マルコメ味噌と若者との関係を育んだ、新しい“コミュニケーション”のカタチ

近年、日本の伝統食である味噌の消費量が減少。なかでも若者の味噌離れが顕著だといわれています。そこで創業160年を誇るマルコメは、味噌と若者の接点作りをはじめました。コミュニケーションを担うのは、電通のクリエイター・佐藤雄介とそのチーム。30代の彼らは、どのように味噌と若者の距離を縮めたのでしょうか?
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「やってみたい」からはじまった、味噌と若者の新しい接点作り

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味噌製造の老舗であるマルコメ株式会社とのプロジェクトは、日本食に欠かせない味噌の消費量が減少している一因である若者の味噌離れを解消すべく立ち上がりました。このプロジェクトは若者と味噌のコラボレーション企画として、第1弾は“ロック”、第2弾は“カワイイ”とコラボした即席味噌汁を発売。

このプロジェクトの企画を担ったのは、株式会社電通の30代を中心としたメンバーが集うクリエイティブチーム。メンバーのひとりである佐藤は、当時、ロックバンド「味噌汁’s(みそしるず)」のプランナーとしてコミュニケーションデザインを担当していました。

佐藤「最初はロックバンド味噌汁’sの発信として、彼らが実際に味噌汁を作ったら面白いんじゃないか?というアイデアからはじまったんです。そこで業界第1位のマルコメさんに「一緒にやりませんか?」とアプローチするべく企画を考えました。そうしたら、マルコメさん自身もちょうど若者との接点作りに注目していた時期だったんです」
ロックバンド味噌汁'sとのタイアップ商品というだけでも、ファンは確実に盛り上がります。しかし、若者の誰もが興味を持つ方法で届けることが大事だと考えつきました。そこでよりポピュラーな概念である“ロック”と味噌汁をコラボさせて、「ロックを聴かせた味噌汁」を販売、バンド味噌汁'sともコラボレーションできる企画がスタートします。

佐藤「今回の企画は、味噌にロックを流すという工場の管理体制などの課題もありましたが、マルコメさんの懐の深さによって実現することができました」
この企画の根底にある“味噌にロックを聴かせる”ということは、決して簡単なことではありません。食品を扱う工場に機材を持ち込むことは、食品衛生上の観点から「企画が面白いから」だけでクリアにできるわけではないのです。

念には念を重ね、絶対に“安心安全”といえる環境を整えていく……。そこには、マルコメの皆様の柔軟な協力体制と、「味噌と若者の新しい接点を作りたい」という共通の想いがありました。

プロモーションではなく、コミュニケーションが強固なファンを生む

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2014年9月、こうして第1弾のプロジェクトが動きはじめます。その主な舞台は、ソーシャルメディア。刹那的ではなく、じっくりと、でも着実に若者と関係構築していくために、佐藤は「扉」と「小さな山」を多く用意することを心掛けたといいます。

佐藤「コミュニケーションのプロである僕らであっても、何が若者の心に響くのかを把握することはとても難しいんです。だから、いくつもの『扉』を用意して、どこからでも入ってこれる、接点を作れるようにする。そして断続的に情報発信をして『小さな山』を繰り返す。このプロジェクトはそのような細かな“タスク”の積み重ねなんです」
バンドのデビューイベントで味噌汁を配布したり、ロックフェスに出展して使う味噌の種類を投票で決めたりと、普段マルコメがいない場所で、若者と味噌の接点を作っていきました。さらにソーシャルメディアでの拡散を狙い、味噌汁’sバンドが工場でロックを演奏し味噌に聴かせるという動画を制作。「ロックを聴かせた味噌汁」の開発〜販売までのストーリーを若者に届けて、“すぐそばにいるブランド”になることを目指しました。

このプロジェクトの目的は、商品のプロモーションではなく、若者とのコミュニケーション。商品の発売日までじっくり時間をかけて若者との接点を作ることに重点を置き、コアなバンドファンから、音楽に興味のない若者たちへと徐々にコミュニケーションの対象を広げていきました。

そして「ロックを聴かせた味噌汁」発売時には、最初にバンドファンとのコミュニケーションからはじめたことが功を奏し、SNSなどでポジティブなコメントが多く投稿され、プロジェクトを加速させてくれたのです。これこそが、佐藤が狙っていたことでした。

