新たなビジョンを前にした社員たちの前向きな戸惑い

林 「新しいビジョンを定めたとき、一部の社員には動揺や戸惑いみたいなものが少なからずありました。ただ、それは排除しようというネガティブな反応ではありませんでした。ビジョンをより深く理解して、社会に発信していきたいという欲求みたいなものが、戸惑うような反応になって現れていたのだと思います」

新ビジョン『To celebrate your life the most in the world. ─世界で最も人生を祝う企業─』がつくられた後に社内に現れた雰囲気を、クリエイティブディレクターの林はこのように前向きな変化として捉えていました。

林 「旧来のビジョン『 style for Earth』は、抽象度の高いものでした。抽象度が高いからこそ、社員それぞれが自分に合った形で解釈できるというメリットもありました。しかし、組織が拡大し、より社会認知を得ていきたいという勢いの中で、より多くの人に理解・共感してもらえるビジョンの言語化が必要になったんです」

ビジョンの改定にはco-visioning sessionといって約1カ月の時間を使い、代表の森山が全社員のビジョンをヒアリングしました。結果、“人の人生を大切に思う“という社員共通の想いをのせつつも、事業軸に寄り添ったビジョンができたのです。

新しいビジョンを自分の中で落とし込みたい。社内に巻き起こっている前向きな雰囲気をエネルギーに変えて、ビジョンのいっそうの浸透を図りたいと思った林がたどり着いたのが、「社内アワード」という手法でした。

社内アワードの本質に向き合った、CRAZYらしい企画開発

CRAZYには従来、社内アワードの制度はありませんでした。確固たる考えがあったからです。

林 「言葉を選ばずに言えば、馬の目の前に人参をぶらさげるような行為で、モチベーションを上げる組織じゃないという想いがありました。僕たちはもっと本質的で、クリエイティブなモチベーションのつくり方ができると自負していたし、事実そうやってきたんです」

しかし、そんな考え方を覆してくれたのが、法人事業での経験でした。

林 「近年起こした法人事業では、組織のプロデュースのご依頼をいただきます。そんな中で、僕らは表彰式をつくるということに真剣に向き合ってきました。 CRAZYには必要のないしくみだと思っていましたが、手段としては非常に優れていて、結婚式にも通じるものがあると理解を改めたんです。
表彰式と結婚式はとても似ています。共通点は成熟したフォーマットがあるということと、本質的にはすばらしい機会であるということ。ただ、成熟したフォーマットなので形骸化し始めている部分がある。表彰式にも、表彰状を渡して、副賞を渡してという喜びではなくて、本質的な価値を追うことに意義と可能性を感じたんです」

社内アワードが、ビジョン浸透の鍵となることを見いだした林はCRAZYならではのスタイルを模索しました。

林 「目的はビジョンの浸透、体現、体感であることが前提としてあるので、 “祝う ”というキーワードはとても大事にしたいと思っていました。表彰式自体が、祝うという行為であり、合致したところもあるんですが、“祝う ”のレベルをきちんと考えていきたいなとも思ったんです。
世界で最も人生を祝う企業であるわれわれだからこそ、ただの盛り上がりをつくるのではなく、祝うという機会がどういうことなのかを参加者に体感してもらいたいと思ったんです」

そこで重要視したのが、“知る”というキーワードでした。

林 「結婚式でも表彰式でも、何かしらの節目、お祝いをする場に、共通して言えるとても本質的なことは、“知る ”ということだと思っています。 “知る ”の前には、“想う ”ということがあると定義しているんですが、目の前の人を想い、知ることによって、祝うという機会が生まれるし、祝うということの質が上がると思っているんです」

こうした考えのもと生み出されたのが、LIFE STORY AWARDです。

“祝う”を体現することで得られたビジョンへの理解と、事業への好影響

初めてLIFE STORY AWARDが開催されたのは、2019年1月。事業部ごとにチームをつくり、代表者11名が、全社員の前で約7分間、「誰かの人生を最も祝ったストーリー」というビジョンに通じるテーマで、プレゼンテーションを行いました。

