デジタル広告の重要性を説き、クリエイティブプランナーの道を切り開く

D2C Rにクリエイティブプランナーが誕生したのは2018年4月。そちらをひとりでチームとして立ち上げたのは、当時ゲームクライアントの営業担当をしていた伊藤 大悟(いとうだいご)だ。

伊藤 「クリエイティブプランナーが必要だと思った理由は主にふたつです。運用コンサルと営業時代に感じた『クリエイティブのパワー』と、デジタル広告市場のトレンドです」

もともとは、広告運用コンサルタント、後に営業を担当していた伊藤。運用担当時代にクリエイティブのテキストを変えただけで広告の効果に大きな差が出た原体験から、クリエイティブの重要性に気づく。その後、営業に異動したときも、コンペや提案の決め手はいつもクリエイティブだった。クリエイティブのパワーを肌で感じた経験から、クリエイティブをD2C Rの武器にしたいと思い始める。

伊藤 「デジタル広告市場のトレンドというのは、広告配信における自動最適化機能がものすごい勢いで進化しているということです。昔は運用コンサルが多くの変数を手動でチューニングしていたのですが、昨今は手動で調整する変数がかなり減ってきています。効果改善に大きなインパクトを与える要素として、クリエイティブの重要性は今後ますます上がっていくと思っていました」

当時は誰でもクリエイティブがつくれる環境で、本質的な体験をユーザーに還元できているのか不安だった。

伊藤 「デジタルの広告代理店においてメディア・アドテク知識や運用の実行力、戦略設計など必要な機能は多々ありますが、ユーザーから見えるのはクリエイティブだけです。そのクリエイティブでサービスの良さが伝わるのか。心は動くのか。欲しいと思ってもらえるのか。そういうことをもっと突き詰めたいと思い、クリエイティブプランナーというポジションを立ち上げることにしたんです」

ただ、弊社の社内からの目は懐疑的で、「クリエイティブの専門職とはいえ、誰がつくっても変わらないんじゃない?」という空気がありました。

伊藤 「『クリエイティブを本気で考える人間』が制作することで、より効果が上がり、長期的に効果がキープされることを数値で証明していきました。小手先のA/Bテストは結果が安定しなかったですし、ユーザー体験としても豊かではないと思っていました。
なので、あえて行動経済学の本を読んだり、宣伝会議のコピーライター養成講座などを受講したりして、『広告とは本質的にどういうことなのか』『人を動かすとはどういうことなのか』という基礎を徹底的に学びました。この戦略がうまくはまり、ここで学んだことを『デジタル広告だったら?』という視点とうまく掛け合わせることで、結果を出し、みんなからも認めてもらうことができました」

ユーザーが求めることを言語化し、チームの表現力を上げていく

2020年現在のデジタル広告について、伊藤はこのような見解を持つ。

伊藤 「現在のデジタル広告、とくに“獲得目的”で配信されるものは、『おもしろい!』や、『そうきたか!』と思わせるクリエイティブが少ないことが残念だなあと思っています。背景は単純で、デジタル広告は枠の制限もなければ、課金形式もクリック課金(クリックされない限り費用が発生しない)なので、つくり手としては『とりあえずつくって、とりあえず配信してみよう』という思考になりがちです。
もちろん、質より量が必要になるケースもあるのですが、たいていの場合は雑な、あるいは考え尽くされていないクリエイティブが世に出てしまうのだな、と思っています」

デジタル広告はとにかくスピードが要求されるため、そのように小手先のバリエーションで凌ぐしかない、仕方のない状況も発生する。しかし「おもしろい情報だな」、「使ってみたいな」とユーザーに感じてもらうことが、広告の本来的な役割のはずで、それはデジタル広告であっても変わらない。

伊藤 「現在のデジタル広告市場はユーザーの『ワクワクする体験』を奪っているなと思います。
なので、弊社のクリエイティブプランナーチームでは、基本的なクリエイティブの考え方を鍛えていく取り組みをしています。たとえば、Twitter広告などで『いいな』と思う広告を集めて、どういう傾向があるのかを分析して、言語化する。それをチームメンバーに共有してブラッシュアップしていくといった取り組みです」

デジタル広告のクリエイティブの知見は世にあまり出ていない。だからこそ自社の中でクリエイティブの基礎を学び、それをデジタルに生かしていく。個人ではなく、チーム全体がレベルアップしていくようなしくみが必要となるといいます。

伊藤 「ユーザーにとっては、広告がサービスとの“初めての出会い”になるケースもあります。その体験が良くないと、二度とサービスを使わないという大変不幸なことが起こりうると思ってます。デジタルの広告は何人がクリックしたか、購入してくれたか、そういうことは計測できますが、広告をクリックしなかった人がどういう気持ちになったかは計測できません。だからこそ、この広告をユーザーがどう捉え、見た後にどう感じるかは大事にしたいです」

