数字の動きから読み取れる会社の考えや想いに惹かれた

私は青森の農家の家系で生まれ、幼少のころから家業を手伝う機会も多く、そこから「モノをつくり、売る」という経済の基本とも言えるビジネスモデルに触れ、事業や経営に興味を持つようになりました。

現在のキャリアにつながる会計に対する熱を持ち始めたのは大学のころ。将来的には自分でも事業を起こしていきたいという気持ちがあり、その初動として簿記を学び始めたのです。

そこでは、企業活動のすべてが数字で定量的に表現され、数字の動きを見るだけで会社としての意思や事業のしくみが少しずつ見えてきたのです。まるで世の中を俯瞰しているかのような、新しい視点を得られた喜びがそこにはありました。

受験勉強も嫌いでしたし、数学もそんなに好きではなかったですが、簿記は自分の思考にすごく合っていたんだと思います。

こうした体験がきっかけで、私は会計士を目指すことを決めます。大学4年生のときに公認会計士試験に合格し、2013年に入所したのが、有限責任監査法人トーマツでした。さまざまな選択肢があった中で、IPOに興味があったというのはひとつの軸になっていました。トーマツのトータルサービス部は日本を代表するようなベンチャーの上場にも多く関わっており、また固いイメージの会計士業界の中でもベンチャー気質の人が多く集まっていたため、よりダイナミックな仕事が経験できると思ったのです。

実際に働いてみれば、それこそ馬車馬のように働く日々で、つらく苦しい経験もたくさんしました。まるでドラマに出てくるような修羅場も何度かありました。しかしこうした経験があったからこそ、仕事をする上で重要なハードスキルはもちろん、トラブル対応力や意思決定力などが鍛えられ、ビジネスパーソンとしてひと回り大きく成長できたのではないかと思います。

ビジネスの最前線で、もっとタフに、もっとダイナミックに

トーマツで働いていたころから、ゆくゆくは事業者側に行きたいという気持ちはありました。そんなときに仮想通貨に関わる機会があり、縁あってコインチェックに出会いました。そこでいろいろと関わりを持っていくうちに仮想通貨業界、コインチェックという会社に大きな将来性を感じるようになっていきました。

あらためて説明する必要もないかもしれませんが、コインチェックは2014年に仮想通貨交換業に参入し、黎明期から国内で有数の仮想通貨取引所としてその地位を確立しています。バブルといわれた2017年代の仮想通貨相場の高騰、そして仮想通貨流出事件とそこからの立て直しと再出発、類を見ないほどの困難を乗り越えてきた非常にタフな会社です。

入社を検討していた当時はまだまだ組織としての課題は多く、逆に言えばそういった環境だからこそ、より自分の力を強く発揮していけるのではないか。会社としての大きな転換を支えていけるのではないかと思い、2018年に入社を決意しました。

入社当初、興味はありながらも未経験のシステム開発部への配属でした。仮想通貨業界のビジネスモデルはシステム由来のものも多く、このタイミングでシステムや開発の知識を身につけられるのは良い機会だと思いました。実際に働いてみると、要件定義は主に自分、開発は主にエンジニアのメンバーとうまく分担して仕事ができ、これまで培ってきた会計士としての知見が生かせる、必要とされるシーンも多くありました。その点も自分で経験することによって初めて得られた気付きでしたね。

そして現在は、経理財務部長として会計、税務、財務業務の対応、新規事業のフロントサポートだけでなく、仮想通貨交換業に関する会計ルール・自己資本規制ルールの策定、税制改正に向けた活動など業界としてのルールメイキングに関わる仕事にも携わっています。

同業他社に先駆け、新しい業界のスタンダードを築いていく

コインチェックにおける経理財務の仕事をひと言で表現すると、「企業としての価値、そして産業としての価値も上げていく仕事」と言えると思います。

一般的なイメージでは、経理財務の仕事は裏方で、決められたルールを厳守して粛々と業務をこなすことと思われているかもしれませんが、コインチェックの場合はその真逆と言っても過言ではありません。当社の場合、一般的な会社の経理が行う業務の多くが自動化されていますから、他の会社で割かれてしまっているようなマンパワーを経営方針や事業開発など、より付加価値が高い業務に生かすことができるのです。

