驚いたといいます。

安部 「アルバイト先ではマニュアルがなく、おのおのがお客様の気持ちを察し、ニーズを発見し、期待を上回る主体的な行動が推奨されていました。そして、一緒に働く仲間から自分自身の行動で続けるべき良かった行動と、より良くするために是正する行動をフィードバックしてもらう仕掛けです。
ここで学んだ潜在的な力を引き出す仕掛けに魅了されているときに、『小中高のとき、学校に対して潜在的にはいろいろなことに不満を持っているけど、どこかで諦めて過ごしている。学校での学びが変われば社会が変わるきっかけになるんじゃないか?』といわれました」

この言葉がきっかけで、安部は教育の道を選びました。

学校は、生徒が主役であるべき

学校によっては、学校行事や校則が今の時代に合っていない学校もあると感じています。

しかし、学校の先生も決して今の状況が良いと思っていないし、課題意識を持っている生徒もいます。時代の変化に適応しながら、潜在的な力を持つ生徒の「主体的に学ぶ意欲と学び続ける力」を引き出す場所に、学校のあり方をアップデートしたい。

そんな想いを胸にベネッセへ入社をします。

安部 「ある先生との出会いが、今の私の教育観に大きな影響を与えていると思います」

ベネッセに入社後、滋賀県でとある学校を担当していた際に、「学校は、生徒が自分自身の未来を考える場所である」という考えで生徒に向き合っていた先生と出会い、共に生徒に向き合う経験をした安部。そこで目の当たりにしたのは、生徒がなりたい自分を描いた後の底力でした。

安部 「そこでは、『行き先指導』ではなく、『生き方指導』という言い方をしていたのが印象的でした。先生は、生徒を信じて挑戦を支える、育つのは生徒自身というスタンスです。
高校では、どこの大学に行くということを目的にしがちですが、大学は夢への手段のひとつです。自分自身の生き方を考えるきっかけを得た生徒たちは、深く考えた上で進学先を決めていました。この指導方法で生徒にどのような影響があるのかと思っていたところ、結果的に学ぶ目的が明確になった生徒たちの学力は向上していきました。
実際に学校で生徒と話したり、学習に向かう姿も見たりする中で、自分で考えて自分で決めて進んでいく力を身に付けた生徒の可能性を、間近で見ることができました」

生徒が持つ測ることはできない、目に見えない力。その力をもっと伸ばしていきたいという想いが強くなった安部は、より生徒の日常生活に近いClassiへ異動希望を出しました。

安部 「 Classiであれば、先生・生徒の声がプロダクトにより取り込みやすく、生徒の日常を支援できるのではないかと考えたんです」

そうしてClassiに異動して2年間は、マーケティング部で日本全国を飛び回る生活を送りました。

安部 「毎日学校訪問をして、 200校くらいに足を運んだと思います。その時期は、生徒と向き合う時間を増やせるように、先生の校務を減らすための書面のデータ化や、学校の抱える課題抽出や『 Classi』導入のお手伝いなどをしていました。
全国の先生と直接お話しすることで、各学校がどんな生徒を育てたいと思っているか、先生と生徒の良い形でのコミュニケーションは何かなど、今のポートフォリオにつながる考えを深めることができました」

振り返るだけではなく、「今」を考えること

2018年、Classiでポートフォリオが誕生し、お披露目の場でプレゼンテーションすることになったことをきっかけに、安部はポートフォリオチームへと異動します。

安部 「ポートフォリオという機能に、私自身が可能性を感じています。自分が大人になったときに欲しいと思う力のひとつが、自分自身を振り返って次を見通す力だったこともありますし、ポートフォリオが、一人ひとりが主体的に学ぶ意欲と学び続ける力を育むきっかけになると感じていました」

ポートフォリオは、概念が新しいこともあり誤解を受けやすいものです。

そんな中で、安部は自らが考えるポートフォリオについてこう語ります。

安部 「ポートフォリオでは振り返ることの大事さが強調されていますが、実際には『今』に集中することも大事です。ある経験に対して、今の自分が何を感じているのか、今の自分に足りないものは何か、記録することで思考するきっかけとなり、次の行動のきっかけになるのもポートフォリオの良い点のひとつだと思っています」

実際に、ポートフォリオを使っている学校への訪問や生徒へのインタビューを通して、少しずつ効果を感じている学校も増えてきています。

安部 「先生も最初は懐疑的な部分もあったと思いますが、生徒が日々の小さな振り返りを継続し、面談前のタイミングで過去の学びを大きく振り返る機会を設ける学校が増えています。
学校での面談は、先生から生徒に一方的にアドバイスを伝える場から、生徒の成長を支援するための面談に進化しつつあります。
先生の思い込みだけで一方的に話をする面談ではなく、先生がポートフォリオを使うことで、生徒一人ひとりの良さや進歩の状況、今後の可能性を把握し、生徒の背中をそっと押すようなフィードバックを行う学校が増えています」

ポートフォリオのリリースから2年、安部は新しいチャレンジを始めています。

安部 「ひと言で言うと、オープンイノベーションです。ポートフォリオを使ってほしい先生と、実際に使う生徒では考え方が違うのは当たり前。だったら実際に使う生徒の声をもっとプロダクトに反映させたいと思って始めたのが、今回のワークショップです」

このワークショップは、安部が学校訪問の際に声をかけた生徒やアプリ開発に興味がある生徒などを募り、課題発見や解決の手法を学ぶという内容です。

安部 「生徒にとっても探究学習として、誰かの問題を解決するためにどんな考え方をすれば良いのか、デザイン思考をかみ砕いたプログラムで展開しています。課題を解決するために大切なのは、当事者の気持ちになって『想像』すること。想像のためには当事者を知ること、見ること、自分の頭で考えることが重要です。このワークショップをきっかけに、生徒も生徒自身の本当のニーズに気づいてもらうことができたらと思っています」

目指す姿は、「気づいたら成長していた!」

生徒の声を取り込み、日々開発を進めるポートフォリオチームですが、最終的に目指すところは何か、最後に安部はこう語ります。

安部 「従来の学校では先生=『怖い存在/説教』のイメージも強かったかもしれません。これからの学校では、先生=『成長を支援してくれる存在/ヒントをくれる人』に領域が広がっていくと感じています。
私自身も高校生のときにたくさん失敗して、試行錯誤しながら学んだ『学校』という場は生徒の潜在的な力を引き出すのに最適な環境であり、振り返りは『ただの反省』ではなく、一人ひとりが持つ可能性を引き出す手段だと考えています。生徒は自分自身の学びのためにポートフォリオに記録する。今日の経験を自問自答し、明日の自分に役立てるために自分自身が感じた『気づき』を生かす。
また、一人ひとりが持つ潜在的な力が引き出されるかどうかは、周りにいる人の接し方で決まると感じています。『どうせ無理』と言われ続けた生徒は自分のことを信じられなくなり、『なんだってできる』と言われ続けた生徒は次につながるきっかけを探し続けています。先生方には、挑戦しようとしている生徒へのフィードバックの手段のひとつとして、ポートフォリオを使っていただければ嬉しいです。
これからの未来をつくるのは今の大人ではなく、少し未来の大人である生徒たち自身です。だからこそ、生徒の学びが変われば未来が変わると信じています。
私自身も、生徒の可能性を心の底から信じるひとりの大人として、生徒が日々使う Classiを通じて、『自分の目指す将来像に近づく力』を身につけるきっかけを提供したいと思っています」

生徒に寄り添い、時には生徒に助けられながら、安部のポートフォリオへの大きな挑戦は始まったばかりです。

関連ストーリー

注目ストーリー