オープンイノベーションで次世代事業を創出する──事業開発プラットフォームの魅力 

ブロックチェーン、AI、VR/AR、セキュリティ、バイオヘルス。DG Labは、この5分野のR&Dと事業開発を進めています。2019年4月24日に開催した「DG Lab Meetup #1」では、各分野のメンバーがパートナー企業や国内外の投資先企業と連携しながら新規事業を創る魅力について語りました。
  • eight

「テクノロジーの追求」と「ビジネスとしての価値創出」を両立させる

69247089036e6c5dcb08358dc12a46d472c641ba
▲写真左から橋本 遥(BioHealth プロジェクトリーダー)、金森 岳史(DG Lab Fund プリンシパル)、渡邉 太郎(Blockchain CTO)、田 智秀(AI CTO)、新田 慧(VR/AR リサーチャー)、豊原 稔(BioHealth エグゼクティブマネージャー)

DG Labは、デジタルガレージ、カカクコム、クレディセゾン、KDDIの4社が新たな事業を生み出すべく立ち上げた研究開発組織です。ブロックチェーン、AI、VR/AR、セキュリティ、バイオヘルスの5つを重点分野としています。

2016年7月の設立以来、さまざまな業界の企業がオープンイノベーション型で参画して、新規事業を創出すべくR&Dと事業開発に取り組んできました。

この取り組みの一貫として、DG Labは新規事業開発やR&D、CVCなどの業務に携わる人たちに向けて「DG Lab Meetup #1」を開催。DG Labのメンバーは、何を目指して働いているのか、そして最先端の技術を取り込みながらビジネスを生み出すには何が必要なのかが語られました。

最初に登壇したのは、AIチームでCTOを務める田智秀。アメリカを中心に海外のスタートアップに参画するなど、テクノロジーとビジネスの両面に関わってきました。彼は、AI技術を用いて人々の健康に貢献するプロジェクトについて説明します。

田 「やはり AIは、データがとにかく大事。そのデータを “ビジネスとどう関連づけていくのか ”という視点は、とくに大切にしているところです。
そうした中で、われわれは食事画像を解析し、栄養素とバランスを自動算出するモデルを構築しました。ここで活用しているのがディープラーニングです。画像から主菜や副菜などのバランスを解析しながら、カロリー量などの情報を得ることができます。
この技術は、健康状態や飲食店のレコメンド、睡眠データとの連携といったおもしろいユースケースにもつながっていくのではないかと考えています」

次に登壇したのが、ブロックチェーンを担当する渡邉太郎。ブロックチェーンは、その改ざん耐性の強さから、ビットコインなどの仮想通貨だけでなく、不動産や貿易といった分野での応用も期待されています。しかし彼は、そうした現状に警鐘を鳴らします。

渡邉 「昨今さまざまな分野で実証実験が行われていますが、われわれはブロックチェーンの技術は “万能ではない ”と考えています。
ブロックチェーンでもっとも大事なのは、“セキュリティ ”と “スケーラビリティ ”。これらを両立して初めて、ブロックチェーンを使う価値が生まれると私は考えます。
逆に言えば、セキュリティとスケーラビリティの両立ができていない、あるいは従来のシステムの方が機能面やコスト面、運用面で優れているのであれば、ブロックチェーンを適用する意味はありません。私はこのことを議論の前提として、これからのブロックチェーンの活用を考えたいと思っています」

ビジョンを描くだけではなく、“実行”するからこそ未来に還元できる

Bfce3408cf04e252dfebb915c82d038389914256

3人目の登壇者は、VR/ARリサーチャーの新田慧です。彼は東京大学大学院の学際情報学府、ソニーのR&D部門を経てDG Labに参画。DG Labでは、音のコンテンツを場所にひも付けた「音のAR」のシステム構築を手掛けました。

新田 「われわれは、VRや ARを『人間と計算機の相互作用をデザインするもの』と考えています。たとえば人間の動きや自然界に存在する光や音、加速度を検出して、それぞれにどんな意味があるのかを解析します。その解析した情報を生成して、モニターやスピーカー、アクチュエーターに反映させて人間に届けるのです。
私は、VR/ ARに関わるエンジニアとして、計算機の振る舞いに関する叙述を豊かにしていきたい。
計算機の叙述が豊かになれば、人間が自分の意思を認識し表現するための手助けとなれるはずです。そのために私たちは、人間の感情と実際の叙述のギャップを埋めるべく日夜研究に励んでいます」

バイオヘルスの分野でステージに立ったのは、プロジェクトリーダーの橋本遥。彼女は酵母の遺伝子組み換えなどの研究経験に加え、SNSやヘルスケアアプリの開発といったビジネスサイドの経験も積んできました。

橋本 「現在手掛けているプロジェクトのひとつが、『パーソナルヘルスレコード』。これは先ほど AIチームの田から紹介があった食事画像解析を活用し、レポートをユーザーに送付することで健康促進に生かすことを意図しています。そのほかにも、バイオヘルスの分野での起業家を支援するアクセラレータープログラム『 Open Network Lab BioHealth』の運営なども行っています。

さまざまなプロジェクトを進める中で私たちが考えているのは、バイオヘルスに携わるのであれば、『ビジョナリーかつ実行者でなければいけない』ということ。なぜならバイオヘルスは波及する分野が広い上、生活とは切り離せないものだからです。だからこそ、いろいろな可能性を描けるし、その描いたものを実行することによって社会や人の生活に還元していくことができるんです」

