ハイパー“好きこそものの上手なれ”集団ーー個人の特技を集めた新しいチームの物語

私的活動や凄い趣味、大学の研究など個々の社員が持つ独自の特技。これを結集して本業に活かすと、どんな奇跡が起こるのか? そんな思いつきから生まれたのが、"オルタナティブアプローチ"を提供する「電通Bチーム(旧電通総研Bチーム)」です。従来とは違うアプローチがどんな成果につながったのか、Bチームの3年間を紹介します。
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良質な情報が飛び交う、40人の"好きこそものの上手なれ"集団

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▲電通Bチームのリーダー・倉成英俊

「ハイパー"好きこそものの上手なれ"集団」リーダーの倉成英俊は、電通Bチームをそんな組織に喩えます。2014年7月に倉成を中心とした8人ではじまり、2017年現在では40人以上のメンバーが在籍するチームになりました。

私たちの役割は、いままでとは違うアプローチで世の中やクライアント企業、そして電通社内に向けて「新しい価値観」を提供することです。自らオリジナルのコンセプトを打ち出して提唱したり、社外から寄せられたプロジェクトに一緒に取り組んだり。周囲をインスパイアすることで、イノベーションに貢献することを目指しています。

そんなBチームに集結しているのは、世界的なDJや建築家、小説家や社会学者など、本業以外で独自の特技を持つ個性的なメンバーたち。各自の専門知識をチームで横断的に繋ぎ合わせることで、自分たちにしかできないオルタナティブアプローチにこだわってきました。

倉成 「大学のテストを乗り切る際に、できる人からノートを借りるのと同じですね。Bチームは40以上のノートが常々集まっているようなチーム。それも授業では扱っていないような情報まで書かれている。『それって教科書には載ってないじゃん』という内容が飛び交っているんです」

インターネットで検索するだけではわからない深い情報が、さまざまな領域から寄せられ、交わることによって、わずか3年の間に思いがけないアイデアが次々と生まれていきました。

今でこそ事例も増えてきたBチームですが、もともとは閉塞感が漂う日本に憤りを感じ「いまのやり方ではいけない!」と倉成が2014年7月に動き出したのがはじまりです。それも実は「電通総研で新しいチームを作り、2年で成果を出して欲しい」という上司のある意味 "無茶振り"がきっかけでした。 

個人の特技が交われば、明日から独自のシンクタンクだって作れる

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倉成 「普通にやっていたら2年でシンクタンクを作って成果を出すことなんて無理なんです。まずメンバーを集めるのに半年から1年ほどかかる。そこからリサーチで半年、筋のいい仮説を見つけて発信するまでで2年が経過してしまいます。だから2年でやるかわりに、方法は問わず、自由にやらせてほしいという条件を提示しました。」

当時、倉成の頭の中には、この無茶振りに応える秘策がありました。それが電通社内に眠っている「埋蔵資金」を活用すること。つまり本業以外に各メンバーが持つ特技である「B面」を、本業で最大限活かすという方法です。

倉成 「電通には行き過ぎた趣味を持つ社員がたくさんいます。たとえば、私が入社した時には過去に芥川賞や直木賞をとった文豪が在職していました。世界的に知られるケン・イシイさんや、カメラマンの荒木経惟さんなども、電通で働きながら作家として活動されていました。そういう特殊能力を持った人が、今も数え切れないほどいます。」

各自が全力で取り組む私的活動の領域については、わざわざリサーチをしなくてもすでに情報を持っていて、さらに人脈だってあるはず。それをチームで集めればリサーチ時間がゼロでも明日からシンクタンクを作れてしまうのではないか。これが「電通総研Bチーム」のコンセプトが生まれた瞬間でした。

また直接的なきっかけこそ上司の無茶振りではありましたが、当時から倉成は既存のアプローチの課題を感じていました。

広告業界では多くのケースでクライアント企業から依頼を受けてプロジェクトがスタートします。その際、得意な人が得意なジャンルの企業や商品を担当するわけではないため、初期段階のリサーチに膨大な時間がかかってしまいます。

さらに、あらゆる産業で新しいアイデアやイノベーションが求められているにも関わらず、その種となる情報はネットに頼ってしまいがち。アイデアのもととなる情報が似通ってしまえば、出てくるアイデアも似たものばかりになってしまいます。新しいアイデアを生み出すためには検索してもでてこない一次情報が大事な要素のひとつとなると考えていました。

加えて「大企業の課題」も感じていました。大企業になればなるほど社員一人ひとりの顔や個性が見えづらく、そのポテンシャルを活かせていないのではないか。私的な活動を本業と組み合わせるコトで、顔や個性が見える、血の通った仕事になるはずだと考えたのです。

超短時間リサーチ、超時短チームビルディング、超時短プランニング

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▲「アイディアに出会う夜」

最初に集まったのは、倉安を含めて8人のメンバー。全員が電通総研に所属していて何かしらの特技をもつ面々でした。そのうちに名前をつけることになって、決まったのが電通総研「B」チームです。

