「詰めるだけ」からの卒業──苦悩の末に見つけた、若手を伸ばすマネジメント術

転職サイト『エン転職』の運営などを通して、人材採用と入社後の活躍を支援するエン・ジャパン。西脇一憲は『エン転職』に携わる20名のメンバーをまとめるマネージャーです。若手から「理想の上司」として支持される彼も、マネジメントに悩んだ時代がありました。その中で掴んだ、若手の力の引き出し方とは……?
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「若手に慕われるマネージャー」は、苦悩の日々から生まれた

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『ベストマネージャー賞』受賞時、当時の部下たちと
「ベストマネージャー賞は、西脇一憲さんです!」

2016年7月、全社員の注目が集まる場で、組織のシンボリックな活躍を引っ張った社員として表彰された西脇。彼の名が告げられた瞬間、当時の部下たちは一斉に歓声を上げ、手を取り合って喜びました。

若手営業から理想の上司として慕われ、組織の核となるような人材を育て上げるマネージャー。それが西脇一憲です。2008年に新卒でエン・ジャパンに入社してから、求人広告の営業としてメンバー、リーダー、マネージャーを3年ずつ経験してきました。

周囲よりも早いペースで昇進してきた彼のキャリアは、順風満帆なものに見えるかもしれません。しかし、決して成功だけを積み重ねてきたわけではありませんでした。むしろ、部下のマネジメントに悩んできたことが、現在の立ち位置につながっています。

西脇 「はじめてマネジメントの壁にぶつかったのは、入社4年目の2011年です。私自身も若手ながらリーダーに昇格し、新卒入社のふたりを部下に迎えた春でした。しかし、安定して業績を上げてきた、それまでの成功パターンが通用しない事態に見舞われることになるんです」

初めてのリーダー。いきなり部下が退職した

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彼の最初の部下は、ふたりの女性メンバー。

ひとりは、新しい顧客を獲得するために企業へ電話をかけ続けることが苦手なタイプでした。企業の採用担当者から話を聞き「どうしたら良い採用活動ができるだろう?」と考えることは好き。一方で「1日◎件電話する」「月に◎件受注する」といった、数の目標を追わねばならないことに疑問を感じていたのです。

西脇 「当時は、売上などの成果を絶対とするマネジメントしか知りませんでした。部下に成果を求め、目標を達成できなければ『なんでできないの?』と問い詰めるばかり。私自身がメンバーだった時代にそうしたマネジメントを受け、がむしゃらに目標を達成するスタイルでしか成功体験を積んでこなかったので、仕方ないと言ってしまえばそれまでなのですが……」

そんな西脇のもとで、課された目標を達成できずに問い詰められ続けた部下。徐々に萎縮し「できない自分」に悩むようになり、最終的に別の道へ進むことになったのでした。当時について、西脇はこう振り返ります。

西脇 「成果を求め続けたのは、期待の現れでもあります。苦手を克服して成長してもらおうと考えていたんです。顧客を獲得できなければ、採用を支援するスタートラインにも立てないですしね。ただ、彼女のためには、目標の背景や期待の気持ちも伝えるべきだったのかもしれません。苦手を克服させようとするだけが、正解ではなかったんです」

ひとりのメンバーとしては安定的に業績を上げ、失敗らしい失敗をしてこなかった西脇。しかし、リーダーとしてはいきなりつまずいてしまいます。各自が自発的に目標達成を目指せるようにしたい。しかし、強く言うだけではつぶしてしまう……。部下との関係性に、頭を悩ませる日々が続きました。

悩んだ末に彼は、自分とマネージャーの差について考えはじめます。当時のポジションは、部署全体を統括するマネージャーの下につくチームリーダー。「昇格してから、マネージャーの接し方は心地よく感じている。自分とは何が違うのだろう?」。そう考えたことが、迷路を脱するきっかけになるのでした。

解決のヒントは、上司の「問いかけ方」にあった

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入社間もない、20代の若手メンバーが多い営業部
西脇 「マネージャーと私では、目標を達成できそうにないときの問いかけ方が違いました。私は、達成できない理由を問い詰めます。上司は、目標に向かって 『どうやって達成する?』 と問いかけていたのです。