そしてとくに重要になってくるのが、ルールメイキングに関する部分。仮想通貨交換業は業種としては金融に属していますが、他の商材と比べると歴史が浅く、ルールやレギュレーションが追い付いていない部分が少なくありません。一方、仮想通貨やそれを支えるブロックチェーン技術には日々イノベーションが起きており、当社のサービスを提供するためには、その技術の発展を理解しつつ、法律的・会計税務的な整理することが不可欠です。

当社のエンジニアは常に仮想通貨とそれを支える技術の最新動向を常にキャッチアップしています。われわれのミッションである「新しい価値交換を、もっと身近に」していくためには、車の両輪のようにわれわれ管理部門も率先して新たなルールを提言していかなければならないのです。そしてそれは自社の価値だけではなく、社会にとっての産業の価値を上げることにもつながると思っています。

これは本当にタフな仕事ではあるのですが、当社の一番の強みは、それを強力に推進できる体制にあると思っています。優れたUI/UXを追求し提供しつつけるエンジニア部門、戦略的な思考に長けた新規事業開発部・マーケティング部、顧客ファーストの業務管理部、金融経験豊富な法務部・リスク管理部、そして社外社内の利害を絶妙なバランスでコントロールする社長室など。当社はこれらの機能を外注せずすべて社内で抱えています。

それぞれの強みが有機的に結合して、ひとつのチームとして動けるからこそ、どんな高い壁でも超えることができますし、何より超えていこうという気持ちを発奮することができます。

新しい価値交換がもっと身近になる世界を目指して

個人的な目標として、経理や財務の業務をもっともっと自動化していきたいと思います。それが実現できれば、経理財務部メンバー全員がより知的生産活動、企業価値を上げる活動にリソースを割くことができるようになると思っています。

経理財務部は、会社がおかれている状況を俯瞰的・定量的に最も良く把握しているはずなので、経営者目線になって動くことができるはずだと思っています。

これはマインドセットの話ですが、私たちのようなバックオフィスの人間こそ、後ろにドンっと控えていては駄目だと思っています。変化の激しい業界はとくに。むしろビジネスの最前線に立って、スキームを組むところから一緒にチームとして動いた方が、結果スムーズに物事が進み、クオリティ維持しつつ一番乗りできることにつながると思っています。

バックオフィス側の人間はなんとなく厳しく管理をするイメージを持たれがちですが、私たちは社内のメンバーこそがお客様という考えで仕事に向き合っています。われわれが事業成長のボトルネックになるのは避けたいので、些細なことですがチームメンバーにも即レスは心がけるように伝えています。

仮想通貨を支える基盤技術であるブロックチェーンはいろいろな業種に応用が可能ですが、会計士をしていた身として経理や財務が関わる領域とはとくに相性が良いと感じています。たとえば、経理として取引を集計するときに、実際に紙の請求書を見たり、取引先に確認したり、検証する作業って面倒ですよね。しかも決算書は納税や融資・投資目的で利用されるので、外部の国税や監査法人なんかも検証することになります。ひとつの会社の決算書のチェックに何重にも検証コストをかけて、それが大小あるとはいえ何百万社もあれば、社会全体で膨大な検証コストをかけていることになります。

しかし、当社が保有する仮想通貨の検証は、公開台帳であるブロックチェーンに記録されている残高を取得して自社の会計残高と照合すれば一瞬で終わります。残高がいくらでも、それこそ何兆円あっても、誰でも簡単に検証することができます。前職で監査をしていた身として、そして今は決算書をつくる身として、この技術のすごいポテンシャルを肌で感じているわけです。

世間的には仮想通貨としてひと括りにされるものも、業界では仮想通貨(今後は暗号資産)、デジタル通貨、通貨建資産、電子記録移転権利(セキュリティトークン)、ユーティリティトークン、NFTなど法律的・経済的性質の違いによって異なる名前で呼ばれています。それぞれがどのような社会課題を解決できるか、日々模索されているのです。

一貫して資本市場を取り巻くプレイヤーに身を置いている私自身が感じてきた課題感は、そう遠くないうちにブロックチェーンによって解決されることになると思います。そしてまさにそれが起きようとしている現在を非常におもしろいと感じていますし、ビジネスサイドを支える経理財務として、またビジネスサイドにもなり得る立ち位置として、今後も全力を尽くしていきたいと思っています。