50万円以上/人の教育費を投資。“日本一ヒトが育つベンチャー”を目指して

産労総合研究所の調査結果によれば、従業員ひとりあたりの年間教育研修費用の平均は44,892円。欧米企業と比較すると、約2分の1の金額となっています(2016年度データ)。

そうした中、従業員ひとりあたり50万円以上の投資を行っているのが、株式会社キュービック。今回、代表取締役の世一英仁が人材育成にかける思いを語ります。
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組織拡大のスピードに、育成が追いついていかなかった

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キュービックが創業したのは、2006年のこと。当初は、赤羽のマンションの一室でスタートしました。「ヒト・オリエンテッドなデジタルマーケティング」を軸に真にユーザーへ寄り添うことを重視し、ユーザーにもクライアントにも「目に見える価値」を提供し続けたい、と。その思いで、成功報酬型モデルの自社メディア事業を展開してきました。

おかげさまで少しずつ取引先も増え、創業7期目の2013年には年商10億円を突破。従業員数も30名ほどに増えました。会社を立ち上げたころは、中小企業として緩やかに事業を成長させていこうと思っていたのですが、数年の間で少しずつ事業の勝ち筋が見えてきて。このまま中小企業としてではなく、ベンチャー企業として勝負しよう、と。そのためには会社を大きくしていかなければならないと思い、採用に注力しはじめました。

採用にあたって、何より大事にしたのがカルチャーフィットするかどうか。もちろんスキルも大事ですが、会社自体がマンションの一室からスタートしたこともあり、自宅にあげたくない人は採用しない。同じ価値観、ミッションを共有できる人のみを徹底して採用しました。

結果的に30名だった組織が、数年の間で250名の組織に拡大。当初の目標であった“会社を大きくする”ということは達成できましたが、ここでひとつ大きな失敗をしてしまいました。

それは従業員の育成です。まだ組織の人数が少なかったころは、ひとりの上司に対して2〜3人の部下がつく、そんな体制でOJT(オン・ザ・ジョブ・トレーニング)を通して、従業員の育成が行えていました。しかし採用が進み、組織の人数が増えるにつれて育成が追いついていかなくなったのです。

当時の弊社には確立された育成システムやノウハウなどはまだ整っておらず……。また、マネージャー陣はプレイヤーとして10年以上の経験がある人たち。彼らは成果を出すために必要なことが体に染み付いているので、自分たちの姿を見てもらえれば、自然と成長していってくれるものだと思っていた。

一方、中途社員は決めた目標に向かって、早い段階で成果を出さなければいけないというプレッシャーもある。でも、成果の出し方が全く分からない。持っている力を全然発揮し切れずにもがいていました。

誰が悪いというわけではないのですが、気づけば会社内の雰囲気がどんどんと悪くなってしまっていたんです。その状況を知ったときに、このままではいけないな、と。採用に注力してきたからこそ、今度は育成に注力する。そう決めて、2017年から「全メンバーの出力最大化」をテーマに、キュービックで働く全従業員が個々に持つ力を最大限発揮できるよう、人材の育成を推し進めることにしました。


「クレド=クレジットカード?」まずは理念の浸透を第一に

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そして2017年4月頃から独自の従業員育成プログラム「CCC(キュービックキャリアカレッジ)」の立ち上げに着手しはじめました。これは3段階のプログラムに分けて、従業員を育成していくというものです。

まずは、仕事でハイパフォーマンスを発揮するための基本的なスタンスとなる「ビジネスOS(オペレーティングシステム)」を従業員にインストールする。次に企業理念の共有・浸透をはかっていき、最後にテクニカルスキルを教える。それをマネージャー、リーダー、メンバー、インターンという4つの階層に分けて、講義やワークショップを行っていくイメージでいます。

本当は、企業理念の共有・浸透を先にはかった方がいいのかなと思っていたんです。インターン生に「クレドって知ってる?」と聞いたら、「クレジットカードのことですか?」と言われたくらいだったので(笑)。本来、企業の競争力の源泉となる理念が社内に浸透しきっていないのはものすごくマズいと思っていたのですが、同時に、いきなり浸透させていくのは決して簡単なことではないと感じていました。