林 「プレゼンテーション形式で、大切な仲間がやっていることが、ブランドや組織を生み出している価値だということを知ることで、賞賛や承認、場合によっては健全な嫉妬みたいな人間らしい感情を生み出していく。これが最も大事な成果なんじゃないかなと思い、こうした形にしたんです。
もちろん、一番すばらしかったプレゼンテーションはどれかという風に順位をつけることもするんですが、それは演出にすぎません。本質はお互いを思い、知るということにフォーカスしたものになっています」

主にお客様へサービスを届けた話がメインになるだろうと林は想像していましたが、実際には多様な観点からプレゼンテーションが行われました。

林 「いつも一緒にいる仲間と仕事をしていく上で人生が変わっていったという話もあれば、仕事だけではなく自分の人生に対するお祝いの仕方みたいな話など、みんなあの手この手で考えてプレゼンテーションしてくれました。事業・組織の中に眠っていたビジョンに通じたストーリーを聞けて、涙ぐむ社員もいましたね」

中でも評価が集まったのは自分たちが提供しているサービスを、社会性を持って伝えているプレゼンテーションでした。

林 「自分たちの提供しているサービスが、本当に価値があるんだということをあらためて実感できるストーリーだったと思います」

事業部ごとにチームを組んで臨んだことで、社員間のつながりが深まるなど副次的な効果も多かったといいます。

林 「 CRAZYは、もともとイベントをつくるプロの集団です。社内でアワードを実施するなら、みんなの手を借りればすぐにできてしまうんですが、私はあえて、実行者を少なくしました。みんなにできる限り受け手になってもらいたいと思ったんです。
祝いの場があって、節目をきちんと取り扱うというのが、どういうことなのか、今一度自ら体験することで、再び自分が提供者になったとき、イベントの価値をさらに深く語れるのだと思います」

LIFE STORY AWARDがCRAZYのビジョンを社内外へ浸透させる

イベントに手応えを感じているいま、林が課題としているのは、このLIFE STORY AWARDをその他のアワードのように形骸化させないことです。

林 「どのようにしたら形骸化しないかというと、成長させることだと思っているんです。もともとアワードをつくるときに自分に課した条件が、継続させることでした。アワードがとてもすばらしくハッピーな会となり、社員がお互いの想いを知ることができたとしても、それが、瞬発的で単発的なもので終わっちゃったらまったく価値がないんです。想い続けること、知り続けることがポイントなのではないかと感じていました」

その瞬間の盛り上がり、これがイベントの妙味と知った上で、林はこれを継続させるというチャレンジを続けています。

林 「結婚式もそうですが、イベントの最大の価値は瞬間的に沸騰させることなんです。その瞬間、参加している人の感度を上げて感情を爆発させ盛り上げられるから。そして、それを維持、継続させるためには、イベントを繰り返すだけじゃなく、日常的なコミュニケーションや振り返りなど、総合的なアプロ―チが必要だと思うんです。
そういうものをうまく設計しながら、1年間走り続けていくために、最初のイベントの後、毎月 1回、LIFE STORY AWARD の縮小版をやってきました。ただ、毎月同じことを繰り返せば、それもマンネリ化のもととなる。みんなへの伝え方を工夫したり、内容を変えたり、発表者を変えたりと、あの手この手で変化をつけてきました」

PDCAを回し改善していくことで、LIFE STORY AWARDの価値を維持し、高め続けています。

林 「社内で行われる取り組みは、すべて実験だと思っているんです。外部の人に共感してもらい、『まねしたい』と思ってもらえるくらいのものにしていきたい。まずは自分たちで、失敗しながらも、意味があるもの、価値があるものを世の中にアウトプットしていきたいんです」

LIFE STORY AWARDの継続は、CRAZYのビジョンの浸透を助ける取り組みです。しかし、それは社内だけでなく、世界中の人がみんな、自分の人生を祝える世の中であってほしいという想いをまずは自分たちから実現していく場でもあるのです。