普段からも自分の心が動いたときに「それはなぜそう動いたのか?」を言語化する癖付けを意識している伊藤。

伊藤「デジタルの広告はいろんな数字やデータが見えますし、それは非常に重要なんですが、それ以外を見なくてもいい、ということにはなりません。数字や成果にはコミットしつつも、ユーザーの体験をより豊かにすることを忘れないことが、デジタル広告のあるべき姿だと思っています」

徹底的な情報収集からアウトプットを繰り返し、伝えることを武器とする。

クリエイティブプランナチームが立ち上がり、約半年後にJoinした小嶋 一穂(こじま いちほ)。現在のデジタル広告がどうあるべきかわからないと語る一方で、「誠実さ」を大切にしていきたいと言う。

小嶋 「昔はリスティングだったり、限られたWebサイトでしか広告は配信されていなかったのですが、今はサイト・SNS・アプリ内などいたるところで目にします。現代の若者はとくにそうですが、ユーザーのリテラシーは勝手に上がり、ひとつの商品の購入に対してさまざまな情報から吟味して必要なものを選ぶ傾向にあります」

だからこそ「獲得」することの難易度は上がっていく。そこを突破する上でも「誠実な情報」、ユーザーが求める気になる情報をアウトプットしていくことが重要だ。

小嶋 「何をユーザーが良しとするのかは徹底的に見るようにしています。ただそれはどの会社でもできるため、新しい視点が大事で、現在のチームの取り組みが役立っています。チームメンバーはいろんな業界から来ているので、メンバーの意見やその業界で働いてきた視点をもらうことで、他にはない提案ができているのかなとは思っています」

小嶋は前職で不動産、教育業界をメインに担当していたため、他業種の知識はヒアリングを通して収集することを徹底する。とくにゲーム会社出身の人から知見をもらうことは多くある。

また、話すことや情報をまとめることが苦手だったが、チームの取り組みがそこの弱点を解消してくれたという。

小嶋 「アウトプットはとても鍛えられていると感じています。『どの要素が効果的だったのか明確にして、チーム内にわかりやすく伝えることを常に意識していきました」

クライアントへの提案にも大きな変化があった。

小嶋 「長寿ゲームアプリのお客さんに今までのクリエイティブ内容とは違った提案をした際、あまり配信に前向きではなかったんです。そこで、私はSNSのユーザーの声2、3年分ほどを集めて、どれだけユーザーにとって親和性があるのかを熱量込めて提案しました。
結果として、そのクリエイティブを見たユーザーから『この広告を見てから○○を始めました』といった反応も見られたので、お客さんにとっても新たな価値を提供できたのではないかと、自身の成長と合わせて感じることができましたね」

クリエイティブでファンをつくる──クライアントの圧倒的パートナーへ

今後、さらにチームでの取り組みを活性化させていきます。

小嶋 「今後は今よりも活発に意見交換などしていきたいです。ユーザーも多様化しているので、メンバーのさまざまな視点はそのままクリエイティブを考える上での財産になると考えているので。もっとメンバーの意見を聞いていきたいと思います」
伊藤 「メンバーからの提案で、直近で知見を蓄積・活用できるサービスをチームで導入しました。クリエイティブの考え方や事例、監修の通し方など、クリエイティブに関するあらゆる知見をまずはチームで共有し、自由に活用できるしくみが必要だと思ったからです。良いクリエイティブをつくるためには、とにかく考えること、お互いがフィードバックし高め合う意識を持つこと。しくみを通じて、そうした文化を持つチームをつくっていきたいと思っています」

デジタルの領域を超え、クリエイティブを起点に戦略設計から関わっていくチームを目指します。

小嶋 「クリエイティブでできることはデジタル問わずなんでもやりたいです。オフラインの広告は実物として残るものなので、クリエイティブの質は高くないとダメだと思っています。お客さんも紙媒体の方がこだわりがすごく強くて、いつも以上に行間やフォントまで気にしなければなりません。修正もデジタル広告のようにすぐできないことも多いので、よりデザインの知識もつけていかなければならないなと思います」
伊藤 「バナーや動画単体の“クリエイティブ”をつくったり、その効果改善を考えたりするだけではなく、長期的にはさらに上流のコミュニケーションプランニングができるチームを目指したいです。
5Gの時代になるとクリエイティブの体験もますますリッチになり、考えることは増えると思いますが、“広告でユーザーの心を動かし、行動させる”という広告の本質的な役割は変わらないと思っているので。ユーザーの体験をより豊かにするような戦略設計をつくれたり、デジタル広告以外のプロモーション領域でも戦えたりするようなチームにしていきたいです」

まずはデジタル広告におけるコミュニケーションデザインから変えていきたいとふたりはいう。彼らは、クリエイティブの可能性はもっと広く、大きなものだと見据えているのだ。クリエイティブを考え、つくることを通じ、ユーザーはもちろん、クライアントや社内の人間もあらためてコンテンツの良さを再発見することや、ファンになってくれる可能性もある。そのようなスタンスで仕事をしていく決意を持っているのである。

クリエイティブをきっかけに、コンテンツやサービスを取り巻くすべての人がファンになる。D2C Rのクリエイティブプランナーが、デジタル広告市場の“スタンダード”、“クリエイティブのあり方”を変えていきます。