まずは、ビジネスOSをインストールさせていき、仕事に対するスタンスを変えていく。その状態で理念の共有・浸透をはかった方がスムーズだと思い、この形式を採用しました。

まだ走りはじめの段階ですが、ビジネスOSをインストールするプログラムではワークショップを通じて、ビジネスマインドを磨き込んでいこうと思っています。例えば、コミュニケーションをはかるときは自分の解釈をもとに語るのではなく、ファクトをもとに語る。

また、「WHY」ではなく「HOW」のコミュニケーションをはかる。なぜできなかったのかを聞くのではなく、どうしたらできるようになるのかを聞く、ということです。

他には、人によって曖昧なものに対する耐性が異なることを知るというものです。仕事を任せる際、「適当にやっておいて」「いい感じにしておいて」という依頼の仕方を、「自由にできるから楽しい」と取る人がいる一方、「もっと具体的な指示がないと困る」という人もいる。だからこそ、上司は部下の特性を知った上で、仕事を任せるようにしよう、と。ビジネスOSプログラムについては、このようなことを考えています。


妥協の表彰は絶対に行わない

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企業理念に関しては、いくつかのフェーズを用意し、共有・浸透をはかるようにしています。

最初のフェーズではワークショップを通じて、理念は単なる概念ではなく重要な戦略であるというメッセージを伝えています。理念が隅々まで染み渡っている状態が、キュービックの勝ち筋であることを体感してもらおうと。

その次のフェーズでは、会社の歴史をエピソード形式で伝えていくことで、中身そのものを知ってもらおうかな、と。どうやって企業理念やクレドが出来上がっていったのかが分かれば従業員の共感も得やすいと思うので。

表彰式も、企業理念やクレドの共有・浸透をはかる上で欠かせない取り組みのひとつです。半期に1度行っている総会での表彰式では、「クレド賞」を設けて、最もクレドを体現した従業員を表彰したり、企業理念やクレドが織り交ぜてある1,000文字ほどの表彰状をつくって読み上げたりして、企業理念やクレドへの理解を深める場としています。

だからこそ表彰式では、どれだけ成果をあげていたとしても、理念が体現できていない人を表彰することはありません。表彰人物を決める会議では、「これだけ実績を出したのに……」と時に揉めることもあるのですが、いつも「この行動は僕らが大事にしている理念に反しているよね」ということで表彰しません。

ここを妥協してしまうと、「理念に反している人物を目指してくれ」という会社からのメッセージにもなってしまう。やっぱり、一貫性が大事なんですよね。表彰ひとつとっても一貫性がなければ、結局何を大事にすべきなのか迷ってしまうので、妥協での表彰は絶対行わないようにしています。

こうしてビジネスOSのインストール、企業理念の共有・浸透がはかれたら、最後にテクニカルスキルを教えていき、今年中に全員が最大出力で仕事に取り組めるような環境にしていくつもりです。


自社株100%保有だからこそ、実現できる従業員育成

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金額に換算してみると、従業員ひとりあたり平均で50万円以上の教育研修費用をかけていることになります。一般企業が4〜5万円ほどなので、約10倍。普通に考えたら、「育成に投資しすぎ。もっと事業に投資しろ」と言われてもおかしくないと思います。

ただ、キュービックは自分が株式を100%所有し、経営している会社なので、短期的ではなく、長期的な視点に立って利益を追い求めていくことができるのです。

そのために、何よりも大切になるのが従業員の育成。だからこそ、平均の10倍以上もの費用をかけて育成を行います。育成・研修によって見える景色が変わりはじめると、インプットの質が変わり、行動が変わる。実際、少しずつですが自分からどんどん仕事を取りに来たり、発信する内容も変わって来たりと、ポジティブな変化を感じています。

これからは、“日本一ヒトが育つベンチャーをつくる” というビジョンを達成するために、とことん従業員の育成に力を注いでいきたいと思います。


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