最後に登壇したのが、DG Labと連携してスタートアップへの投資を行う「DG Labファンド」でプリンシパルを務める金森岳史です。DG Labファンドは、5分野の有力スタートアップへ投資をする目的で組成され、これまでに国内外約30社のスタートアップに出資しています。

金森 「 DG Lab内部だけでなく、国内外の大企業やベンチャーも巻き込んで、みんなでオープンイノベーションに取り組む。この動きを加速するために何が必要かと考えたときに、ファンドという機能がとても有効だと考えています。
DG Labファンドは、たとえばエッジコンピューティングの分野において優れた技術を持つ Ideinや、ブランド品の真偽を見分けるアプリを提供する Entrupyといった企業に投資をしています。このような先進的なベンチャーに出資し、技術を育て、さらにはその技術を DG Labで活用して新たな産業を生み出していきたいですね」

知識、資金、人脈──リソースをオープン化し、事業創造を加速

588340554746efdb9944583e5d2c3b7d0880a973

「DG Lab Meetup #1」の後半は、前半に登壇した5名に、モデレーターでバイオヘルス分野のエグゼクティブマネージャー・豊原稔を加えてパネルディスカッションが行われました。最初のテーマは、「日本企業のR&D、事業開発組織とDG Labの違い」です。

新田 「以前、大企業の R& Dに携わっていた頃に感じていたことですが、大企業にいると『他社との差異化』を強く求められます。ただ、差異化を意識するあまり、全部を自前でつくろうとして、プロジェクトの完成までに時間がかかる問題が起きていました。DG Labの場合、フレームワークをつくっておいて、そこに参画する人をオープンに募るスタイルなので、非常にクイックですよね」
豊原 「事業会社では内製化して自分たちで知財を囲い込んでいく傾向があると思いますが、DG Labでは知財をむしろオープンにしていく姿勢があります。協賛企業には、『ぜひ私たちの技術を使ってください』というスタンスですね」

ノウハウを所有するのではなく、“オープン”にしていく──。オープンイノベーションだからこその利点があると、橋本は言います。

橋本 「オープンイノベーションはディスカッションパートナーを見つけられる点が大きなメリットです。DG Labも、社内のメンバーだけでなく、コアパートナーとなる企業の方々と議論をして、一緒に悩める点が醍醐味ですよね」

一方、渡邉は “ゴールの共有”という視点から違いを語ります。

渡邉 「大きな組織だと、『研究に専念する』という場合が多いのではないでしょうか。しかし DG Labの場合は、私たち研究開発チームのすぐ隣で BizDevチームが『技術をビジネスにどう活用するか』を考えながら動いています。距離が近いからこそ、お互いのことを意識しながら同じゴールを共有することができます。研究開発と事業開発をバランス良く推進できる点が特徴ですね」

パネルディスカッションのふたつ目のテーマは、「起業ではなく、DG Labでの挑戦を選んだ理由」について。このテーマについては、過去に起業経験を持つ田から意見が出ました。

田 「私の起業経験を踏まえて考えると、DG Labは大企業ならではのリソースを活用できる点にメリットがありますよね。スタートアップのマインドを持ちながら、大企業のネットワークや技術、資金を活用することができる。ここは非常にやりやすいと感じています」

一方、DG Labファンドを担当する金森は、DG Labが事業創造とファンドを両輪で動かしていることのメリットについて話します。

金森 「ファンドを持つことによって、成長のための資金を必要とするベンチャーへリーチしやすくなります。そして、世界中のベンチャーに投資をすることで、DG Labとの関係はさらに強化され、技術情報もスムーズに共有される。ひいては事業創造を加速させる効果が期待できます」

「オープンイノベーションプラットフォーム」として見据える未来

Fcc0d6774d5689a3900f51868ae7a249e4427f0b

「DG Lab Meetup #1」では、最後に各担当者から、それぞれの分野において見据える未来について語られました。

田 「技術革新が進めば、人間の脳に近い AIエンジンがつくられることも考えられます。また、人が予測もできないことに対して、先回りして対応できるような AIが生まれるかもしれません。いずれにせよ、AIは私たちにとって、ますます当たり前のものになっていくでしょう」
渡邉 「現状、ブロックチェーンを活用した技術で、セキュリティの要件を満たしているのはビットコインのみという状況です。ただ、セキュリティの技術を発展させていくことで、ブロックチェーンの適用範囲を広げる余地は十分考えられます」
新田 「 VR、あるいは ARに関してはエンタメの分野で主に注目されている現状がありますよね。でも、人間の認知機能を拡張する手段として、PTSDの治療や、痛みの軽減といった医療分野にも応用される可能性を私は感じています」
橋本 「医療問題だけでなく、食糧問題やアートなど、世界にはすでにバイオヘルスを応用したユニークなプロジェクトが次々と誕生しています。だからこそ、私たちも『バイオテクノロジーの未来をつくる』という意識を持って、自らが信じる価値を提供したいと思っています」

DG Labが目指す姿は、「次世代へ続くビジネスのオープンイノベーションプラットフォーム」。今後も、新たな事業の柱となるサービスやプロダクトを生み出すべく、国内外の企業と連携し、オープンイノベーションを推進します。

関連ストーリー

注目ストーリー