興味と憧れから日本へ。ドトールコーヒーで“好き”を仕事にする

ひとが働く背景には、語られて初めて見えてくるストーリーがあります。

あえて日本を、そして日本の企業を選んだ外国人スタッフであれば、なおさら豊かなストーリーが広がっているといっても過言ではありません。

沈 「私は2003年に家族と来日し、中学から高校、大学、新卒の就職も日本です。ただ、自分の祖国である中国を知りたいという想いから、一度帰国し約5年間商社と金融機関で働いていた時期もありました」

そう語る沈 驥宏は、日本での再スタートとしてドトールコーヒーを選択しました。

沈 「とにかくコーヒーが好きだったから。中でも、ドトールは日本で名の知れたブランド力があります。入社当初、いつかは中国で展開したいと思っていました」

一方、ネパール出身のラマ ラクシミ デビは、自国以外の外の世界を見てみたいという想いから同じアジアの日本に興味を抱くようになりました。

ラマ 「アジアの中でも日本は独立した存在感のある国。そこに何があるのか、自分の目で見たかったんです。19歳のときに語学留学を目的に来日し、環境も価値観もネパールとはまったく異なるので、最初は非常に戸惑いました。

一番ちがうのは、時間の感覚ですね。日本では何もかも高いレベルの完璧が求められ、時間の流れもすごく速い。ネパールではもっとゆっくり時間が流れています」

そんな彼女がドトールで働くことを決めた理由。それは働くスタッフ一人ひとりの働く姿がカッコよく見えたからでした。

ラマ 「働く人たちがかっこよくて、店舗が清潔だったのも印象的でした。それに、ドトールは日本発祥のブランド。日本でしかできない仕事に挑戦したいと思ったのも、理由のひとつです。

住んでいた大久保という地域柄、スタッフもお客様も外国人が多いのもよかったですね。ドトールコーヒーショップ大久保店では、在籍スタッフのうち約8割が外国人。ごく当たり前に外国人スタッフが働いているので、気おくれすることなく入り込んでいけました」

出身も性別も、志望の理由も異なるふたりですが、ともに“コーヒーが好き”“ドトールが好き”という想いを持って、日々の仕事に励んでいます。

とはいえ、日本に住み、日本で働く上では、いうまでもなく超えるべき壁がありました。

多様な文化や価値観の違いを理解し、受け入れること。

言葉にすればシンプルですが、そのハードルと向き合い、乗り越えるのはたやすくありません。

ふたりがたどった道、感じた想いには、外国人活用の大いなるヒントが秘められていました。

価値観のズレに悩む日々。大切にすべきは“自分らしさ”だった

たとえば、店舗の前の道路をスタッフが清掃し、近隣の方とごあいさつを交わす。

日本ではそれほど珍しい光景ではありません。

沈 「でも、私は非常にびっくりしました。中国では、カフェで働く=ドリンクやフードの提供だけをする仕事。店内やお手洗いなどは清掃専門のスタッフが行うからです。ドトールで働き始めた当初は『パートナーも社員も全員で、こんな仕事までするの?』と戸惑いました」

一方、ラマは売る側(店舗)と買う側(お客様)の関係性に文化の違いを感じたそうです。

ラマ 「ネパールでは、売る側の方がどこか立場が上のような気がします。日本の感覚では逆ですよね。幸い、そこまでお客様からお叱りを受けるような経験はないんですが、『なぜここで店舗側が謝罪をしないといけないんだろう?』と、納得がいかないことがあったりしました」

挙げていけばきりがないほど、たくさんの違いや違和感に遭遇してきたふたり。

異文化の国で働くということは、その国の慣習や価値観に自分自身をフィットさせていくことでもあります。

今でこそ「いつも笑顔でいれば大丈夫」とほほ笑むラマですが、新卒社員として入社したころは、そのギャップが非常につらかったと振り返ります。

ラマ 「日本語はうまく話せないし、スタッフやお客様とのコミュニケーションもなかなかスムーズにいかない。つらい気持ちばかりが募り、リフレッシュのために帰国したんです。

環境も時間の流れもゆるやかな祖国の地で、あらためて『私はネパール人だ』って実感しました。日本で、日本人のお客様を相手に日本人と働いているから、自分も日本人らしくふるまわなければいけない。意図せず、そう思い込んでいた自分に気付いたんです。

一時帰国したとき、父には『別人みたいになった』と心配されてやっぱり無理していたんですよね」

無理に、自分を日本の枠に当てはめなくてもいい。

だって私はネパール人なんだから。

「どこで、誰と働くにしても、自分らしくがんばっていこう」と気持ちを切り替えた結果、いろいろなことがうまく回りはじめた、とラマは言います。

それは決して、理解や受容をあきらめるわけではありません。

ナショナリティとは別次元のレベルで、見失ってはいけないアイデンティティを大切にするということ。

自分らしさを輝かせてこそ、活躍への道が広がるのだといえるでしょう。

そして今、ドトールではふたりもメンバーとして参画し、より多くの外国人スタッフが活躍できるための体制づくりが進められています。

壁を知り、壁を壊す。お互いに歩み寄り、より良い可能性を見つけていく

沈が最初に店長を務めたのも、ラマが働くドトールコーヒーショップ大久保店でした。

沈 「立地上、日本人スタッフの採用が厳しく、必然的に外国人スタッフを巻き込んでいかざるを得ない店舗でした。とはいえ全店舗が労働力不足に悩む中会社全体、日本社会全体で考えてもその必要性は明白です。

