全社員で新ビジョンを決めるーー葛藤とCRAZYの新たな決意

創業7年を前にして、株式会社CRAZYはビジョンを変えることに決めました。そのために代表・森山和彦が実行したのは、会社のビジョンではなく、全社員が個人の人生ビジョンを語ること。なぜなら、誰しもが一番心を込めて語れるのは、自分の人生のことだから……。

6年連れ添ったビジョンを手放すことに

▲代表の森山和彦

株式会社CRAZYは、2012年に「style for Earth」というビジョンのもとに創業。このビジョンは、代表の森山和彦が前職時代にふと浮かんだ、とある問いからはじまったものでした。

「 この仕事は何につながっているのか、われわれは一体どこに向かっているのか ……。」

森山 「地球環境も荒れて、世界中であらゆる社会問題が起こっているなかで、自分が本当にすべきことはなにか、半年くらい悩んでいました。
そんな時、ふとベッドサイドで『地球が喜ぶ仕事がしたい』という言葉が降りてきたんです。ものすごい衝撃的で、深い感動に包まれました」

地球規模で考えて生きていくライフスタイル。そうして森山は、このインスピレーションを「style for Earth」というビジョンに落とし込み、当時勤めていたコンサルティング会社を退職し、株式会社UNITED STYLE(現株式会社CRAZY)を創業しました。

森山の人生において、特別な意味合いをもつこのビジョン。6年間これを手綱に経営をしてきました。しかし、あるときの経営会議で、取締役を務める松田悠介が驚くべきことを森山に打ち明けたのです。

松田 「俺はビジョンがすごく大事なんだ。『style for Earth』にはもちろん共感しているけれど、正直いうと分かりづらい。自分の言葉で語れない。みんなもきっとそう思ってる。変えたほうがいいんじゃないか……」

森山はその時の想いを振り返ります。

森山「『なんのために』が明確な、熱狂できるビジョンの価値は分かってはいました。けれど、誰しもが語れることの重要さは、ぽっかりと抜けていたのです。
『なんでウェディングやってるの?』って聞かれたときに、うまく答えられない社員がちらほらいました。語れる解像度が社員によってさまざまだったのです。
『style for Earth』というのは、みんなが熱狂するにはちょっと遠すぎるビジョン。だからこそ、松田に言われたときは、納得感はありましたね」

しかし、6年間連れ添ったビジョンを簡単に手放せたわけではありませんでした……。

強烈に信じられなければ、意味がない

▲Co-visioning sessionの様子

これまで創業から6年連れそってきたビジョン。その変更に納得感はあったものの、切りかえることにすぐに踏み出せずにいました。

森山 「長く付き合っていた友達をすぐ切れっていわれても、もうちょっと一緒にいたいと思ってしまうような、そんな気持ちがずっとありました。
ビジョンを変えると会社は潰れてしまうこともあるんです。なぜなら、頭で考えた言葉に心はついていかないから……。ビジョンは結局かたちのないもの。本当に心の底から信じられるかって、頭じゃないんです、心の底からなんですよね。
ビジョンを変えるとは、信仰を変えること。たとえば、世界的な企業になるためには中国に進出したほうがいいとか、頭ではわかるけど、心では日本がいいって思ってたらだめなんですよ。
ビジョンは現時点では、実現していないし、今世の中にないものだからこそ、誰かが強烈に信じなければ、額縁に掲げられたものになってしまう。だからこそ、経営者である私がまずは強烈に信じられるかどうかが大事なんです」

そうして頭だけでなく、心の整理をつけながら、6年間を共にしたビジョンを変える決意が徐々に固まっていったのでした。

もともとビジョンコンサルティングをしていた森山は、ビジョンを変える方法はいくつか知っていました。そのなかでも、創業者が全部考えて、発表するやり方が最もシンプルで一般的。

しかし、今回ビジョンを変える目的は、“社員全員が語れるようになる”こと。そのためには、社員と一緒につくることが大切だと森山は考えました。

森山 「ワークショップをしてもしょうがないと思ったんです。だって、ビジョンのことを考えるのはワークショップのなか、その時だけですから。信じる気持ちは育ってはいません。じゃあどうしようかと考えて、まずはインスピレーションをもらうために、社員とご飯を食べながら話そうと思いました。
そこで、『あ、そうだ!』 と思ったわけです。みんなが最もインスピレーションが湧くのは、結局自分の人生。だからこそ、会社のビジョンじゃなくて、自分のビジョンを語ってもらおうと思いついたんです。
それではじめたのが『 Co-visioning Session』です」