同じように理想と現状の差を問うのでも、過去について問い詰めるのと、未来について考えさせるのでは、部下自身の次の行動が変わってきます。未来には答えがないため、自分で考えなくてはなりません。そう仕向けることで、はじめて主体的な姿勢が生まれるんですね」

入社間もない、自分の力量をよく分かっていないメンバーにこそ、未来を向かせる問いかけが必要だと気づいた西脇。自ら考える余地を残して「これをやってみたい」と言い出せるようにすることで、各自の特性を掴み、得意分野を伸ばすような導き方ができるのではないか、と考えるようになりました。

2013年に彼の部下となった藤原の場合。彼は「周りから抜きん出たい」という意欲にあふれていたものの、人の気持ちをくみとって気遣うことは苦手な、猪突猛進タイプでした。協調・共有を大切にする風土があるエン・ジャパンでは、入社当時から浮いた存在だったのです。

西脇 「出る杭、と思われていた個性をおさえつけ、周囲と足並みを揃えさせる方法もあったでしょう。でも、藤原の気持ちを尊重しました。『社長賞を獲ろう!』と発破をかけ、売上目標を高水準で達成するための行動を好きに考えてもらって。彼が考えることは面白くて、効果がのぞめるならどんどん背中を押しました。

当然、周囲から煙たがられ、衝突することもありましたよ。ただ、そんなときは私が間に入って調整しました。彼がガンガン攻めて、私がバランスをとる。マイナスを埋めるのではなく、プラスを伸ばすようにしたことで、彼は周囲と比べ物にならない業績を上げてくれたんです」

結果、藤原は約束通りに社長賞を受賞。西脇自身よりも早く、入社2年目でリーダーに昇格し、2017年にはグループ会社アイタンクジャパンの代表に就任しています。彼の成長は、西脇にとってマネジメントの成功体験にもなりました。

たどり着いた、若手の力を伸ばすマネジメント

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「最近はどう?」声をかけると、メンバーとの会話がはずむ
2014年には部署の再編があり、ファッション業界に特化したグループをまとめるサブマネージャーに昇格。

10名ほどのメンバーのうち、ほとんどは入社1~3年目の若手女性。リーダーになりたての頃にマネジメント方法に悩んだ、顧客獲得のためにがむしゃらに営業活動をすることを得意としないタイプが主でした。ここでも彼は、メンバーとの接し方を変えていきます。

西脇 「それぞれの表情を見てこまめに声をかけていました。それから、グループの方針や各自に期待することを繰り返し説明しましたね。こうした日常のコミュニケーションは、些細に思えるかもしれません。ただ、積み重ねていけばメンバーの個性や考えていることが見えてくる。メンバーも、日常的に腹を割って話すことで私に意見しやすくなりますし、全体の方針が分かれば自分のすべきことを考えやすくなります」

「このブランドを絶対に受注したい」と頼られれば、一緒に作戦を練って商談に同行。「西脇さんの決めた役割分担が合わない」と反発されれば、前向きに働けるように納得するまで話し合う。

成果を求めるスタイル自体は同じでも、接し方を変えることで、部下との信頼関係は強固になっていきました。各自が目標達成の術を考えて行動できるようになるにつれ、グループの業績は向上。2年後には、部下の後押しを受けて立候補した『ベストマネージャー賞』を受賞するに至ったのです。

西脇 「最初から上手くいく若手は珍しいですが、同じように成果が出せない人でも根っこの問題はさまざまです。とはいえ、自分のことは正確に把握しにくい。だから、まずはマメに接してタイプを見極めます。本人の考える余地を残した上で、アクセルを踏んで得意分野を伸ばしたり、勢い余って脱線しそうになるところにブレーキをかけたりして、最大限の力を引き出す。これが、今の私のマネジメントだと思います」

いつしか「西脇さんのところは、のびのび働けて楽しい」と口を揃えるようになった若手メンバーたち。リーダーに昇格する人、新規事業担当に抜擢される人などが続出し、それぞれが活躍の幅を広げていっています。

未来について自発的に考えさせ、若手から個々の力を引き出す、未来志向のマネジメント。そう言うと壮大なものにも思えますが、特別な仕掛けは必要なく、日常のコミュニケーションが起点となっているのです。壁にぶつかりながら、さまざまな部下と向き合ってきた西脇のマネジメントスタイルが、それを証明しています。

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