「フィンテック後進国日本に必要なのは伝道師」澤円の戦略

スタートアップ企業であるカウンティアは、世界を見据えたフィンテック事業をつくっています。2018年9月1日、日本マイクロソフト業務執行役員でもある澤円がカウンティアのグローバル戦略アドバイザーに就任。知見と人脈を活かし、社内外の「共通言語化」を通じてカウンティアの魅力を世界へ伝えていくための戦略を聞きました。
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フィンテック企業カウンティアとバブル世代をつなぐ、人間プロトコル

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澤円はITの世界で長年キャリアを積み、コンサルタント業務や年間250回以上のプレゼンテーションを行うプレゼンマスターでもあります。澤はIT最前線で常に世界を切り開き続けてきました。

次世代のイノベーションはフィンテックから始まる、そう考えた澤は「フィンテックで、超えていく」というミッションのもと事業開発を続けるカウンティアへ興味を持ち始めたのです。

澤 「フィンテックの世界は今、急速に進化しています。通貨の世界は、「ゴールド」をお金の価値基準とする『金本位制』に始まり、その後「国の信用」によってお金の価値が決まる『管理通貨制度』に推移し今に至ります。
ブロックチェーンという新たなテクノロジーを信用の基礎とした新しい通貨の概念は、フィンテックをキッカケに今後大きく発展していくと考えられます。アーリーステージにいるカウンティアというフィンテック企業に対して、今まで自分の培ってきたものが活かせるのではないかと考えました。
私の強みはコミュニケーションや交通整理による共通言語化です。日本企業は AIやフィンテックなどのバズワードにとりあえず飛びつきがちなのに、ちゃんと分かっている人は少ない。知っていることと納得してもらうことの間には大きな隔たりがある。
そこで交通整理をし、共通言語で話を伝えられる人間が必要だなと思いました。フィンテックは「金融」を軸足にした社会的に新しい試みなので、社会的な信用を「共通言語化」を通じてどのように得ていくのか、これが大きな課題にななってくると思います」

実際に大企業で決裁権限を持っている方たちの中には、ITに対してそこまで明るくない方々も含まれます。今後はITの時代からさらに進んで、IoTなどあらゆるものがデータ化していく中で、デジタルの重要性はますます高まる。

それにも関わらず、その重要性に気づいていない企業経営者の方も多くいると澤は指摘します。

澤 「私は今 50歳ですが、ちょうど上の世代はバブル世代。彼らは日本企業が時価総額ランキングで世界の TOP10に入っていた時代を生きてきていますから、今も日本はまだまだイケてると思っています。
そういう方たちとの間で、プロトコル(共通言語)を持って納得していただくための橋渡しをし、サービスの承認や決裁、導入などにおいてベストな判断ができるお手伝いができると思いました。
フィンテックという事業は、社会からの信用を得ることが重要な事業です。大企業ともきちんとコミュニケーションをとることがとても重要なのです」

「データになっていないものは存在しない」時代に、言語化できる人の重要性

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フィンテックがどういうことなのか、まだよく分からない方たちはたくさんいらっしゃいます。そうした方たちへアプローチし、サービスの魅力を伝えていくにはどうしたらいいのかということは、私たちカウンティアの課題でもありました。

そこで、グローバルな観点を持ち、ITの専門性を持ってさまざまな顧客に対して「伝える」という役割を担ってきた澤に協力を仰いだのでした。

カウンティアに参画するにあたり、澤は主に2つの点で協業ができると考えたそうです。

ひとつは、エヴァンジェリストとしての役割。いわば、伝道師です。先に述べたように、もうひとつは、思考のデザイナーとしての関わり方でした。

澤 「たとえば、同じりんごを売るにしても、おじいちゃん相手にはペースト状に、成人相手には剥いてあげて、というように、相手に合わせて受け手が受け取れるようにして渡してあげる。これが思考のデザインです。その点でも、役割を果たせると思っています」

具体的には、対外的に発信するブログなどのコンテンツのレビューやワーディング、アプローチの方法やロジックの組み立て方の監修といったことを想定しています。

圧縮する、削る、ペース配分する。伝える相手によってコミュニケーションの方法を変えることで、より伝わりやすくなるようにするのです。

まだまだカウンティアの認知度は高くありません。また、フィンテックという言葉自体も、それほど浸透はしていないのが現状です。しかし、今後は「データになっていないものは存在していないのと同じ時代が来る」と澤は言います。