ビジョンを共有した先にあったのは、懐かしい、つながりあう感覚

「CRAZYはどこへ向かうのか」ではなく、「自分はどう生きたいのか」。

どうせなら盛りあがる場所にしようと思い、中華料理の円卓、ホテルのラウンジ、高層階、社長の自宅を会場にして、約10名で全10回開催しました。森山はこれをはじめるにあたって、最初に注意点をいくつか伝えたといいます。

森山 「ビジョンって、世界を変えるとか壮大なものが浮かびやすいと思うんです。でも、ビジョンとはあなたの希望ですと。だから“好きな人のコンサートにいきたい”、とか“お母さんになりたい”というのもビジョンなんです。重要なのは、あなたが心の底からそれをほしいと思っていることなんだ、と伝えました」

ほかにも、話し終わったあとに、たとえ沈黙が生まれたとしても、その沈黙はあなたのビジョンを評価しているわけではないことや、ほかのメンバーではなく、森山に向けて話してほしいということを伝えました。なぜなら、みんなに話そうとすると緊張したり、プレゼンのようになってしまったりするから。

森山 「これが、本当にいい時間でした。うまく表現できないくらい、美しい時間だったんです。みんな人生でいちばん体重をのせて話せるテーマなので、生い立ちまで振り返って、泣いている人もいました」

“人を幸せにしたい“、“愛し愛されたい”、“人生が変わるような結婚式を届け続けたい”など、そこには社員の数だけ溢れる思いがありました。

森山 「終わった後に、私の感想を伝えました。あなたはこういう理由で入社してきたよね。こんなことがあったね。あなたのやりたいことはこういうことだよね。改めてあなたの人生を受け取ったよ、と……。それを全員やりました。
すると、次第にその場にインスピレーションがたまっていくんです。みんなが望んでいることがなんとなく見えてきて、お互いをすごく承認しあえたような、懐かしい、つながりあう感覚でした。
そうして、僕のなかに全社員の人生がはいったんです」

それからは、インスピレーションをまとめて言葉に落とす作業に移っていきました。森山が社員から感じたのは、“ひとの人生を大切に思うこと”が共通しているということでした。それを手がかりに、小さすぎず、大きすぎない、身近に感じられる言葉を探していきました。

そうして仕上がったのが、新ビジョン『 To celebrate your life the most in the world. ――世界で最も人生を祝う企業』でした。

社員の誰もが語れるビジョンを手綱に、決意を新たにしたCRAZY

森山は、6周年を迎えた全社会議で、自分の人生経験とつなぎあわせて新ビジョンを発表しました。多くの社員と気持ちが重なった空気が生まれたといいます。それを示すように、社員は口々に、新ビジョンと自身を重ね合わせた身の上話をはじめながら、時折、涙を流していました。

このビジョン刷新を経て、社員は自分の言葉で熱量をもってビジョンを語ることができるようになりました。

旧ビジョンに熱い想いを持っていたメンバーも「本音で語り合えたからこそ、スッキリしている」と話しています。

森山 「この言葉には、いろいろな意味合いが込められています。
『 To celebrate』とは、われわれの存在価値そのもの。何のためにいるかと聞かれたら、祝うため。そして『 the life』でもなく、『 your life』なんです。なにかを祝うのではなく、あなたの人生を祝うんです。この『あなた』はお客様だけでなく、社員のことも含んでいます。
また、『 most in the world』は、世界で最もお祝いをするという決意。
私たちは新郎新婦の話をしっかり聞いて、人生を理解したうえで結婚式をつくっているので、どのウェディング会社よりもそこには自信があります。ただ、量としてはこれからもっと多くの人に届けていくという決意が込められています。
私はビジョンを実現することを心の底から信じて、確信しています。そして、私たちが今日生きている毎日や、これからが、本当に楽しくてすごく幸せであることがすごく大事なのです。そういう日々を送り続けることが、お祝いをするということですから……」

森山そしてCRAZYの挑戦は、今また新たにはじまったところなのです。

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