佐藤「とはいえホッとしたというのが正直なところです。こういったタイアップものでは、少なからずネガティブなコメントが生まれるものなのですが、今回に限ってはまるでなかった。ファンの方とのコミュニケーションを大切にすることで、彼らは味噌汁‘sに関わっているブランドをも好きになってくれる。ちゃんとコミュニケーションしていれば、ファンは裏切らないということがわかりました」
発売開始日には、味噌汁‘sとコラボした期間限定カフェ「ロックな味噌カフェ」を原宿の竹下通りにオープン。商品を無料配布し、バンドファンのみならず竹下通りを道行く多くの若者と接することができました。

「30代チーム」だからできた、時代に最適化したプロジェクトの在り方

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このプロジェクトを動かしていたのは、株式会社電通の30代メンバー5名からなる小さなチーム。通常より少人数で回していることもあり、プランニングやディレクションだけではなく、現場のプレイヤーとしても緻密な計算を重ね、全員で手を動かしていました。

佐藤「限られた予算内でTV-CMは打たずとも、ゴールとしてTVに取り上げられるための企画を練ることはかなり意識していました。僕らより若手のほうがソーシャルメディアの世界は得意かもしれませんが、一方でマスメディアを利用する力は、僕らの方が鍛えられている。企画の実現性を見極める力や、リスクに備える実務上の経験値がある僕ら世代ならではのプロジェクトだったのかなと思っています」
反応がすぐにわかることも、ソーシャルメディアを舞台にしていることの醍醐味。しかし、その反応によって、リアルタイムで“打ち手”を変えていく手法は想像以上に工数が多く大変なことです。1年にも及ぶ長い期間、TV-CMを制作するときと同等の労力を費やして、クオリティを担保していきました。

このような努力が実り、第1弾のプロジェクトは無事成功。若者にも味噌が受け入れられ、マルコメ社内でも好評となりました。そして当初より「継続性」のあるプロジェクトにしたいと企画を思い浮かべていたマルコメと佐藤は、早速第2弾の企画に取り掛かります。

それは、若い女性をターゲットにしたコミュニケーション。ロックと同様、ポピュラーかつ普遍的な概念である「カワイイ」をテーマに設定しました。世界4都市から2023個の“カワイイ声”を収集。味噌にロックを聴かせるのではなく、「カワイイ」と呼びかけることで、味噌汁そのものを可愛く熟成させていきました。

そして2016年2月、カワイイカルチャーをグローバルに発信するタレント事務所アソビシステムと手を組んで「カワイイ味噌汁(原宿味)」を発売。また、青文字系の雑誌mer(メル) とコラボして「初代マルコメちゃんオーディション」も開催し、話題を呼びました。

佐藤「プロジェクトを重ねるごとに、マルコメの方々とも関係構築ができていることを実感しています。実はすでに、第3弾に向けた企画も考えているところなんです」
本質的な取り組みだからこそ、プロジェクトは第2弾、第3弾と継続していく……。佐藤とチームメンバーはその喜びを、そして苦労も、2年以上の時間を通して、肌身で感じてきたのです。

プロジェクトの成功が生んだ、未来の味噌文化を担う若者たち

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このプロジェクトをきっかけに、マルコメの採用サイトに訪問する若者が増加。さらに第1弾・第2弾のプロジェクトでマルコメ味噌と触れ合った若者が興味を持ち、なんとマルコメへ入社をすることを決めたというのです。味噌と若者の新しい関係構築——。それが少しずつ、形になって現れてきています。

さらにその効果は社外だけでなく、マルコメ社内にも変化を及ぼしています。若手社員が中心となり、新しい味噌汁の開発プロジェクトが発足しているそうです。

佐藤「もともとマルコメさんは、とても良い会社なんです。ただ若者がそれを知る機会がなかっただけ。工場撮影のときも休日にもかかわらず、皆さんとても協力的で、楽しみながら撮影に協力してくれたことが印象に残っています」
そして佐藤自身も、このプロジェクトを通じて確信したことがあるといいます。

佐藤「僕らの仕事は、理想を実現すること。そのためには、自分が『面白い』『あったらいいな』と思えるものを生み出していくことが重要です。なぜなら、今の世の中は、なにが当たるのか本当にわかりません。だからこそ、自分自身やチームがやりたいことをやりきらないと、何も生まれないと思うんです」
常に緻密な計算をして、手も頭も動かす。他人と違うものを作ることに、こだわり続ける。

他の表現物では出来ない“何か"を考えていく……。

今回の事例のように、新しい接点を探したいときには、まだ世の中に存在しない新しい接点を作っていくことで、企業と社会の関係性は変わっていくのかもしれません。

その新しい接点を、私たちは探すのではなく、作り続けたいと考えています。

※ 対談verはウェブ電通報をご覧ください。

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