ドトール全社で外国人スタッフをより多く取り入れられたらいいと感じていました。一方で、国籍にとらわれる必要はないという想いもありました。

ドトールコーヒーの人材育成として考えれば、日本人スタッフのトレーニングとそこまで大幅に変える必要はありません。国籍を問わずドトールで活躍できる人材を育て、力を合わせて店舗をつくっていければいいな、と」

そんな沈の想いは会社としての方向性とも合致。

2018年から他部署を巻き込んだプロジェクトとして動き始めることになりました。

沈とラマ、人材教育課の社員、直営店の日本人店長が集い、組成されたのが「グローバルミーティング」です。

最初は外部企業の知見も借りながら、徐々にドトールオリジナルのプログラムをつくり上げていくことになりました。

沈 「一番初めに行ったのは、どんな壁があるのかを洗い出すこと。その壁を外国人スタッフは、あるいは育てる側の日本人店長は、いかに解決したのか、意見を出し合いました。現場の意見を集めたり方針を変更したりするので完成型は設定せず、常に変化させています」

外国籍スタッフが日本の文化や慣習になじんでいくだけではなく、日本人スタッフも海外との違いや彼らの特性を理解し、接することが大切だというスタンス。

自分を滅するのではなく、お互いにリスペクトを持ってコミュニケーションを取れるのが理想です。

たとえばジェスチャーひとつをとっても、国が変われば意味合いが全然ちがうもの。

ラマ 「ネパールではYESの意味を示すとき、首を横に振ります。でも、日本ではNOと捉えることもできる。何気ない違いが、誤解を招く可能性があるんですよね。

これも『逆なんだ!』とお互いに知ることで、じゃあどうすべきか?という次の議論に進める。単純に、新たな発見がコミュニケーションの呼び水にもなります」

グローバルミーティングでは現場での活用を想定し、国別の特性をまとめた資料を作成。現在、在籍スタッフの出身地として多い中国・韓国・ベトナム・ネパール、そして日本の5カ国分が揃いました。

沈 「運用してみると、実はわれわれよりもむしろ日本人店長の方がより多くの壁を感じていることが判明しました。それをストレスとせず、新たな気付きや刺激としてプラスに転じていければ、外国人スタッフが活躍できる可能性はまだまだ伸びると感じています」

壁を壊すには、まず壁を知ること。その先を見据える目線の高さこそ、外国人も日本人もイキイキと働ける環境づくりの重要なファクターなのかもしれません。

手にしたチャンスを生かし、自らの活躍で後進に、会社に還元する

運営の現場に立つ外国人店長として、グローバルミーティングに参画した沈とラマ。今後はさらなる普及と改善を続けていきたいと語ります。

沈 「今回の件もそうですが、あらためて現場・スーパーバイザー・本部が三位一体となったドトールの体制の強さを感じました。それこそ国籍を問わず、チャンスを与えていただけたことを非常に感謝しています」

日本人であっても、運営の現場に立つ店長は悩みを抱えてしまいがちなもの。

沈もラマも折々で他店舗の店長やスーパーバイザー、ときには本社の社員に直接相談したそうです。

ラマ 「私は、何かあったら同期の社員に相談しています。気負わず連絡できる存在がいてくれる安心感は大きいですね」

沈 「私は、もっとコーヒーを究めたいと思って、キャリア形成の相談をした際に、自社の焙煎工場の社員と直接話す機会を設けてもらったことがあります。店舗勤務の先にどんな挑戦ができるのか、具体的なイメージを持てたのがよかったです」

この店舗に店長は自分ひとりだけだからといって、それは決してひとりではない。

本部や他の店舗の店長、スーパーバイザー、もちろんパートナーにも頼りながら、協力し合うことが大切なのだとふたりは感じています。

ラマ 「責任感は大切ですが、無理をしてもいいことはありませんから。店長だろうとパートナーだろうと、日本人だろうと外国人だろうと、それぞれみんなが特別な強みを持っている。それを引き出し、生かしていくのが、理想的な状態ではないでしょうか」

自分、自店舗、そしてドトールコーヒーという会社全体を見つめて。

彼らの姿を見れば、もはや、国籍が活躍のハードルになると考える理由はどこにもないでしょう。

今となっては、彼らがトレーニングを行う立場も務めています。

沈 「当社では、異なる店舗の上級店長と新米店長によるバディ制度があります。かつて、私も自分のバディにいろいろなことを相談し、助けてもらいました。

現在は私がバディの相談を受ける立場です。他にも、新卒や中途採用の新入社員を店舗で受け入れることもあります。日本人と外国人も関係なく育成に携われるのが楽しいですね。巣立った後にも連絡をくれることが多く、つながりが断たれずに息づいていくのはうれしいんです」

ふたりの活躍は、あとに続くスタッフにとっての道しるべ。

ドトールコーヒーの事業展開における、外国人活用の可能性を見せることにもなります。

自分らしくイキイキと働き、活躍のフィールドを広げていくふたりの姿は、これからも輝きつづけるはずです。