なぜ「B」なのか。本業であるA面以外の活動であるB面を持つ社員を集めたチームだから。planBやβ版など新しいことはいつもBから起きるから。いろいろな意味合いがありますが、「常にヒットを狙うAチームのようなありふれたアプローチではなく、別のやり方から『新しい価値』を生み出したい」という想いからでした。

その新しい価値の土台となっているのが、毎月1回メンバーが持ち寄る専門領域の情報です。

「Bチームのポテンシャル採集」と名付けられた会で、evernoteに仲間をインスパイアするような情報をアップし、2時間の定例会で共有。現在2000を超える情報が蓄積されています。

倉成 「『組織的、計画的雑談』と呼んでいます。私たちが大事にしていることのひとつがアンチビジネスライク。個人のパーソナリティが生きてこそ新しいものが生まれるし、能率もあがると思うんです。だからこそ、形式ばらないゆるさも大切にしています」

メンバーの稼働は最小で、月に一度evernoteに情報をアップする時間と定例会を合わせた3時間。通常であれば膨大な時間が必要な「リサーチ」という作業がいらないため、3時間だけでもチームに貢献できるのです。

Bチームでは、自分たちで集めた情報をコンセプト化して提唱するだけではありません。企業や行政、スタートアップやNPOなどの方々から依頼を受けて、新しいアイデアを生み出すサポートもしています。そんな時も異なるB面を持ったメンバーを即座に組み合わせてチーム化すれば、短時間でも独特の化学反応が生まれます。

倉成 「新しいアイデアをつくるためのプロセスや、つくりかた自体をつくっているから効率が良いんです。たとえば『10ジャンル同時ブレスト」というやり方。  

40人のメンバーリストをお見せして『ここから10人を選んでください』とお伝えします。解決したい課題と相性が良さそうなジャンルのリサーチャーを10人集めて3時間ブレストをすれば、音楽や食、建築、教育、AIなど一気に10個の切り口からアイデアがうまれます。
小説家のメンバーがファシリテーションをして、現場の社員さんに新商品のアイデアを400字のSF小説にまとめてもらう『ショートショート発想法」というアプローチもあります。
未来予測レポートから未来を発想するのではなく、ひとりひとりが持つ想像力から未来を描き出す手法です。ポストイットを使わずに原稿用紙を使って。これは小説家がメンバーの一員であるBチームだからこそできるやり方だと思っています。
そんな独自手法を常に開発していて、与えられたお題や条件に対して適切なものをサービスのひとつとして提供しています。」

「興味第一、好奇心ファースト」各自の特技が集まり、新しい価値へ

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2017年現在、電通総研Bチームが立ち上がってから、約3年が経ちました。

自分たちが良いと思ったアイデアを集めて提唱していくところからはじめて、社内への情報提供件数は350件以上。発表したオリジナルのプロセスやツールは30個に達し、手がけたプロジェクトも60以上あります。

Bチームに所属するDJとメディアアーティストが、中小企業や町工場の音と動きに目をつけて、町工場の機械音を活用して音楽やPVを作るプロジェクト、INDUSTRIAL JP / 工場音楽レーベルを実施。最終的にはADCグランプリなど、15個の賞を受賞するほどに注目を集めました。

倉成 「ものづくりの技術力のある町工場もプロデュースが苦手だったりする。いいものを作っているのにうまく発信できないという課題を解決するプロジェクトになりました。私たちは何か新しいことをはじめる際の独自の処方箋を30個くらい持っているので、『これを使って何か一緒に新しいことをやりませんか』と独自プロジェクトにも取り組んでいます」

新しいアイデアを生み出すために模索している人たちはたくさんいます。しかし余裕がなくて既存の教科書に頼るしかなく、同じアプローチから抜け出せない。そんな問題を抱えている人が多いのも事実です。

倉成 「自分の個性が生きて、世の中が面白くなることに貢献できればベストだと思うんです。Bチームのスローガンにもあるように、興味第一、好奇心ファーストで『好きこそものの上手なれ』が最高の戦略なのではないかなと。それはスタッフにとっても、一緒に仕事をする方々にとっても、世の中にとってもそうだと思っています」

もともとは上司からの無茶振りを受けたところからはじまった電通総研Bチーム。当初思い描いていた以上の成果がでている反面、やりたいことも増える一方。

倉成 「誰かの特技から何かを生み出せたら、それが日本に違う流れを生む一端を担えたらすごくハッピーですよね。そういうチャレンジができる、かなりレアな立場にいると思うので、そのチャンスを最大限生かしていきたいです」

個人のB面を生かして、いままで世の中にないアプローチから新しい価値を生み出したい。電通Bチームの挑戦は、まだまだはじまったばかりです。

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