澤 「あらゆるものやサービスがデジタル化された状態になっていないと、誰も取引対象として認識しない時代が来ると考えています。検索もされない。ネット通販で売れない。認知されない状況になるということです。
一部はすでにそうなっている。そのときに、テクノロジーとモノの価値を紐付ける必要が必ずでてくる。それを言語化して、すべての人に伝える必要があると考えています」

「すべての活動は裏切れないファンづくりのため」だからビジョンを研ぎ澄ます

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世界に向けたサービス展開を目論むカウンティアが、いかに戦略の舵をとるか。グローバル企業で経験を積んできた澤から見ると、フィンテックの世界は今、アメリカと中国がデータを支配している状態にあるそうです。

澤 「まずは競争に参加することが大事です。でないと、ただの属国になってしまいますから。恐ろしく加速スピードの早い世界なので、手遅れにならないために今からゼロをイチにできる部分にアプローチし、手を打っていく必要があります」

テクノロジーの進化は人間の理解を超えたスピードで進化していく。さまざまなプレイヤーが絡み合って進化していくために、発展の仕方は予想ができない。そのため、気がついたときにはもう追いつけなくなるくらいに進んでしまっているということが起きかねないと指摘します。

そうした状況の中、日本は「あらゆる面で分が悪い」と澤は言います。一番の理由は、マインドセットの部分。計画にばかり時間を割いていることや前例主義である部分、あるいは、デジタルを使って簡略化することを「横着で丁寧さに欠ける」とみなす精神論などなど。

澤 「その一方で、同じようなカルチャーバックグラウンドを持つ日本人は、理解して言語化し、定義付けしたあとのスピードは早いという特長があると考えています。なので、言語化されたコンテンツなど、分かりやすいものをカウンティアが提供できれば、一気に影響力を世の中に与えることができるようになるのではないかと思います」

そのためにはまず第一歩として、「ファンをつくることが大事」だと澤は考えています。社内の共通言語、つまりビジョンやミッション、フィロソフィーなどを研ぎ澄ませていくことで、ファンができ、企業としてのあり方も律されていくのです。

澤 「カウンティアのことを好きになってくれるファンが増えていけば、自ずとファンがカウンティアのことを伝えてサービスを使ってくれるようになります。ファンは、正しいかどうかよりも好きかどうかで行動してくれる。
だから、すべての活動をファンづくりだと思うこと。ファンのことは決して裏切れない。そのためにはまず、ファンに対するビジョンをつくること。ビジョンは会社の名刺です。
そうすれば、私のような立場のサポーターが、ファンとの間にあるギャップを埋める知見やコネクションを提供する価値が生まれる。その手順を踏むことで、対外的な影響力を与えやすくなるんです」

「人は人からの情報を最も信頼する」ーー人として伝える部分を大切にする

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カウンティアではそうした体制を築くために、ビジョンの策定から取り組み始めました。毎週のように話し合い、さまざまな議論を重ねていきました。何をやっている会社かどうかではなく、何を実現したくて、どんな情熱を持って何に取り組んでいる企業なのか。

こうして生まれたカウンティアのビジョンが、「フィンテックで、超えていく」。

ビジョンが明確になったことで、社内外の人とのコミュニケーションもスムーズになり始めたと田原は言います。ファンづくりの第一歩ができた、その手応えを感じたようです。

また、ファンと一口に言っても、何もカウンティアのサービスのユーザーだけを指すものではありません。入社を検討されている求職者や未来の社員、あるいは投資家や顧客など、すべてのステークホルダーがファンになっていただけるようにする。あらゆることがファンづくりだと思って活動する必要があります。

そして今後さらに必要になってくるのは、マインドセットの部分だと澤は言います。

澤 「たとえば 3年後の未来がどうなっているかなんて見通すことはほぼ不可能です。しかし、その 3年間の過ごし方は大事。ではどう過ごすかというと、それは、多面的に常に新しいものを見ていくことです。
たとえばフィンテックは、経済やインフラ、エコシステム、あるいはインフルエンサーの動きなどさまざまな要因が絡んできますから、それらを多面的に観察して見続けることが重要ですし、その橋渡しが私の役目です」

そして、人とのつながりを得られるためのアウトプットが重要だと続けました。チャネルを増やしたり、イベントを増やしたりするなどをし、効果の高いものを増やしていくこと。

澤 「 3年経っても絶対に変わらないものがあります。それは『人は人からの情報を最も信用する』ということ。ですから、人として伝えるという部分を大切にして、カウンティアと一緒にフィンテックを考え、みんなを幸せにしていきたいですね」

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